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Date: Sat, 10 May 2003 18:01:59 +0900
From: TSUJISHITA Toru 
To: kd
Subject: [kd 03-05-10] 国大協幹部の交替について

国公立大学通信 2003年5月10日(土)

--[kd 03-05-10 目次] -------------------------------------------------
[1] 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局声明2003.5.9
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030509syutkenseimei.htm
  「国立大学は違法・脱法行為と悪法制定の共犯者となるのか」

[2] 石国立大学協会副会長から各国立大学への要請 2003.5.7
  「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)」

[3] 石国立大学協会副会長から各国立大学へ送付文書 2003.5.7
  「 国立大学法人制度運用等に関する要請事項等(検討案)」
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各位

法人化の賛否に関係なく容認しがたい欠陥をもつ法律であることが次第に認識さ
れはじめている「国立大学法案」について、実質的審議がおこなわれないまま文
部科学委員会で強行採決されかねない微妙な時期に、国大協の現幹部は、国立大
学協会が法案を容認している、という解釈を許すような行為を行なっただけでな
く、「国立大学法人法」を運用により骨抜にすることを政府に要請することを提
案しています。現幹部のこれまでの国立大学協会運営における政府との「癒着」
は誰の目にも明らかでした。これらは、国大協および、それが代表するとされて
いる国立大学全体と、そこに勤務する国立大学教員全員の社会的信用を著しく傷
つけています。

「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)」文書[2,3]
は、多くの国立大学教員の忍耐の限界をはるかに越えており、国大協会長およ
び副会長の交替を国立大学協会に求める良い契機ではないかと思います。
                                                        (編集発行人)

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○ 意見広告の締め切りが5月15日になりました。
  http://www.geocities.jp/houjinka/index.html
  http://grape.c.u-tokyo.ac.jp/~hachisu/houjinka/  
5/9 現在、第二次参加者は400名です。
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○ 国立大学法人法案の賛否を問う全体投票を再開しました:
    http://ac-net.org/rfr

国立大学全体投票の継続とともに、「ac.jp ドメイン全体投票」を実現しまし
たので、国立高等専門学校、公立大学、私立大学の方も投票に参加できます。
拡大した投票も、「法案の賛否を問うレファレンダム」と呼ぶ理由は次の状況
によるものです。

55の国立高等専門学校を一つにする独立行政法人国立高等専門学校機構法案
は国立大学法人法案と一括審議されています。公立大学の独立行政法人化の準
備が急速に進められています。また「私立大学の独立行政法人化」(*)は有
馬元文相の持論であり、政府が私立大学への財政援助を増額する際に具体化す
る可能性もあります。したがって、学セクター全体が、日本の大学全体の独立
行政法人化の端緒ともなり得る今回法案の「当事者」であると言うことも可能
なのです。
 (*)http://www.jca.apc.org/toudai-shokuren/dekigoto/000526a.html
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[1] 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局声明
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030509syutkenseimei.htm
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	 国立大学は違法・脱法行為と悪法制定の共犯者となるのか

	      ―驚くべき国大協特別委員会の5.7依頼文書―

	2003年5月9日 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局
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  国立大学協会の法人化特別委員会は、5月7日に石弘光委員長名で「国立大学
法人制度運用等に関する要請事項等について(検討案)」という文書(以下、
「5.7 要請事項案」と略)を各国立大学長あてに送付した。この文書は、5月
15 日午後5時を期限として加除修正の形式で意見を寄せることを求めている
(末尾の資料参照)。

この文書の内容は、国大協が「特別な問題点は生じていないと評価」(15・4・
17法制化対応グループ)した国立大学法人法案が、現実にはもはや廃案する以
外にはないものであることを明白に表明している。


