通信ログ
国公私立大学通信 2003.06.20(金)

--[kd 03-06-20 目次]--------------------------------------------
[1] 6/12 岐阜新聞:小柴さん、国立大法人化に懸念 
  [1-1] 国レベルの支援継続を 小柴さん一問一答
[2] 6/19 櫻井議員メールマガジン: 審議は止まったままです。
[3] 6/19 共同通信:半数が「授業料上がる」 法人化で、国立大学長
[4] 6/19 意見広告の会: 寄せられたメール紹介「奨学金貸与基準の急変」
[5] 6/13 国立大学17大学人文系学部長会議から文部科学大臣への要望書
[6] 6/18 長崎大学環境科学部教授会 慎重審議を求める声明
[7] 6/19 鬼界さんからのお便り「なぜ医学系が反対しないのか」
[8] 7/5-6 全大教関東甲信越「国立大学法人と労使関係・労働条件について」
[9] 5/28 「大学政策転換への疑問 ―どうなる?「グランドデザイン」」
[10] 私学高等教育研究所 Arcadia 学報目次2003/4-6
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共同通信が国立大学長に行ったアンケートによれば、授業料を下げる大学はな
く、半数は値上げすると答えたそうです[3]。法人化し国費が漸減されれば、
「リストラ」で人件費節約するのでなければ、授業料値上げと定員拡大しか確
実な方法はありません。産学連携からくる資金は、米国の例でもたかがしれて
おり、大学の主たる財政基盤とはならないし、心の余裕を失った産業界が行う
ことである以上、大学の公共性が急速に蝕まれる懸念があります。

高等教育予算を減らすのであれば、学費値上げが学生の負担とならないよう奨
学金を増やすしかないはずです。ところが、最近急に、奨学金が借りにくくなっ
た、という証言を方々で聞きます[4]。国立大学の独立行政法人化で高等教育
予算のさらなる節減を目指し、日本育英会の独立行政法人化で奨学金の節約を
目指すひとたちは、本当に国の将来を考えているのでしょうか。(編集人)


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[1] 6/12 岐阜新聞:小柴さん、国立大法人化に懸念 
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/wev030619gifusinbunn.html
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『岐阜新聞』2003年6月12日付

 「基礎科学」置き去りに 小柴さん、国立大法人化に懸念
 一律の評価期間を批判

 国会で審議中の国立大法人化について、ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊・
東大名誉教授(76)が十一日までに共同通信のインタビューに応じ「法人化
されて独立採算となると、四、五年以内に産業への見返りがないような研究は
冷や飯を食わざるを得ない。理学部や文学部の仕事はどうなるのか」と強い懸
念を示した。

 小柴氏は「基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある。五、
六年の期間に利益を出すかどうかですべて処理されたら困る。一律に判定を下
すことは考えた方がいい。画一性は時に害を及ぼす」と強調。

 法人化した各大学が、文部科学相が示す期間六年の「中期目標」に沿って研
究・教育面などの「中期計画」を立てる仕組みに疑問を示した。

 以前から基礎科学の重要性を訴えてきた小柴氏は「二、三年後にもうけがぶ
ら下がっている研究ではないけれども、中には大きな見返りを出すものもある」
と指摘。

 「十九世紀に発見された電子が二十世紀後半にエレクトロニクスという大産
業に発展した。こういう例はいくらでもある。科学は対象の魅力や面白さで研
究するもの。役に立つ、立たないというスケールだけで処理されたら困る」と
話した。

 「見返りがないかもしれない基礎科学は国レベルで支えるしかない。景気に
関係なく、継続的にサポートすべきだ。人類共通の知的財産を増やすことにつ
ながる」とも。

 小柴氏は基礎科学分野を応援する財団設立に取り組んでおり「ぜひ応援して
ほしい」と訴えた。


[1-1] 国レベルの支援継続を 小柴さん一問一答

 小柴昌俊氏との一問一答は次の通り。

―国立大法人化はどんな影響があるか。

 「独立した法人になると、当然のこととして大学は採算を考えるようになる。
短期間で産業に見返りを出せないような研究は冷や飯を食わざるを得ないだろ
う。理学部や文学部の仕事はどうなるのか」

