通信ログ
国公立大学通信 2003.06.27(金)

--[kd 03-06-27 目次]--------------------------------------------
[0] 意見広告の会: 第四次意見広告実施を決定:News 014

[1] 6/26 ドクター桜井の日本診療〜270号〜 より

[2] 6/27 国会審議情報(6月26日参議院文教科学委員会)

[3] 6/26 共同通信「文科相が再三陳謝 16日ぶり再開の参院文教委」

[4] 6/26 57国立大学222名から参議院議員への要請書

[5] 6/18 岐阜大学地域科学部教授会声明

[6] 6/26 東京新聞 「法人化で数百人天下り  国立大「役員」に官僚出身者」

[7] 新藤宗幸著「行政指導−−官庁と業界のあいだ」
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国立大学法人への天下りは「大学側がお決めになること」
だから問題ではない、という答弁が繰りかえされました
が、行政指導はすべて、そういう形式をとるものですし、
運営費交付金のような補助金を通した行政指導は絶大な
効果がある[7]ことは周知なことですから、このような
答弁を国会が容認するならば、天下りそのものを公認す
るのも同然で、しかも、今後、天下り場所の増殖は行政
が思うままにできる、ということになるでしょう。

「大学側がお決めになる」ので、国立大学法人の数百の
理事は、文部科学省だけでなく全省庁が利用できること
をも意味しています。夥しい天下りという飴玉を用意し
て文部科学省が他省を説得したということなのかも知れ
ません。中央省庁全体にとり垂涎の「大学改革」という
ことです。

このような、官僚による官僚のための「大学構造改革」
が、強行されるならば、現政権が実は誰の味方なのか、
それが誰の目にも明かになります。(編集人)

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[0] 「国立大学法人法案」に反対する意見広告の会: 第
四次意見広告 News 014
http://www.geocities.jp/houjinka/index.html
qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
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「意見広告」賛同者の皆様、

本日6月26日の参院文教科学委員会では法案審議のみ
がなされ、採決はありませんでした。来週の7月1日に
開かれる委員会が次の大きな山場になると思われます。

また、本日の東京新聞第一面では、--- 国立大「役員」
に官僚出身者 --- という大見出しで、約500人の役員ポ
ストに多くの官僚出身者が選任される見込みであるとの
記事が掲載されています。要約はWebでも御覧になれま
す。(http://www.tokyo-np.co.jp/) 次第に風が吹いて
きているように感じます。

「国立大学法人法案」の参議院通過を何としても阻止せ
んがため、以下のように第4次の意見広告の出すことに
決定しました。ぜひ、ご賛同いただき、カンパをお願い
します。

第4次意見広告

掲載紙 毎日新聞朝刊全国版全面。
予定日 7月1日(火)
費用  約900万円(制作費・消費税を含む)
体裁  前回の「読売」型(内容・著名人意見などは新規)
        詳しくは ホームページ
        http://www.geocities.jp/houjinka/index.html
        をご覧ください

・毎日全国版としたのは、費用・全国性・誠実性を考慮
に入れてのことです。

***
賛同・カンパの申し込み方法  

*賛同およびカンパを以下の記入要領でお申し込み下さい。
(メール、ファックスでお願いいたします。)
  ----------------------------------------
  氏名     「漢字」  
  氏名     「ひらがな」 
  連絡先住所・FAX   会計報告を要する方のみ
  連絡先メールアドレス  賛同者連絡を希望する方のみ
  醵金の口数  「何口」または「何千円」(1口5千円です。)
  ----------------------------------------

*今回も3次意見広告同様、氏名掲載はありませんので、
  全く連絡を必要とされない方は、カンパだけでも結構
  です。
            
  メールの宛先   houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
         FAXの宛先  03−3813−1565

*入金の方法 

・郵便振替口座『「法人法案」事務局』
       00190−9−702697
 なお、郵便振替口座の用紙を利用されて、直接連絡していただいても、
 結構です。