■違法・脱法行為を勧める文書■

第1に、5.7要請事項案IIの1をご覧いただきたい。「各種法令の適用に関する
運用上の協力と配慮」が要請されている。しかし、「経過的期間」であること
を理由に「弾力的な運用」といった措置や配慮を予め認める条項は当該法令に
は全く存在しない。とりわけ労働基準法は、最低限の労働条件の確保を罰則規
定の下で厳格に実現させるための法律であって、各種届出義務(4月17日の特
別委員会では、根幹にかかわる就業規則、三六協定が例示されている)の猶予
などあり得ない。そもそも国立の機関である国立大学が、自らこのような違法・
脱法措置を要求することなど論外である。この要請自体が、2004年4月法人化
が適法的には実施し得ないことを明白に示している。


■手当されない移行経費■

第2に、IIの3では「移行に伴う新たな必要経費の確保」が要請されている。
「移行に伴う」と曖昧に書かれているが、正確には「移行前に」であることを
まず指摘しておこう。その必要経費は旧7帝大では数10億円から100億円程度と
も伝えられている。こうした必要経費は、たとえ国立大学法人法案が今国会で
成立したとしても、移行前である今年度に支給されるという保証は全くない。
このことは、国立大学が、たとえば労働安全衛生法が要求する環境を準備し得
ないことを意味している。


■移行はすでに時間切れ■

ことは必要経費だけの問題ではない。一例としてIIの3の末尾にある登記に関
していえば、国立大学の中には、戦前、軍によって強制接収された土地を敷地
として用いているところがある。このような土地の登記に関しては、名義変更
の法的確認作業が必要であり、2004年4月までには到底間に合わないと言われ
ている。すなわち、財政的にみても、また時間的にみても、2004年4月の法人
化が適法的には実施し得ないことを示しているのである。現在の独立行政法人
が、通則法成立から1年9カ月の移行期間を有していたのに対し、国立大学法人
法案はもはや11 カ月を切っている。


■要請事項が自ら示す法案の根本矛盾■


第3に、IIIでは、9項目にわたって「制度運用」に関する要請事項が列挙され
ている。しかし、一読して分かるように、国立大学法人法案は、はじめから、
これらの事項をことごとく否定するために作られたものである。従って、これ
らの要請事項が運用で対処できる事柄でないことは論を俟たない。このような
要請事項を掲げなければならないということは、国立大学は国立大学法人法案
を受け入れることはできないことを示している。そもそも法自身の運用問題や
関連する他法の適用延期・猶予・免除などを審議中から議論しなければならな
い法律は悪法であり、法の名に値しないのである。


以上のように「5.7要請事項案」は、違法・脱法的措置をとる以外に法人化が実
現し得ないこと、また国立大学法人法案が国立大学の要求を全面的に踏みにじる
ものであることを、内外に明らかにしている。
 

■「要請」が意図するもの■

では、国大協執行部はこのような「5.7要請事項案」への意見を各大学に求め
ることにより、何を狙っているのだろうか。それは、各大学で急速に高まって
いる国立大学法人法案への批判をそらすためである。国会の立法権を侵害する
形で強行されている悲惨で過酷な準備作業のなかで、各大学の現場からいま激
しい批判や懐疑が湧き起こっている。現場の声を反映し、法案の「抜本的見直
し」を求めた元大阪大学事務局長糟谷正彦氏の論説『私の視点』(5月7日付
『朝日新聞』)に、各大学なかんずく事務部で共感の拍手が起こったことがそ
のことをはっきりと示している。これらの批判に対して、“各種法令適用への
配慮と制度運用でなんとかなる”(つまりは、当初から違法・脱法行為を予定
している)というデマゴーギッシュなキャンペーンをはるために、この「5.7
要請事項案」が出されたのである。

だが、国大協執行部の背後には文部科学省がいることは確実である。文部科学
省は、移行過程における違法・脱法措置をあたかも大学からの要望であるかの
ように仕向け、そしてまた、制度運用上の要請を出させることによって、高ま
る批判に対する“ガス抜き”をはかろうとしているのである。
 

