今次の総長選挙は、立命館で学び活動するみなさんと、私たちの拠り所や未来について語り合えるこのうえない機会であると考えています。
最も困難な時期を乗り越え、私たち立命館には今、ようやく前に向かって進むべきときがきました。
1. 総長職の二つの役割
私は総長には大きく言って二つの役割があると考えています。
第一に、学生・院生・生徒・児童、教職員といった学生構成員、父母、交友等学園を支援くださる方々の願いや要求をしっかりと理解し、その実現の先頭に立つことです。総合学園となった立命館においては、願いや要求も多様であり、総長にはそれらを自ら理解するにとどまらず、それぞれがお互いを理解しあい、立命館としてのアイデンティティを持つことを進める役割が求められます。
第二に、総長は学園を代表して、国内外の政治、行政、産業界、マスコミ等に対して、発言し、行動するという対外的な役割を有します。この役割にひとつは社会の動向、要請をいち早く把握して学園構成員に伝え、構成員の要求と結び、政策化と実現の筋道をつけていくという面です。そしてもうひとつは、学園の現状や発展方向を発信し、学生の成長、学園の発展につながる政策の実現を進め、立命館のプレゼンスを国内外で高めていくという面です。
2.この4年間を振り返って
私の総長就任は、大変厳しい環境の中であり、私の総長としての仕事はまず、学内の不信・不和を克服することから始まりました。みなさんと常任理事会の真摯な取り組みにより、学内の信頼回復は大きく前進していると考えています。今次の総長選挙がこうした取り組みの到達点として、学園をあげて進められていることを心よりうれしく思います。
しかし、道はまだ途上にあります。この間のありようについては、学生のみなさんからも厳しく指摘をいただいています。私は責任者としてこの4年間に学んだことを深く胸に刻み、学園創造に取り組んでいくことを決意しています。
こうした中でも、学園の教学は教職員、学生諸君の奮闘によりしっかりと前進してきました。新たな教学分野確立と前進、既存教学分野の改革の取り組み、開学10周年を機に改革を進めるAPU,一貫教育の前進、小学校の完成と高い社会的評価、3つのGCOEとR−GIROの展開など多くの前進がありました。とりわけ学生諸君の奮闘は目覚ましく、難関分野での全国的高水準の定着、スポーツ・学術・文化分野での国内外における活躍など、学園の構成員と全国の交友・父母を励ましてくれています。
もちろん、多くの課題も生じてきています。これまでにも私は、全学の意見を聞きながら改革を進めてきましたが、今、さらに、学生の声を正面から受け止め、学生の成長をなによりも大事にしながら前進しなければならないと考えています。
3.これからの立命館をどうつくっていくか
今、立命館は2020年を目標とする学園ビジョン、そして新中期計画を、多くの教職員の参加、そして学生の意見を聞きながら進めています。この新中期計画を策定し、その着実な実践の先頭に立つことが、新しい総長の最大の責務だと考えます。その上に、私はとりわけ、立命館学園が「学びのコミュニティ」として発展していくことを強く望み、また努力したいと考えています。
教育は世界的に、「教える」場から「学び」の場への転換が課題となっています。すでに立命館は「学習者主体」の教学改革に取り組んでいます。新中期計画の議論は「質の向上」と「ゆとりの創出」を軸に、それをさらに発展させるものです。学びのコミュニティの実現には、教学システムや教職員体制ばかりでなく、ラーニングコモンズなどの施設やキャンパス条件の整備が不可欠です。現在論議しているキャンパス創造はまさにその意味で実現を図っていかなければなりません。そして重要なことは、このコミュニティが世界に開かれた多様性に満ちたものでなければならない、ということです。変化の激しい時代だからこそ、多様性の中で鍛えられ、多様性の中から新しい道を見出すことのできる人間が育っていかなければなりません。
立命館学園の「学びのコミュニティ」としての発展は、必ず、全国の、さらには国際的な教育改革への大きな励ましとなるでしょう。全学の叡知を結集すれば、こうした未来を作り出すことができると私は信じています。
教職員のみなさん。私たちの目の前には、日々成長を遂げたくましく活躍する学生・院生・生徒・児童がいます。今、私たちがやるべきことはただひとつです。あらゆる改革を学生の成長と結び、学生の学ぶ意欲に応えるために、全学で一丸となって前進しなければなりません。
立命館で学び、活動する喜びを学生たちに実感してもらうこと。みなさんとともに未来をつくる先頭に立つことが、総長の最大の役割だえると私は考えています。