法学部意見

新中期計画 特別委員会報告「立命館大学キャンパスに関する将来構想」(7 月23 日)、「『キャンパス創造』に関する補足説明について」(9 月13 日)及び「新中期計画特別委員会検討報告」(9 月22 日)に対する法学部・法務研究科の意見集約

2010 年9 月28 日 法学部長 二宮 周平

1 結論

新キャンパスに関する判断を10 月の時点で行うべきではない。

2 理由

1)①現在、2020 年までの新中期計画を検討中であり、立命館学園のグランドデザインの未確定な段階で判断するのは時期尚早であること(新たなキャンパス展開の下で新たな教学展開の構想を図るというのではなく、構想があって初めて新キャンパスの取得が課題になるのが筋であり、議論が逆転している)、②10 月下旬に総長選挙を控えている現在、400 億円と試算される大規模な投資の判断をするのは不適切であること(選挙で選ばれた新体制の下で判断すべき)、③学内の意見集約を求めた以上、その動向を踏まえるべきであり、学内に亀裂をもたらすような判断をすれば、2009 年度以降明確になってきた常任理事会の「信頼回復」の方向が支持基盤を失うおそれがあること、による。

2)また9 月22 日文書で示されたシミュレーションに対して、重大な疑問が多数指摘された。①2020 年段階で財政的に可能との結論が示されているが、2020 年以降の社会及び教育を取り巻く情勢について慎重に検討する必要があり、例えば、ST比のさらなる改善、BKCキャンパスの改修なども視野に入れると、新たな負担増が生じる可能性があるのだから、それをも含んだ試算をすべきであること、②財政について、基本金組入が2020 年で17 億円にとどまること、新キャンパス取得経費400 億円の積算根拠が示されていないこと、資金収支の試算において、教育管理経費支出がゼロシーリングとなっており、教学展開を視野に入れるとき、増額の見通しが立てられないこと自体が問題であること、③シミュレーションをする場合には、前提条件、例えば、受験者数が6 万人台になった場合や学生定員が充足できなかった場合など、いくつかのケースを立てた上で検討すべきであるのに、結局、新キャンパス判断に都合の良いシミュレーションしか提示されていないこと、④キャンパス整備のシミュレーションにおいて、衣笠キャンパスの狭隘化を解消するためには、12,000 人規模にする必要があると指摘しながら(7 月23 日文書)、9 月22 日文書では、新キャンパス8,000~9,000 人の規模と提示されており、これでは狭隘化は解消しないこと、そうであれば、費用対効果の点で問題があること、などである。

3)さらに北摂地域の新キャンパスに対しても、重大な疑問が多数指摘された。①交通の便や通学距離の拡大などが主として指摘されているが、交通騒音の大きさ、最寄り駅からキャンパスへのアクセス(通学通路)の狭隘さ、周辺の環境(高架高速道路等)など、大学の教育環境(便宜、安全、快適等)として適切かどうかの検討が具体的になされていないこと(学部長理事等が実地検分したかどうか疑問)、②新キャンパスの取得に当たって、いかに基礎学力のある受験生を吸引するかの視点から、学部の特性や立地条件を検討する戦略的なプランが具体的に示されていないこと(入試動向の希望的観測が記述されるにとどまる)、立命館大学が京都にあることの意義が点検されていないこと、③9 月22 日文書では、北摂地域の自治体のことが記述されているが、BKCでは滋賀県・草津市など地元からの支援を受けて、教学展開、キャンパス展開をしてきたのであり、こうした地元への対応を、まず検討すべきであること、④多キャンパス化によって、立命館大学のアイデンティティ、一体性が損なわれるおそれがあることに対して具体的な解決の方向性が提起されていないこと、外国語教育、教養教育、事務体制、管理運営体制などについて具体的な提起がなく、現在の2キャンパスの下で生じている問題点が共有されていないように思われること、などである。以上