―基礎科学はどうか。

 「短期間で見返りが出るような研究なら企業が応援することもあるだろうが、
基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある。役に立つ、立た
ないだけですべて処理されたら困る」

―各大学を評価する期間は六年だが。

 「すべての大学の研究が五、六年の期間に利益のある結果を出すかどうかで
処理されたら困る。処理してはいけない分野もあることを認識してもらわない
と。一律に同じ時間で判定するという方法は考え直した方がいい。画一性はと
きに害を及ぼすことがある」

―文科相が大学の中期目標を決めるが。

 「科学というのは研究対象の面白さで取り組むもの。人類全体の科学知識に
貢献できるかで価値が判断される。役に立つか立たないかだけで判断されては
困る。アカデミックフリーダム(学問の自由)という言葉があるが、学者たちの
判断力やモラルを信頼しなければならない分野がある」

―以前から基礎科学の重要性を訴えてきたが。

 「二、三年先にもうけがぶら下っているような研究ではないが、時には大き
な見返りがあるものもある。十九世紀に発見された電子が二十世紀にエレクト
ロニクスという大変な大産業に発展した。こういう例はいくらでもある。基礎
科学は人類共通の知的財産を増やすことにもつながる。景気に関係なく継続的
に支えることが必要で、頼むところは国家レベルのサポートしかない」

―基礎科学を応援する財団の設立に取り組んでいるが。

 「国民的レベルで応援してもらいたい」

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[2] 6/19 櫻井議員メールマガジン: 審議は止まったままです。
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200306191820000000041719000
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[3] 6/19 共同通信:半数が「授業料上がる」 法人化で、国立大学長
http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__kyodo_20030619tk010.htm
詳細:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030619kyodo-.html
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 国立大の学長の半数が、二○○四年度に予定される国立大法人化の後に、現
在の授業料が「上がる」とみていることが、共同通信のアンケートで十九日分
かった。                

 法人化後は各大学が一定の範囲内で授業料を決めるが、競争原理が導入され、
経営基盤を安定させる必要性も高まることから、学生側の負担が重くなる可能
性が高いことを示した。        

 法人化自体には、各大学への資金配分の基礎になる文部科学省の大学評価に
対し「適切に行われるか不安」とする学長が75%、大都市と地方の大学の格
差拡大を懸念する学長も53%に上った。 

 法人化法案は参院で審議中。成立すれば来年四月から実施される。アンケー
トには九十七人の国立大学長のうち九十二人が回答した。         

 授業料は現在、全学部一律で年間約五十二万円。「授業料は将来、全般とし
てどうなると思うか」との設問に10%が「上がる」、40%が「学部間で差
がつき、上がる学部も出てくる」と回答、計50%が授業料の上昇を予想した。
「変わらない」は37%だった。                    

 自分の大学の授業料は「上げる方向で検討」が一校、25%は「現行通りに
する方向で検討」と回答。72%は「まだ検討していない」と答え、様子見の
段階とみられる。            

 法人化のプラス面は、複数回答で「学長のリーダーシップが強化される」が
77%、「大学の意思決定が迅速化」54%、「学外者の参加で開かれた組織
になる」が53%。           

 マイナス面や不安としては、国の評価や地域間格差の問題に加え「事務作業
が増え教員が教育研究に割く時間が減る」が55%、「外部資金が獲得できる
か不安」が49%。「中期目標の策定を通じ文科省の介入が強まる」も24%
あった。           

 法人化の時期は、51%が予定通りの○四年度を適当としたが、20%は
「準備の都合上、○五年度以降にする方がいい」と先延ばしを求めた。   


将来的には学生負担増か

 【解説】国立大学長アンケートから、法人化が将来的に授業料アップを招く
可能性が高いことが分かった。「個々の経済的状況にかかわらず、広く国民に
進学機会を提供する」という国立大の本来の役割を維持するために、文部科学
省はどのような措置を取るのか。学生や父母としては、今後の文科省や各大学
の動きを注視する必要がある。                     
     

 法人化後は、各大学の実績評価に基づき運営交付金が給付される。「経営努
力」が強調される中、交付額が伸びない場合は、授業料アップに頼らざるを得
ないケースも想定される。        

