==> Weekly Reports index
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                 国立大学独立行政法人化問題 週報
              Weekly Reports  No.6   2000.4.17 Ver 1.13
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http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-6-00417.html
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目次(◎は、是非読んで頂きたい情報です)
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[6-0]◎発行者より
◆国会議事録より
[6-1]◎衆議院文教委員会2000.3.10議事録より
 [6-1-1]中嶋嶺雄氏(国立大学協会副会長・東京外国語大学学長)
 [6-1-2]岡田益男氏(大学評価機関創設準備委員会専門委員・東北大学教授)
 [6-1-3]◎池内了氏(名古屋大学教授)
 [6-1-4]◎中嶋氏と池内氏の見解の対立
 [6-1-5]民主党山元委員の文部大臣への質疑(独立行政法人化に関する質問)
[6-2]◎参議院文教科学委員会2000.3.21議事録より
 [6-2-1]文部科学省内の独立行政法人評価委員会のメンバーの構成について
 [6-2-2]大学評価機構の11教員の構成について
 [6-2-3]大学評価機構の44事務官は国立大学の定員を用いる
 [6-2-4]大学評価と予算配分とはリンクすること
 [6-2-5]大学評価は数量化しないこと
 [6-2-6]独立行政法人化についての文部大臣の意見
 [6-2-7]◎「現時点で独立行政法人化した国立大学は具体的に説明できない」
 [6-2-8]国立と私立の違いについての文部大臣の説明
◆政府
[6-3]教育改革国民会議ホームページ
 [6-3-1]有識者からの意見の紹介
 [6-3-2]国民からの意見の紹介
 [6-3-3]国民からの意見を募っている。
[6-4]◎自民原案「テーマ公募」年1兆円
 [6-4-1]1996-2001の17兆円の使途についての渡邊勇一氏による紹介
[6-5]経済企画庁が「経済指標」の中で大学教育の効果を分析
◆大学
[6-6]京大などが大学規程集をオンライン化
[6-7]蓮見重彦東大学長の入学式式辞(東京新聞記事)
[6-8]◎全大教第9回執行委員会(4/8)報告より
 [6-8-1]2.今後の流れについて 
[6-9]◎北大歯学部第3回勉強会 宮脇教授「国立大学の法人化問題と予算会計制度」より
◆その他
[6-10]文部科学教育通信 第1号 (2000年4月10日号) 発刊
◆提案
[6-11]◎渡邊信久氏「学長権限強化より直接民主性がいいのでは」
◆意見・論説(独立行政法人化を危惧する意見)
[6-12]◎吉本秀之氏「教官から学生へ」(2000.4外大ニュース)より抜粋
[6-13]浜林正夫氏「独立行政法人化は大学の命取り」
[6-14]江口厚仁氏「国立大学独立行政法人化がねらうもの」
[6-15]北大電子アンケートの自由意見より
[6-16]独立行政法人化問題掲示板より「国立大学に法人格は必要か?」
[6-17]読者の声
◆意見・論説(独立行政法人化推進の意見)
[6-18]世耕弘成参議院議員(自民)「我が国の高等教育改革の起爆剤となれ」
[6-19]利根川進氏「積極的な産学連携/公務員型では限界も」
◆発行者から
[6-20]◎(本の紹介)小玉重夫著「教育改革と公共性」東京大学出版会1999
[6-21]バイオ研究者に向けた紹介記事
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■■本文■■