・銀行口座 東京三菱銀行 渋谷支店 口座番号 3348763
                                 口座名   法人法案事務局

(ご注意) できるだけ郵便振替をお使いください。銀行口座振込ですと、
    振り込み人の本人確認ができないおそれがあります。
    銀行振込の方は、振り込みしたことをメイルにて必ず連絡を
    お願いします。(FAXはできるだけ避けてください。)

各所への呼びかけを、最大限お願い申しあげます。

                 「意見広告の会」事務局


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[1] 6/26 ドクター桜井の日本診療〜270号〜 より
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000041719
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From: mag2 ID 0000041719 
Date: Thu, 26 Jun 2003 20:30:00 +0900 (JST)
Reply-To: sakurai@uranus.dti.ne.jp
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◇大臣失格

 今日、文教科学委員会で質問した。止まりそうな場面
は何回もあったが、残念ながら止めることはできなかっ
た。

 しかし、遠山大臣の答弁は本当にいい加減で、私に対
して相当頭に来ていたのだろうが、最後に「ポッと来た
人が議論に参加して・・・」と発言された。確かに最初
から委員会に出席していたわけではない。しかし議事録
も読んで会議に参加しているわけであり、大臣に言われ
る筋合いのものではない。頭に来て席を立った。その後
「取り消す」との発言があったそうだが、そんな程度で
許せる問題ではないし、議事録の削除にも応ずるつもり
はない。

 行政の本来の役割は、根拠法に基づく権限の範囲内で
実務を執行することである。現在、国立大学法人法案の
審議をしている最中であり、本来中期目標、中期計画を
作成させるという権限は文部科学省にはないのである。

 一方、内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理する
こと」「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を
掌理すること」等、憲法73条に規定されている。この
事から考えれば、遠山大臣の行っている行為は憲法に抵
触する可能性がある。

 遠山大臣は、「国立大学法人化に向けて行政権限で各
大学に準備させることは憲法に抵触していない。」と答
弁していたが、その根拠は文部科学省の設置法にあると
いう。というところまで拡大解釈するのであれば、国立
大学法人法そのものが不要になるのではないだろうか。

 とにかく現場のことも十分理解せず、感情的に、しか
も支離滅裂な答弁しかできないような大臣は、即刻辞任
すべきである。

             参議院議員・医師 桜井充

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★ラジオに生出演いたします!

 明朝、櫻井充がゲストとしてラジオ番組に生出演いた
します。
 テーマは3つで、「イラク新法」、「国立大学法人
化」、「厚労省がホームページに掲載した疲労自己診断
チェックリスト」です。是非お聞き下さるようよろしく
お願いします。

 日時:平成15年6月27日(金)07:00〜08:00
 
 番組名:文化放送(1134khz)「蟹瀬誠一 ネクスト」

 スタジオ出演者:蟹瀬誠一(ジャーナリスト)
         小川真由美(フリーアナウンサー)
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[2] 6/27 国会審議情報(6月26日参議院文教科学委員会)
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#(意見広告の賛同者向情報より)

「6月26日午前10時、16日ぶりに参議院文教科学委員
会が再開されました。冒頭、審議ストップの原因となっ
た前回答弁に関して、遠山文科大臣が「お詫び」を述べ
ました。

 「お詫び」の内容を要約すれば、

(1)学部・研究科・附置研の中期目標・中期計画の資料
   を「各大学の判断」で提出していると答弁したが、
   その資料については全ての大学に提出を依頼したも
   のであり、訂正し、お詫びする。
 
(2)12月資料は、大学側(国立大学協会)の求めに応じて
   出したものであり、記載内容についても従来の文科
   省の答弁と矛盾しない。学部等の資料は、背景を理
   解するための「参考情報」である。

(3)12月資料は、その性格やスケジュールについての(大
   学側の)誤解があり、結果的に関係者に過度の負担を
   招いたとの「指摘があることについては」誠に遺憾
   である。資料の正確な趣旨を大学に徹底したい。

(4)12月資料は準備作業であるが、これが文科省の名義
   であったために、中期目標・中期計画そのものの作
   成が進められている、とか、国会審議の尊重という
   点から問題だ、と指摘されたことについては遺憾で
   あり、お詫びする。