 学長の40%が「学部によって差がつく」と答えたように、医学部や理学部
など教育経費が高い学部は「受益者負担」の原則で、学生側に応分の負担を求
めるという判断も出てくるだろう。    

 地域間格差が授業料格差につながる恐れもある。学長の49%は「外部資金
が獲得できるか不安」と回答、53%が大都市部と地方の格差拡大を懸念して
いるように、地元企業の少ない地方大にとって、手っ取り早い「増収策」は授
業料値上げということになりかねない。                 
          

 国会審議で文科省は「標準額」を示し、一定の範囲内で大学に決めさせると
した上で「上限を決め、どんどん上がっていくのは抑える」と答弁した。  

 しかし私大医学部のような「施設整備費」の徴収や寄付金集めの可否には言
及せず、授業料以外の「学費」徴収の余地は残っている。現段階では模様眺め
の大学がほとんどだが、中長期的には学生側の負担増を招く公算は大きいとい
える。            


 <国立大全般の授業料は将来どうなるか>          

 【上がる】旭川医、弘前、お茶の水女子、横浜国立、名古屋工業、豊橋技術
科学、奈良教育、香川、宮崎医           
 【学部間で差がつき、上がる学部も】室蘭工業、小樽商科、宮城教育、千葉、
東京医歯、東京学芸、東京商船、東京水産、一橋、上越教育、山梨、信州、総
合研究大学院、政策研究大学院、富山、富山医薬、金沢、福井医、岐阜、静岡、
愛知教育、三重、北陸先端科学技術大学院、滋賀、滋賀医、京都教育、京都工
芸繊維、大阪外語、島根、高知、福岡教育、九州、九州芸術工科、佐賀医、長
崎、大分、鹿屋体育                        
 【下がる】なし                      
 【変わらない】北海道、帯広畜産、岩手、秋田、福島、筑波、宇都宮、群馬、
埼玉、東京農工、電気通信、新潟、福井、浜松医、名古屋、京都、大阪、大阪
教育、兵庫教育、神戸商船、鳥取、島根医、岡山、広島、徳島、鳴門教育、香
川医、愛媛、佐賀、熊本、大分医、宮崎、鹿児島、琉球          
 【その他】北海道教育(記入なし)、北見工業(物価に対応した上昇はあり
得る)、山形(不明)、茨城(一概に言えない)、東京工業(現状維持すべき
だ)、長岡技術科学(分からない)、奈良女子(現行に近いところからスター
トするだろうが、将来的には大学間で差が生じてくる可能性がある)、和歌山
(当分の間、変わらないと考える)、山口(法人化に伴って上がるとは思わな
いが、社会情勢によって将来的には上がると思う)、九州工業(現時点では判
断は難しい)                        
 【無回答】東京芸術、高知医                

 <自校で授業料について検討しているか>          
 【上げる方向で検討】名古屋工業              
 【下げる方向で検討】なし                 
 【現行通りの方向で検討】北海道、小樽商科、宮城教育、東京医歯科、東京
工業、東京水産、お茶の水女子、電気通信、一橋、上越教育、山梨、総合研究
大学院、岐阜、名古屋、豊橋技術科学、神戸商船、鳥取、徳島、愛媛、佐賀、
熊本、大分医、鹿屋体育    
 【学部で差をつけることを検討】なし            
 【まだ検討していない】北海道教育、室蘭工業、帯広畜産、旭川医、北見工
業、弘前、岩手、秋田、福島、茨城、筑波、宇都宮、群馬、埼玉、千葉、東京
学芸、東京農工、東京芸術、東京商船、横浜国立、新潟、長岡技術科学、信州、
政策研究大学院、富山、富山医薬、金沢、福井、福井医、静岡、浜松医、愛知
教育、三重、北陸先端科学技術大学院、滋賀、滋賀医、京都、京都教育、京都
工芸繊維、大阪、大阪外語、大阪教育、兵庫教育、奈良教育、奈良女子、和歌
山、島根、島根医、岡山、広島、山口、鳴門教育、香川、香川医、高知、福岡
教育、九州、九州芸術工科、九州工業、佐賀医、長崎、大分、宮崎、宮崎医、
鹿児島、琉球             
 【その他】山形(検討中)                 
 【無回答】高知医                     