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[6-0]発行者より

国立大学独立行政法人化問題は、古代から闘い続けられている戦いの一局 面です。繊細で儚い目に見えない精神的価値観と、目に見える頑強な経済的 物質的価値観との闘いです。この2つの価値観は、根底から相容れぬ仇敵な がら、互いに相手を必要とし、一方が他方を抹殺するとき社会は病み衰退す ることは歴史を見れば例に事欠きません。私たちが直面している局面は、ユニ バーサルな精神的営為である教育・研究活動の陣営に対する、ローカルな物 質的効果以外を認めない経済活動の陣営からの攻撃です。この攻撃は半世紀 に亙る攻撃の最終局面とさえ言えそうです。ここで目に見えぬ価値を認めな い陣営が圧勝すれば、日本は不治の病に陥るでしょう。 しかし、大学の中でも「この国家的危機の中で国立大学だけが例外である はずはない、独立行政法人化もやむなし。それに悪いとは限るまい、遅々と して進まない大学改革が一挙に前進するだろう」と考える人が少なからずい ます。しかし、逆なのです。こういう危機だからこそ大学は、経済的物質的 価値観とは異質の価値観を呈示し日本のため(そして人類のため)に死守し なければならないのです。そして、国の陥っている現在の困窮の中で、敢え て冷静さを保ち、日本が果たすべき役割、そして大学が果たすべき役割を時 間をかけて考えていくべきなのです。間もなく始まる国際資本の怒濤の攻撃 へのローカルな防衛戦に大学を動員するのは学徒動員と同じ発想です。大学 の使命はそんなところにない。グローバル化し一体化しつつある世界を利用 し蹂躙しようとする存在を弱体化させ無害なものにすることに知恵を絞るべ きなのです。物質的経済的世界の変化に自ら進んで右に左に振り回されてい るようでは大学は存在理由を失い弱体化し、人知れずして消滅するでしょう。 以上の発言を、迷惑で無意味で無内容なアジテーションだと思う人もいる ようです。独立行政法人化を不可避と思い込み少しでも大学にとって良いも のにする努力に奔走している方がそう思われるのは仕方ないかもしれません。 しかし、大学の使命は研究と教育にあり、それだけで時間も頭も一杯だ、政 治的なことに関わりあう暇はないはずだ、迷惑だ、と思う人も多いはずです。 そこで、ヴィゼールの言葉(文芸春秋1月号)を引用したいと思います。 「愛の対極にあるのは憎しみではない。無関心である。美の対極にあるの は醜さではない。無関心である。知の対極にあるのは無知ではない。それも また無関心である。平和の対極にあるのは戦争ではない。無関心である。生 の対極にあるのは死ではない。無関心、生と死に対する無関心である。」 国立大学教職員は無関心であってはならない。10年後・15年後・20 年後の同僚の運命に無関心であってはならない。先人が命がけで築いた研究・ 教育の自由が衰退することに無関心であってはならない。その自由があれば こそ教育・研究はグローバルに意義にあるものを生みだせるのだ。これから 来る世代の人達が中世のような知的薄明時代に生きることに無関心であって はならない−−そう私は思います。 6月には選挙があり、教育改革は選挙の争点の一つになるでしょう。半世 紀に亙ってその時々の経済界の要求をほとんど丸呑みにして初等中等高等教 育と学術研究の場を混乱させ停滞させてきた学術教育政策全体が問われるの です。その中で国立大学の独立行政法人化問題が国民的議論となる可能性も 出てくると思います。民営化の議論も浮上することもあり得ますが、何が変 わるのかわからない不透明な法人化の話しとは違い、国家的関心事となるで しょう。今必要なのは、国立大学が迎えようとしている終焉の真の姿を多く の人々に目撃して目に焼き付けてもらうことなのです。そしていつの日か大 学再興の風が吹き始める契機を残して置くことなのです。(2000.4.17) ----------------------------------------------------------------------

◆国会

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[6-1]◎衆議院文教委員会2000.3.10議事録より

[6-1-1]中嶋嶺雄氏(国立大学協会副会長・東京外国語大学学長) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00310-bunkyou-nakajima.html [6-1-2]岡田益男氏(大学評価機関創設準備委員会専門委員・東北大学教授) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00310-bunkyou-okada.html [6-1-3]◎池内了氏(名古屋大学教授) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00310-bunkyou-ikeuchi.html [6-1-4]◎中嶋氏と池内氏の見解の対立 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00310-nakajima-ikeuchi.html [6-1-5]民主党山元委員の文部大臣への質疑(独立行政法人化に関する質問) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00310-bunkyou-yamamoto.html ----------------------------------------------------------------------

[6-2]◎参議院文教科学委員会2000.3.21議事録より

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html [6-2-1]文部科学省内の独立行政法人評価委員会のメンバーの構成について http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#dgh-hyoukaiin [6-2-2]大学評価機構の11教員の構成について http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#daigakuhyouka-kyouin [6-2-3]大学評価機構の44事務官は国立大学の定員を用いる http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#teiin [6-2-4]大学評価と予算配分とはリンクすること http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#yosan [6-2-5]大学評価は数量化しないこと http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#tensuu [6-2-6]独立行政法人化についての文部大臣の意見 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#dgh [6-2-7]◎「現時点で独立行政法人化した国立大学というものを具体的に申し 上げることができない」(佐々木高等教育室長) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#dgh-unknown [6-2-8]国立と私立の違いについての文部大臣の説明 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00321-bunkyou-kagaku.html#shigaku ----------------------------------------------------------------------

◆政府

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[6-3]教育改革国民会議ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/index.html [6-3-1]有識者からの意見の紹介 http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/dai1/yuusikisya.html [6-3-2]国民からの意見の紹介 http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/dai1/kokumin.html が掲載されている。また、 [6-3-3]国民からの意見を募っている。 http://www.iijnet.or.jp/sorifu/kantei/jp/kyouiku/goiken.html ----------------------------------------------------------------------

[6-4]◎自民原案「テーマ公募」年1兆円

http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/index.htm#04/13_3 先端研究助成 欧米並み拡充 2001年度から5年計画 2001年度から5年間の国の科学技術政策の方針を定める科学技術基本計画の 自民党原案が11日、明らかになった。欧米に比べ後れをとっている情報通信 やライフサイエンス、材料、環境の4分野に重点的に資源を投入。先端的・ 独創的な分野で研究者を競わせるために、研究テーマを公募して助成対象を 決める「競争的資金」について、政府の科学技術関係予算に占める割合を欧 米並み の3割に引き上げ、年間1兆円規模にする。次期計画の政府研究開発 投資額に 関し、自民党は1996年度から5年間で17兆円の目標額を定めた現行 計画 の約30%増の22兆―23兆円を検討している。(『日本経済新聞』2000年 4月12日付) [6-4-1]1996-2001の17兆円の使途については渡邊勇一氏による紹介がある: [reform:02398] 我が国の 科学技術予算 俯瞰の書 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/99b30-watanabe.html ----------------------------------------------------------------------

