通信ログ
Subject: [kd 03-03-11] 2/24国大協理事会は一体何を了承したか?
Date: Wed, 12 Mar 2003

国公立大学通信 2003.03.11(火)

--[kd 03-03-11 目次]--------------------------------------------
[0] 「国立大学法人法案の概要」に対する36国立大学の意見
[1] 国立大学協会理事会2/24議事概要
[1a] 理事会「国立大学法人法案の概要」に対する見解について 
[2] 独行法情報速報 No.24  特集:国立大学法人法案分析
[3] 西日本新聞3/11:国立大法人法案廃案求める声明 佐賀大教授ら
[4] 一楽重雄(理学部)「横浜市立大学の存続発展を求める署名のお願い」
[4a]署名用紙:http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc03/shomeibo.pdf
[4b]一楽重雄氏の数学教育に関する発言「それ自身の価値を大切に」抜粋
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国立大学協会理事 各位

2月24日の国大協理事会議事概要に、

    会長から「・・・(資料5)の最後の3行を修文して理事会見解とするこ
    とを了承願いたい」旨の発言があり、これを了承した。(会議終了までに
    石委員長から口頭で修文案が示され、基本的に了承された。)

とあります。問題となった資料5(「「国立大学法人法案の概要」に対する見
解について」 原案)の最後の3行は

「理事会としては、法案の基本的な枠組みは最終報告に沿って立案されていると
の法人化特委の見解全体を了承し、昨年4月19日の総会で決めた本協会の考え
方を再確認して、法人化へ向けた具体的な準備を一層進めることとしたい。」

でしたが、これが批判されて

「理事会としては、法案の基本的な枠組みは最終報告を尊重して立案されている
との法人化特委の見解を全体として了承し、政府に対し、今後この見解に沿って
法制化を進められるよう、強く要望する。」[1a]

と修正されたことになっています.一体何が違うというのでしょうか。本当に、
これは石副会長が口頭で示した修正案なのですか。極めて疑わしく感じます。
なぜなら、議事概要にある理事の意見15の内の11意見(1,2,3,4,
5,7,8,9,10,11,12)は「法人化特委の見解」を明確に批判し
ているからです。もしも、上のような「法人化特委の見解を全体として了承」
という表現があれば、当然その場で反論があったはずです。理事の方々は是非、
会議での石副会長の口頭修正が本当に上のような内容であったかを相互に確認
して頂きたいと思います。もしも、実際に上のような修正であったとすれば、
何故、それを了承されたのか、全国立大学(特に年度末の多忙な時期に学内の
意見をまとめ提出した36国立大学)に対し説明して頂きたいと思います。2
月13日の自民党、文部科学部会、文教制度調査会の合同会議で石副会長が明
らかな虚偽発言(*) をしてからは、国立大学全体は石副会長に対し深い不信感
を抱いており、今回の「まとめ」についても誰も信用していないでしょう。2/
24の理事会で理事の皆様は一体何を了承されたのでしょうか。
                              (編集人)

(*)http://ac-net.org/dgh/03/214-tjst.html
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[0] 「国立大学法人法案の概要」に対する国立大学からの意見
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030311kokudaikyou-4.htm
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#36国立大学からの総計約2万6千字の意見書

     北海道教育大学
     室蘭工業大学
     小樽商科大学
     弘前大学
     山形大学
     福島大学
     宇都宮大学
     千葉大学 
     東京外国語大学
     東京工業大学
     上越教育大学
     静岡大学
     愛知教育大学
     滋賀大学
     滋賀医科大学
     大阪大学
     神戸大学
     和歌山大学
     島根大学
     広島大学
     高知大学
     佐賀大学
     大分大学
     宮崎大学
     旭川医科大学
     北見工業大学
     秋田大学
     群馬大学
     東京学芸大学
     電気通信大学
     横浜国立大学
     福井大学
     奈良教育大学
     鳥取大学
     島根医科大学
     福岡教育大学
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[1] 国立大学協会理事会2/24議事概要
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030311kokudaikyou-1.htm
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首都圏ネット「2・24国立大学協会理事会資料の追加について」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030311kokudaikyoutuika.html
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日 時 平成15年2月24日(月) 15:00〜17:30

