個人情報保護法案の諸問題
To: shonen-k@npa.go.jp
From: TSUJISHITA Toru
Date: Tue, 21 Jan 2003 00:24:45 +0900
平成15年1月20日
「いわゆる「出会い系サイト」の法的規制の在り方について(中間検討案)に対す
る意見」
少年有害環境対策研究会 殿
検討されている問題は、青少年の健全な育成という観点で重要なものと思いま
すが、インターネット規制拡大への引き金となる可能性もありますので、慎重
な検討が必要と思います。
この点に関連して、判断に必要な統計資料が不足している点、と、ユネスコの
IC(コミュニケーション情報)部門「情報社会における表現の自由」シンポ
ジウムの最終報告(2002.12.19)の提言との関係について、述べたいと思います。
(1) 統計資料の不足
中間検討案には、出会い系サイトに関連する犯罪の統計が詳細な記載がありま
すすが、全犯罪数の中で、出会い系サイトが原因となっているものの割合が提
示されていません。そのため、憲法で保障されている「表現の自由」を部分的
に制限するほどの危険性が出会い系サイトにあるかどうか、量的判断ができな
いように思います。
例えば、警察庁の犯罪統計(http://www.npa.go.jp/toukei/keiji2/1-11.pdf)
によれば、
強姦犯罪 平成13年1月〜11月2039件、 平成14年1月〜11月:2174件
強制猥褻犯罪 平成13年1月〜11月8671件、 平成14年1月〜11月:8699件
となっていますが、この中間報告案によれば、出会い系サイトが原因の数は
強姦犯罪 平成13年上半期 20件、 平成14年上半期: 23件
強制猥褻犯罪 平成13年上半期 3件、 平成14年上半期: 7件
となっており、いずれも、現段階では「微少」な割合です。「児童買春・児童
ポルノ法違反」については、全体の統計が見つけられなかったので比較できま
せん。
また、当該世代で携帯電話を所持している率が提示されていませんが、かなり
高いと推定されます(2000年12月のアンケート調査
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/keitai.htm ですでに過半数)。
青少年の大半がアクセスできるにもかかわらず「出会い系サイト」が原因の犯
罪の割合が微少であることは、「出会い系サイト」が、憲法の「表現の自由」
権を制限する必要があるほどの危険性を持っていないことを示しているように
思われます。
研究会では種々の統計を詳しく検討されておられるのかも知れませんが、イン
ターネット規制を要するほど「出会い系サイト」が危険なものかどうか、国民
が適切に判断するのに必要な基礎的統計資料を提示することが必要ではないで
しょうか。
(2) ユネスコのIC(コミュニケーション情報)部門「情報社会における表現
の自由」シンポジウム(Paris, France, 15-16/11/2002)最終報告(2002.12.19)
http://portal.unesco.org/ci/ev.php?URL_ID=6869&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201&reload=1040396276
この文書では、インターネットを特別視する危険性を強調しています。結論の
一部に以下のように書かれています:
「主たる結論
「私達は、インターネットを魔的なものと見る誘惑に負けてはいけない。イ
ンター ネット上での犯罪は(ハッカーによる攻撃を別にすれば)特に目新
しいものではない。それは、社会生活にはつきものの諸挙動を反映したもの
でしかなく、従来のメディアでも見いだせるものである。したがって、私達
はインターネットを、その現実の欠陥や潜在的欠陥に着目するだけでなく、
民主主義の道具として見る必要がある。
犯罪が(テロ行為、ポルノ、人種差別攻撃等の)重大なものであるときに、
それを口実にして、社会全体の保護と道徳的規範の尊重という大義名分の下
で、内容の検閲がしばしば行なわれる。すべての関係者に、このような心配
な成行きに警戒するよう忠告されるべきである。インターネット上の表現の
自由は、危機と争いの時代には、他のどの時代にも増して重要なのであ
る。・・・」 (意見提出者による訳)
「青少年の健全育成」は社会全体の重要な関心事ですが、「インターネット規
制」は「社会規制」そのものとなる、という視点も不可欠と思います。どうぞ、
そういう視点からの議論も十分行った上で、適切な処置を提案して頂きたいと
思います。
(以上)