国立大法人化とは

 国立大法人化 国立大を国の直轄から切り離して法人化する法案が今国会に
提出され、5月に衆院を通過、現在参院で審議中。成立すれば、来年4月に8
9の国立大学法人が誕生、約12万人の教職員は非公務員になる。各法人は、
文部科学相が示す期間6年の「中期目標」に沿って中期計画を策定。文科省に
置かれた評価委員会が計画達成度などを評価、国が交付する運営費配分に反映
させる仕組みに変わる。業績悪化を理由に役員会の理事を解任できるなど学長
の権限も強化する。                     
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[4] 6/19 意見広告の会: 寄せられたメール紹介「奨学金貸与基準の急変」
    http://www.geocities.jp/houjinka/
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#(賛同・カンパの連絡先:houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
    tel/fax: 03-3813-1565
    郵便振替口座:『「法人法案」事務局』00190-9-702697 )
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「以下は福島県のある方が同窓生に宛てられたメールです。

**
同窓生の皆さん、国立大学法人法案と日本育英会法人化に注意を!
本当はこんな事に同窓会のネットワークを使いたくないのですが・・・。

1.国立大学独立行政法人法案

皆さん、6/10の読売新聞の前面意見広告を見ましたか。意見広告によりま
すと、今国会でお大もめにもめている国立大学法人法案ですが、大学職員だけ
の問題ではなく、将来の日本に大きな禍根を残すもの様です。

市場原理の美名の下、大学の『学問の自由』、『大学の自治』及び『大学の自
律』を抹殺し、400名のも天下り官僚を理事として大学に派遣して大学を食
い物にし、全国の大学を文部科学省のコントロール下に置こうという法案です。

問題だらけな法案ゆえに、国会でもめていますが、政府は7月末まで国会を延
長し、文部科学省のメンツに掛けて 強硬突破する構えです。

趣旨に賛同する方は下記のホームページにアクセスしてカンパをお願いします。

 『国立大学法人法案に反対する意見広告の会』(新聞の意見広告主催)
    http://www.geocities.jp/houjinka/

 『独立行政法人反対首都圏ネットワーク』(関連情報が得られます)
    http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html

2.日本育英会の独立行政法人問題

残念な事に、衆議院を通過してしまったようです。参議院での審議があるかど
うか私は分かりません。これに異議を唱えたいのですが、どうしていいか分か
りません。

日本育英会が『独立行政法人日本学生支援機構』となってしまいます。
小泉内閣が『法人の改革』を口にした時、日本育英会の名前も浮上しており、
危惧を抱いておりましたが、現実に私に火の粉が降り掛かりました。

平成12年に長女が短大に入学した時に日本育英会から奨学金を借りました。
この時は私の仕事が大変忙しく、年収も多かったのですが、何の問題も不安も
なく借りられたのです。

ところが今年、次女が大学に入学して日本育英会の奨学金を申請した所、選考
で落とされてしまったのです。今回の年収は長女の奨学金申請の時よりずっと
少なかったのに、選考に漏れた事に納得できません。

次女の話によると、奨学金の希望者の半数しか借りられなかった様です。
2年後に3女も大学に行く予定ですが、次女と3女が日本育英会の奨学金を借
りられないとなると、どのように就学資金を準備したらいいか頭の痛い問題で
す。

皆さんの中にも日本育英会の奨学金のお世話になった方もいると思います。
奨学金にも市場原理の美名の下、貸し付けが『狭き門』となったのです。
普通のサラリーマンが日本育英会の奨学金を借りられない時代になったのです。
これって大きな問題ではありませんか。

日本の将来や学生の自立の面からも奨学金制度は拡充こそ必要ではありません
か。日本育英会の独立行政法人化は奨学金制度の改悪です。

皆さんはどう考えますか。
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[5] 6/13 国立大学17大学人文系学部長会議から文部科学大臣への要望書
   http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030619jinmongakubutyou17.htm
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文部科学大臣 遠山敦子 殿
平成15年6月13日