場 所 学士会館 203号室
出席者 長尾会長
    石、松尾副会長
    中村、秋山、吉本、北原、磯野、佐々木、池端、相澤、林、
    佐藤、岸本、野上、鮎川、梶山、齋藤、内藤各理事
    隆島第4常置委員会、宮田第5常置委員会、岡本教員養成特別委員会委員長
    兵藤、板垣監事

 長尾会長主宰のもとに開会。

(中略)

3 「国立大学法人法(仮称)」の概要に対する国立大学協会としての見解につ
いて

○ 国立大学法人化特別委員会 石委員長から、「国立大学法人法案の概要に対
する法人化特委の見解」について、同委員会における見解とりまとめの経緯及び
見解の内容について詳細な説明があり、会長から、これに対する理事会としての
見解を(資料5)のとおり取りまとめることが提案された。

○ これらに関し、次のような質問・意見交換等があった。

(1)法案概要では、必要な通則法を準用するとなっているが、どこを準用するの
か分からない。インターネットで昨年12月段階の法人法案を掲載しているが、そ
れによれば、中期目標の期間の終了時点で、通則法第35条(*)が準用されるとなっ
ている。これは調査検討会議の最終報告の評価の趣旨等を逸脱するのではないか
と危惧する。

(*)編集人註:独立行政法人通則法第35条(3)
「審議会(=総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会(**)は、独立行政法人
の中期目標の期間の終了時において、当該独立行政法人の主要な事務及び事業の
改廃に関し、主務大臣(=文部科学大臣)に勧告することができる。」
(**)http://www.soumu.go.jp/kansatu/seisaku-hyoukaiinkai.htm

(2)法案概要で、国立大学の設置者を国立大学法人と定義しているが、文科省の
説明及び法人化特委の見解で、これまで国大協として議論を重ねてきた国立大学
の法人化の問題、その中での設置者の問題について、各大学の持っている懸念、
疑問に対して答えていることになるのか、色々意見があるところだと思う。

(3)経営協議会と教育研究評議会は対等に位置付けられているといっているが、
経営協議会は、国立大学を設置する法人の経営に関する重要事項を審議するとなっ
ており、教育研究評議会は、国立大学の教育研究に関する重要事項を審議すると
なっている。国大協で経営と教学は一体であるとした議論とは違い、経営と教学
が分離して扱われているように感じる。

(4)法案概要についての法人化特委の見解の中で、「解釈する」あるいは「要望
する」というような表現部分は、対文科省との関係でどういう意味をもつのか。

(5)法案概要に対して多くの大学から疑問を含んだ意見が出されている。この意
見にも種々のものが入っているが、その中の一部のみを反映させて法制化対応グ
ループのレポートを修正して法人化特委の見解とすることで、各大学に理解され
るかどうか心配である。昨年4月の臨時総会で、調査検討会議の最終報告の制度
設計に沿って法人化の準備に入ることを了承し、その方向で進んできた。その最
終報告と法案概要が沿っているものかどうか、各大学の皆さんに心配があると思
う。各大学からの疑問点等について説明会を開催し、議論をしたうえで納得いた
だき、具体的な準備を進めたいというような態度を示す必要があると思われる。

(6)法人化特委の見解は、各大学の意見を踏まえて取りまとめられたものであり、
これを各大学に示した後、法案が出てから次の段階に進むのではないか。

(7)「資料5」の最後の3行のように、なし崩し的に事柄が進んでよいものかど
うか。国大協として明確な姿勢を出す必要はないか。

(8)法案が国会で議論されるときに、国大協は何を考えているのか明確でないま
ま議論がされるということに対し、大学長の集まりとしてはどう考えるべきか。
国会に法案が提出される前に、国大協として具体的な意見の表明をしておく必要
はないか。

