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独立行政法人化問題 週報

Weekly Reports No4 2000.4.3 Ver 1.2

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訂正箇所
  • (2000.4.3)[4- 5] 時事通信社の報道を追加[(公立大学協会の報告書の記事)]
  • (2000.4.3)[4-15] 千葉商科大学

  • 目次

    (◎は、是非読んで頂きたい情報です) [情報] 4- 1 ◎政府の動き 4- 2 民主党の動き 4- 3 ◎自治体の動き 4- 4 卒業式送辞: 東京大学・金沢大学・神戸大学 4- 5 ◎公立大学協会 [資料] 4- 6 ◎大学の国際比較中間まとめ [独立行政法人化を懸念する動き・意見等] 4- 7 北海道教育大学岩見沢校での「独法化」反対市民シンポの報告 4- 8 国民医療研究所幹事会声明 4- 9 全国大学高専教職員組合和田肇氏が談話を発表 4-10 天岸祥光静岡大学理学部長「国立大学の独法化問題と文化」 4-11 ◎「大詰めにきた大学の危機」「大学危機と非常勤講師運動」p44-50より 4-12 馬渡 俊輔氏「「問題発見型研究」ができる大学」 4-13 ◎「大学教員の移動率低下の原因」「大学危機と非常勤講師運動」p34-37より 4-14 ◎桑原雅子氏・後藤邦夫氏「大学の民営化は学術研究の将来を危うくするか?」 [法人化に意義を認める意見等] 4-15 一橋学長と千葉商科大学長の対話 4-16 利根川進氏「日米の大学制度」(上)(科学新聞3月24日号) 4-17 社会基盤研究所客員研究員 潮匡人 氏「国立大学の存在意義」 4-18 ◎在独ジャーナリスト 美濃口 担氏「ドイツで大学はすべて「地方大学」」 [メール] 4-19 辻下 徹「初めまして美濃口様」
    [4- 1 政府の動き]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 自民党文教部会の提言「これからの国立大学の在り方について」 http://www.jimin.or.jp/jimin/saishin2000/seisaku-005.html を受けて、文部省が法人化の「方針を固めた」 http://www.asahi-net.or.jp:80/‾bh5t-ssk/net/nethefo765.html http://www.asahi-net.or.jp:80/‾bh5t-ssk/net/nethefo759.html と報じられている。昨年9月20日の文部省の検討の方向 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99920-monbu.html に沿った独立行政法人化が実現できると判断したと推測される。 なお、文教部会の提言によれば、2001年度中に法人化の制度設計を済ませ、 2年後の4月から独立行政法人大学が誕生する可能性も出てきた。 [4- 2 民主党の動き]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 菅直人の今日の一言 Date: 2000-03-22 (Wed) http://www7.airnet.ne.jp/kan/bbs/index.html ■ ベンチャーと国立大学の独立行政法人化 「最近、大企業に入るよりも自分でベンチャー企業を起こしたいという若者が 増えているのは頼もしい。しかし少し気になることもある。それはアイデアの 大半はインターネットの利用方法で、技術開発面での新しいアイデアがあまり 出てこない点だ。技術開発は一般的には大組織でないと難しい面があるが、大 学などの研究者からのベンチャー企業がもっと生まれてほしい。 それに国立大学の独立法人化の議論が気になる。大学は人材を育てることと 高いレベルの研究が期待されている。中途半端な独立行政法人よりはしっかり した基金を持つ私立大学にしたほうがのほうが目的に合致すると言う意見も聞 こえてくる。民主党の中でも本格的な議論を始めたい。」 [4- 3 自治体の動き]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 前橋市議会と米沢市議会は内閣総理大臣・文部大臣・総務庁長官宛てに地方自 治法第99条第2項の規定に従って、国立大学の独立行政法人化について慎重 な判断を求める意見書を提出した。 