[6-5]経済企画庁が「経済指標」の中で大学教育の効果を分析

http://www.epa.go.jp/2000/f/shihyo/0410/136.html 特殊法人「日本労働研究機構」 (職員147名(内研究員法学3人,経済学10人,社会学18人,心理学18人,経営学17人) http://db.jil.go.jp/jsk012/dtldsp?detail=D0239&displayflg=2&backno=E1999120009 の大学卒業後のキャリア調査(1999年11月実施) http://db.jil.go.jp/jsk012/dtldsp?detail=E1999120009&displayflg=1 (92年調査回答者約16,000名から、「89〜91年」あるいは 「83、84年」に4年生大学を卒業した者7,948名を調査。) に基づく統計分析。 ----------------------------------------------------------------------

◆ 大学

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[6-6]京大などが大学規程集をオンライン化

http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Alink.htm#KITEI 小樽商科大学・信州大学・金沢大学・京都大学・福岡教育大学静岡県立大学・ 長崎外国語短期大学 ----------------------------------------------------------------------

[6-7]蓮見重彦東大学長の入学式式辞(東京新聞記事)

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00412-hasumi.html 東京大学の入学式が十二日午前、東京都千代田区の日本武道館で行われた。蓮 実重彦学長は式辞で「独立行政法人通則法によって国立大学の設置形態を変え ようとする『大学改革』を含めて、より大きな文脈を無視した安易な二者択一 によって進展している」と、政府による一連の大学改革をあらためて批判。新 入生に「理由もなく決定的だと確信することは、思考の柔軟性を奪う。それは 若さの放棄につながりかねない」と、意識して柔軟な知性を保つように求めた。

国立大学の独法化などの「改革」については「知性に背を向けたまま事態 が推移している日本の現状を深く憂慮せずにいられない」と批判。「大学に備 わっている知性だけが、そうした状況を批判することができる」と、大学人の 果たす役割を強調した。 ----------------------------------------------------------------------

[6-8]◎全大教第9回執行委員会(4/8)報告より

http://www.q-union.org/news/000408.html 「1.現在の局面について ●自民党の動向 麻生グループは大学関係者から5回のヒアリングを行い、3/23提言「こ れからの国立大学のあり方について」をまとめ、3/30文教部会で承認さ れた。(特徴) ・「通則法」の下での「国立大学法人化」構想(当初の案より後退したもの) ・全国大学、全大教の反対の中で「通則法」の中では「独立行政法人化」で はまとまらないと判断し、この案が出されている。 ●文部省 文部省は公的には動いていない。3月中旬の全大教と文部省の非公式折衝の 中での印象。 しかし水面下で自民党に働きかけたと思われる。現在の膠着 状態を打開するために、基本的 には「検討の方向」とは大きな違いはなく この案を受け入れるのではないか。 ●国大協 3/8理事会 3/16小渕首相と会談(蓮見氏と外大学長) 「通則法」の下での独立行政法人化に反対、研究費を増やすことの2点を国 大協はのべた。 小渕氏は「この問題は国大協でまとめてくれ」と言ったが、 「国大協では 無理」といわれ文部省で検討することに。 2/27鹿児島大学長の呼びかけで、地方国立大学長(政令指定都市以外) の集まりが東京であった。 3/18地方国立(44大学)が自民党と国大協へ申し入れ(国立大学の設 置形態を守るべき)。 44大学の中にも「設置形態の変更そのものに反対」 と「それ以外の道」と意見の不一致はあった。 これらを受けて国大協は事 務局長名で「独法化問題の対応についての当面の対応について」を出した。 [6-8-1]2.今後の流れについて 【報告】 政局が流動的で見通しはたてにくい(6月選挙) ・国大協総会6月13日〜14日(この以前に臨時総会をするかも知れない) ・全国学長会議(文部省主催)6月15日 ・定員削減の閣議決定が7月 このなかで文部省がどう出てくるのか。 「国大協との合意で進めていく」 のか「文部省として独自に判断する」のか。 3月29日国大協の第一常置が開かれ(鹿児島大田中学長もメンバー)、激 しい議論となりまとまらかった。 東大の「設置形態検討委員会」は早けれ ば4月にまとめを出す方向。東大は自民党案とは距離 をおいた「第三の道」 を考えている。 (以下略)」 ---------------------------------------------------------------------- #上の3/16小渕首相と会談(蓮見氏と外大学長) で『「国大協では 無理」 #といわれ文部省で検討することに。』とあるが、「国大協では 無理」とい #う発言は重大だが国大協全体の意向なのか判然としない。外大学長は国会で #の委員会での参考人としての意見陳述[6-1-1]でわかるように推進派。 ----------------------------------------------------------------------