  要するに、文科省は単なる「準備作業」と考えていた
のに、大学が(あるいは学長以外が)大きな誤解をして、
中期目標・中期計画作業に従事したのだという説明でし
た。文書が広まるにつれて趣旨が曖昧になった、という
ことだそうです。

  質疑では、法案成立前の準備作業の可否をめぐり攻防
がありました。文科省は完全に意思統一してきたとみえ、
法案の審議や法の成立以前から法人化の準備をするのは
行政の責任として当然であり、特に大幅な設置形態の変
更で不安をもつ大学の要望に応えて準備を行っていると
いう論理でした。この準備作業は当然、大学が要望して
いるという二つの論理を崩すことが必要です。
 
 民主党と共産党は、各大学で大規模な準備作業が進行
していること、教職員数の試算基準や人件費の試算単価
表などが作られていること、移行経費を予算化・配分し、
コンピュータ会計システムの入札まで行っていることな
どを挙げ、「法律の執行行為を先行させることは大問題」
「何が何でも来年4月スタートという姿勢をとる限り、
国会軽視・無視は続く。それでは審議できない」「法案
が成立してから準備を開始するのが筋だ」と厳しく追及
しました。また、国連(自由党)は、そもそもなぜ独立行
政法人制度を準用しなければならないのかと批判しまし
た。国連の西岡議員は、特に2分間の発言を求め、「13
万人の職員、特に一般職員から公務員の身分を剥奪する
法的根拠があるのか。これを次回質問したい」と述べま
した。

 こうした野党の追及に対して、文科相、副大臣、高等
教育局長は、「法案提出にともなう準備行為の範囲」
「国会軽視などまったくしていない。審議を尊重してい
る」「来年4月にむけて遺漏のないよう、できる準備を
できるだけ進めているだけ」などの答弁を繰り返しまし
た。

 また本日の委員会では、今までにも増して、暴言や取
り消し、「お詫び」が続出しました。
 
○総務省の審議会の評価をめぐって、櫻井議員に対して、
年次評価と中期計画終了時の評価を混同して答弁した点
について、河村副大臣と総務省の担当官が「お詫び」。

○林議員に対する副大臣答弁「新会計システムの導入は
法人への移行を想定していることは否定しないが、法人
化しなくても必要なこと。前倒しして進めている。労働
安全衛生法対応だって今からやっている」→「『前倒し』
は取り消し」(労働安全衛生法対応は人事院規則に今で
も違反しているから行うのは当然だが、企業会計原則に
基づく会計システムは現在では不要であることを同一視
した)。

○副大臣「法人化自体ダメというなら見解の相違としか
言いようがない」→「取り消し」。

○大臣「(中期目標の問題に関する櫻井議員の追及に対
して)その論点は、これまでの審議で繰り返し答弁して
きた。先生は差し替えでいらしているから今までの審議
をご存知ないかもしれないが」→委員長が不穏当な発言
とし、大臣は「取り消します」。
 
  与党はすでに昨日の理事懇談会で、7月1日の委員会に
おける審議打ち切り・採決を提案していました。本日の
委員会後の理事懇談会でも、次回7月1日の採決を提案し
ており、野党は一致してこれに強く反発しています。今
後の審議日程は明日10時からの参院本会議終了後に開か
れる理事懇談会で決まる予定です。」
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[3] 6/26 共同通信「文科相が再三陳謝 16日ぶり再開の参院文教委」
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 国立大を国の直轄から独立した法人にする国立大法人
法案を審議している参院文教科学委員会は二十六日、審
議を十六日ぶりに再開した。遠山敦子文科相が、空転の
きっかけとなった今月十日の自らの答弁を訂正、謝罪し
た。だが、その後の質疑で再び答弁を取り消す事態とな
り、遠山氏は何度も頭を下げた。

 今月十日、民主党の桜井充氏が、法人化後に各大学ご
とに策定する中期目標に関連し「文科省は学部学科や付
属研究所ごとに、具体的な業績などを提出するよう大学
側に文書で求めており、大学は準備作業で大変だ」と追
及。遠山氏は「提出は各大学の判断」と答弁したが、桜
井氏は「納得できない」と質問を中断、審議が空転して
いた。                      

