出典: 公示サイト文書
総長候補者に推薦されて

平田 純一

今回の総長選任において、候補者として推薦されたとの連絡を頂き,驚愕すると同時に,20年近く立命館大学で教鞭を執ってきたものとして大変名誉なことと感謝もしている。各種学内団体から総長候補者に対する公開質問状を頂戴しているが,私としても理事長による回答のあり方についてにあるように,個別具体的テーマに関して回答することは適当ではないと判断しているので,今次総長候補者として推薦された際に感じたことを若干書かせて頂いて回答に変えさせて頂きたい。

立命館学園の総長は,独自のリーダーシップを発揮することを求められるのは当然のことであるが,これまで全学的に議論され大枠が決まっている中期計画を着実に実現する上でのリーダーシップの発揮であり,総長自身が立命館学園の進むべき道に関して一定の方向性を提起してこれを推し進めると言う形のリーダーシップの発揮ではないと理解している。

しかしながら,立命館学園としての行動指針としておかれる学園憲章は基本的精神を示すものであり,個別の課題を具体的に解決するため解答を直ちに導くものではない。今回策定された中期計画も今後4年間に実施することを想定している可能性の提示であるので,今後個別具体的に検討すべき課題は次々に登場してくると考えている。あるいは,緊急性が高く中期計画に盛り込まれていない課題が新たに登場してくる可能性も排除することはできない。

現在のように社会的なフレームワークが大きく変化し,大学を取り巻く環境も著しく変化している状況において,計画を計画として着実に実行していくことはもちろん重要であるが,計画や過去にとらわれない弾力性が最も重要であると考えられよう。

しかしながら,状況の変化に機敏に対応するためには,無方針であることは許されない。私自身は,大学の教員になって以後日本の大学の変化の方向性は,私が1970年代後半に在学した,アメリカの大学に近づく方向での変化であるという感想を持ち続けている。この方向性が正しいか間違っているにかという議論もあり得るとは思うが,現実の動きは間違いなくこの方向に進んでいる。もちろん私が学んだ時代のアメリカの大学と現在のアメリカの大学とは大きく状況が異なっていることも事実であるが,大学の変化は残念ながら,社会の変化よりはやや遅いスピードで動いており,この意味では現在の大学を巡る環境の変化は1970年代以降のアメリカの大学の変化とかなりの程度対応するのではないかと考えている。こうした状況認識をベースの今後の大学を取り巻く環境の変化に対応して行かざるを得ないのではないかと考えており,このフィルターを可能な限り活用して,新規の課題に対応していきたいと言うのが,今現在の気持ちである。