[6-9]◎北大歯学部第3回勉強会 宮脇教授「国立大学の法人化問題と予算会計制度」より

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00411-miyawaki.html#zaisei 「1年前のこの時期に比べると、外堀を埋められたように感じる」 「独立行政法人会計基準により独立行政法人に対して大蔵省が直接的な影響力 を持つようになる。この基準は特殊法人にも適用されることが予測されるので、 独立行政法人化とは異なる本当の国立大学法人が作ることができて、当然独立 行政法人会計基準が適用されることが予想されるので、文部科学省・総務省の 支配から逃れたとしても大蔵省の支配は変わらないことは注意すべきである。」 「今後直面する財政危機の構図は、従来の節約を主体とした歳出削減で克服で きる課題ではなく、一般会計、特別会計そして財政投融資を含めた財政制度全 体の再設計が求められる課題となる。そうした財政システムの再設計において、 国立大学の財政を長期的な観点から如何に位置づけるかの議論を行うべきであ る。」 ---------------------------------------------------------------------- 参考: 富山大学「独立行政法人会計基準の概要」宮脇講演記録 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00323-kaikei.html 第21回北大を語る会 宮脇淳法学部教授「独法化問題の力学と予算会計制度」 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/99c17-hkk-miyawaki.html ----------------------------------------------------------------------

◆ その他

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[6-10]文部科学教育通信 第1号 (2000年4月10日号) 発刊

A4判 56頁/毎月2回 第2・第4月曜日発行/購読料月額3,000円 株式会社 ジ アース 教育新社 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1−17 NK第二ビル TEL.03−5282−7183(代)  FAX.03−5282−7892 ---------------------------------------------------------------------- #第一号は文部大臣「英知を結集、勇気をもって構造改革を進める時」・文部 #事務次官「21世紀控え教育改革は国民的課題」などから始まり、学長が主 #な執筆者。文部省側の意向を知るには有用と感じる。オンライン化されない #だろうか。 ----------------------------------------------------------------------

◆提案

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[6-11]◎渡邊信久氏「学長権限強化より直接民主性がいいのでは」

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/416-watanabe.html 「自民党の教育改革実施本部高等教育研究グループの提言「これからの国立大 学の在り方について(3月30日)」を読んでみた.この提言では「2.国立 大学の運営の見直し」で,「責任ある運営体制の確立」,「学長選考の見直し」, 「教授会の運営の見直し」として,教授会権限の縮小と学長がリーダーシップ を発揮しうる権限と体制を確立することが必要と書かれている. このように,教授会が足枷となって大学が自己改革出来ないとか機敏な判断が 出来ないとかいう批判と,それに対して学長権限の強化や副学長制度の強化が 必要だとするのは良く聞く議論だ.しかし,はたして本当にそういうことが必 要なのだろうか.一度きちんと分析する必要があるのではないかと思う.国旗・ 国歌法後に各地の大学で起こっていること一つをみても,少人数のトップで何 かを決めて行くやりかたは実は時代遅れなのではなかろうか. 大学がダメなのは,学長に改革を断行する権限が無いからではなく,構成員が 議論し,それにもとづいてすばやく意志決定していくシステムが不備だからで はないか.教授会はおおむね「報告会」だし,評議会もどうも怪しい.大学と いう組織は国や地方自治体ほど巨大でもない.インターネット等の最新技術を 駆使して議論や投票をするような新しい直接民主制(もちろん学生も含む)の システムの実験場となり得るのではないか.しかも一般の自治体とは比べ物に ならないほど十分に構成員のレベルは高いはずだ(ろう)と思う. 北大ネットワークの「独法問題アンケート」でも,多数の構成員(学生を含む) が「北大」の意志決定には直接参加したいと回答していた.大学には,政治や 行政のシステムを専門として研究している人もいるし,インターネットを専門 にしている人もいるはずだ.そういう人を中心にして大学直接民主制のような システムづくりをし,それによってダイナミックに問題に対処していく方がい いのではないか.なんだか漠然としていて結局はお題目に終わってしまいそう な「大学のありかた」や「将来計画」の検討文章をひねくりまわすよりも. 渡邉信久 --- 北海道大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 生体高分子解析学講座 * 大学は病んでいます。しかし政治はもっと病んでいます。 * * 私は大学の教育・研究目標の設定を行政に委ねたくはありません。 * * 私は大学の教育・研究の評価を行政に委ねたくはありません。 * * 私は国立大学の理念無き(独立行政)法人化に反対しています。 * ----------------------------------------------------------------------

◆意見・論説(独立行政法人化を危惧する意見)