(9)国のあるべき姿を考える大学が、何らの意思表示もなく法制的な問題だと押
し切られて新制度が出来たというのでは、現に学長職に在る者として責任がとれ
ない。

(10)これだけ多くの大学から意見が寄せられていることは、臨時総会等を開催す
るだけの重みがあるのではないか。

(11)国大協の意見をはっきり言う必要がある。法案概要に対する見解についても明
解な記述にする方がよい。

(12)法案内容を理解するための手順をきちんと踏んで進めるべきではないか。今
の状況の中で、大学から法人化を撤回しろというような角度からの意見は出ない
と思われる。それだけに構成員の方々が納得するような、様々な意見に対して率
直に表明し合い、一定のやり取りを経て、理解をした上で進むという態度を取る
べきであると考える。

(13)本日の理事会としては、「法案概要」についてどういう処理をするかという
ところに基本的に留めるべきではないか。理事会見解案の最後のまとめにある3
行は、少し踏み込み過ぎている。この時点では、法案概要に対する見解の線より
も退くような形の法案にならないように要望することが必要。法案が国会に提出
され、その点検をした後しかるべき段階で、国大協としての結論的見解をまとめ
るのがよい。その流れの中での取り扱いについては、会長・副会長の判断に委ね
てはどうか。

(14)今の時点で考えると閣議決定前に総会を開くことは、物理的に難しいと思う。
法案概要段階に対する意見を本理事会で決め、その後、法案が出てから国大協と
しての見解を出す方向で対応してはどうか。

(15)少なくとも法案概要に対する見解に示されている内容は、国大協として絶対
守ってほしいとの意思表示。法案が出る前にこのことを明確に示しておく必要が
ある。

〇会長から、「閣議決定までに説明会等を開催することは不可能と思われる。法
案が国会に提出された段階でその内容を検討し、国大協として表明すべきことが
あれば内容をはっきり示して、理事会で承認を得て発表するなり、あるいは臨時
総会を開催して議論することも視野に入れて対応を検討することとし、本理事会
においては、(資料5)の最後の3行を修文して理事会見解とすることを了承願
いたい」旨の発言があり、これを了承した。(会議終了までに石委員長から口頭
で修文案が示され、基本的に了承された。)
(以下略)
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[1a] 国立大学協会理事会「国立大学法人法案の概要」に対する見解について 
平成15年2月24日
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「国立大学協会は、昨年4月19日の臨時総会において、「国立大学等の独立行
政法人化に関する調査検討会議」がまとめた「新しい「国立大学法人」像につい
て」(以下「最終報告」という)に関し、最終報告までの本協会の活動の総括と
最終報告の評価を行い、「国立大学協会は、この最終報告の制度設計に沿って、
法人化の準備に入ることとしたい」とする会長談話を了承した。と同時に政府に
対し、今後の関係法令の策定作業等に当たって真に自主性・自律性をもてる国立
大学法人が実現するよう適切な対応を求め、本協会としても、関係の法律等が最
終報告に沿って立案されるよう、法制化作業の過程はもとより、あらゆる場面に
おいて努力を続けることを公にした。

今回、本協会の国立大学法人化特別委員会(以下「法人化特委」という)がまと
めた別添の「「国立大学法人法案の概要」に対する見解」(以下「見解」という)
は、その後の政府における法制化作業の法人化特委による点検評価報告であり、
また、「法案の概要」から見た法案内容の評価でもある。この見解は、昨年秋の
各地区学長会議での議論を経てまとめられた「国立大学の法人化に関する法制的
検討上の重要論点」を中心に、法案の骨格が最終報告が描く国立大学法人像に沿っ
て立案されているかどうかの観点からまとめられているが、法案そのものを検討
できない条件下にあっては、適切な評価方法によるまとめである。

理事会としては、法案の基本的な枠組みは最終報告を尊重して立案されていると
の法人化特委の見解を全体として了承し、政府に対し、今後この見解に沿って法
制化を進められるよう、強く要望する。

15.2.24 理事会 資料5(確定版)
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[2] 独行法情報速報 No.24  特集:国立大学法人法案分析
独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/n24.html
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【分析】国立大学法人法案並びに関連法案