 与野党折衝で、遠山氏が答弁ミスを認めることで折り
合いが付き、遠山氏は「すべての大学に(文書の)提出
を依頼していた。答弁を訂正し、おわびする」と陳謝。
大学側の準備作業についても「過度の負担を招き遺憾」
と述べた。 

 ところが再開後の質疑で桜井氏が「法人化で研究の自
由が奪われる」と指摘すると、遠山氏は「これまで十分
議論し、そういうことはないと再三お答えした」と強調。
「(桜井氏は)途中から、突然委員になったので…(知
らないのではないか)」とも指摘した。

 これに対して大野つや子同委員長が「不穏当な発言が
あった」と注意。遠山氏は「取り消させていただく」と
え再び陳謝せざるを得なかった。」


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[4] 6/26 57国立大学222名から参議院議員への要請書
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#(以下を提出後も賛同があった)

                                  2003年6月26日(木)
参議院文教科学委員 のみなさま
Cc: 国会議員のみなさま

本日(6月26日)の文教科学委員会で国立大学等法人
化関連諸法案の強行採決の可能性もあると聞き、わたく
したち国立大学教官有志(56国立大学190名)は審
議を尽すことを求める共同要請書を緊急に提出すること
に致しました。どうぞ、党派的立場を超えて、参議院の
存在意義を広く再認識させるべく、理を尽くして審議し、
欠陥を内包したまま法案が成立することを看過しないよ
うお願いいたします。


5月12日に国立大学教員有志は国立大学協会に対し共
同意見書を提出し、臨時総会を開催し、国立大学法人関
連法案についての意見を社会に向け表明することを求め
ました。国立大学を代表して国立大学協会が率直な見解
を表明することは、国会審議において議員の方々が適切
な判断を下すのに不可欠と考えたからです。しかし、臨
時総会は開催されず、6月10日と11日に開催された
定期総会でも、法案は議題として取りあげられませんで
した。これは、国立大学協会が国立大学を代表する責務
を放棄したものですが、それは、法案についての意思の
統一が国立大学協会にはできないことを明かにしたもの
です。

実際、学長も含め国立大学関係者からの法案への批判意
見はすでに夥しい数になっているのに対し、法案への賛
成意見を公にした国立大学関係者は、数名の学長にとど
まっています。しかも、賛成意見といっても、内容は法
案への危惧が大きな部分を占めています。こういったこ
とは、この法案による法人化によって国立大学が機能不
全に陥るという危惧を、多数の国立大学関係者が抱いて
いることを示唆します(添付した共同通信のアンケート
結果参照)。その危惧の表出を阻んでいるのは、文部科
学省が国立大学に対して持つ広汎で強力な影響力への虞
れであり、それが法人化後はさらに強化されることへの
虞れです。この虞れが杞憂ではないことが明かになった
ことが国会で審議が止まり会期内に法案が成立しなかっ
た主な原因であることはご存知の通りです。

国会審議で明かにされた諸問題を払拭するように法案を
変えることは、到底、一ヶ月でできるような単純な作業
ではありません。そもそも、問題点を修正で解消できる
かどうかすら不明です。与党の方も、日本の将来を本当
に憂慮されるのであれば、官僚支配体制をさらに強化さ
せることが判明した法案を強行採決するようなことは思
い留まられますよう、お願い致します。


  最後に、法案が廃案となった後に、国立大学の改革を
進める際に不可欠な条件を二点指摘しておきたいと思い
ます。4年間の歳月をかけて学長・有識者・官僚の方々
が独立行政法人化を検討してきた「成果」がこのような
欠陥法案であった原因の一つは、その過程において教育
と研究の当事者が実質的に関与できなかったことにあり
ます。今後、大学を真に活性化させる改革を実現しよう
とするならば、同じ過ちを繰り返さないために以下の二
条件が最低限必要です。