前橋市議会「国立大学制度の廃止及び独立行政法人化について検討を求める意 見書」(2000.3.28) http://210.165.20.3/fuj/dokuhouka/yonezawasi.htm 「国立大学の設置形態の変更に当たっては、経済効率ばかりでなく、高等教育 に対する国民の要求、国の責任などとあわせて、多角的な観点から慎重な検討 が重ねられる必要がある。事は21世紀の日本における高等教育の根幹にかか わる問題であり、国立大学制度の廃止及び独立行政法人化の方向について慎重 に検討することを強く要望する。」(抜粋) 米沢市議会「国立大学の独立行政法人化に反対する意見書」(2000.3.23) http://210.165.20.3/fuj/dokuhouka/maebasi.htm 「国立大学の独立行政法人化は、日本国民が戦後、営々と築いてきた高等教育、 学術研究の中心的存在を崩壊に導く危険があり、地方国立大学の地元にとって も計り知れない影響をこうむるものと、強い危惧を抱かざるをえません。 以 上の観点から、現在、政府が進めようとしている国立大学の独立行政法人化を 止めることが必要です。国におきましては、バランスのとれた学術研究の発展、 より高度な高等教育の充実のために、先進諸外国と比べて極端に少ない我が国 の国立大学の予算を大幅に増額し、教育研究条件を抜本的に改善するよう強く 要望するものです。」(抜粋) [4- 4 卒業式送辞から]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 卒業式での送別の辞での独立行政法人化への言及 ◆蓮見重彦 東京大学学長 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00328-hasumi.html 「わたくしが、「独立行政法人通則法」によって国立大学を変えようと意図し ている人びとに同意しかねるのは、そこに、変化を恐れる現状維持の陥りがち な無意識のペシミズムが露呈されているからにほかなりません。実際、こうし た「制度改革」の多くは、「うんざりするほど厄介な入力がほんのわずかな結 果しかもたらさない」という事態に自足しがちなものなのです。それは、変化 すべき主体が真の意味で変わることを要請してはおらず、観念の領域で演じら れる抽象的な身振りに費やされたエネルギーと時間の総量を、あたかも現実に は起こるはずもない変化そのものであるかのように見なす錯覚を助長している だけなのです。」 ◆林勇二郎 金沢大学学長 http://www.kanazawa-u.ac.jp/univ/gaku.htm 「日本はかれこれ100年以上にわたり欧米という先行者を追い続けて来ました。 明治以降,ヨーロッパの文化や教育,政治,経済などの制度を取り入れ, 近 代国家への道を歩んで来ました。そして,戦後の昭和24年には新制大学を 全 国に設置し,進学率が10%から50%にもなる教育の量的拡大によって経済大国 へと 発展しています。しかし,国主導で走り続けて来た日本のランナーは, トップに躍り出た途端に息切れし,バブル崩壊後は策のないまま迷走してい るのが現状でしょう。  今,日本には先頭集団に追いつきながらその位置を維持できなかったことに 大きな焦燥感があります。対症療法的な公的資金の投入,場当たり的な行政 改革, そして競走原理に大学の個性を求め,性急に国立大学を独立行政法人 化に移行 しようとする教育改革はまさにその典型であり,そこにはバブル崩 壊を創造的破壊と 捉える過去の教訓が全く生かされていないと言えましょう。 激動の時代にあって, 大切なのは,100年以上の間患って来た日本病を治すこ とであり, そのためにはゆっくり急ぐことこそ肝要と考えます。」 ◆西塚泰美 神戸大学学長 http://www.std.kobe-u.ac.jp/newsnet/sinnews.htm#news_1702 「国立大学については独立行政法人化の議論が続いております。これは国の財 政状況と絡んで提出された問題ですが、大学が国家機関から分離独立する「い わゆる法人化」ということでありまして、本来は財政難とは無関係の課題であ ります。しかし、現状では様々な複雑な要因があって、事情は単純ではありま せん。日本では、欧米のように大規模な財団や企業が大学に巨額の財政援助を 行うことがないので、大幅な政府の援助がなければ大学存立の経済基盤はきわ めて弱いのであります。ことに、産業の発展が国家の存続には必須不可欠であ りますが、それを支える自然科学の推進には膨大な資金を必要といたしますか ら、事柄は極めて深刻であります。このような状況下で国立大学を法人化する、 つまり国家機関と切り離すかどうかは、間もなく政治的な判断が下されようと しております。しかし国立大学はその設置形態の如何にかかわらず、財源や資 源が限られておりますから、本来の教育と学術研究を如何に推進しているかが 大きく問われているのであります。」 [4- 5 公立大学協会]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 公立大も「実質的な法人化」目指すことを検討 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00331-kouritsu.html 「設置形態は公立大として現在のスタイルを保ちつつ、関係法令を改正すること で様々な制約を取り除き「大幅な自律性強化による実質的な独立法人化」を目指 すべきだと結論付けている。」(asahi.com 記事抜粋) 「 大学改革をめぐり、全国の66公立大でつくる公立大学協会(会長・荻上紘 一東京都立大学長)は30日、公立大は地方自治体などによる直営形態を維持 しつつ、自立性を高める工夫を進めるべきだとする報告書を公表した。  報告書は、国立大の独立法人化が議論され、少子化の時代を迎えて私立大が 個性化を強める中で、公立大が生き残るには「地域とのつながりを最大の武器 とすることが望まれる」とした。また、これまで公立大は安易に国立大に追随 してきたが、国立大の独立行政法人化に従って学校法人化するよりも、直営形 態のままで自立性を強化するための具体的検討を急ぐ必要があるとした。」 (時事通信社) [4- 6 大学の国際比較中間まとめ]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 国立学校財務センター資料 「大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究―第一次中間まとめ―」 目次 I 概説........................1 1. 大学の設置形態 1)大学の国公立機関性 2)連邦国家の特殊性 3)私立大学 2. 大学の法的地位 3. 大学の自治・自主性の尊重 1)連邦政府の権限の制限 2)学内機関による管理機関職の選出 3)資金交付にともなう政府の干渉の抑制 (1)独立機関を通じる予算配分 (2)契約方式による資金交付 4)教育・研究に関する教員・研究者自治 大学の財政 1)アメリカ 2)イギリス(イングランド) 3)ドイツ 4)フランス II 各国の状況 1 アメリカ..................7 2 イギリス.................26 3 ドイツ...................44 4 フランス.................60 III 研究組織(名簿).............77 概説の部分だけ以下に転載 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00329-oosaki.html ---抜粋-------------------------------------------------------------- 「アメリカは、歴史的には私立大学が中心であったが、第二次世界大戦後、州 立大学の発展がめざましく、1995年現在で私立大学は、学校数では、なお、55 %(4年制73%、2年制28%)を占めているが、学生数では、22%(4年制30%、2 年制4%)を占めるに過ぎない。 ヨーロッパ諸国では、私立大学はきわめて例外的な存在でありフランスでは、 学位授与権のある私学はない。イギリスでは、バッキンガム大学1校のみであ る。ドイツでは少数の教会立等の大学はあるが、学生数の2%を占めるに過ぎ ない。」 「ドイツ、フランス、イギリスでは、次に示すように、高等教育に関する基本 的法律で大学の法人格を定めている。 (1)ドイツ 「高等教育機関は、通常、公法上の法人であり、同時に国の機関 である。高等教育機関は、他の法的形態においても設置することができ る。高等教育機関は、法律の範囲内で自治権を有する。」(高等教育大綱 法第58条) (2)フランス 「高等教育及び研究を行う国家機関は、学術的・文化的・専門 的性格を有する公施設であり、法人格並びに教育・学術面及び行財政面 における自治権を亨受する。」(1984年高等教育法第20条) (3)イギリス 1992年にポリテクニク(専門学校)等から昇格した新大学 (1992年継続教育・高等教育法第76, 77条)は、1988年教育改革法による 「高等教育法人」の地位を継続している(同法71条)。ただし、それ以前 に設立された大学は、国王の勅許状による勅許法人である。」 「各国とも、政府の政策に沿った大学運営を目指した改革を進めてはいるが、 イギリスが独立機関を介して資金交付を行い、政府の個別大学に対する直接的 干渉を原則として禁止していること、フランスが「契約政策」により、国の政 策と大学の計画との接点を求めていることなどに見られるように、大学の自主 性と自治的運営を尊重して、特別の配慮を払っている。 