新キャンパス取得問題に関する国際関係学部の緊急決議

                 2010年10月4日 国際関係学部執行部会議
                 2010年10月5日 国際関係学部教授会

新キャンパス取得問題に関する国際関係学部の緊急決議

国際関係学部はすでに、9月7日の教授会において「立命館大学キャンパスに関 する将来構想」に対する意見集約をおこなった。その内容は、次の5点にまとめ られる。

  1. 全学討議のための時間が短すぎること。
  2. 大阪北摂地域の新キャンパス展開以外の方法も、粘り強く追及すべきこと。
  3. 新キャンパスのコンセプトを、衣笠の国際関係学部やAPUと競合しないように設定すべきこと。
  4. 立命館大学が京都を基盤としていることを十分考慮すべきこと。
  5. 新キャンパスにかかわる財政見通しがいまだ不明であること。

以上から、国際関係学部教授会は、この時点で提案されている新キャンパス構想に反対であるとの結論に達した。

その後、学園執行部は、常任理事会および新中期計画特別委員会で議論を重ね、去る10月3日には土曜日にもかかわらず常任理事会懇談会を開催して、財政問題を集中的に議論した。これをふまえて、明日6日の常任理事会(通常)あるいは8日の常任理事会(臨時)で大阪北摂地域の新キャンパス取得を議決し、22日一般理事会で最終決定する予定であるという。このような切迫した状況のもとで、国際関係学部は、再び次のような見解を表明するものである。

(1)財政問題の残された論点

財政問題においてもなお、いくつかの疑問が解消されていない。施設・設備の減価償却に必要な引当金を50%しか積まない前提のもとで、将来集中的に発生する設備更新がはたして円滑におこなえるのか。400億円と見積もられている新キャンパス整備費用が、もし大幅に膨らんだ場合のシミュレーションがおこなわれていないのはなぜか。2020年以降の18歳人口減少に対する備えは十分か。これからようやく全学討議にかけられ、具体化・豊富化されようとしている新中期計画に必要とされる費用と齟齬をきたすことは、本当にないのか。「研究・教育の質的充実」に必要とされる費用が過少に見積もられていることはないのか。以上のような主要な論点に関してみても、全学が深く納得するだけの情報の提示と、それを用いた説明がなされているようには思えない。

(2)グランド・デザインの欠如

9月22日の教職員組合との総長懇談会の席上で総長より明らかにされたように、新キャンパスおよび既存キャンパスで新たに展開される教学のグランド・デザインや具体的コンセプトの構想が、最初から放棄されている。これでは、学園執行部がどのように言い繕おうと、「まずキャンパス取得ありき」との疑念を強めざるをえない。2009年度における立命館学園の総収入(資金収支ベース)は約1100億円である(帰属収入でみれば約760億円)。これに対して、新キャンパス整備(RU大阪北摂+立命館中高長岡京移転)510億円、既存キャンパス整備(衣笠+BKC)500億円である。総収入(資金収支ベース)に匹敵し、帰属収入を大幅に上回る巨額の投資であるにもかかわらず、その投資効果――すなわち、どのような新しい学園が創造されるか――を検討することもなく用地取得に動くことは、投資計画としての合理性を欠いていると言わざるを得ない。

(3)狭隘化問題と新キャンパス

当初このキャンパス問題は、衣笠キャンパスの狭隘化問題を解消する切り札として提起され、その限りで全学の強い支持を得られる可能性を持つものであった。ところが、議論の早い段階でBKCから特定学部の移転が唱えられ、衣笠キャンパスの狭隘化解消とは別次元の意味を持つものとなった。グランド・デザインの議論がこれまでまったくおこなわれなかったのと同様に、このような新しい意味付けに関して全学で議論がおこなわれたことはこれまで全くなかったし、ましてや何らかの合意が形成されたというような事実はない。

まだまだ多くの論点が残されているが、以上の3点に限ってみても、学園執行部の設定するタイム・スケジュールでこのような重要問題に有意義な決着をつけることは、常識的に不可能であるといわざるを得ない。また、総長選挙が10月31日に予定されているもとで、このような重大な決定を急ぐべきではない。国際関係学部教授会としては、事態の緊急性に鑑み、新キャンパス取得問題に関して学園執行部が性急な判断を下すことなく、さらに一層の全学討議を継続することを要請し、ここに決議するものである。

以上