【自発的意見尊重】新制度が現実に有効に機能するため
には、その策定過程において各大学の見解が十分に反映
されること。そしてこのためには、各大学の見解は各大
学の自主的自発的な意見表明のみを通じて諮られること。
  説明:国立大学協会に関する経験が教えるのは、多く
の国立大学が組織としてその見解を国民の代表に伝えよ
うとすると、各大学の自主的、自発的見解が抑圧される
という結果を生むということでした。こうした事態は新
制度を各大学から疎遠にし、その有効な実現を妨げるも
のですので、厳に避けるべきです。

【準備期間】新制度が作成された場合、各大学が新制度
に移行する手続きと期間に十分配慮すること。
  説明:法人法に関する今回の苦い経験が教えるのは、
中央の行政機関が各大学の条件と能力を無視して一方的
かつ一律に期間を決め、すべての大学に無差別に期限内
の準備完了を強いるなら、新制度への移行作業が苛酷で
無駄が多くしかも内容のないものとなる、ということで
した。こうした非合理的事態を避けるために、新制度の
法的な確立から各大学におけるその実施までに十分な準
備期間を設定し、準備が整った大学から順次新制度に移
行するようにしなければなりません。


これまでの国会審議で明らかにされた諸問題を解決する
ために、超党派で審議を尽し、参議院議員としての責務
を全うされますことを要請します。

署名(略)

#(以下の57国立大学より教員222名が署名)

お茶の水女子大学、愛知教育大学、一橋大学、茨城大学、
岡山大学、岩手大学、岐阜大学、京都教育大学、京都工
芸繊維大学、京都大学、金沢大学、九州工業大学、九州
大学、熊本大学、群馬大学、広島大学、弘前大学、高知
大学、佐賀大学、埼玉大学、山形大学、山口大学、山梨
大学、滋賀大学、鹿児島大学、小樽商科大学、信州大学、
新潟大学、神戸商船大学、神戸大学、静岡大学、千葉大
学、大阪大学、大分大学、筑波大学、長岡技術科学大学、
長崎大学、鳥取大学、電気通信大学、東京外国語大学、
東京学芸大学、東京工業大学、東京大学、東京農工大学、
東北大学、徳島大学、奈良教育大学、奈良女子大学、富
山大学、豊橋技術科学大学、北海道教育大学、北海道大
学、名古屋工業大学、名古屋大学、鳴門教育大学、琉球
大学、和歌山大学
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[5] 6/18 岐阜大学地域科学部教授会声明
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国立大学法人法案にかんする参議院での徹底審議を求めます

              2003年6月18日
            岐阜大学地域科学部教授会

わが国の学術研究と高等教育にとって多大の影響をもつ
「国立大学法人法」案は、衆議院での審議に続き、現在
参議院で審議中でありますが、私たちにとって看過でき
ない重要な問題が少なからず明らかになり、改めて多く
の国民の関心を呼ぶところとなっています。

昨年春に文科省の「国立大学等の独立行政法人化に関す
る調査検討会議」の最終報告である「新しい『国立大学
法人』像について」が公表された折、私たちは、数点に
わたる危惧を表明し、関係諸機関に慎重な対応をお願い
いたしました(別添資料参照)。国立大学の多くの教授
会などから同様の危惧や疑念が表明されたことも周知の
とおりです。

しかし、本年2月に国会に上程され、5月に衆議院を通
過した「国立大学法人法」案は、残念ながら、先の最終
報告に対して示された大学関係者の疑念をはらすもので
はなく、かえってそれ以上に大学の教育・研究に混乱を
もたらしかねない問題を含むことが明らかになってきま
した。衆議院文科委員会が法案採択にあたって採択した
「付帯決議」がかなりの論点にわたってその運用におけ
る留意事項に言及していること自体、すでに法案に深刻
な問題点が孕まれていることを現わしているといえない
でしょうか。