国立大学の法人化に向けての要望

                    国立17大学人文系学部長会議

 平成15年5月22日〜23日、山形大学において開催された第58回国立
17大学人文系学部長会議において法人化の検討状況及び法人化後の人文系学
部の在り方について協議致しました。現在、国会で審議中の国立大学法人法案
の内容を踏まえて、各大学より提出された意見の主要な意見を貴省へご報告し、
国立大学の法人化に向け17大学人文系学部長会議として以下の要望を行うこ
とで終了した次第であります。よろしくご賢察のほどおねがい申し上げます。

                               記

1 現在、国会で審議中の国立大学法人法案は、大学の自主性・自律性をこれ
まで以上に保障し、「わが国の高等教育及び学術研究の水準向上と均衡ある発
展を図る」(第1条)ことを目的として制定するものとされている。しかし、
今回の法案では、国による大学の中期目標の策定及び中期計画の認可とその評
価に基づく運営費交付金の配分、そしてそれを制度的に支えるものとして大学
経営の視点を重視した新しい組織運営体制の導入等、大学の運営に競争原理が
大幅に取り入れられており、これを押し進めれば、財政的基盤の弱い地方国立
大学や研究が実用的成果に直接結びつき難い基礎科学、人文系学部の衰退につ
ながることが危惧される。

2 第58回会議においては、主にこのような観点から、法人化後の大学全体
の中における人文系学部の位置、役割について意見交換がなされた。とりわけ、
学問の性格上、実用性・効率性の視点からの研究及び評価になじみ難いところ
から、学内における人文系学部の地位の低下に対する懸念が共通して表明され、
それへの対応の在り方ないし論理が議論された。そして、結論的には、(1)学
術研究の発展にとって、文系、理系を問わず基礎的学問分野を重視すべきこと
の普遍的価値性を認識すること、(2)社会に対し、教養を備えた有為の人材を
高等教育で養成することの重要性と、それに対する人文系学部の社会的使命、
(3)地域社会における個性ある文化の創造・発展に果たしてきた役割の継承・
発展という3点において、今後における人文系学部の役割・使命及び発展の契
機を見出すべきことが共通認識とされた。

3(1)20世紀において自然科学は、驚異的な発展を遂げ、科学技術の飛躍
的な進歩を生み出した。しかし、他方では環境問題に象徴されるように、経済
効率性優先の思想が生み出した負の遺産は後世に大きな課題を残した。21世
紀を迎えた今、我々は人間本来の在り方を根本的に問い直す時に直面している。
ここに、自然科学と人文・社会科学の調和のとれた発展を確保し、そのなかで、
人間本位の哲学に立脚した学術の創造的発展とそれを基盤とした高等教育の推
進が強く要請される所以が存すると考える。その意味において、人間及び人間
社会の本質及び在り方を研究対象とする人文系学部の担うべき役割は、今日ま
すますその重要性を深めているといえる。

(2)人間社会の営みは文化にあり、文化なくして国家は有り得ない。その意
味で、人文系の学問領域には、時代を超えた普遍的存在意義があるといえよう。
地方の大学は、地域社会の学術文化の拠点であり、我々は、この志をもって教
育研究機関としての役割を遂行する使命があるものと認識している。法人化に
より競争原理のみを優先した方向に走れば、落ち着いた環境において育まれる
べき真の意味での文化は育ち得ないであろう。

(3)法案の目的とする「個性ある大学の創出」、「大学の自主性、自律性の
確保」は、競争原理に立脚した実用性・効率性の重視だけではなく、基礎的、
長期的学問分野を重視し、「学問の自由」に立脚した学術研究の自主性・自律
性を保障し得る大学においてこそ実現可能になるものと考える。

 文部科学省におかれては、以上のことをご賢察の上、国家百年の計に基づい
た学術及び高等教育施策を遂行せられることを切に要望するものである。

国立17大学人文系学部長

(弘前大学人文学部長 藁科勝之、岩手大学人文社会科学部長 高塚龍之、山
形大学人文学部長 高木紘一、福島大学行政社会学部長 松野光伸、茨城大学
人文学部長 村中知子、埼玉大学教養学部長 岡崎勝世、富山大学人文学部長
 山口幸祐、信州大学人文学部長 大島征二、静岡大学人文学部長 山本義彦、
三重大学人文学部長 渡邉悌爾、島根大学法文学部長 松井幸夫、山口大学人
文学部長 田中晋、徳島大学総合科学部長 熊谷正憲、愛媛大学法文学部長 
今泉元司、高知大学人文学部長 松永健二、鹿児島大学法文学部長 辰村吉康、
琉球大学法文学部長 伊禮恒孝、以上17学部長)


