関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学。
関関同立、昔から関西でデッドヒートを繰り広げてきた4つの私立大学。
その熾烈な争いは少子化の波で激化する一方です。
大阪の受験生に聞いた、それぞれのイメージは・・・
<大阪の予備校に通う受験生(男子)>
「同志社はおぼっちゃん、立命館は遠いなあ」
<大阪の予備校に通う受験生(女子)>
「関大は賑やか、関学は神戸の方なんで、品があるというかオシャレな感じ、立命館は…うーん、京都… 京都…、うーん」
<大阪の予備校に通う受験生(男子)>
「同志社は華やか、立命館は特に思いつかないですね」
どうも立命館、大阪では印象が薄いようです。

さらに関西の私学は、今、キャンパスの都市回帰が進んでいます。
関西大学は去年、JR高槻駅前にキャンパスを新設、同志社大学も3年後に京都中心部の今出川に主な学部を集中させます。
これに対し、立命館が打ち出したのが…
<立命館大学 川口清史総長>
「立命館大学はこの度、大阪茨木市に新しいキャンパスを設置することを決定いたしました」
先月16日、立命館が大阪進出を発表したのです。
新たにキャンパスができるのは、JR茨木駅の南側にあるサッポロビールの工場跡地。

およそ12万平方メートルを、190億円で購入しました。
学生の増加でキャンパスが手狭になってきたため、京都の衣笠キャンパスと滋賀のびわこ・くさつキャンパスからいくつかの学部を移転し、5年後に1万人規模のキャンパスを作る構想です。
大学側ははじめから大阪進出ありきではないと言いますが、結果的に大阪の立地に期待は寄せているようです。
<立命館大学 川口清史総長>
「茨木市は非常に交通の便がいいということもありますので、近畿圏の学生諸君が志望する場合、非常に有利に働く」
実は関関同立の中で立命館大学は近畿出身の学生の割合が低く、同じく京都にある同志社大学とも差があります。
今後、茨木に拠点ができることで、大阪や兵庫からの志願者増加が見込めます。
では現役の立命大生は、大阪でのキャンパス展開をどう見ているのでしょうか。
<立命館大学びわこ 経済学部1回生(女子)>
「もっと早かったらよかったなと思って、(家が)大阪なんで」
<衣笠キャンパス 文学部3回生(男子)>
「すごくいい所にできたと思う。就活するにしても便利だと思うんで、大阪であるということで」
<衣笠キャンパス 文学部5回生(女子)>
「せっかく京都の大学来たいと言っていた人たちが、『大阪の立命館大学』になってしまうのは悲しいなと思います」
茨木市も、立命館大学のキャンパス誘致に積極的です。
立命館が買った土地の4分の1を市が買い取って公園を作ったり、道路を整備するなど実質60億円にのぼる支援を予定しています。
というのも—
(Q.どのくらいの額の経済効果が?)
<茨木市の会見>
「あのー… 非常に申し上げにくいんですけど… 約180億円、年間ですね」
年間180億円!

1万人の学生を呼び込むことで、大きな経済効果を見込んでいたのです。
ところが…
茨木市がそろばんをはじいている頃、一方で戦々恐々としている街がありました。
<マンション経営者>
「生活が成り立たないと思うんですね。どうしたらいいんだろうと」
立命館大学の大阪進出。
大学と茨木市は意気揚々です。

地元、茨木の人たちも—
<茨木市民(女性)>
「駅前とか活性化するかなと思うんで。なにができるかなってずっと思ってたけど、立命館って聞いて良かったとは思いました」
<茨木市民(女性)>
「(JRの)新快速が止まるようになればいいかなって」
<茨木駅近くの飲食店(男性)>
「それだけ学生が増えるなら、学生さん向きな料理とか考えたいと思う」
街が活気づくのでは、と歓迎ムードです。
しかし、この新キャンパス構想、思わぬところで波紋を呼んでいました。
滋賀県草津市です。
草津にあるBKC=びわこ・くさつキャンパスからも茨木の新キャンパスに学部が移転する可能性があるからです。
仮に経営学部など大きな学部が移転すると、一気におよそ4,000人の学生が草津からいなくなってしまいます。

草津市の市議会議員は地域経済への影響を懸念します。
<草津市 久保秋雄市議会議員>
「ふたつの問題が出てくる。ひとつは消費が、年間48億円の地域経済への消費支出が失われてしまうという問題。もうひとつが、ワンルームマンションの空室の増加の問題」
学部が移転すれば、学生用ワンルームマンションに大量の空き部屋が出るのは必至です。
他に転用しにくいワンルームマンションの場合、経営者にとって学部移転は「死活問題」です。
<賃貸マンションを経営する 吉田あや子常務>
「学生が減少していくんではないかと、大きな不安を感じた。銀行から多額の借金もしているし、返還もしなければならないので、経営が成り立たないと」
そもそも17年前にBKCができる際、誘致のため草津市がマンションの建設を呼びかけたといいます。
さらに、県と市はキャンパス誘致のために新たに駅を作ったうえ、多額の支援金を投じました。
<草津市 久保秋雄市議会議員>
「県と市で土地の取得費用、および粗造成費用としてあわせて135億円の支出がされている。県民、市民の大事な税金から支出されたということですね」
大学のおかげで大きくなった街。
しかし今、大学の新たな構想で、窮地に立たされつつあるのです。
この事態を受けて、滋賀県知事と草津市長は地域経済への影響を最小限にしてほしいと、立命館大学に要望書を出しました。
さらに、新キャンパス構想に「待った」をかけるのは外部だけではありません。
立命館大学の学内からも議論が不十分だとして、反対声明が出されるなどまだ全学一丸という状況ではないようです。
今後の進め方について、立命館大学は—。
<立命館大学 中村正常務理事>
「学内にあった慎重意見、反対意見も踏まえて今後半年、1年かけてトータルに議論していきたいと思っています。地域への説明も必要ならばトータルな像を作った段階でお示ししたいと思ってます」
立命館大学の新キャンパス構想。
新天地での可能性が広がるのは間違いありませんが、クリアすべき課題はまだまだ残されています。
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