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[6-12]◎吉本秀之氏「教官から学生へ」(2000.4外大ニュース)より抜粋

http://www.t3.rim.or.jp/‾h2ysmt/gaidainews.html 「20世紀の一番最後の年に大学に入学した諸君に、ひとまず、おめでとう といいましょう。 ...「独立行政法人化」の問題は、国立大学が古いままの国立大学でいるこ とを許さないでしょう。...日本の大学の存在形態を変えようとしている人 たちの目指しているものは、イメージとしてはアメリカの大学ということにな るでしょう。...アメリカ的な自由競争は、少数者の自由(経済的成功)と 圧倒的多数の不自由をもたらします。社会のあらゆる側面で、競争がいけない わけではない。しかし、教育機関が体現すべき価値は、精神的なもの、あるい は文化的なものです。教育機関の存立の根元に自由競争を持ち込もうとするも のは、私には、人間文化への悪意ある敵対者であるように思われます。 ...もうそろそろ日本は、父親的存在であったアメリカから精神的に自立し てよいのではないでしょうか?自立するために必要なこと、それは、一方では 我々が生きてきた社会と歴史の批判的検証作業、もう一方ではそうした知的な 営みに裏付けられた我々の意思の形成です。アメリカとは何か、日本とは何か、 これを探る知性は大学のなかで鍛えることができます。ありがたいことに、大 学はこの機能を十分に果たすことが出来ますし、諸君の年齢はその種の知性 (判断力)を鍛えるのにふさわしい時期でもあります。 少し積極的に動いてみましょう。応えるものは(半ば隠れた形かもしれませ んが)大学の中にも外にも必ずあります。授業だって、教室という檻ではなく、 知的な出会いの場となることもできるのです。」 ----------------------------------------------------------------------

[6-13]浜林正夫氏「独立行政法人化は大学の命取り」

JOIN No.35 (文教大学)2000年1.2.3月号「国立大学独立行政法人化の是非を問う」 より抜粋 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00412-join-hamabayashi.html 「大学はかならず国立でなければならないということはありません。国立であろ うと公立、私立であろうと、あるいは法人であろうと、設置形態のいかんを問 わず、大学は大学として備えるべき3つの要件を備えていればよいと、私は考 えています。その3つの要件というのは、第1に大学の自治、つまり、大学の ことは大学で決めるということ、第2は教育と研究の自由、第3は教育研究の 安定した人的物的基盤の維持ということです。 ... 先にのべたように、学長をはじめ教員の人事が文部省の意向に左右されるよ うになると、大学のなかから活気が失われ、停滞した空気が生まれていきます。 教育と研究にとって何よりも必要なものは自由な雰囲気であり、そのなかから 生まれる活発で独創的なとりくみの姿勢です。現在でもすでにそういう雰囲気 がくずれてきている大学が増えてきているようで、私はこれでは日本の学問や 技術の将来はあぶないと、ひそかに憂えているのですが、もし通則法の枠内で 国立大学の独立行政法人化がすすめられるならば、日本の将来はますます暗い ものになると思われ、憂慮に耐えません。 ... 国立大学の法人化はいま突如としてだされてきたものでなく、さかのぼれば 1971年の中教審答申にはじまるものです。しかしそれが今回、急に現実化して きた背景に、行政改革のための国家公務員削減があることは周知のとおりです。 国立大学の一部には「法人化すれば定員削減をまぬかれる」という声があるよ うですが、この見通しはきわめて甘いといわざるをえません。一言でいえば法 人化は国立大学の大リストラなのです。しかし、いま日本の企業がリストラを やりすぎて製品の質が落ちているといわれるように、国立大学のリストラは日 本の学問と技術と、大学卒業生の質を落とすことになるでしょう。「国立大学 を法人化して、これからの日本の経済は大丈夫なのか」という危惧の声が財界 のなかにさえあるそうです。」 ----------------------------------------------------------------------

[6-14]江口厚仁氏「国立大学独立行政法人化がねらうもの」

九大職員組合ホームページより http://www.q-union.org/dokuhou/000320.html 「国立大の独法化は、実はまるで根拠のない「国家公務員25%削減」の閣議決 定を前提とした数あわせの道具であることがみえみえである。よりうがった見 方をすれば、中央省庁改革が結局は「大山鳴動してネズミ一匹」状態に陥った 現実を前に、行革シンボルとして郵政・大学・研究所・病院などがスケープゴー トとして使い回されている、と言えなくもない。ところがなお大学内部には、 根拠薄弱な「幻想」(結局大きな変化はないのではないか、研究教育条件が良 くなるのではないか?)や「敗北主義」(もはや反対しても無駄だろう、自業 自得なので仕方がない?)が蔓延しているように見える。この間の国立大独法 化への対抗運動が生み出してきた知見・経験が、いまだ学外ばかりか学内です ら十分に共有されていない状況は一刻も早く克服されねばならない(「独立行 政法人通則法」を大学に適用することの具体的な問題点や危険性については、 すでに多くの分析と批判がなされている。その詳細は「次号につづく」) 。 ...  悠長な話で恐縮だが、私は定員削減の数あわせから出発した議論をいったん キャンセルして、言葉の真の意味での大学改革のために、高等教育という国民 の財産を守り育てていくために、また本当に働きがいのある民主的な職場づく りのために、もう少し時間をかけて開かれた議論をすべき問題だと考えている。 その際に新自由主義的改革の是非を巡って学外の市民と交流・連携することが 必要だ。この期に及んで原則論を説いて何になるという批判に対しては、どん な苦境に立っても原則論を忘れないことこそ大学の矜持ではないのかと答えた い。 ....ここはいったん立ち止まって、もう一度じっくり考えなおしてみるべ きときである。学術文化はひとたび潰れると、復興するのに莫大な時間とコス トがかかることに思いをいたすべきである。将来に禍根を残さない選択がなさ れるよう、読者の皆さんも共にお考えいただければ幸いである。」 ----------------------------------------------------------------------