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[6] 6/18 長崎大学環境科学部教授会 慎重審議を求める声明
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030619nagasakidaikyouju.html
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                          平成15年6月18日

 長崎大学環境科学部が加盟する全国農学系学部長会議は、現在参議院で審議
されている国立大学法人法案について、6月6日、下記の声明を発表しました。
私達は、同声明の内容に賛同するとともに、私達もまた本法案について国会で
慎重かつ十分な審議が尽くされることを強く要望するものです。

                       長崎大学環境科学部教授会


全国農学系学部長会議声明 

#(略:  http://www.nougaku.jp/buchokaigi/108/seimei1.htm)
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[7] 6/19 鬼界さんからのお便り「なぜ医学系が反対しないのか」
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「以前に医学系の人があまり反対しないということを話しましたね

先ほど学内の教官向けのチラシを書いていて思い当たることがありました。標
準教員の算定式で文学系が200名につき6名の教官であるのに対し、医学は
600名に対して140名になっていました。600名とはおよそ医学部全体
ですから、医学部で140名のポストが標準定員で確保できるわけで、他の学
部に比べて破格の厚遇であり、それが彼らが反対しない理由だと気づきました。

更に興味深いことにも気づきました。彼らが厚遇される理由は病院で診療収入
を稼ぎ出すからです。それは学生納付金の総額より大きな額です。わが筑波大
には臨床医学系のほかに基礎医学系というのがあります。上の論理から言うと
基礎はお金を稼がないので定員は違いそうなのに、医学ということで数字上は
基礎と同じです。ここまで考えてある事実に気がつきました。確か一昨年だと
思いますが基礎医学は全学に先駆けて任期制を導入しました。表面的には教官
が同意の上でするわけですから、なぜ基礎医学はそんな選択をするのか、と当
時不思議に思っていました。そしてそのとき同意しなかった講師が一人いたと
いうことも聞きました。基礎に任期制が導入されたのは金を稼がないのに臨床
と数字の上では同じ定員を持っている基礎の人減らしのためだとようやく気づ
きました。京大ではどうなのでしょうか。医学部全体が任期制を導入している
のでしょうか、それとも再生研のように臨床でないところにのみ導入されてい
るのでしょうか。もし非臨床に限られているなら、任期性、法人化、は極めて
大きなプランの元に着々と進められていることだということができるでしょう。
そして次にどこに任期性が強制されるかも予測可能です。収入源としての学生
に対して教員の多いところです。ずばりいうなら次のターゲットは統廃合をま
ぬかれた様々な研究所でしょう。従って任期制の導入が教官の同意によるとい
うのは全くのまやかしです。

こうした一連の人減らし政策を見ていて痛感するのは、常に一種の詐術ととも
にそれが導入されていることです。「強制じゃないからね」と子供をあやして
おいて後で拒めないようにする。実に巧妙なやり方のようですが、実際にはそ
うしたプロセスが人の精神を蝕むコストを官僚や支配者は計算に入れていない
ようです。むしろ人減らしが必要ならば、よりむき出しの形でそれを実行し、
それを蒙ったほうが抵抗したり、あるいは怒ったりするほうが、社会にとって
必要なストレスの解放となり、長期的に見れば社会の生命力にとっては大きな
プラスになるような気がします。自殺という表現形式しか持たない閉塞状況へ
と歩み続けている社会、それが「小泉改革」というなの官僚による無抵抗の支
配の果実だと思うと身の凍る思いがします。

私達の運動は何か表現できないぐらい大きな任務を背負っているような気がし
ます。そんなもの背負いたくはありませんが。鬼界」
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[8] 7/5-6 全大教関東甲信越「国立大学法人と労使関係・労働条件について」
      http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web03061gakusyuukai7-5.html
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[9] 5/28 「大学政策転換への疑問 ―どうなる?「グランドデザイン」」
   帝京科学大学長 瀧澤 博三 私学高等教育研究所 Arcadia 学報 No 120
   http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia120.html	
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    大学政策転換への疑問―どうなる?「グランドデザイン」