政府による目標の指示、実行計画の認可、変更命令というような「独立行政 法人」的手法を採っている例はない。 なお、イギリスの大学は、いわゆる「エージェンシー」方式の改革とは全く 関係がない。」 ---抜粋終-------------------------------------------------------------- #大崎仁氏の年頭あいさつでの約束 #http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00225-oosaki.html #の中間報告。 #政府が欧米の大学を参考にするならば、この報告書にあるような、全体の構造も含めて参 #考にすべきである。 [4- 7 北海道教育大学岩見沢校での「独法化」反対市民シンポの報告]:::::::: http://www.asahi-net.or.jp:80/‾bh5t-ssk/net/nethefo660.html 「会場には教職員や同校OB、市民ら約60人が参加。参加者からは「これほど切 迫した事態になっているとは知らなかった」「行政や議会の運動の進め方がよ くわからない」などの意見が出された。同実行委員会は市民との理解を深める ため、シンポジウムを今後も開催する方針だ。(道新記事)」 [4- 8 国民医療研究所幹事会声明]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 「国立大学の独立行政法人化は医学医療に悪影響を与えます」 http://www.asahi-net.or.jp:80/‾bh5t-ssk/net/netiryo000306.html ---引用始------------------------------------------------------------- 「私たちは、このことに、主に以下の理由で反対します。 1.国立大学の独立行政法人化は、上記の「特例措置等」を取ったとしても、 大臣が大学の教育研究の目標を指示したり、計画を認可したりすることから、 憲法で保障されている学問の自由と大学の自治を侵すおそれがあります。この ことは、「東京大学の設置形態に関する検討会報告」をはじめ、多くの大学関 係者から指摘されているところです。 2.国立大学の独立行政法人化は、5年という期間を設定して「外部有識者」 等が評価をおこなうことから、長期的研究・教育になじみません。医学分野で 言えば、基礎医学の研究・教育は、ますます衰退させられるおそれがあります。 3.国立大学の独立行政法人化は、「企業会計原則」を導入することから、国 立大学を市場原理にゆだねることになり、種々の弊害が生ずることが予想され ます。大学病院のあるところは、その収入が大学の収入源として期待されるこ とになり、病院の医療の営利化に拍車がかけられ、差額ベッドの拡大等、患者 負担が重くなることが心配されます。 4.国立大学の独立行政法人化は、学生の授業料大幅引き上げをもたらします。 とりわけ医学関係学部では学費が高騰し、教育の機会均等の原則は破壊されて しまいます。」 ---引用終------------------------------------------------------------- [4- 9 全国大学高専教職員組合和田肇氏が談話を発表]:::::::::::::::::::::: http://210.165.20.3/fuj/dokuhouka/jimintouteigenkenkai.htm 「提言」の矛盾をいくつか指摘。特に、競争的環境と地方国立大学の基盤強化 との関係等は明らかに両立しえない、という指摘は重要。 [4-10 天岸祥光静岡大学理学部長「国立大学の独法化問題と文化」]::::::::: (『大学の物理教育』3月号より) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00331-amagishi.html 「明治になって一気にヨーロッパの大学を「輸入」した日本の大学(東京帝国 大学)は、初期の頃から工学部を持っていた.これはある意味において、世界 に例を見ないほどの画期的なことであった.つまり、「知の文化」を中心に据 えてきたヨーロッパの大学が、文明を支える部分の導入に対して依然ためらい を見せていた時期に、さっさと文明の担い手を大学の中心部に据えてしまった のである.「科学」を生み育てる過程を経験してこなかった日本は、「科学」 と「技術」を明治以降いきなり輸入したため、その価値観のちがいをしっかり 認識する時間的余裕がなかった.