理事ならびに関係各位へ 「茨木キャンパス問題」(その2) 2010年9日7日(初稿) 2010年9月16日(補正) 元総長・理事長室室長 鈴木 元(転載者註:公開されていない情報については個人名は転載時に伏せ字にしました)
私が7月23・27日の両日にわたって常任理事ならびに関係各位に「茨木キャンパス問題は拙速に決めるべきではない」(以下、「7月文書」)と進言して以降、いくつかのことが起こり判明しました。そのことについての私の意見を申し上げます。
(注)私は9月7日に常任理事をはじめとする学内関係者に「茨木キャンパス問題」(その2)を送付しました。その直後に総合企画部から補足文書が配布されました(なお、この補足文書に関しては9月13日付で修正文が配布されている)。また茨木市長が8月26日に各会派の幹事に行った説明ならびに9月定例議会での答弁が手に入りました。そこでこれらをもとに9月7日文書に多少の補正を行いました。
(その3)にしなかったのは(その2)の基本点を変更する必要がなかったこと。また学外理事の皆さんに学内と別の文書を渡すことにはしたくなかったからです。
なお、この(その2)文書は、(その1)を基本前提した文書で重複を避けています。基本はあくまでも(その1)で展開したことです。そこで提起したことの中心点は以下に二点です。
すなわち①衣笠キャンパスが狭隘であり、かつ存心館や清心館が老朽化しており建て直す必要があることは学園関係者の一致した意見であり、必要な土地の確保を含めて計画的に推進する必要がある。②そのことと、立命館大学を「各12000名規模に3分割し」茨木市に第三キャンパスを設置すると言うことは全く別のことである。それを夏期休暇を挟んで9月末集約、10月契約というのはあまりにも拙速であり無理がある。総長選挙後に、じっくりと総合的に検討すべきである。
8月27日28日のマスコミ各紙に「立命館茨木に進出」の旨の報道がありました。それと関連して8月27日付で、立命館のホームページでの告知、ならび西川総務部長の談話が出されました。これらのコメントでは「検討中であり決定したものではない」と記されています。
私を含めて、マスコミの記事を普通に読んだ人は、茨木キャンパスが既定事実かのような印象を受ける報道であり、かつ肯定的記事であると受け止められる文書でした。提案者の人々が、この報道を「遺憾」と思っているならマスコミに抗議したことを公にすべきである。
総合企画部の補足説明文書(以下、「補足説明文書」)を読んでみても「まだ決まっていないことである」とのやりとりはしている様子は記載されているが、報道そのものについて撤回を含めて社会的に抗議した気配はない。
なお広報担当部長である今村部長が学内に流したコメントによると「京都新聞が特別委員会の報告書を熟読し・・」「学内重要文書が学外に漏れている」と記しているが、記事の内容から言えば批判派よりは推進派の人が渡した可能性が高いと推察される。
ところで西川部長名の談話は27日の3時前に発信されており、夕刊が発売される時間と、談話をまとめる時間を考慮すると、あらかじめゲラを入手していなければできない作業である。
「補足説明文書」によると、京都新聞記者が予定原稿を書きあげた上で、「8月27日の昼前に突然」(時間的には夕刊の締め切り前後)やってきたと記載されている。しかし報道された記事には後でも指摘するように「山の内は狭いので茨木にした」「BKCで医学系分野の展開・・」など立命館関係者があらかじめコミットしていなければ書けない内容が記されている。27日の昼前以前にも立命館の関係者が接触している可能性が高い。
マスコミ報道にかかわっての事実経過は明らかにするべきだろう。
マスコミ報道がなされた前日の8月26日、茨木市において市長が各会派の幹事を集めて説明をしている。その内容について茨木市会とかかわってのホームページにおいて、市長の説明ならびに9月定例議会での答弁が掲載されている。その内容の詳細は省くが、黙過できない諸点がある。