    帝京科学大学長 瀧澤 博三

〈大学市場化の急展開〉

  大学の「冬の時代」とは、凍てついた動きのない時代ではなく、冬という
イメージからはほど遠い激しい戦国時代であるらしい。大学市場という縮小す
るパイをめぐってそのシェアー争いのゲームに参加するプレーヤーは、多様化
し増える一方である。

  最初は公立大学の新設ブームと短期大学の四年制への転換であった。短大
の経営が困難だからといって四年制になっても、これは一時しのぎにしかなら
ないことが目に見えていながら、基準に合致すれば淡々と認可を続ける行政の
姿勢に戸惑いを覚えたが、いずれにせよ結果として、大学の数は増え続けてい
る。大学の全入時代到来を予告して世間に衝撃を与えた大学審議会の平成九年
の答申「高等教育の将来構想」以降を見ても、私立大学の数は、平成十年一三
校、十一年一三校、十二年二二校、十三年一八校、十四年一六校、十五年一四
校と増えつづけ、公立大学も同じ期間に一九校増えている。

  二番手は国立大学の法人化である。来年四月に予定されている法人化の制
度設計はできたようだが、その運営の実態がどのようになるのか、われわれに
とっては未知数が多い。しかし、独立の経営体として相応の自律性を持ち自己
責任を負うとされる以上、経営の基盤となる学生数の確保には、これまでと違っ
て強い関心を持つであろうから、私学にとってシェアー争いの強力な相手にな
るであろうことは想像に難くない。

  三番手として、全く予期しなかった手ごわい相手が現れそうな気配がある。
株式会社の大学への参入である。当面はいわゆる構造改革特区に限定した問題
であるが、この構造改革特区の考え方は、特区での成功例が全国的な規制改革
へと波及していくことを期待しているわけだから、将来、株式会社立大学が全
国化する可能性は高いと思わなければいけないのだろう。新しいビジネスを起
こし経済を活性化させようとの特区の考えに基づくものだけに、株式会社立大
学は消費者サービスに徹した行動様式を取り、大学のサービス産業化のトップ
を切って大学の市場競争を本格化させるに違いない。

  このような大学市場への新規参入ラッシュに加えて、これまで高等教育行
政の柱として重要な役割を担ってきた高等教育計画の考え方が、いわゆる工業
(場)等制限制度の廃止とともに払拭され、大学の量的規模や地域的配置の調
整ということは行政の仕事ではないと考えられるようになったらしい。設置等
が自由化され、大学市場の多様な担い手が揃うことによって大学の市場化が急
展開する環境が整ったわけである。

〈大学政策における「調整」の役割〉

  大変古い話になるが、中央教育審議会の四六答申が高等教育計画策定の必
要性を謳って以来、数次にわたって高等教育計画が策定され、政策の柱として
位置付けられてきた。高等教育機関の量的規模と全国的な配置に政策的な調整
を試みたこれらの計画は、その意図どおりの実現を見なかった面もある。特に
平成四年をピークとする一八歳人口の急増急減期を超えるに際しては一定の規
模の想定をすることが困難となり、「計画」という用語も放棄することとなっ
た。それに加えて、政府の構造改革の流れに沿って設置認可等の事前規制は漸
次緩和されてきたが、それでも大学審議会においては平成九年の答申「高等教
育の将来構想」でも、同十年の答申「21世紀の大学像」においても、進学率
の急激な変化(上昇)を避け、高等教育全体の質の維持向上を図るため、大学
等の新増設の認可は抑制的に対応するという方針を示していた。このように高
等教育計画は、「計画」というより柔らかい「調整」へと変化してきたが、そ
れでも行政によるこのような設置等の調整の努力は大筋において大きな役割を
果たしてきたし、その役割は国民にも支持されてきたと思うのである。

