「一橋大学長 石 弘光殿                          一橋大学教職員組合                         執行委員長 嶋崎 隆  ご承知のように、すでに独立行政法人法案について国会で議論が進んでおり ます。私たち一橋大学教職員組合執行委員会は、全大教などの組織とともに、 この法案に見られる問題点について、新聞などで再三再四指摘してきました。 また2月19日の全学説明会においては、この法案のはらむ深刻な問題性につ いて直接、学長に質問させていただきました(添付の組合ニュース、第4号参 照)。また組合ニュース第5号でも、全大教の批判的意見を紹介してあります。 私たちは独法化法案が全体として、国の教学にたいする責任を曖昧にし、経営 と効率性の論理を教育・研究に優先させ、学問の健全な発展を歪め、大学の自 主性・自立性を強く侵す恐れがあると考えます。  すでに本学社会学研究科・社会学部も「国立大学法人案についての社会学研 究科教授会意見(案)」(4月9日教授会)において、上記法案について強い 危惧の念を発しております。私自身もその構成員であり、発言もしましたが、 おおいに同感する内容となっています。またさらに、学外の状況を見ますと、 本学よりもはるかに深刻な状況がうかがわれます。たとえば、進行中の大学改 革のなかで任期制のまったく恣意的な導入がいくつかの大学でおこなわれてい ます。そしてつい最近、山形大学は「国立大学法人法案に関する理学部教授会 からの要望」(4月14日)を学長に提出し、「最終報告」において設置者が 国から国立大学法人に変更されたこと、教授会の役割規定のあいまいさ、など について疑問点を提起しています。また東京大学大学院理学系研究科・理学部 も、「国立大学法人法案に対する政府見解の表明に関する要望」(4月15日) を出しております。この要望書は、基礎科学の軽視の恐れ、中期目標・中期計 画の扱いが「最終報告」にいたって後退していること、大学の自律的機能の弱 体化の恐れ、などについて指摘しています。いずれの指摘にも、私たちはおお いに同感する次第です。  また4月3日衆議院本会議での議論のなかで、山口つよし議員(民主党)は 法人化法案を批判し、中期目標は大学からの届け出制に改めるべきであり、産 学連携の罠に気をつけるべきだ、と述べ、佐藤公治議員(自由党)も、同法案 の内容では、教育・学術研究が疎かになると批判しています。さらに石井郁子 議員(日本共産党)は、同法案が教育・研究にたいし国家統制を招き、基礎的 分野の学問が疎かにされるなどと批判をしています。  それのみならず、学長が委員長を勤められる国大協特別委員会(4月17日) では、法人法案について6月定例総会で議論するという執行部案に了承が与え られず、同委員会の意見がまとまらないままに終わった、とも聞いています。  以上のように、独法化法案は各方面から多くの問題をはらむものとして、強 い批判に晒されているのが実情です。  さて聞くところによりますと、学長は4月23日の衆議院文科委員会におい て、参考人として招致されるとのことです。学長は単に一橋大学にたいし責任 をもつというだけでなく、国大協全体においても重責を担ってきており、いわ ば全国の国立大学に責任をもっております。衆議院文科委員会においても、研 究者としての良心にかけて主張されるように切に要望するとともに、事柄の重 大性に鑑み、国大協臨時総会をできるかぎり早期に開催されることを要求いた します。  そして、さらにこれからも、研究教育の現場の意見を重視することによって、 独法化法案の問題点を十分に理解され、大学人にふさわしい態度を取られるこ とを心より期待いたします。 添付資料 ・組合ニュース 第4号 ・同、第5号 ・本学社会学研究科・社会学部「国立大学法人案についての社会学研究科教授 会意見(案 )」(4月9日教授会) ・山形大学「国立大学法人法案に関する理学部教授会からの要望」(4月14日) ・東京大学大学院理学系研究科・理学部「国立大学法人法案に対する政府見解 の表明に関する要望」(4月15日)