①立命館から3学部10000名規模での移転が行われ、経済効果は1000億円。(注)、議員とのやりとりの中で、この「1000億円」は撤回された。
②茨木市として、立命館がサッポロビールから購入した12ヘクタールのうち、A、茨木市がJRの駅前に近い方の2ヘクタールを買い取り、防災公園として整備する。B、別に市として1ヘクタールを買い取り、学生と市民の両方が使える施設を建設する。
A、Bのいずれも鑑定士による評価額で購入する。駅に近い方を購入するので立命館が購入した平均価格より高いものになると予測される。
③敷地内のJR線沿いに道路を整備する。
以上の内③については「7月文書」でも、大型開発に伴う当然のことであると記したので省略し、ここでは①と②について触れておく。
②のA、Bは、常任理事会などで提案者が口頭説明してきた「茨木市による立命館への支援」として紹介された内容とは異なるものである。
②とかかわっての議員との質疑の中で市長は「130億円の支出とか、どこからその情報を得ているか分からないが、そんな支出は考えていない」と答弁している。
(注1)常任理事会において提案者は口頭説明で「茨木市において立命館の移転に対して総額131億円の支援を検討していただいていると報告している。
(注2)それに対して、私は、「7月文書」で、提案者の報告している内容は、自治体の窓口担当者が約束できるものではないこと。進入路の整備であるとか、防災施設は、立命館に対する支援ではなく、大型開発に伴い市として行わなければならないものである。また府と国の認可で補助金が付くものであり、市議会での予算承認が必要であることを指摘した。市長の説明と答弁は「提案者の茨木市からの支援に関する報告は不正確であるだろう」との私の指摘が正しかったことを証明している。
①の「3学部10000名規模の移転」は、学内で言われている(まだ正式に合意はされていない)経営学部と政策科学部が移転を希望しているという内容と異なる。
提案者は、立命館の誰がどのような権限で「3学部10000の移転」と言ったのか。明らかにする義務がある。
「7月文書」でも述べたことであるが、提案者は、茨木市と、誰が、何時、どのような権限で、何を、茨木市に提案し、どこまで合意し、約束をしているのかを文書で開示する必要がある。
地方自治体は住民の自治組織であり、直接選挙で選ばれた市長はその政策を実行しようとした場合、住民代表である議員によって構成されている地方議会で条例、予算の可決なしに新しい政策を実行することはできない。したがって基本的にすべての情報を公開した上で、審議されるのである。立命館側で情報を意図的に隠して事を運ぼうとしてもできないのである。
学校法人は寄付ならびに学費によって成り立ち、今日ではさらに私学助成も重要な財源としている公的な非営利の組織である。したがって法的には理事会が最終決議機関であるが、過去、現在、未来にかかわる財産の取得・支出は構成員の合意の下に進めなければならない。長田理事長を含め、いかなる人物も理事会にも諮らず「3学部10000名の移転」など、どこでも決めていない事を前提のもとに交渉する権限などは無い。この責任は極めて重大である。
前回にも記したが、今まで立命館が自治体と協力してことを進めた場合、そのつど文書で現況を報告している。なぜ今回は行わないのか。
私はサッポロビールのホームページから土壌汚染問題を見つけ皆さんにお知らせしたが、これについても常任理事会やサマーレビューに提出された書類では全く触れられてこなかった。
「7月文書」での私の土壌汚染問題の指摘を無視していたが、9月6日ならびに9 月13日に配信された総合企画部の補足文書において、初めて土壌汚染の事実を認める報告書を提出した。しかし「公表されていることであるが」と記し、さらに常任理事会での指摘にたいして提案者は「済んでいることであり、あえて報告しなければならないこととは考えていなかった」としている。
このようなやり方は疑心暗鬼を招くだけである。茨木市との関係を含めて情報の速やかな開示が求められる。