■もはや廃案以外にはない■

5.7国大協特別委員会文書は、自ら、国立大学法人法案は廃案にする以外にな
いことを改めて示した。教職員組合、教授会、評議会などは、5月15日を締め
切りとする各大学の回答書に、「制度の運用によっては国立大学法人法の持つ
根本的問題点を解決することはできない。従って、法案は廃案にすべきである。
違法・脱法行為に加担するなど論外である」と明記するよう、大学執行部に対
して直ちに要求を開始する必要がある。そして、このような法案を廃案にする
ために、国大協臨時総会の開催を会則に基づいて行うよう各学長に要請しよう。

とりわけ労働条件に責任を負う教職員組合は、労働基準法や労働安全衛生法の
適用猶予という違法・脱法行為を行ってまで国立大学法人化を強行しようとす
る国大協執行部と文部科学省に対し、厳しく批判・抗議するとともに、各大学
執行部に対してあらためて廃案要求を行うことが必要である。国立大学を違法・
脱法行為と悪法制定の共犯者とさせないために、今、教職員組合の役割は極め
て重要である。

最後にすべての大学教職員に訴える。現在、法案を審議している衆議院文部科
学委員会ならびに同委員に対して、法案の徹底審議と求めるとともに、違法・
脱法行為を前提とした国立大学法人法案は廃案にする以外にない、という声を
集中しようではないか。

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[2] 国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)
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【資料】

平成15年5月7日

  各 会 員 校 代 表 者  殿

 

                   国立大学協会副会長

                   国立大学法人化特別委員会委員長

                          石   弘  光


国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)

 既にご報告のとおり、本特別委員会としては今後、法人化後における制度運
用等に関する政府等への要請事項を盛り込んだ国立大学法人化に関する国大協
の総括的な見解案をとりまとめ、6月の総会へ提案する方向で作業を進めつつ
あります。

 その見解に盛り込む要請事項等については、各会員校のご意向を反映したも
のとなるよう、各会員校のご意見を伺うことになりました。

 つきましては、時間的な関係もあり、ご意見を検討いただく際のたたき台と
して、別添の(検討案)を用意しました。この検討案に加除修正する形でご意
見をお寄せいただきたく、よろしくお願いいたします。

 なお、理事会までの作業時間の関係もあり誠に恐縮ですが、ご意見について
は、5月15日(木)午後5時必着で,Eメールにより国大協事務局までご回
報ください。また、加除修正部分については(検討案)と明確に判別できるよ
う、文字色等についてご工夫をお願いいたします。
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[3] 国立大学法人制度運用等に関する要請事項等(検討案)
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I. 明確な内容の政省令等の制定実現

(1)政省令等の確定にあたっては、国立大学法人法と最終報告(調査検討会
議「新しい「国立大学法人」像について」)の趣旨に則り、国立大学における
教育研究の特性に配慮し、国立大学法人の自主性・自律性を十分に尊重した、
明確な規定とすること。

(2)国立大学法人法の施行に必要な政省令等の詳細制度設計については、早
めに国大協と意見交換をすること。

(3)とりわけ、国立大学法人評価委員会に関する規定については、上記(i)・
(ii)の点について十分に配慮すること。


II 法人への移行過程に関する事項

1.各種法令の適用に関する運用上の協力と配慮

 国の組織から国立大学法人へ移行することに伴い、労働関係法規、医療機関
に関する法規をはじめとする各般の法令が新たに適用されることとなるが、関
係行政庁への各種届出義務に関する規定及びこれに関連する罰則規定の適用を
はじめとする諸法令の適用に関しては、当面は、各大学が法人化へ移行する経
過的期間であることに鑑み、その準備が整うまでの一定期間、弾力的な運用が
図られるよう、例えば以下のような点で、関係行政庁の十分な協力と配慮が必
要であること。

 ・ 労働基準法に基づく関係行政庁への各種届出義務に関する運用上の配慮

 ・ 労働安全衛生法の適用に関する運用上の配慮

 ・ 法人化に伴う関係行政庁への附属病院の開設承認再申請に関する運用上
の配慮

2 事務系職員の適切な人事交流システム構築への協力

 ・ 法人の人事権のもとで、事務系職員の人事交流による人材活用と職場の
活性化をはかるための適切な人事交流システムの構築や国の機関との人事交流・
異動の円滑な実施への協力等