〈「調整」か「自由と自己責任」か〉

 今回、学校教育法の改正と併せて諸規則等の改正が行われ、学部の設置も一
部認可を要しないようになるなど設置等の規制緩和が一段と進められることに
なった。この一連の改正についての文部科学省の説明から理解されるところで
は、認可手続き等の問題以外にもう一つ重要なことが含まれているようである。
それは、医・歯など若干の分野を除いて、大学の量的規模や地域配置について
の調整は今後一切考えないということである。その反面を言えば、大学教育の
供給過剰による大学の淘汰は自己責任の問題であり、行政は関与しないという
姿勢を示したことになる。

 規制改革を徹底して行けば、結果については自己責任という考えに到達する
ことは極めて論理的である。しかし、これまで大学政策の柱とされてきた規模・
配置の調整がなぜ今不要になったのか、規制緩和の理念と大学政策の考え方は
どのように調整されたのか、かみ合った議論がどのように行われたのか、その
辺のことは国民に説明されたのだろうか。

 大学経営への参入の自由化を進めれば、大学が活性化するというプラスの部
分もあるだろう。しかし反面で供給過剰による資源の浪費、一部での教育の劣
化、学生・保護者の不安・動揺などマイナス面が予想されることは今更言うま
でもないことである。マイナスの不安があるからこそ努力と競争があり、活性
化と質の向上があるのだという説明で納得する人がいるのだろうか。日本経済
の再生は国民の一番の関心事である。そのための規制改革の声は当然大きくな
る。大学政策の論理はこの経済・財政の論理とかみ合っておらず、声の大きさ
に圧倒されているだけとしか思えない。

〈政策転換への疑問〉

 大学政策を大転換し、大学の規模・配置の調整という課題をすっぽりと切り
捨てるというのであれば、その前にまず、これまでの政策の十分な評価が必要
だろう。高等教育計画の政策にどのような成功と失敗があったか、行政による
設置等の調整がどのようなメリットを生み、反面でどのようなデメリットを生
んだかが明らかにされなければならない。その上で、今後の大学政策にどうい
う形の調整の役割が求められるか、あるいは行政による調整という事前規制の
機能は廃止すべきか、そして後者の選択をした場合には自由な競争と自己責任
の原則の下で、どのような大学の全体像が想定されるのかを説明してほしいと
思う。構造改革の論理だけで大学政策の転換を図るとすれば、それは時流に流
されただけのムード的な選択だと考えざるをえない。

 大学市場の長期的な縮小傾向が続く中での市場参入の自由化に、特に私学の
中では不安が大きい。国立大学の法人化によるシェアー競争の激化の予想もあっ
て、私学側からは、国・公・私を含めた高等教育の全体像(グランドデザイン)
を描き、公正な競争条件を構築するよう公財政支出を含む教育費負担のあり方
を示すべきだという声が大きくなっていることは当然のことである。

 昨年は中央教育審議会でも高等教育のグランドデザインについて検討してい
ると聞いていたが、今年三月に出された同審議会の答申「新しい時代にふさわ
しい教育基本法と教育振興基本計画のあり方について」の中で「参考」として
示されている「計画に盛り込むことが考えられる具体的政策目標の例」を見る
と、現在の大学政策の主たる関心事は「国際的競争力のある拠点的な大学づく
り」にあり、将来の大学の全体像をどのように捉えようとしているのかは全く
窺い知ることができない。八割を占める私学を含めた全体像はすでに政策の視
野から抜け落ちているかのようである。全体像を決めるのは市場であると割り
切った結果なのだろうか。
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[10] 私学高等教育研究所 Arcadia 学報目次2003/4-6
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   116	本番を迎える認証評価制度―私大協の受け入れ態勢の課題 (上)
        喜多村和之	2101号	(2003.04.23)
        http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia116.html	

   117	本番を迎える認証評価制度―私大協の受け入れ態勢の課題 (下)
        喜多村和之	2102号	(2003.05.07)
        http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia117.html	

   118	外国人学校卒業生の入大学学資格 ―是正すべき「公」の分裂
        馬越 徹	2103号	(2003.05.14)
        http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia118.html	

   119	改革推進と経営体制 ―理事会「執行役員制」導入の試み
        篠田 道夫	2104号	(2003.05.21)
        http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia119.html	

   121	実務と大学の協力機関を ―法科大学院に対する第三者評価
        由岐 和広	2106号	(2003.06.04)
        http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia121.html	
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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