8月25日のマスコミ報道によると、京都市は山の内浄水場跡地を大学用の敷地として12月に公募することを決めたとされている。もともと衣笠キャンパス狭隘の克服対象として第一候補になるのではないかとしていた土地である。
当時(2009年秋)、この問題で立命館側の予備折衝の窓口となっていたのは****部付部長と**常務であった。しかし両名からは「めどが立たない」との報告があり、その直後に両名から茨木のサッポロビール工場跡地購入が長田理事長に進言された。
山の内浄水場は衣笠キャンパスと朱雀キャンパスの中間にあり、朱雀キャンパスにあるロースクール、公共政策大学院へは地下鉄東西線で一駅である。したがって政策科学部や法学部のキャンパスとして使えば、京都ブランドは保持され、かつ衣笠キャンパス狭隘問題も解決でき、朱雀との連携も便利になり、同志社の今出川キャンパスとも大阪からの通学時間がほぼ同じ条件となる。
したがって改めてここを有力候補の一つとして追求すべきであろう。もちろん競争入札であるから絶対に購入できるものではないが、対象外にするべきものではない。
ところで奇異なことは、昨年の秋の時点では「山の内はめどが立たない」つまり「不可能である」との理由で別の場所として急遽、茨木のサッポロビール工場跡地が提起されたのであるが、今回の新聞報道によると大学側からのコメントと思われる内容として「山の内は狭いので茨木にした」という趣旨の記事になっている。
この立命館大学がマスコミに行った説明だと、京都市から山の内浄水場跡地の公募があっても応じないことになる。
山の内浄水場は4,6ヘクタールあり、衣笠キャンパスの狭隘さを克服するには十分な面積である。しかも大学の利用も考慮して高さ、容積率、建蔽率も緩和するとしている。なにをもって「狭い」というのか。提案者は明確に説明する義務がある。
結局、茨木キャンパスは衣笠キャンパスの狭隘克服が主たる目的ではなく、どこでも議論したことがない第三キャンパスの設置が自己目的化していることになる。そのために12000名とか経営学部とかという事が出ているのである。
今回配布された「補足文書」を含め新キャンパスの提案者達が作成した文書を読むと「茨木」と「山の内」の比較表を掲載し、総合的に検討するなら「茨木」を採用せざるを得ないとの結論付を行っている。
この比較表の最大の問題点は、立命館を三分割する第三キャンパスの適地としての比較表であって、衣笠キャンパス狭隘克服のための校地としての検討をするためのものではないことである。
そもそも現時点でキャンパス問題を検討するとすれば、その出発点は衣笠キャンパスの狭隘さをどのようにして克服するかである。
第三キャンパスなどは「新中期計画検討委員会」のどこでも議論されてこなかった。もしもそれを論議するなら私の「7月文書」ならびに、他の多くの人々が述べているように、立命館の戦略的展望の検討の上で総合的に検討すべきであって、そんなことを9月末集約、10月契約などできることではない。
「7月文書」と重複するが、そもそも学園のアイディティティーの形成、教学の一体化、課外活動、事務体制、効率的な管理運営とランニングコストなどを考えれば、ひとつのキャンパスが一番良い。だからこそ立命館は1970年代に広小路キャンパスをやめ衣笠へ一拠点化を図ったのである。しかし科学技術の発展に見合う理工系、自立できる規模の理工系をめざすためには、当時の国土法や文部省の抑制事項による制限ために郊外に出ていかざるを得なかったのである。
その際に滋賀県並びに草津市から65ヘクタールに及ぶ校地の無償譲渡を受けたのである。しかし二拠点に伴う様々な問題に直面していることは、各部門の現場で関係者が日々経験していることである。二拠点より三拠点の方が、さらに問題を多く抱えることは明瞭である。したがって三拠点などということは、その問題点を明確にした上で、対策も含めて総合的に慎重に検討すべきであると申し上げているのである。
衣笠キャンパスの狭隘を克服するためには、たとえ「山の内」がダメでも京都市内でしかるべき土地があれば、そこを確保し推進するのも一つの選択である。茨木に第三キャンパスを確保するというのは、衣笠キャンパスの狭隘克服と別の次元の話であり、別途おちついて総合的に検討すべきことである。