「科学技術創造立国」、「科学技術基本法」 などの名称にみるまでもなく、日本人はとうの昔に「科学技術」(「科学と技 術」ではない!)という欧米にはない新語を発明した.「科学」と「技術」を 殆ど同意語のように使ってなんら違和感を持たない日本人の感覚がこうして生 まれたのだと思う.このように「科学」のみならず「文学」に於いても「文明」 が優先してきたのが日本の大学の現状であろう.さて、この様に考えてきて、 今度の国立大学を独立行政法人化しようとする動きは、国立大学を一歩進めて 「文明」の維持・発展装置としてのみ機能させ「知の文化」の原点を抹消しよ うとする行為である、と言ったら言い過ぎだろうか.」 [4-11 「大詰めにきた大学の危機」]::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 「大学危機と非常勤講師運動」p44-50より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00328-dkk.html 「独立行政法人にならねば、2001年開始の国家公務員25%削減の枠にひっかか るぞと文部省は脅かしますが、逆に独立行政法人になったら何が待っているで しょうか。国鉄のJR移行の時の選別雇用や、東京教育大学を廃校して筑波大学 に移行した場合にも似て、雇用継続が従来のまま保証されているわけではあり ません。少なくとも大半のポストが任期付任用となる可能性が大きいのです。 そして発足後は、前述のように主務大臣や評価委員会が、事業の存続、組織の 在り方、事業全般を繰り返しチェックし、合法的に解雇をも行い得るシステム になっているのです。どんな甘言が出されようと、大学が国民の共有財産 であることと矛盾するような制度を容認すべきでない、という原則的立場を保 持することこそが、途中どんな経過をたどろうとも、よりよい結果に達する保 証となるでしょう。」 [4-12 馬渡 俊輔氏「「問題発見型研究」ができる大学」]::::::::::::::::: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00329-mawatari.html 「「問題解決型研究」は国立、民間を問わず研究目的の定められた研究機関で 行われている。一方、無駄になるかもしれない「問題発見型研究」は、かつて は修道院(?)、今は大学をおいて行える場所は他にない。大学の独立行法人 化がもし「問題発見型研究」を抹殺するものであるなら、それは人類の真の発 展を遅らせるだろう。効率主義は目先の利益をもたらす。しかしその効果は長 続きしないのである。」 [4-13 「大学教員の移動率低下の原因」]:::::::::::::::::::::::::::::::::: 「大学危機と非常勤講師運動」p34-37より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00329-ninkisei.html 「日本の大学で入事を本当に流動化させるには、本格的には大企業本位に作ら れた大都市集中から直さねばなりませんが、少なくとも抜本的な私学助成の改 善と、地方大学を充実し特色あるものに育てるるのに十分な経常費の投下が必 要です....逆に経常費を滅らしての「重点配分」だ、私学大学の助成は削 滅だが、旧「帝大」系の方は大学院大学に格上げだと、格差を増やすことばか りやっています。文部省や財界の人たちは多分、人事を流動化させることなど 考えてはいないのです。人は平等な条件があり自由な選択ができてこそ、身分・ 権利を保障されてこそ移動する気になります。逆に身分不安定に追込み、その 脅迫で人を競争に駆り立てようなど、任期制は研究・創造の基礎にある人間性 の自由、その尊厳に相容れない、前近代への逆行であると言わねばなりません」 [4-14 桑原氏・後藤氏「大学の民営化は学術研究の将来を危うくするか?」::: [wr 2-6] でも紹介しましたが許可を得て全文をオンライン化しました: (「科学・社会・人間」2000年2号p3--17(全文)) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00329-kuwabara-goto.html --(目次)----------------------------------------------------------- 1. 当面の法人化案を論ずる前提:「30年の空白」の存在とその意味するもの 1-1 改革の第1段階:大綱化と一般教育組織の廃止 1-2 改革の第2段階:教養教育の「復活」、大学院重点化、産学あるいは地域連携組織の整備 1-3 改革の第3段階:「民営化」と「主体的マネジメント」の確立? 2.