1996/7 数学概論B(全学教育2年)
超準数学入門(辻下 徹)
Last updated 1998.7.5
微積分の諸定理は無限小量に基づく直観的議論により
納得できることが多いが、それを証明するには一旦直観的議論を忘れて
$¥epsilon$-$¥delta$
式の精密な議論によってもう一度証明を見い出さなければ
ならないことになっている。$¥epsilon$-$¥delta$
式の議論も一旦習得すれば独特の魅力もあり
何の不都合ないようにみえるかもしれないが、実はその議論の間接性は
生の解析的諸現象を心理的に遠ざけてしまう危険性が大きいのである。
一方無限小の量に基づく発見的議論は直観に基づくことが多く、それに
基づく論証はしばしば誤りに導くことが多い。事実、無限小の量を用いて
信頼の置ける議論をする方法は1960年代に数理論理学の進歩によって
初めて発見されたのであった。
この講義の直接の目的は、「無限小量の概念」に基づいて正確な議論を
する方法を習得して頂くことであるが、
それだけでなく、それを通して「無限小量の概念」のように一見すると辻妻の
あわないようなものが精密な議論の土台となるありさまを経験することにより
数学という学問のもつ役割の一つ−−形式化しにくいが直観的には明白な
概念を学問の武器に昇格させるという役割−−を知って頂くことが講義の本
当の目的である。
Constructed by Toru Tsujishita. Email comments to
tujisita@math.hokudai.ac.jp