2003.5.9 

  国立大学法人法案の賛否を問うac.jp ドメイン全体投票の目的

                  国立大学レファレンダム準備会
             rfr@ac-net.org

  国会で審議中の国立大学法人法案は、日本の大学の使命を根底から変更するも
のです。この全体電子投票の目的は、当事者である国立大学および大学共同利用
機関の全構成員(教官・事務官・技官・非常勤職員・院生・学生)に、法案によ
る「大学改革」を吟味し、判断結果を表明する機会を提供するところにあります。

  しかし、この法案が成立した場合に、その影響は日本の高等教育と学術研究の
全体に及ぶことも予想されますので、教学セクター全体が当事者であるという考
えも成りたちます。そこで、教学セクターに属する人の大半が、ac.jp ドメイン
の電子アドレスを持つことに着目し、第二期の投票権をac.jp ドメインの電子住
所を持つ人に拡大することにしました。なお、第一期投票の継続という面も重視
し、国立大学と共同利用機関についての集計も続けます。

  この法案による大学改革の核心は、第二次世界大戦後、時々の政権と産業界の
強い影響力から国立大学をある程度は守ってきた法律群と財政基盤を廃し、時々
の政権と産業界の要請に従順に従う存在に国立大学を「改革」することにありま
す。この改革に続き公立大学の独立行政法人化も予定されており、さらには、有
馬元文相が新聞のインタビューで言及したように「私立大学の独立行政法人化」
も補助金増額等の見かえりに要求される可能性も否定できません。国立大学法人
法により高等教育と学術研究が行政の管理下に置かれ、その普遍性と公共性が抑
圧されることになれば、将来の日本が受ける災厄は相当なものとなることが予測
されます。

  しかし、教育研究に従事する者の中には、独立行政法人化により国立大学がサ
バイバル競争に曝されて勝組は企業のように逞しくなり、さらに産業界から資金
を得て研究と教育の機能を活性化させ国際競争力を増す、と主張する人たちも居
ます。国立大学法人制度は本当に大学を活性化できるのか。理事会によるトップ
ダウンな経営により大学が本当に活性化するのか。成果主義を導入で教育や研究
の質が本当に高まるのか。その判断を適切に行なうのに必要な経験と知見を教学
に日常関係する者が多く持っていることを否定する人は少いと思います。ところ
が、法案の是非について学セクター自身の判断が問われたことはありません。高
等教育や学術研究は、それに携わる人々の自律的活動なしには成りたちません。
教学関係者の意向をほとんど無視して、財界や経営者の意向を一方的に取り入れ
て、大学を外から強制的に変えること自身が大学の活性を著しく損なう懸念があ
ります。

  個人から組織まで、すべてをサバイバル的競争に曝す国立大学法人制度への
移行の可能性が高まっている現在、率直な意見表明がためらわれる状況に国立
大学構成員の大半が置かれています。この全体投票の主旨は、その状況下で、
国立大学の全構成員が法案をどのように評価しているかを確認するところにあ
ります。

  一方、国立大学の国立大学法人化は私学化のことだと誤解し、何が問題なのか、
といぶかる方が私立大学の中には少なくないようです。この投票をきっかけに、
法案についての種々の誤解に気づかれる方を少しでも増やすことも、第二期の
ac.jp ドメイン全体投票の重要な目的としました。

  この電子投票では、投票者に確認番号発行を電子メールで送付し、その番号を
用いて投票して頂きます。電子住所は復号化できない暗号化の後に記録しますの
で、データがたとえ流出しても、投票者の匿名性は完全に保たれます。

  投票結果は、国会議員に送付し報道発表する予定です。学生や事務の方も含む
教学関係者がどのように法案を判断しているかを、国会議員に、そして日本社会
に伝えることにより、国会審議において議論が深まり、真の大学改革につながる
結果が得られることを願っています。           (文責 辻下 徹)