法案自体の問題もさることながら、例示的にあげるだけ
でも、(1)「法人化」への移行を前提とした個別大学に
おける対応は複雑かつ混乱を極め、必要な財政措置もな
いままに経常の教育研究費へのしわ寄せをもたらし、
(2)評価システムが重複し、評価基準が不明瞭であり、
「中期目標・中期計画」への国の関与や時の政策的判断
により学問の自由が影響を受けることがないのかという
疑念が残り、(3)さらには評価結果が個別大学への資源
配分にどのように反映するのかも明らかにされず、(3)
労働安全衛生法や労働基準法の適用対象となることにと
もなう現場での混乱が深刻化し、(4)非公務員化にとも
なう教職員の身分保障の不安定化への危惧が払拭されず、
(5)大学ごとの膨大な負債が公表されながら責任ある対
応策が明らかにされないなどの問題があるなか、現在各
大学は法案成立以前から、苦慮しながら、その対応に追
われているのが実情です。法人化準備のための必要な財
政的手当がなされないままに経常予算から捻出される財
政負担はふくれあがり、膨大な法人化移行の準備の仕事
を前にして、教員の研究・教育時間を削っての対応や事
系職員の長時間労働は、その肉体的精神的負担ばかり
か、学生指導などにもきわめて深刻な事態ももたらすに
至っています。

法案成立後において「必要な対応をする」ということに
なれば、それは「走りながら手をうつ」「試行錯誤でや
る」ということになります。わが国の大学と高等教育の
根幹にかかわる重大な問題がそうした手法で措置される
とすれば、教育・研究の現場での混乱は予想すらできな
いほどの深刻なものとならざるをえません。それは、学
術研究はもとより、学生にとっても、地域社会にとって
も、取り返しのつかない深刻な結果をもたらすことにな
ります。「拙速主義」は、これを厳に戒めなければ、必
ずや後に禍根を残すことになります。

私たちは、大学において教育・研究に携わり、その活動
を通じて社会に寄与することを本務としています。その
現場において、現在と将来にわたって責任を果たしてい
かなければなりません。関係諸機関にあっては、こうし
た立場からの私たちの苦慮や危惧をご理解いただき、こ
の法案にたいして慎重かつ責任ある対応をお願いするも
のです。
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[6] 6/26 東京新聞 「法人化で数百人天下り  国立大「役員」に官僚出身者」
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 交付金や業績評価 国との調整役に

 大学側構想

 国立大学などを国の行政機関から離す来春の独立法人
化に伴い、各大学に新設される役員ポストに、文部科学
省などの官僚出身者が多数選任される見込みであること
が二十五日、大学関係者らの話で分かった。国からの予
算獲得などをめぐる大学間競争に備えるためで、こうし
た「天下り」は全国で数百人規模に上るとみられる。法
人化は大学の自主性を高めるとされるが、経営の管理や
立案能力に乏しい大学が、官主導の運営に陥る懸念も広
がっている。(=関連29面)

 法人化後は、学長と学長が任命した理事、文科相が任
命した監事が役員となって、民間の経営手法を取り入れ
ながら大学経営を主導する。

 役員数は大学の規模などによって異なるが、一大学に
つき四−九人。今秋の統合後の八十七大学・二短大で、
計五百三人が予定されている。

 大学関係者らによるとこの役員ポストに文部科学、総
務、財務など各省庁の官僚出身者を迎える構想がある。
予算として配分される運営交付金の配分や、業績評価な
どを握る国との調整役として、転換期の”即戦力”とす
るためだ。法人化法案はまだ参議院で審議中だが、既に
「いい人材がほしい」と大学側から打診を受けている省
もある。

 例えば、国立大学のモデル校といわれる筑波大の場合、
役員数は最大の九人だが、全員、副学長の兼務ではなく
学外者を予定している。「このうち数人は、マネジメン
トや財務などにたけた官僚出身者が見込まれている」
(同大関係者)という。

 複数の大学では経営力アップのため、文科省から出向
中の大学事務局長を、理事(役員)に「格上げ」する案
も浮上しているという。

*****

(29面)

 官主導 揺らぐ自主性

 大学は「パイプ」求め

 国立大法人 天下り問題 『転換期、仕方ない』

 国立大学法人化を前に明らかになった、官僚出身者の
役員ポストへの大量「天下り構想」。霞が関のある省の
幹部は「既に大学側からの派遣要請が来ている」と認め
た。法人化後は業績評価と予算配分が連動し、大学の経
営能力が問われる。「失敗すればスクラップもあり得る」
という不安と危機感が、天下り先を求める官側の思惑と
一致し、国との”パイプ”を求める動きにつながってい
る。大学の自主性と独立性を揺るがしかねない構想にも、
大学関係者からは「転換期を乗り切るには仕方ない」と