「京都市内に適当な土地が無いが、どうしても存心館や清心館の建て替えを急ぐというなら、第一体育館の後に 存心館、存心館の後に清心館というやり方で建て替えをしながら、しかるべき土地が確保できれば、そこに政策科学部などを建設するというのも検討すべきやり方である。いずれにしても茨木ありきで、ことを急ぐ必要はない。
ところで提案者は常任理事会などで「山の内は競争入札になるので値段も上がる可能性がある」と言っている。それでは茨木は競争入札にはならないのか。茨木について「競争相手が出てきたので10月をタイムリミットにして契約しなければならない」と言っているのは誰か。提案者ではないか。
現在、複数の学校が山の内浄水場を移転先の候補地としていることが京都市に意思表明されている。
別途であるが、龍谷大学は瀬田キャンパスの国際文化学部を深草キャンパスへの移転を推進しようとしている。すでに発表されているように同志社の文系はすべて今出川キャンパスを中心として京都市内に移転させることになっている。また最近、報道された所によると府立大学と府立医科大学、それに京都工業繊維大学が、府立大学の敷地において教養課程を合同で展開し、府立大学農場を公開的敷地して展開する構想を打ち出している。いずれにしても各大学は「京都ブランド」を生かそうとしとているのである。
なお学園は深草にある立命館中・高等学校を長岡京市に移転しようとしているが、提案者達は深草キャンパスを龍谷大学に売却することを提案している。
先にも述べたように経営学部を移転しなければならないなら「経済学部もと言うことになる。3学部の移転ともなると少なくとも700―800億円の経費になると推察され、現在積み立てている三号基金のほぼ全額に等しい額となる。そのようなことが現在の立命館が急いで巨額の資金を投じてやらなければならないことではないのではないかと申し上げたのである。
ところで政策科学部そして経営学部さらに第3の学部を移転して12000名のキャンパスとした場合、グランドはどうするのか。現在の構想では正課授業に必要な最小限度のものを設置するとされている。学園を3分割するのにスポーツ系の課外活動はすべて衣笠とBKCへ移動して行うというのか。
衣笠キャンパスはキャンパス内だけであれば12ヘクタールであるが、近隣に原谷グランド、柊野グランドがあり野球場やサッカー場、ホッケー場、馬場などが整備されており、BKCの陸上競技場やアメリカンフットボール、ラクビーのグランドと併せて運用されている。
しかし茨木にはそのようなものは設けず、キャンパスを3分割するのか。それとも後になって新たにグランドとなる敷地を別途購入し建設するというのか。同じ問題は学生会館や図書館にも当てはまる。杜撰な計画による無駄遣いと不効率もはなはだしい。これでは、立命館の「積立金1000億円をゼネコンの食い物にする建設優先の学園運営になるのではないか。
今やらなければならない重点は、謙虚に立命館の教育・研究の現状分析を行い、その打開策をたて、それに必要な範囲で年次計画的に必要な新たな校地の確保と清心館、存心館などの建て替え等を進めることである。
そもそも「第三キャンパス」問題のような大きな計画を論議・検討するなら、今年の秋に行われる総長選挙の後で新総長の下で、じっくりと全学の叡智を結集して行うべきであろう。そうでなければ拙速による誤りを犯す危険だけではなく総長選挙をめぐって「移転賛成か反対がということが争点になってしまい、学内に無用な混乱と不団結を残すことになる。
私は「7月文書で滋賀県や草津市また京都市の関係をどのように考えているのかという問題提起を行ったが、なんの解明もない。経営学部が移転すれば4000名さらに経済学部まで移転すれば8000名の学生減となるのである。滋賀県と草津市から整備費を含め65ヘクタールのキャンパスの無償譲渡をしていただき、さらに多くの県・市会議員は県や市としての対応だけではなく、学生用マンション建設・確保にも協力していただいた。これらの人々に対して何と説明し了解を取るのか。さらに現在立命館は学生数の増大の下、滋賀県ならびに草津市の協力も得てJR南草津駅に「快速」を止めてもらう要請運動を行っている。自治体まで巻き込んでの「快速」停車運動はなんだったのかという厳しい批判を受ける危険がある。
