「立命館大学キャンパスに関する将来構想」に対する国際関係学部の意見 2010.9.13



                     2010年9月 6日 国際関係学部執行部会議
                     2010年9月 7日 国際関係学部教学政策委員会
                     2010年9月 7日 国際関係学部教授会
                     2010年9月13日 国際関係学部執行部会議

1 これほど重大な案件をこれほど短時間で決定することは手続的正義の観点からみて問題が多すぎる。

新中期計画の議論がここまで進行した段階で、突然、新キャンパス構想が提起された。もっと早い段階でこの問題を全学に提起できなかったのであろうか。新中期計画のこれまでの議論はいったい何であったのだろうか。全学的な議論が始まるまえに、一部の学部が新キャンパスに関する議論を開始するのは、手続的にきわめて問題がある。また、どういう経緯か不明であるが、まだまだ議論の途中である新キャンパス問題が、新聞の報道するところとなった。さらに、総合企画室名で出された「『キャンパス創造』に関する補足説明について」という文書は、常任理事会の審議を経ずに出されたものであり、手続的に問題があり、加えて情報に評価が加えられており内容的にも問題を含んでいる。キャンパス問題は、教学問題でありガバナンス問題である。立命館大学の今後の数十年に影響する問題であり、丁寧に手続的公正を実現しつつ全学の合意形成をめざすべきである。

2 中長期的にみて衣笠キャンパスにおけるスペースの確保、施設の維持が困難であることは「将来構想」文書と見解を共有している。しかし、それを克服するための方法を粘り強く追求すべきではないか。

衣笠キャンパスの狭隘性を克服すべく、15年前にBKCへの展開をはかったが、わずか15年でふたたび狭隘化するにいたった。過去15年間、衣笠キャンパス、BKC、さらに朱雀キャンパスで、学部および研究科の新設が休みなく続き、教育と研究の質的向上の実現が不十分であったことは否定できないだろう。教育と研究の質的向上のために、学生および院生の適正な規模について、またそれを支える教職員の勤務条件について吟味が必要ではないだろうか。

第一に、大阪・北摂地域に新キャンパスを展開して4キャンパスになった場合、分散された4キャンパスを適切に運営していくことの困難さは容易に想像できる。学部横断的なプログラムを運営することの困難、学生の課外活動における困難等がある。また、現在でもすでに職員の勤務実態は厳しいものがあるが、4キャンパスを実現し、維持していく場合の教職員の負担はあまりにも大きい。

第二に、関西で最大となった立命館大学の学生規模について再検討すべきであろう。今後予想される18歳人口の減少を見通したとき、学生規模の縮小は合理的な選択肢の1つであろう。現在の学生規模を維持するだけでも、18歳人口の減少後、入学者の学力低下が予想される。学生規模縮小には長期的な周到なプランが必要であるが、教育と研究の質的向上のためには、むしろこの方向性を追求すべきではないだろうか。

3 「グローバル化時代における新しい社会のあり方を構想するための立命館らしい社会科学の構築、国際教養や文化の創造」という新キャンパスのコンセプトは、国際関係学部およびAPU と競合する可能性がある。

経営学部と政策科学部が新キャンパスに関する議論をしているようであるが、新キャンパスのコンセプトが上述のようなものであるとすると、衣笠キャンパスの国際関係学部、APUとの違いが不明確になり、立命館学園の中で適切な役割分担が実現できず、対外的にあまり効果的でないと思われる。また、キャンパスのコンセプトは学部の教学理念と無関係に議論されるべきではないだろう。

4 立命館大学は、BKCを持っているとはいえ、京都を基盤とする大学である。

大阪・北摂地域にキャンパスを持つことのメリットもあるだろうが、そのメリットとデメリットを慎重に比較考量すべきである。

5 新キャンパス構想にともなう財政の見通しが不明であり、これでは決断できない。

新キャンパス用地の獲得、校舎の建設等の諸経費、それにキャンパスを維持していく諸経費が不明である。このような状態で選択をすることはできない。

以上のような理由から、国際関係学部は現在提案されている新キャンパス構想に反対である。

以上