[6-15]北大電子アンケートの自由意見より

2月に行ったアンケート結果は自由意見を除いて公開されている。自由意見の 欄は北大ネットワークで整理中だた、その一部を紹介していきたい。 「独立行政法人化問題に対する論議で、賛成・反対のいずれの立場に立つ論議 の両方で<1.抜け落ちている論点>と<2.時間的余裕がない制約下で是非 を問う問題点>について述べたい。 1.大学の設置目的は、国の将来を託す学生を教育することであり、大学で 中学・高校の教育を復習するところはないはずである。高度な教育を積み上げ るために必要な知識を判定するための入学試験で、”物理を選択にしても高度 な教育は可能”などと判断すること自体、大学の使命を忘れているものと思わ ざるをえない。  大学の自治とは、社会の将来に向けた取り組みを大学が真摯に行う為に社会 が認めた制度であり、20年以上前から大学が社会をリードして来られなかっ たことを反省し、社会に詫びることが必要であろう。  社会をリードする能力を持つ人材は、大学受験者数の1%くらいであるから、 大学の数と必須受験科目はおのずと決まってくる。  現在の大学で教えていることは、大学で勉強するより、専門学校で勉強する 内容であることが多く、近い将来、大学に関係なくインターネット上で知識を 得るシステムに変わっていくことが予想できる。   2.内部からの改革が過去20年以上できなかった構成員に、短い年限で先を 見越し、社会に責任のとれる判断を期待することの是非は、日本の現代史が教 えてくれることである。」 ----------------------------------------------------------------------

[6-16]独立行政法人化問題掲示板より「国立大学に法人格は必要か?」

発行人のサイトの掲示板に書き込まれたtsubasa-aoba 氏の意見: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/read.bbs?BBS_MSG_000413213632.html 「通則法あるいは麻生委員会の提案の通則法に特例措置を取り入れた国立大 学法人化は論外としても、より規制をはずした法人格でも本当に日本の国立 大学全部に付与されることが日本の高等教育のためになるかということには 大きな疑問を持たざるを得ない。理由はつぎの通りである。 1) 教育研究に市場競争原理がなじまないというのが独法化反対の大きな根 拠である。法人化は同じパイにむらがる機関競争を激化させるだけであり、研 究上の競争とはまったく異なるはなしである。つぶれる大学があってもよいと いうことは市場原理信奉者のまったく無責任な考えである。 2) 大学進学率が増えてユニバーサル化した現実を考えるとき、現在の高校 教育の実態を見て欲しい。高校を法人化して競争させるという発想はどこの地 域でもないと思われる。 東京などの大都市においては私立高校が高校教育に 大きな役割を果たしており、公立あるいは私立間相互の競争原理が支配してい る。しかし、ほとんどの日本の地方ではいまでも公教育依存度がきわめて大き く、住民の意識も公教育に大きな信頼をよせている。市場原理にまかせる発想 はまったくない。なぜ、大学教育だけが競争的環境のもとにおかなければなら ないのか、エリート教育ならともかく高等教育がユニバーサル化されてきてい るだけによく分からない。 3) 400あまりの私立大学が競争的環境で経営しているではないかという ことはこの際反論の根拠にはならない。もちろん必要な公的助成は増やすべき であるとは考えるし、それぞれ建学の精神はあるであろうし、また住民の要請 で進出したなどの理由はあるが、基本的にはかつては経営的に採算が合うとい うことでいわば勝手に設立されたものである。本当に国民の強い要望があって 設立されたものではなく、十分に競争的環境を予測しながらスタートしたもの であり、国立大学のあり方を批判する立場にはない。 4) いまの設置形態でほどほどの自主性や自律性を確保しながら、しかも必 要な大学改革をすすめながら、研究面では国際的な競争力をつけつつある国立 大学をなぜこのままでは駄目なのか理解できない。法人格などなくてもこのよ うな状況で上手に今まででやってきているし、今後もさらに継続可能という、 まさしく日本独特のシステムのどこが不備なのか理解に苦しむところである。 5) 対照に出される、たとえばヨーロッパの大学については人口に比して大 学数が少なく、私立大学もほとんど無く、また日本と比較してエリート教育を 行っているようなところでは大学の自主、自律性の確保のための法人化であっ て市場原理に大学をさらすためのものではない。アメリカは確かに私立大学、 州立大学は市場原理がはたらく競争の場となっている。しかし、州立大学には 必ずしも法人格をもっていない大学もあることはよく知られている。しかし、 社会そのものが契約あるいは競争を基本としているアメリカを大学の制度だけ が手本にするわけにはいかない。 6) 以上のように、国立大学の法人化には大きな問題がある。もし、それで も法人化による競争が好ましいというのであれば、公務員という身分の制限も はずす完全規制撤廃をする必要があるとともに、現在の国立大学間のさまざま な格差を固定化せずに、せめてスタートラインだけは同じにしてもらうことが 最低限の条件である。  上述した議論は、国立大学人の頑迷さを示すものであり、開き直りであると いうことで、通則法適用をかえって誘い出すことになるという批判を受けてい る。しかし、国立大学の法人化が本当に大学を活性化するのかどうかよく吟味 する必要があるのではないだろうか? いまの大学の欠点を批判されるとき、 独立行政法人の制度設計をするときには大学を入れていなかったにもかかわず、 政治的なかけひきでのみものごとを判断し、ろくに考えることもなく決めてい くことしかできない政治家もわれわれが教育したひとりであることを、痛恨の きわみとしている。」 ----------------------------------------------------------------------