提案者達は、学内に無用な混乱を持ち込むだけではなく、協力していただいた滋賀県ならびに草津市からも信頼を失うようなことを、あえて、なぜ急いでやろうとするのか明らかにする義務がある。
また先に記したが7月27日28日のマスコミ報道には「BKCにおいて医学系教学の展開」という言葉が記されている。「3学部10000名の移転」と同じで、立命館のどこでも決まっていない医学系ということを、誰がどのような権限でマスコミにコミットしたのか提案者達は明らかにする義務がある。
なお同志社の文系の今出川キャンパスへの統合は、今出川が学部、教養は田辺という2分割で教育を行ってきたので、学生たちが入学時に下宿を確保する場合、3回生になった時に下宿移動をしなくても済むように、大半の学生は伏見より南に下宿していないので学生アパートをめぐる問題は起こらないと想定される。それに対して立命館の場合は、BKC在学の学生の半数近くが草津市近辺に下宿しており、社会問題になる可能性があると言っているのである。
ところで茨木キャンパス問題が突然浮上する前に、私は立命館が6月1日からゼネコン4社(竹中工務店、鹿島建設、熊谷組、戸田建設)から各1 の出向社員を受け入れていることを発見し、やめるべきであると文書で進言しました(6月28・29日、7月4日)。
非営利法人である学校法人が、立命館の建設工事請負対象となる営利企業であるゼネコン4社から1年単位で出向社員を受け入れると言うことは、立命館の情報が筒抜けになるという点で、また4社による談合の温床になる危険があり、やめておくべきであると申し上げた。
しかもこれらの決定が、常任理事会はおろか常務会でも報告審議されず、**常務と**部長による長田理事長への説得、財務部の稟議で長田理事長の決済だけで実行されたという異常な運営が行われた。これでは問題が生じた時は、理事会をはじめとするいかなる機関も責任を負えず、長田理事長と**常務だけが責任を取らざるを得なくなるので、今からでも止めるべきであると進言しました。
常任理事会ならびに部次長会議において、私の進言ともかかわって**常務から報告があり「法的には問題がない」とか「他でも行われていることである」と説明された。しかし学部長理事ならびに部次長の間からは反対や批判、疑問は出たが、誰ひとりとして賛成するのが無く、提案者の方から「改めて整理して報告しますと言ったきりで、今に至るもなんの報告もされていない。
ところで衣笠の第二体育館は竹中工務店が落札した。またBKCのスポーツ健康科学部も竹中工務店が請負工事した。そして今回、問題になっているサッポロビール茨木工場跡地を**部長・**常務を通じて持ち込んだのも竹中工務店である。茨木キャンパスが実施された場合は、竹中工務店を中心に先のゼネコン四社が分け合う危険がある。
いずれにしても様々な問題点、究明すべきことが多すぎる茨木キャンパス問題については秋の総長選挙を経て、新総長の下で仕切り直しをしてじっくりと検討すべきである。
なお急ぐ理由として「競争相手が出来たので10月がタイムリミットである」と説明されているが、立命館にとってはまず「今、急いで何百億円もかけて茨木に第3キャンパスを設ける」ことの是非について検討することが先決である。
その事の合意もないままに、やみくもに購入することは間違いである。設置する必要がなければ競争相手にもならない。「とりあえず土地の購入だけでも」などという金額でもなければ「大学移転」ということで茨木市を巻き込んでおいて「土地だけでも購入」ということにはならない。
ところで誰が「購入する」と申し入れているのか。私が業界筋を調査した限りでは12ヘクタールもの土地、しかもつい最近まで土壌汚染の除去を行っていた土地を購入し、大規模な開発を予定している業者は掌握できなかった。
