私が、総長候補者に推薦されてから、次の総長に求められる要件について熟考いたしました。まずは、立命館憲章に盛り込まれた理念に基づき、R2020計画の具体的施策と実行におけるリーダーシップの発揮、そして何よりも、「教学優先」の立場を貫ける強い意志と「全構成員自治」に基づくバランスのとれた実行力を持つ人物が、最も次の総長に相応しいと再認識いたしました。
また、総合学園・立命館として、交友・父母を含めた全体の一体感を醸成できる人望ある人物が求められています。同時に、国内外の機関、大学との対外的な交流、交渉において、的確な判断ができ、社会環境に対する鋭敏な感覚とバランスを持った思考を有していることが、今後の学園を代表する総長に求められます。
このような総長像に対し、私の現在の心境を述べておきたいと思います。私は現在副総長を務めておりますが、学園在籍は短く、また2006年に一度退職し数年間学園中枢から離れていました。役職として学園に復帰後数ヶ月の私には、学園の歴史やこれまでの取り組みに明るくなく、本学に課せられた諸課題を遂行する能力は、残念ながら持ち合わせていないというのが率直な思いです。私を推薦していただいた教職員の皆様に対し大変失礼な発言かも知れませんが、正直なこの気持ちを察していただければと思います。
以上が、総長候補者としての私の基本的スタンスですが、この場を借りて日ごろ私が感じていることを2,3述べたいと思います。
まず、立命館は一学園にとどまらず、その一挙手一投足は、全国の教育研究機関が注目しているという社会的な影響を十分に考慮することが大切です。従って、「教学優先」の立場を貫くことはもちろんのこと、研究面においても、また大学の大きな使命のひとつである社会的貢献・地域貢献にも積極的に関与することが大切であると考えます。
次に、いま新キャンパスについて議論が進められていますが、ここで是々非々を述べるのは差し控えたいと思います。その理由は、総長候補者がこの新キャンパス取得の賛成派と反対派とに別れ、その部分が大きくグローズアップされた選挙は適切ではないと考えるからであります。全構成員による新キャンパス展開の議論は高く評価でき、その過程で不明な点も多々指摘され検討が行われています。しかし「全員の合意」は、これだけ大きな組織では事実上不可能であり、どこかの時点で決断しなければならないと考えています。結果として意にそぐわない結論が出ても、学園の一体性は保持され、学園の活性化を減じる要因となってはいけないと考えます。
さらに学園はいま、学園は2つの環境要因から未曾有の危機にさらされていると思います。ひとつは、外的環境です。昨年、自民党から民主党へ政権交代しましたが、より一層の国民目線、政策の可視化が問われています。そういった点から私学助成も今後社会貢献できる大学か否かが大きな判断材料となり、私学にとってますます厳しい時代となるでしょう。
次に内的環境ですが、学園執行部と教職員の間の「信頼回復」の問題です。双方が努力していることは理解していますが、双方がいつまでも不信感を抱いていることは、学園の発展・将来にとって大きなマイナスになります。まず、この課題について双方が歩み寄り、全力を挙げて民主的な対話により解決する必要があると強く認識しています。
教育研究機関で、相互不信や組織の対立が発生したとき、一番の被害者は学生であることを忘れてはいけないと思います。
最後に、私がお約束できるのは、現常任理事会において設定している、前出課題を含む様々な諸課題を引き続き、丁寧かつ着実に進めていけるよう、私の任務を遂行していくことです。
以上、拙い内容ですが、私の所信表明とさせて頂きます。