1.設置形態と国立大学法人の性格
 1)設置者としての国立大学法人
 2)私立大学よりも強い包括的な大学統制
 3)「大学の自治」の崩壊 ―法人と大学―

2.通則法体系に組み込まれた国立大学法人法案
 1)通則法の準用 ―通則法に準拠した法人法案の骨格―
 2)中期目標・中期計画と評価システム
 3)財務・会計
 4)役員の任免

3.国立大学法人法案と大学の特性
 1)大学の特性
 2)通則法に対する特則
 3)国立大学法人に特有の管理運営組織
 4)財務:企業化する大学「経営」
 5)国立大学の企業化としての大学の特性

4.現行の国立大学法制との乖離
 1)教授会自治の消滅
 2)教育公務員特例法の不適用
 3)教育基本法

5.国立大学の行方
 1)国家統制の強化と官僚的業務の肥大
 2)学外者の影響力による大学「経営」
 3)大学の「企業化」と教育研究

・・・・・・
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[3] 西日本新聞3/11:国立大法人法案廃案求める声明 佐賀大教授ら
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/morning_news016.html
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「国立大学の法人化に反対する「国立大学独法化阻止全国ネットワーク」(事務
局長・豊島耕一佐賀大教授)は十日、佐賀県庁で会見し、今国会に提出された国
立大学法人法案の廃案を求める声明を発表した。

 声明は、独立行政法人では大学教職員の身分が「非公務員」となることについ
て「行政など外部権力が教員の人事に介入し、学問の自由が守られない」と指摘。
国が大学の評価によって資金配分を増減することで「官僚による大学支配が行わ
れる」と批判している。遠山敦子文部科学相に声明を送付し、国会議員に賛同を
呼びかける方針。」
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佐賀新聞3/11:国立大学法案の廃訴え
http://www.saga-s.co.jp/publ/flash/20030311.html#No6

「全国の大学関係者やジャーナリストなど約三百人でつくる「国立大学独法化阻
止全国ネットワーク」は十日、県庁で会見し、国会に提出された国立大法人化法
案の廃案を訴えた。
  同ネット事務局長を務める豊島耕一佐賀大教授らが会見した。法案では大学ご
とに中期目標が設定されることに対し、「官から学への命令制度であり、自由な
教育研究活動を阻害する」と批判。学長への権限集中など問題点を指摘し「改革
に値する法律にはなり得ない」と廃案を求めた。
今後、国会内で集会を開くなど、政党や国会議員への要請活動を展開する。」
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[4] 一楽重雄(理学部)「横浜市立大学の存続発展を求める署名のお願い」
「市大を考える市民の会」通信第14号[3] 2003.03.11(火) 
http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc03/news0311.pdf
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「去る2月27日に「市立大学の今後のあり方懇談会」の答申が中田横浜市長に
提出されました。新聞報道によれば、市長は「賛同する、市が有する意義ある大
学として再生するよう全力を尽くす」、「答申を踏まえて必要なところは手を付
けていく」、「私も認識は同じ。答申を基に改革に着手したい」と述べています。
あの乱暴な答申内容に対してあまりにも簡単に賛同するものであり,不自然な感
が否めません.在り方懇談会の進め方をみると、中田市長は自らの考えを「諮問
機関」に言わせ、それによって客観性があるとみせかける非民主的な旧来の手法
を取ったものではないかとの疑いを払拭できません.市民の考えが何であるかに
はまったく無頓着に無理な改革を進めようとしているように思われてなりません。

しかも、在り方懇談会にはデータを誤読させる(大学のランキングが低いかのよ
うに見えるように)操作を施した資料を提出したり、委員でない事務局が「検討
のキーワード」などという形で議論の枠組みを設定し,なおかつ,委員会で委員
と同等あるいはそれ以上に発言し議論の流れを作るという非民主的手法が取られ
ました.答申には,学問の自由や大学の自治の観点が全くなく,財政上の問題で
改革が必要であるとしながら,それとは直接関係のない人事権などにもふれ、
「教員組織をひとつ」にするとか、教授会でなく人事委員会で人事を決定するこ
となどが謳われています.「市費を研究にあてることは原則としてしない」など
も,研究と教育を切り離すことを意味し,また、学問の自由をも侵す結果となる
ものでとうてい容認できません.「3年後には一般会計からの繰り入れを半額に,
5年後には収支均衡」などと言うことは,大学が大学でありつづけることを実際
上不可能にするものです.もし,この答申を実行すれば,大学は授業料が非常に
高いカルチュアーセンターのようになり、財政的にもいきづまることは必至です.