常任理事会での口頭報告では学校法人が開発会社と組んで学校を建設し、それにより土地の付加価値を上げて宅地開発をするなどとされている。しかし茨木駅前の大規模開発で「10月がタイムリミット」という切迫した話にもかかわらず、そのような話は現在のところ茨木市においてもマスコミにおいても全く掌握されていない。「ある」と言うなら、責任を持って開示し、議論に耐えられるようにすべきである。
いずれにしても今回の話は、立命館大学の将来を決めるような大規模な提案にもかかわらず、あまりにも情報開示が少なすぎる。これらは提案者の責任に属する問題であることを警告しておかざるを得ない。
私は、先の「七月文書」において立命館高校の長岡京移転計画(土地代は別にして校舎の建設費だけで新たに最低80-90億円が必要)の財政的展望を明らかにすべきであるとしました。そうでないと他の附属校を含めて、あとになって「そんなことは聞いていない」とか「附属校にそこまでお金をつぎ込む必要があるのか」と揉めますよと申し上げた。
さらに長岡京移転構想が持ち上がった時点で私が進言していたことが二つある。それは予定されている土地は、現行の深草より面積が狭いので「後になって、校地が足りなのでグランド用地を購入したいなどと言いませんね」と質したが、担当者などからは「たしかに深草より狭いですが、有効面積は長岡京の方が広いので、そのような心配はありません」と言うことであった。このことも明確に確認しておく必要がある。もう一つは、現在、一貫教育部で小・中・高の12 年間教育を4:4:4で行うという教学体系が検討されている。導入する場合、現在の北大路にある立命館小学校と長岡京に移転する立命館中・高等学校の間で「小学校の4年、5年、中学校の1年、2年はどこでどのように教育するのか」も明確にしておく必要がある。後になって「立命館小学校の移転」などと言いださないことをはっきりさせておく必要がある。
さらに、その後判明したところによると「慶祥高校対策委員会(仮称)において学園首脳部の一部から「現在の場所では生徒が集まらない」として「札幌市内のしかるべきところに移転すべきである」との意見が出されている。これは100億円以上かかる事業である。
政策科学部もそうである、慶祥高校についても偏差値、意欲性ともに高い生徒を、高い倍率で受け入れていた。まず何よりも、それが後退したことを分析し対策をたてるべきである。それを場所の問題にし、設置後わずか十数年で移設するなどの構想が社会的に明らかになれば「立命館は他にすることがないのか、よほどお金の使い道に困っているのか」と世間の笑い物になるだけである。
さいごに
前回も述べたことで蒸し返したくないが、政策に絶対的真理はなく相対的選択である。しかしそのさい重要なことは、一般的な必要性だけではなく、財源、投資効果、限られた資源の相対的重点化が必要である。
理事会は先人から預かった財産を適切に管理・運営し次の世代に引き継いでいく義務を負っている。今日までなんら問題にもなっていなかった経営学部の移転を含めて何百億円も投資し、3号基本金を使い果たし、教学、課外、管理運営、ランニングコストなど多岐にわたった問題を含む茨木への第三キャンパス設置については、将来に禍根を残さないように、多面的に慎重に検討し可否を決定する義務がある。
ましてや慶祥高校の移転のために今、急いで100億円を超える出費など行う必要はない。立命館高校の長岡京移転についての財政的展望も明確にする必要がある。
理事会は、決して特定の学部や学校の利害得失だけで判断するのではなく、立命館全体の将来に責任を負う立場で決定する必要がある。 以上
鈴木元 現在、日本ジャーナリスト協会会員、日本ペンクラブ会員 中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授 日本モンゴル政治経済懇話会理事 鈴木元のメール shagime@mtf.biglobe.ne.jp