通信ログ
[kd 03-07-08-ex] 明日の本会議で採決: 電子デモ用アドレス
Date: Tue, 08 Jul 2003 19:47:33 +0900

国公私立大学通信 2003.7.8 号外

与党3党の賛成多数で、国立大学法人法案等が文教科学
委員会で可決され、明日の本会議で採決されます[1]。

23項目の付帯決議が全会一致で決議されましたーー
「官僚のみなさん、大学を自由に扱えるようにしてあげ
ましたから、少しは大学を大事に扱ってあげてください
ね、お願いしますよ。」という内容です。これは、教育
法学会有志が参議院に警告[2]したことを完全に無視し
たものになっています:

  「法案の欠点あるいはそれに対する強い疑念は、立法
  府による法案の修正によってこそ除去されるべきもの
  です。・・・付帯決議が長文または詳細であればある
  ほど、法それ自体の持つ深刻な欠陥を立法府が認識し
  ていながら、それを放置したことを意味し、立法府に
  よる自らの責任の放棄に他ならないと考えます。」

付帯決議は、濫用がほぼ確実に予想される23もの事項
があることを知りながら法案を修正しようとしなかった
立法府専門委員会としての本来の使命の放棄を、文教科
学委員会自らが後世に向けて証言したものとなっていま
す。

          □ □ □ □ □ □ □ □ □

しかし、23項目の付帯決議は、法案に23箇所もの重
大な問題があることを期せずして専門委員会が全会一致
で証言したものとも言えます。過半数を少し越えただけ
の「可決」という政治的判断より、付帯決議の率直な判
断を尊重し、本会議では全会一致で法案を否決すること
が、良識の府である参議院の自然な結論だと思います。
それが「23項目付帯決議」の唯一の利用価値です。

そういう臨機応変なボトムアップな判断ができるよう機
動性と良識が参議院にあれば日本は随分良くなることで
しょう。歴史に残る亡国国会の中で、大手紙が「報道す
る紙面がなかった」というほど些細な幕間ですが、そこ
から風が吹くことはないのでしょうか。

          □ □ □ □ □ □ □ □ □

明日の本会議に向けて議員に伝えたい思いやメッセージ
があれば、以下の臨時アドレスをご利用ください。明日
の本会議まで使用可能です。なお、小泉首相など、アド
レスを公開していない議員は含まれていません。直接、
ホームページの投書欄を利用してください。

  全国会議員706名宛:708-giin@ac-net.org
  自民党議員284名宛:708-jimin@ac-net.org 
  民主党議員169名宛:708-dpj@ac-net.org 
  小泉首相:http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

これらは、全議員データベース
  http://www.jca.apc.org/~teru-iri/giin
から抽出したものです。どなたでも簡単に作れます。

公開される方は、Cc欄に kd@ac-net.org としてください。
(編集人)

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[1]共同通信  2003年(平成15年) 7月 8日 16:33
国立大法人法案を可決 自主性重視で委員会決議
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=IBR&PG=STORY&NGID=main&NWID=2003070801000318
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 国立大学を国の直轄から切り離す国立大学
法人法案など関連6法案は、8日午後の参院
文教科学委員会で、与党3党の賛成多数によ
り可決された。6法案は9日午後の参院本会
議で可決、成立の見通し。

 来年4月には89の国立大法人が誕生。5
5の国立高等専門学校は1つの独立行政法人
に統合される。

 同委員会は付帯決議で、大学の自主性を重
んじるとともに、運営交付金の算定根拠など
を公表することなどを求めた。

 法案は、学長のトップダウンによる学校運
営を目指し、役員会や経営協議会、教育研究
評議会の3つの組織を新設。経営協議会には
学外の有識者を半数以上入れることを求めた。

 予算の基本となる運営交付金は、文科省に
設置する「国立大学法人評価委員会」が中期
目標をどの程度達成したのかを評価し、反映
させる。

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[2] 6/09 日本教育法学会会員有志声明の会、要望(6月9日)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030614kyouikugakai.html
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国立大学法人法案審議についての要望

 私たちは、現在、参議院文教委員会で審議されている「国立大学法人法案お
よび関連五法案」は、今後の日本の行方を決定づけるきわめて重要な法案であ
り、国会での慎重かつ徹底的な審議を必要としていると考えます。もしも、こ
こで審議を尽くさずに性急に法案を通過させてしまうようなことがあれば、こ
の先、数十年間にわたって日本の高等教育に大きな禍根を残すことになりかね
ませんし、ひいては日本の未来を大きく損ねる事態となりかねません。