歴史的展望のもとでの大学の現在 2-1 近代における大学の再生 2-2 デジタル革命とハイテク社会における大学 2-3 大学の「生き残り」の必要条件 3.アメリカ的大学モデルのパラダイム・シフトと物理学 4.日本の国立大学の独立行政法人化について 5.展望と課題 付録 アメリカの大学: 自立を支える財政構造 私立と公立のあいだ 自治:政策決定のダイナミクス 「システム」と「ディストリクト」 財源および財政メカニズム --(目次終)--------------------------------------------------------- 「1970年代の改革を見送ったことによって、現在の日本の「大学改革」は理念 や精神が一向に明らかでないまま、組織と機構や小手先の運営方法の「改革」 に終始し、いたずらに人々を疲労させているのである。」 [4-15 一橋学長と千葉大学長の対話]:::::::::::::::::::::::::::::::::::: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00318-ishi.html ---引用--------------------------------------------------------------- (加藤)先日、新聞に「国立大学の嘆きと苦悩」という一面広告がありました。 これは国立大学が独立行政法人化になることを問題として取上げたものですが、 私はどうもよくわからない。文部省の支配から逃げられ、自由にカリキュラム も組めるのに、なぜ反対なのですか。 (石)先生みたいに単純に言えないのです。やってみようという人もいれば、苦 悩する人もいます。これまで大学には競争原理がまるでなかったのに、それを 入れようというのですから。 (加藤)でも、独立行政法人化しても、依然として国立大学であり、国家公務 員のままですよね。 (石)中期的には、大学を評価し、予算配分を変えるわけですから、評価が恣意 的であったり、予算が減らされたりしないか心配なのです。リスクを取って自 己責任でやりたいというプラス志向の人と、今が良いというマイナス志向の人 がいるわけですね。 ---引用終------------------------------------------------------------- [4-16 利根川進氏「日米の大学制度」(上)]::::::::::::::::::::::::::::: (科学新聞3月24日号) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00324-tonegawa-1.html 「いずれにしろ、大学改革を考える上では、国は資金を出すが口は出さない仕 組みが必要になる。そのためには、学長や副学長、学部長などに大きな権力を 与え、それぞれの大学がより個性を発揮できるようにしなけれぱならない。ま た、競争的研究費をより多くする必要がある。」 #「そのために」は次の主張も意味している:「国に資金は出させるが口は出 #させないよう努力すべきなのは大学の方である。」 [4-17 社会基盤研究所客員研究員 潮匡人 氏「国立大学の存在意義」]:::::: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00330-sankei.html 全大教の全面広告 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00316-asahi.html への批判。抜粋: 『欧米の「教育研究活動を支えている」のは「公費」ではなく、篤志家 の寄付金ではないでしょうか。「公費で教育研究活動を支えている」のは「欧米 諸国」ではなく、自由とデモクラシーの恩恵に浴さない独裁国や開発途上国でし ょう。問題は「公的な支出の割合」ではなく、篤志家の出現を阻むいびつな税制 ではないでしょうか。』 『言葉尻を捕らえるようで恐縮ですが、「すぐには答えの出ない問題を、じっく り研究」している人々が「今という時代の難関」を解決できるはずがありません。 「教育研究の成果を広く人類社会に提供する」前に、我々日本国民に提供するの が国立大学の使命でしょう。いや、学問研究に国境はないというなら、そもそも 「国立大学」に「存在意義」などありません。日本は文部行政が高等教育を支配 する唯一の先進国なのです。当事者の方々にはお気の毒ですが、やはり、国立大 学にも「改革」は必要ではないでしょうか。』 潮氏が所属するシンクタンク社会基盤研究所は研究員の顔触れから、前身が長 銀総合研究所と推測されるる。