3 法人への移行に伴う新たな必要経費の確保

 ・ 労働安全衛生に対する計画的な対応への必要経費、財務会計システム等
の構築のための経費、などの確保

  ・ 出資財産(土地・建物等)の確定・整理・評価・登記に伴う諸経費の確保
 

III. 法人移行後の制度運用に関する事項
 

1 高等教育への公財政支出の充実

 ・ 中教審で検討中の高等教育のグランドデザインに基づく公財政支出の拡
大と充実

 ・基盤的研究・基礎科学的分野への基盤経費の確保

2 法人の財政的な自律性を高める観点からの適切な運用

 ・ 剰余金の処理における法人の経営努力の幅広い認定

 ・ 中期計画終了時の積立金の処分における法人の立場の最大限の尊重

 ・ 効率化係数等による運営費交付金の一律減額措置の排除

 ・ 運営費交付金の算定基準の明確化

 ・ 国立大学の存在意義を踏まえた適切な学生納付金の標準額の設定等 

 ・ 土地処分収入の一定額の当該法人への留保

 ・ 収益を伴う事業実施に関する法人の判断の尊重

 ・ 寄附金、受託研究経費等の運営費交付金の算定からの除外


3 法人の実状に応じた確実な財政措置

 ・ 労災保険、雇用保険、各種損害保険等の保険料、各種手数料、監査に要
する経費、事務系職員の採用試験実施経費など、法人化に伴う必要経費の確保
等 

 ・ 施設の維持・保全に要する経費の運営費交付金への反映

 ・ 附属病院の施設整備に充てる資金の国立大学財務・経営センターからの
円滑な借り入れの確保 

 ・ 寄附金税制を含む現行の税制面での取り扱いの継続


4 国による各種損害の補填システムの整備

 ・ 自然災害及び火災等による被災施設等の復旧補填システムの確立(施設
災害補助金等)

 ・ 医療過誤や医療事故による賠償責任システムの確立(賠償金等)

 ・ 教育研究中の事故等による賠償責任システムの確立(賠償金等)


5 文部科学省の国立大学法人行政体制の整備等

 ・ 法人化された国立大学に対する大学の自由度を尊重した文部科学省の新
しい行政体制等の整備

 ・ 中期目標・計画を前提とした事後評価を尊重する具体的な事務処理体制
の整備

 ・ 概算要求作業の簡素化等新しい関係における国立大学の事務負担の軽減
 

6 中期目標・中期計画における大学の自主性・自律性の尊重

 ・ 文部科学大臣が中期目標を定めるに当たって、大学の意見を最大限配慮
すること。

 ・ 文部科学大臣が中期計画を認可するに当たって、大学の自主性・自律性
を最大限尊重すること。なお、中期計画について、大学の教育研究の特性を踏
まえ数値目標など詳細な内容指定を排除すること。

 ・ 年度計画の取り扱いについて、大学の教育研究の特性に十分配慮すること。

 ・ 計画期間中における計画変更を容易にする運用


7 国立大学法人評価委員会等による評価とその評価結果の活用方法

 ・ 国立大学における教育研究を伸張する適切な評価の実施

 ・ 大学の教育研究の特性を踏まえ数値目標などによる評価を排除

 ・ 大学に過度な負担をかけない評価方法の実施

 ・ 評価結果に対する大学の意見申し立て等の制度化

 ・ 評価結果の資源配分活用への慎重な配慮

 ・ 年度ごとの評価結果を資源配分に活用することを排除

 

8 国立大学の特性を踏まえた国立大学行政の確立

 ・ 教育研究の特性に配慮した適切な法律等の運用

 ・ 新連合組織(新国大協)と文部科学省との定期的な意見交換システムの構築

 ・ 監事の選任における透明性の確保
 

9 その他の要望

 ・ 法人化後における会計検査院との関係の明確化(計算証明、実地検査等)
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