有事法制三法案に反対する日本の数学者の声明

2002年6月10日

「私たちは有事法制整備の第一歩として今国会に上程されている「武力攻撃事 態対処関連三法案」に強く反対します。それは日本が憲法で表明している平和 国家への決意を覆すものであると共に、アメリカの言う「正義の戦争」に日本 が協力する体制を整え、日本の人々の自由と安全を脅かす現実的危険性を孕む ものだからです。
  小泉首相は「備えあれば憂いなし」と言います。しかし何に対する「備え」 でしょうか。既に昨年来、自衛隊はインド洋で米軍の「後方支援」を分担して います。このままでは、アメリカの政策に明言されている「悪の枢軸」への軍 事行動などにも日本が全面的に協力することになりそうです。そのときまでに、 自治体や民間業者を動員でき、市民の自由と基本的諸権利を制限できる体制を 整えることを、日米両政府が強く望んでいることが推測されます。
  この「三法案」では「日本への武力攻撃が予測される」と政府が判断するだ けで、このような体制を発動できるようになっています。しかも「有事」にお いて権力の濫用をコントロールする具体的内容はなく、逆に命令に従わない人々 への罰則を盛り込み、社会的に排除することを狙っています。
  私たちはこのような戦争に加担する道ではなく、アジア・太平洋の人々との 友好関係を築き上げる努力を通して平和を創造するべきだと考えます。武力は 戦争を防がず戦争を招く、という歴史的事実は、憲法第9条の理念こそ21世紀 において平和への道を切り開くものであることを示しています。その理念を捨 て、他国への不信感を国策の基盤に据える有事法制三法案を一市民として、ま た国境を持たない数学に携わる一人として、決して認めることは出来ません。」
  呼びかけ人・賛同者232名(数学関係者221名、他分野研究者8名、その他3名) 
呼びかけ人:赤荻 進一 (都立戸山高)  安藤 豊 (東京水産大名誉教授)  伊神 幸雄 (数教協東京)  一楽 重雄 (横浜市立大)  弥永 昌吉 (東大名誉教授)  上野 喜三雄 (早稲田大)  上野 正 (東大名誉教授)  江口 正義 (東京商船大)  遠藤 幹彦 (元立教大)  大久保 紀晴 (三省堂)  大谷 公人 (数教協長野)  大森 和子(数教協石川)  岡田 正巳 (都立大)  岡部 恒治 (埼玉大)  小野山 卓爾 (元魚津短大学長)  笠原 乾吉 (元津田塾大)  亀井 哲治郎 (日本評論社)  岸本 量夫 (信州大名誉教授)  銀林 浩 (明治大名誉教授)  久保 泉 (広島大)  倉坪 茂彦 (弘前大)  郡 敏昭 (早稲田大)  小島 順 (早稲田大)  小田切 忠人(琉球大)  小寺 隆幸 (数教協東京)  小宮山 晴夫 (岩手大)  斎藤 恭司 (京大)  榊 忠男 (数教協神奈川)  佐藤 健一 (名大名誉教授)  佐藤 定夫 (東京電機大)  佐藤 文広 (立教大)  佐分利 豊 (千葉短大)  塩沢 宏夫 (数教協)  志賀 徳造 (東工大)  柴田 勝征 (福岡大)  渋谷 政昭 (高千穂大)  島田 信夫 (京大名誉教授)  清水 義之 (早稲田大)  白岩 謙一 (名大名誉教授)  新海 寛 (信州大名誉教授)  鈴木 俊夫 (山梨大)  砂田 利一 (東北大)  砂賀 嘉治 (数教協神奈川)  瀬山 士郎 (群馬大)  高橋 鋼一 (数教協東京)  竹内 茂 (岐阜大)  田中 茂 (津田塾大)  玉川 安騎男 (京大数理解析研究所)  塚田 和美 (お茶の水女子大)  辻下 徹 (北大)  土谷 正明 (金沢大)  長岡 一昭 (津田塾大)  永島 孝 (一橋大名誉教授)  中村 郁 (北大)  中村 憲 (都立大)  中村 潤 (数教協青森)  中村 強 (木更津高専名誉教授)  浪川 幸彦 (名大)  西岡 国雄 (都立大)  西山 豊 (大阪経済大)  野崎 昭弘 (大妻女子大)  野田 隆三郎 (岡山大名誉教授)  長谷川 浩司 (東北大)  馬場 良和 (静岡大名誉教授)  広中 由美子 (早稲田大)  福富 節男 (元東京農工大)  藤崎 正敏 (神戸商科大)  増島 高敬 (数教協東京)  松井 幹夫 (数教協東京)  松本 幸夫 (東大)  松本 眞 (広島大)  丸山 哲郎 (静岡大学名誉教授)  三上 敏夫 (北大)  三井 斌友 (名大)  宮下 正實 (数教協長野)  本尾 実 (東工大名誉教授)  森 真 (日大)  谷口 彰男 (日大)  柳原 二郎 (千葉大名誉教授)  山崎 昇 (元福島大)  山田 俊雄 (立命館大)  吉田 克明 (日大)  渡辺 毅 (岡山理大)