[6-17]読者の声

「有馬氏は物理学会独法化シンポジウム(cf. 豊島氏の報告 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00407-arima.html )で『教養部をなぜ皆さんは無くしてしまったのか。東大では教養学部を強 化した。』と仰った由ですが『教養部存続OK、ただしその場合は概算要求 での新規要求は一切認められない』という強圧で、当時全国でも磐石の安泰 ?を誇ったはずの○○大教養部が忽ち空中分解を遂げたというのが実状であ ったと記憶します。大学院重点化も大同小異ではなかったでしょうか。... お金と圧力に屈してしまう大学も不甲斐ないとはおもいますが。ところで、 △△大では□□周年式典に日の丸を揚げないならば招待されても本省役人を 派遣しないぞと言われたそうです。また、即位10周年に日の丸を揚げたか どうかの照会調査が文部省からあったと聞きました。日の丸・君が代は文部 省の教育統制の象徴的意味をもっているように思います。私の大学でも学長 は「本省へ行く度に肩身の狭い思いをする職員が気の毒だ」という変な理屈 で、日の丸やむなし、の空気育成を図っておられるかに私の目には見えます。 ただし、苦悩する全国立大学の学長に同情こそすれ、責める気はしません。 →だから法人化が必要だ?然り、ただし文部省からの独立です。特例法であ ろうが何であろうが、独立行政法人化だけは決して容認できません。 有馬先生、あなたの善意にもかかわらず、あなたのなさったことは、日の丸 君が代通達、国立大学の独立行政法人化の容認、そして、JCO事故での 特攻隊派遣、それだけが私の印象に強く残っています。無念です。」 ----------------------------------------------------------------------

◆意見・論説(独立行政法人化推進の意見)

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[6-18]世耕弘成参議院議員(自民)「我が国の高等教育改革の起爆剤となれ」

JOIN No.35 (文教大学)2000年1.2.3月号「国立大学独立行政法人化の是非を問う」 より抜粋 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00412-join-sekou.html 「今回のような大掛かりな独立行政法人化はわが国の教育界にとってはじめて 体験することであり、それに伴う困難な場面に直面することも十分想定されま す。しかし、その時には恐れず、勇気と自信を持って事態に対処していくべき あり、前向きで柔軟な姿勢をとることにより、必ずや問題を克服できることで しょう。何も実施前から悲観論に立つ必要はありません。そもそも昔から独立 した法人が設置する私立大学などでも、教育・研究の成果を十分に挙げ、発展 していることを忘れてはなりません。逆に国立大学が独立行政法人になること によって、国の組織の一部であるための様々な規制・抑制から開放され、国立 大学自身にとってむしろ未来へ向けた変革のために与えられた絶好の機会であ るとして捉えるべきではないでしょうか。かつて電電公社や国鉄が民営化され る際に、公益性が損なわれるのではないかと様々な悲観論が飛び交いましたが、 逆に両社は経営の自由度を活かして活発なサービス展開を行ない、ユーザー、 株主、従業員に大きなメリットをもたらしました。」 #独立行政法人は廃止・民営化・第三セクター化のための過渡的形態として設 #計されたものだから「大半の国大が将来、地方移管・第三セクター化・民営 #化・廃止されることが我が国の高等教育改革の起爆財となる」という主張で #ある。中央省庁が不要になるところまで地方分権化が完全に行われた場合に #は地方移管は自明な正論となる。 ----------------------------------------------------------------------

[6-19]利根川進氏「積極的な産学連携/公務員型では限界も」

(科学新聞4/7「比較:日米の大学制度」(下)) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00324-tonegawa-1.html#00407 「日本のように選挙で学長を決めていては、個人の能力や見識が発揮できない。 誤解を恐れずに言えば、学問というのは民主主義ではできないというのが私の 考え。能力に応じて、できるか、できないかが決まるもの。五百人の先生方が いて、みんなが同じ能力を持つ者ではないのにもかかわらず一人一票でものを 決めていくのは、悪しき民主主義である。会社の社長は社員が投票して決める わけではない。大学もそういうかたちで移行していくべきである。そうするこ とによって、それぞれの大学の個性が出てくる。」 #全く同じ論理で普通選挙は悪しき民主主義ということにならないか。 ----------------------------------------------------------------------