 一方、官の側。ある省の担当者は「私たちだってばか
ではない。世論の批判がある中で、簡単に天下りができ
るとは考えていない」と言う。

 しかし、別の省の幹部は「法人化で失敗すれば、大学
経営陣の責任追及もあり得る。官僚出身者を役員に迎え
ることを天下りとみるかどうか、評価は分かれると思う
が、要請があれば、大学側が求める人材を派遣すること
につながるだろう」と、中央省庁が人材供給源になるの
は必然、との見方を示す。

 絡み合う大学と官の思惑。こうして官主導のレールが
敷かれていけば、大学改革をうたった法人化のあるべき
姿をゆがめることになりかねない。」
----------------------------------------------------------------------


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[7] 新藤宗幸著「行政指導−−官庁と業界のあいだ」
岩波新書 218(1992年) ISBN 4-00-430218-8
http://ac-net.org/common-sense/gyouseishidou.html
----------------------------------------------------------------------a

行政指導の伝達方法

ロ頭による行政指導

ところで、こうした文書による行政指導は、いずれも、
口頭による行政指導と密接不可分の関係にあるといわな
くてはならない。さきにふれたような、きわめて不定型
な口頭による行政指導とは別に、一応、定型化されてい
ると考えられる口頭による行政指導が存在する。業界全
体にたいする勧告であれ、個別の事業著にたいするそれ
であれ、行政指導は、通達ないし勧告文書一片を、伝達
するものではない。行政指導が、官僚制によって法的措
置を直ちに強制されるものでないということは、そこに、
官僚割と相手とのあいだに、話し合いがもたれているこ
とを意味している。実際、業界全体を対象としたなんら
かの行為の基準を示した通達が、業界団体と事前の話し
合いなく伝達されることなどないといってよい。


文書に付随する「事前審査」

また、許認可の申請のさいには、その認可の基準は文書
によって示されているが、申請してきた相手にたいして、
「事前審査」と称する口頭による行政指導が、繰り返さ
れている。これには、きわめて多くの事例があげられる
だろう。大学の新設、学部や学科の増設にさいしての事
前審査もそのひとつの具体例であるが、さきに一端をふ
れた銀行の出店調整もこの重要な一例である。この場合
には事前審査が繰り返され、「内認可」を受けた銀行の
みが、最終的申請をすることになっている。出店希望地
点が重複しているときに、一行のみをどのように選定す
るか、他行をいかに納得させるかについて、ある大蔵省
銀行局○Bは、「各行が獲得できる市場の価値が合計し
て大体同じになるように、いわば平均値になるように、
パランスをとって配分することである」と述べるが、こ
れを裏返せは、この事前審査において次年度以降の出店
が、口頭によって約束されるとみることができよう。文
書による許可基準の通達といった行政指導は、口頭によ
る行政指導と一体不可分であるといえるだろう。



p120 補助金

・・・行政指導の実効性を担保しているのは、補助金で
ある。たとえば、いわゆる減反政策(水田利用再編成政
策)は、作付け割り当て割度と買入れ予約限度数量の設
定という「制裁的」指導と、他方での転作奨励金制度と
目標未達成量加算制度という「ボーナス制度」から構成
されている。...

同様のことは、自治省がおこなってきた自治体職員の給
与の引き下げ指導や定員の抑制指導についてもいえる。
これは、減反政策のように、はじめから指導の効果をあ
げるためのアメとムチを明示したものではない。あくま
で形式的には、自治権を保障されたもうひとつの政府へ
の「お願い」である。こうした行政指導が実効性をあげ
たのは、自治省が交付の裁量的権限をもっている地方交
付税交付金の特別交付税枠が、アメとムチの両用の機能
を発揮してきたからである。つまり、農業補助金の交付
審査の場合と同様に、給与の引き下げや定員抑制の努力
の程度が、特別交付税の交付にさいしての非公式な基準
に加えられたのである。」


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