経済の観点から考えても、この豊富なもの余りの時代において,これからは学問
文化の部門こそが成長が見込まれのであり,八景文庫地区は大学を中心とした文
化教養の街として発展すべきものと考えます。また、医療や文化の分野は、これ
から特に力をいれていくべきものではないでしょうか。私は,このような観点か
ら「市大の今後のあり方懇談会」の答申に反対し,横浜市立大学の存続発展を希
望するものです.

なお、「ありかた懇談会」やその答申などについては、横浜市立大学のホームペー
ジ(http://www.yokohama-cu.ac.jp/)をご覧ください。それに関連した詳しい
ことは、商学部矢吹教授のホームページ
( http://www2.big.or.jp/.yabuki/u-index.html
    )をご覧ください。なお、署名
の名前や住所には、〃の記号は使わないでください。しかし、代筆はよいそうで
す。印の欄は、サインでよいそうです。よろしくお願いします。」
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[4a] 署名用紙:http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc03/shomeibo.pdf
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[4b] 一楽重雄氏の数学教育に関する発言「それ自身の価値を大切に」より
 http://edmath.sci.yokohama-cu.ac.jp/opinion.html
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目次
1. 21世紀を前に
2. 数学教育の基本問題
3. 学力低下論の罠
4. 数学教育の狙い
5. これから求められる人材
6. 生徒の選択・主体性
7. これからの教師の役割

抜粋

4. 数学教育の狙い

「・・・・理想的には、論理的思考力、創造性につながる直感力、本質を見いだ
す抽象化の能力などを数学教育で養うことができる。このどれも要するに「自分
で考える力」と言ってよいであろう。考えた結果「あっ、分った」と感じる瞬間
が大事である。なにも平面幾何で補助線をひいてすぱっと解けたというよう高級
なものでなくてもよい。ほんの数秒考えることから始まる。これがとても重要で
ある。”ちょっと考える”ことがすべてに繋がる。・・・・」

6. 生徒の選択・主体性

 「・・・・その際、「数学だけが自分でやったことが正しいかどうか自分で確かめること
ができる」(大阪大学山本教授による)という、自律性ともいうべき著しい特徴
を持っている点にも注意したい。この点を大事にすれば数学だけでなく、何事も
自分で確かめるという習慣に繋がるだろう。これは、日本社会で欠けていること
のひとつである。・・・・」


7. これからの教師の役割

「・・・・日本の現状では経済や外交などの一部を除いて、各省庁がいろいろな諮
問機関を設置して政党とはあまり関係なく政策を作ってゆくのが現実である。こ
の意味で政治不在のまま行政が進められている。前回の学習指導要領改訂では、
たまたま福井謙一先生が「幾何は重要だ」と言ったから平面幾何が取り入れられ
たと言われている。数学者の多くも幾何が重要だ考えていたから、これがまった
くの偶然であるとは言えないが、違う人が委員であれば違う結論になった可能性
も高い。
 現在のシステムでは、「何年にもわたる調査や研究を経て、だれが見ても納得
のゆくものが作られている、現場の教師が口を挟む余地はない」ということでは
決してない。
 教師としては、「こんなに多くの項目を教え切れない」ということは、案外言
いにくいようである。たくさんのことも「このように上手に教えれば、うまくいっ
た」という方が、力のある教師と思われたりするからだろう。・・・・

 一番関係があって切実な問題意識を持った人が、意見をいうことは民主主義社
会の権利というより義務である。例えば、「薬害エイズ」の問題に専門家が誤り
をおかしたときの怖さが示されている。安倍教授以外の血友病を治療していた医
師は、何も声を挙げなかったのだろうか。恐らく少数の人は危険性を指摘したの
だろうが、大きな力とはならずに誤りが正されることはなかった。教育の場合、
この現場の医師にあたるのはいうまでもなく教師である。・・・・」
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
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