ゆにおんNo.85(2006.10.6)より


総長候補者 各位
2006年10月4日
立命館大学学友会
中央常任委員会

総長候補者に対する公開質問状

拝啓

仲秋の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。日頃は大変お世話になっております。

さて先日10月2日の総長候補者推薦委員会において、次期総長の候補者が推薦されました。立命館学園の総長は、学園全体の教学の最高責任者であり、法人の設置する大学・学校の教学に関する事項を統括しています。総長は立命館大学の学長を兼ねるとともに、副総長の任命、APU副学長の任命、附属校の校長の任命等、重要な全学役職者の任命を行うほか、学園のさまざまな組織の要としての重要な役割を担っています。全学の構成員の参加により、学園の教学の最高責任者である総長を公選していくということは、全学の構成員が選出された総長とともに、本学園の教学を発展させることへの権利意識を高める役割をもっています。

本学の総長選任は、個々の候補者の政策ではなく、全学協議会などでの議論をふまえて全学で確認された学園の基本政策を推進するにふさわしい人物を選ぶことになっています。しかし私たちは、本質問状を通じて、総長候補者の人格・識見、並びに「全学で確認された学園の基本政策」に対する認識を、広く学園構成員が掴むことで、より実質的で民主的な総長選任を実現したいと考えています。「全学で確認された学園の基本政策」を遵守しながらも、具体的にどのような学園像・学生像を描かれているのか、ご見解をお聞かせ下さい。

敬具

【質問1】 現在本学では、3万人を超える学生が、多様な「学びと成長」を実現しています。魅力的な学園づくりのためには、的確に学生実態を掴み、明確な学生像を掲げることが不可欠です。
 9学部を抱える大学となった本学の学生実態をどのように捉えておられるのでしょうか。また、どんな学生を輩出していこうと考えておられるのか、ご見解をお聞かせ下さい。

【質問2】 本学は、第二次世界大戦における痛苦の経験を深く反省し、教学理念を「平和と民主主義」と定め、日本国憲法と教育基本法の理念に基づく学園運営を進めてきました。しかし先日首相に指名された安倍晋三氏は、過去の侵略と植民地支配を反省した、これまでの政府の歴史認識の踏襲をかたくなに拒否しています。それどころか、侵略戦争の反省の上に立つ憲法前文を「詫び証文」と攻撃し、「戦後レジーム」からの船出の名で、日本国憲法と教育基本法の改定を第1の課題に掲げています。
 一方、現代社会の閉塞感から、戦前回帰の主張であれ、戦後民主主義を攻撃する言説が、少なくない青年・学生に受け容れられるようにもなっています。このような、「平和と民主主義」を脅かす社会情勢を受け、教学理念に基づく学園運営をいかにすすめていくおつもりなのか、ご見解をお聞かせ下さい。また、歴史認識をめぐる対立が深まる昨今の情勢を受け、アジア諸国との友好関係構築にいかに寄与していくおつもりなのか、ご見解をお聞かせ下さい。

【質問3】 今年学友会が新入生6000名を対象にとったアンケートによれば、講義への出席率は、90%以上が4188名、70%以上が1331名と、非常に多くの学生が講義に出席している一方、入学後期待に反して最も落胆が大きかったことの第1位に、授業内容があげられています。
 多くの学生が正課に対して大きな期待を抱いている中、学生の多様な「学びと成長」を実現していく上で、更なる教学改革が欠かせません。2003年度全学協議会確認をどのように踏まえ、教育力強化政策をどう発展させていくおつもりなのか、ご見解をお聞かせ下さい。

【質問4】 本学には、現在衣笠・びわこくさつの二つのキャンパスが存在し、それぞれの特色を活かし独自の発展を遂げてきています。この両キャンパスは、本学生の学びと成長を支える基盤です。しかし、最近のキャンパス整備状況は、場当たり的で学生の成長を考えているとは到底思えないものとなっています。来年度07年度には映像学部が衣笠キャンパスにて開設されますが、この基本棟をどうするかが今年度になっても決定しておらず、結局5年前に作られたばかりの中央広場への新施設建設が強引に進められています。また、BKCの調整池に建設予定の新施設も「学生満足施設」といわれながら、学生の実態を本当にふまえているとは思えないものとなっています。
 中期計画でも施設に関する記述はほとんど見受けられず、大学からは「施設計画に関しては情勢に対応し策定していくため、中・長期的展望はもてない」という回答を頂いておりますが、私たちの学びの基盤であるキャンパスがどのように発展するのか展望が全くもてないことを不安に感じております。二つのキャンパスは、それぞれ今後どのように発展していくべきであるとお考えでしょうか。見解をお聞かせ下さい。

【質問5】 大学における学生の成長には、正課のみでなく課外自主活動が大きな役割を果たしています。今年学友会が課外自主活動への参加者約4000名を対象にした課外自主活動に関するアンケートによれば、大学生活に対して「充実している」「やや充実している」と答えた学生は、3579名にのぼります。また、進路就職活動に、サークル活動の参加経験が「とても役立つ」「どちらかといえば役に立つ」と3290名の学生が答えています。「中期計画」には、正課とともに課外活動を重視してきており、今後も「重厚な正課と課外の連携を構築する」との記述はありましたが、課外自主活動独自の意義については全く触れられていませんでした。
 総長候補者の皆様は、「大学での学び」における課外自主活動の意義と役割について、どのように捉えておられるのか、ご見解をお聞かせ下さい。

【質問6】 現在本学の初年度納付金は、最も安い産業社会学部産業社会学科でも1,098,000円、理工学部(数理科学科除く)や情報理工学部では1,659,000円となっています。また来年度開設予定の映像学部では190万円という超高学費、産業社会学部は学科再編に伴い約18万円の学費値上げが予定されています。その他の学部も、毎年自動的に学費が上がるWスライド制に基づき、数万円の学費値上げが見込まれています。これに対し、今年5月学友会が新入生約6,000名を対象にしたアンケートでは、「学費問題の改善」を3937名が学友会に期待しています。
 本学は歴史的に、できるだけ学費額を抑える相対的低学費政策をとってきました。とても低学費とはいえない現在の学費額をどのように捉えておられるのか、相対的低学費政策に対する評価とあわせてお聞かせ下さい。

【質問7】 本学は全構成員自治の原則に基づき、学園のすべての構成員の総意を学園運営に反映させることによって、全学合意の政策を練り上げてきました。その中でも全学協議会は、総長公選制と並んで本学の民主的運営を支える制度的柱としての役割を果たしています。
 総長候補者の皆様は、全構成員自治の原則と全学協議会をどのように捉え、いかに発展させていくおつもりなのか、ご見解をお聞かせ下さい。

【質問8】 先日策定された「中期計画」によれば、本学は"世界に開かれたアジア太平洋地域の教育・研究拠点"を目指す、国際化の第三段階にあるとされています。立命館大学とAPUとの協力関係を促進し、「国際的通用性のある世界水準の教育」をすすめる上で、どのような学生を輩出したいと考えておられるのか、ご見解をお聞かせ下さい。