 私たちは、教育法学の専門的立場から、今回の国立大学法人法案に対して重
大な疑義を抱いています。何よりも日本国憲法第23条および教育基本法第1
0条に抵触しているという点に、本法案の最大の法的問題点があると考え、先
日、声明「国立大学法人法案は、明らかに憲法23条及び教育基本法10条に
抵触する−同法案の廃案を訴える−」(全文は下記に掲載)を公表するととも
に、文部科学省内記者クラブで会見を行いました。

 この二ヶ月あまりの間に、国会で本法案に関する多くの論議が行われました。
私たちは衆参両院の委員のみなさまに、心より敬意を表するものであります。
しかし、この法案には、上記以外にも幾つもの重要な問題点が含まれていると
考えています。

 第一に、教育研究の内容への教育行政機関の関与をめぐる問題です。国会答
弁で、遠山敦子文科相は「学問研究の内容についてはその特性を配慮する」と
繰り返し述べておられますが、その法的根拠は条文の中には見当たりません。
「配慮する」というのならば、もとより文部科学大臣が中期目標を策定すると
いう行為そのものの是非が論じられるべきですし、文科大臣が果たす役割につ
いて教育基本法十条二項に抵触することのないよう条文に明記することが必要
です。

 第二は、大学に対する国の財政責任を明確にする問題です。学校教育法第5
条に定められた設置者経費負担主義の原則から言えば、大学設置主体を変更す
ることによって、国は財政負担責任を放棄しようとしていると解釈されかねま
せん。

 第三は、大学運営のあり方をめぐる問題です。本法案における学長選考方法・
学内運営体制(教育研究評議会・役員会・経営協議会)の規定は、いくつもの
非民主的かつ不公正な運営規定が見られます。例えば、現学長が次期学長の選
考(自らが再選される場合でさえも)に大きな権限をもつことや、教授会の権限
を定めた学校教育法の趣旨はどう生かされるのか、などの点について論議が必
要です。

 第四は、教職員身分の非公務員化にともなう問題です。労働基準法・労働安
全衛生法の適用を受けることになった場合、その運用の仕方だけではなく、法
制度上の整合性についての論議がなされなくてはなりません。

 第五に、本法案と現行教育法体制との関係をめぐる問題です。先に申し述べ
たように、日本国憲法・教育基本法の規定と国立大学法人法案とは正面から矛
盾する内容を含んでいるといわざるを得ません。日本国憲法との関連性につい
ては言及されていますが、教育基本法その他の教育法規との整合性について、
国会内での明確な論議はなされていません。

 第六は、関連五法案についてです。国会内では、国立大学法人法案に審議が
集中し、関連法案についてはほとんど議論がなされておりません。

 以上の点をふまえて、次のことを要望いたします。

一、国立大学法人法案について逐条審議を行い、危惧される問題点について明
確に疑念が解決されるまで徹底して論議を行うこと

一、国立大学法人法案に関連する五法案についても、同様の審議を行うこと

 なお、伝え聞くところでは、衆議院文部科学委員会が決議した本法案の付帯
決議よりも長文かつ詳細な付帯決議が準備されているとのことですが、この付
帯決議は、本法案の意味を限定することにより、憲法23条および教育基本法10 
条と本法案との整合性について提出されている重大な疑念を払拭することを目
的としているものと思われます。

 しかし、付帯決議による法文の意味の限定という行為は、国民代表によって
構成された国会が定める「法律」によって行政府の活動を拘束する、「法の支
配」という民主主義の基本原理との矛盾を指摘せざるを得ません。

 付帯決議によって法律の欠陥を修正しようとしても、現実には、付帯決議に
よって加えられた修正は、法律ではないがゆえに、法の執行の段階で考慮され
ることなく、修正としての意味を持たない場合が多いのです(そのような例の
典型として任期制法をあげることができます)。付帯決議によって国民代表の
意思が法律の執行段階で反映されると考えるのは幻想です。

 法案の欠点あるいはそれに対する強い疑念は、立法府による法案の修正によっ
てこそ除去されるべきものです。そして、付帯決議が短文であればあるほど、
微修正で済むことを知りながらそれを立法府が施さなかったことを意味し、そ
れは立法府の怠慢の自己証明に他なりません。また、付帯決議が長文または詳
細であればあるほど、法それ自体の持つ深刻な欠陥を立法府が認識していなが
ら、それを放置したことを意味し、立法府による自らの責任の放棄に他ならな
いと考えます。
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