ホームページ http://www.iseis.co.jp/ のトップには、官邸の行革のページ http://www.kantei.go.jp/jp/cyuo-syocho/pamphlet/index.html と同じ龍馬の写真が飾ってあり、日本語のトップページ http://www.iseis.co.jp/ja/top.html には、以下のような設立宣言が書いてあり潮氏のご意見の趣旨がよくわかった気 がした。 「成長神話の終焉、終身雇用・年功序列制の崩壊、さらには情報通信革命、物 流革命・・・。これは、単なる不況や技術革新による変化ではありません。経 済と情報のグローバル化が、全地球規模のメガコンペティション時代の扉を開 いたのです。いま、日本は幕末、終戦にも匹敵する大きな変化の渦中にありま す。これまで築き上げてきた日本型システムの成功にこだわるあまり、自ら変 革することに逡巡が見られます。 お仕着せのグローバルスタンダードにひた すら適応するだけではなく、いまこそ果敢に新しい制度を構築しなくてよいの でしょうか。社会基盤研究所は、維新への道を開いた坂本龍馬と海援隊のよう に、「ニッポンを今一度せんたく」すべく、「第三の開国」を目指して立ち上 がりました。」 株主リストの先頭は人材派遣会社パソナ グループ: http://www.pasona.co.jp/ 最近、東京ビジネスサービス株式会社研究者派遣の広告 http://www.tokyo-bs.com/kigyo3.html が(日本学術振興会)『学術月報』2月号(通巻663号)に乗ったことが記憶 に新しい。 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/whatsnew.html#haken [4-18 美濃口 担氏「ドイツで大学はすべて「地方大学」]:::::::::::::::::: http://village.infoweb.ne.jp/‾fwgc0017/0003/000322.htm 「私には日本の大学関係者に知人や友人が多く、「独立行政法人化」に反対して いる人がたくさんいる。確かにこれは財政赤字減らしの一環であり、また去年 文部省が急旋回したのもナワバリを失いたくない文部官僚の意図が見え透けで ある。とはいっても、ドイツ側の「これはあきれた」という顔が物語るように 「独立行政法人化」推進派の論拠のほうが通りやすい。」 「以前、久しぶりに会った国立大学に勤務する友人が「文部省の役人は高等教 育予算など、娘息子に手渡すお小遣い程度にしか考えていない」と嘆いたこと がある。このような文部省が言い出した「独立行政法人化」に対して「絶対反 対」で行くべきではないと思う。この問題はすでに日本で進行している分権化 の議論と絡ませるべきではないのか。  教育や研究の業績査定となると、当然その基準と、基準を解釈運用する査 定委員会のメンバー選考が重要である。この基準設定でも地域性重視を盛り込 むことができるし、またメンバーの選定にあたっても大学関係者、中央官庁、 更に地方自治体の声が均等に反映する仕組みをつくることもできるのではない のか。「条件闘争」を拒む「無条件闘争」こそ、「無条件降伏」につながるの である」 [4-19 初めまして美濃口様]::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00331-to-minoguchi.html [4-L その他]:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◆これ以前のもの: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/whatsnew.html ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 tujisita@fcs.math.sci.hokudai.ac.jp 掲示板:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/@etools/1.html バックナンバーhttp://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html このページのURL: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-4-00403.html ===================================================================== End of Weekly Reports No4 2000-4-03 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています**