お便り 2008.10.31

皆様お元気で過ごされていらっしゃいますか。

 秋空はどこまでも、高く広く澄み渡り、世界が一つに繋がっている事を思
います。鳶になって悠然と空を舞いながら、みんなの上をゆっくり旋回して
います。もし僕を見つけたら手を振ってください。

 僕もこの11月で29歳になります。30歳になるまでに自分のしたい事を
たくさん経験して、自分の進路をはっきり決めたいと思っておりました。
 色々な仕事を経験して、多くの友達に出会い、たくさん話をして、生きるこ
と死ぬること、考えている事はたくさんありました。

 その中でも、僕にとってお婆ちゃんの死を通して学んだ事は、何にも替えら
れない貴重な体験でした。
 その時は、ニュージーランドにワーキングホリデーの留学を決めており、
近くの老健施設で介護士見習の仕事をしている時と重なります。
 昼間は、施設のお年寄りをお風呂に入れたり、食事の介助をしたり、オムツ
交換をしたり、初めて経験する事ばかりで、戸惑いながらもお年寄りの方がこ
んな自分でも頼りにしてくれ、手を握り感謝の言葉をかけてくれる事に、少し
遣り甲斐を見出していました。
 夜は、祖母が癌で入院しており、余命僅かな状態でしたので、泊り込みで看
病しました。母は3交替勤務をしているので、泊まる事が出来ないため、伯
母さんや従弟達と交代でお世話をしました。
 腹水が溜まり、両足もパンパンに腫れ上がり、一人では身動き出来ない状態
でしたが、最後までオムツを嫌がりトイレに行っていました。夜中に何度もト
イレ介助をしていましたが、「証生が一番良く看病してくれる。」とお婆ちゃ
んが言ってくれるので、昼間の勤務で疲れていても一番たくさんお婆ちゃん
の世話をしました。
 苦しいけれど支えてくれる家族がいることの幸せを感じて、お婆さんは神
様の御許に召されていきました。
 しかし、老健施設では、身寄りが無かったり、家族がいても、あまり面会に
来てくれなかったり、寂しい思いで暮らしているお年寄りが多くて、どうにか
ならんのかなぁーと、夕食の時家族で話す事もよくありました。
 介護を仕事をすることで、お母さんの仕事の大変さが判り、そのうえ家の事
もするなんて、僕には出来ないなぁーと思っていました。
 職場の人から借りた、「寝たきり地獄はもう嫌じゃ」の本を読んで、お年よ
りの気持ちが少し判りかけたところです。
 その頃の僕の口癖は、トラウマになる・パンドラの箱を開けた、だったけ。
図書館の本を全て読み干す勢いで借りてきて読みました。どの本に、その事
が書いてあったかなんて、いちいち言いませんがー。
 たくさんの思い出と、多くの友達の見送りを受けて、ニュージーランドに旅
立ちました。
 旅立ちの飛行機の中から、お兄さん的な存在になる、素敵なお友達との出会
いがありました。僕との思い出はいつの日にか、彼から書いていただく事に
します。

 今日は、10月という一つの区切り目に、心の内なる平和について少し考え
てみたいと思いました。何気なく送る毎日、その中に幸せが隠れている事に気
付いて、大切に過ごしていきたいと思います。
 みなさまの健康と、平和な世界が訪れることを祈ります。
                     香田証生  代筆 節子