◆発行者より

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[6-20]◎小玉重夫著「教育改革と公共性」東京大学出版会1999、

ISBN 4-13-056098-0  市場主義の教育への適用の背景にある思想とその誤りを正す種々の思想的努 力の概要を知ることができた。ボウルズ&ギンタスの「隠れたカリキュラム」 という視点は鋭い。それに基づいてボウルズ&ギンタスは「学校の社会的な機 能のメカニズムを、伝達される知識内容ではなく、そのような伝達の過程を成 り立たしめる制度形成に見出した。(p80)」。さらに、市場の意義を根底から 正す「競合的交換」(p136 提供される財・サービスの大きさが契約において は決定されず、したがって契約の履行に不確実性がはらまれているような交換 関係、典型的事例として労働と信用が挙げられる)という相を見出し民主主義 の新しい形態を呈示した: ------p137-238------------------------------------------------------- p137「競合的交換の場に民主主義を拡大することによってもたらされる民主主 義的な経済を特徴づけるのは、次の2つの原理である。一つは富の所有と権力 行使とを分離すること、すなわち、「購買力以外のいかなる権力も、富の所有 によっては付与されない、したがって、民主主義的経済においては、富の差異 は、生活水準の差異をもたらしはするが、富んでいるものの富んでいないもの への支配力をもたらしはしない」という原理である。もう一つは、「労働する 際に、説明責任〔アカウンタビリティ)を伴わない権威への服従が強いられる べきではない」という原理である。 この経済的民主主義における制度的指標としては、「民主主義的な経済計画 システムの確立」「いかなる従属的関係からも独立した適切な生活水準の提供」、 「資本の配分過程における富と権力との切断」、「民主主義的企業の確立」が 挙げられる。また、これらの目標の実現に際して、「ある種の公的な所有と富 の再配分は手段としては効果的であるにしても、財産所有の社会化それ自体を 目的とはしない」とされる。 ----引用終わり-------------------------------------------------------- #20世紀後半は、財界による教育政策コントロールが年を追うごとに強まっ #て大学の独立行政法人化で完璧になると言えよう。この危機に目指すべき方 #向の一つが経済的民主主義のような方向ではあるまいか。これまでの教育を #歪めてきた根本を変えないことには、日本の教育全体の先は危ないように思 #える。小手先の思いつきの教育改革をストップすることが今必要とされる唯 #一の教育改革である。 ----------------------------------------------------------------------

[6-21]バイオ研究者に向けた紹介記事

http://biotech1.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/ws.exe/websql.dir/100HP/100hpdetail.hts?id=824&site=btj&gid=24" 「政府が昨年1月より行政改革の一環として検討している、国立大学の独立 行政法人化政策は、明治以来の日本の高等教育・学術研究体制を根本から変 えるような大変革です。日本の未来にとって測り知れないほどの重要性を持っ ていますが、経済危機・介護保険・選挙制度等の多数の国民が直接関係する 大きな話題の陰に隠れて関心をほとんど持たれていません。そのため、学術 研究・高等教育に関しては素人である政治家や官僚達は、それぞれの利害だ けに基づく方針を、慎重に検討することなしに何の気兼ねもなく実現してし まう危険性は少なくありません。そのようなことになると、日本の知的風土 に大きな歪みを残すことになり兼ねません。 Biotech Japan をご覧になる方は国立大学の法人化に賛成の方が多いはずです が、「独立行政法人化」や「国立大学法人化」などの内容をよく知らないで賛 成されている方も中にはいらっしゃるのではないかと推測しています。ぜひ、 政府が提案している法人化の中身を御自身で確認し、法人化で実現されると御 考えのことが本当に実現できるような法人化なのか、その点を吟味して頂ける と嬉しいです。政府から吹いている順風の中におられるバイオ関係の研究者の 方々、特に大学外に居られる方が、広い長期的な視野に立った発言をされるこ とが日本の科学技術研究環境を、政・官・財の視座ではなく研究者の視座から みて、良い方向に改変するのに決定的な意義を持つと思っています。」 ----------------------------------------------------------------------

◆謝辞

以下を主な情報源としています。 ・メーリングリスト高等教育フォーラム he-forum http://www.dango.ne.jp/fuj/mlopen.htm ・メーリングリスト大学改革情報 reform http://www.edugeo.miyazaki-u.ac.jp/reform/reform-ML.html ・全大教近畿速報 http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/index.htm ・メールマガジン【行政・政治・団体ホームページ更新情報】 http://www.urban.ne.jp/home/space/mag.htm ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 (北海道大学教員) Homepage:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/ E-address: tujisita@geocities.co.jp 申込・解除手続き http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/ バックナンバー http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html 掲示板:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/room.bbs 発行部数(2000.4.17現在 CocodeMail:191, Mag2:306 ) ===================================================================== End of Weekly Reports No.6 2000-4-17 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています** ====================================================================