日本の大学・高等教育の荒廃につながる 国立大学法人法案ならびに関連法案の廃案を求める声明 2003年3月17日 日本私大教連 中央執行委員会 政府は2月28日、「国立大学法人法案」(以下、「法人法案」と略す)なら びに関連法案を閣議決定し、国会に上程しました。 「法人法案」は、小泉内閣の「聖域なき構造改革」路線の下で押し進められ た「大学構造改革」政策のひとつの帰結を示しています。経済財政諮問会議に よる骨太方針(01.6)は医療、介護、福祉、教育の分野に競争原理を導入する ことを謳い、経済財政諮問会議に提出された通称遠山プランと呼ばれる「大学 の構造改革の方針」は、国立大学の独法化による民間的経営手法の導入、第三 者評価による競争原理の導入、「トップ30」の育成などが謳われていました。 「法人法案」は、その第11条で法人の長たる学長に、異常に権限を集中し、 学長=法人の長による超ワンマン体制の確立を可能にします。 加えて第13条では、学長=法人の長が理事(役員)を任命するとあり、役員 会は学長の翼賛組織に堕する可能性大です。 また「役員会」(第10条)、学外者が半数以上を占める「経営協議会」(第 20条)、「教育研究評議会」(第21条)の三機関の関係が不明瞭で、かつ大学 運営上教授会がどのような位置づけになるのか明らかではありません。教学優 先を担保する明確な規定が「法人法案」にはなく、経営を優先し教学をこれに 従属させるような大学経営・管理運営が為されることが容易に予想されます。 権限の集中した学長=法人の長による、強権的なトップダウンの独裁的運営に よって、民主的な大学運営が阻害されかねません。 さらに、法人評価委員会を文部科学省に置くこと(第9条)、監事の任免権 を文部科学大臣が持つこと(第12条)、文部科学大臣による学長の任命・解任 権(第17条)、文部科学大臣の示す中期目標(第30条)、国立大学法人が作成し 文部科学大臣の認可を受けなければならない中期計画(第31条)など、文部科 学省・大臣が大学経営・管理運営に積極的に介入する仕組みがつくられていま す。これでは大学の自主性・自律性を阻害する恐れが非常に大きく、大学の自 治、学問の自由が危機に瀕する反面、国家による大学統制・支配という側面が 異常に強くなると断ぜざるを得ません。 以上、わずかな条文を挙げただけでも、「法人法案」の危険な本質が明瞭に 現れてきます。これらは、私たちが教育・研究活動の充実と発展をはかるため に、現在においても中心課題としている大学民主化の取り組みによる諸成果を、 根底から崩しかねないものです。 私たちは、世界の平和・民主主義の普及と人類の福祉・学術・文化の発展に 貢献することが、大学・高等教育の第一義的な責務であると考えています。そ のために学問の自由と大学の自治の十全な保障、諸科学の調和ある発展のため の諸施策の実施、教育・研究活動を支える教職員の権利擁護と地位の保障が不 可欠と考えています。しかし、今次国会上程された「法人法案」は私たちの立 場とはまったく相容れません。 私たちは、国立大学に働く教職員のみなさんとも共同・連帯し、法人法案な らびに関連法案の廃案を求めて取り組みを強めるものです。 以 上 |