お便り 2009.10.31

メッセージを寄せられた皆様へ
サイト管理人

ご両親からお手紙を頂きました。

 いつも心に思って下さっているサイトの皆様、お元気ですか?
 事件から、5年を終えようとしています。

 少し振り返る余裕が出来ましたが、春の田植え、秋の収穫の時期がくると、証
生が手伝ってくれていた事を埋めることが出来ずに、無理やりなんとかして
いるところです。

 最近思う事は、証生は絶対、最後まで生きることを諦めていなかったと思
います。旅立つ前にいろいろな事に挑戦していたのは、その生きることのた
めだったのかと思わされます。

 まず始めたのは、ランニングと禁煙からでしょうか。ランニングをしている
と、タバコの影響が肺にくる事が判り止めました。
 頭もフルに使いたいと、利き手交換を行い左手で食事がスムーズに出来るよ
うになりました。普段使わない右脳を使い、本をたくさん読もうとして速読の
本、暗記術の本も読んでいました。図書館に通いたくさんの本を借りてきては
読んでいました。こんな本絶対借りる人はいないよね、と言って貸し出し名
簿を見ると、一人名前が書いてあり、どんな人だろうと話していた事を思い出
します。
 仕事は塗装屋さんで働いていましたが、仕事帰りお酒を呑むのが好きな先
輩が毎日(父親と同じくらいの年齢)、ビールを奢って下さっていたようです。
本人は、飲むと眠くなるし、勉強(英語)も進まないし、ランニングもきつくなる
から断りたいけど、話を聞いてあげなくてはいけない状況だったようです。
 だから、ここでアルバイトを除けば、自宅でのお酒は多分?呑んではいなか
ったかなと思います。
 ほかには、泳げるようになった事でしょうか。小中学校時代は、夏にはとびひ
が出来て、プールに入る事が出来ずに上達しなかったようです。旅立つ1年く
らい前から泳げるようになったのではないでしょうか。イスラエルのテルア
ビブの海でも泳いだのではないでしょうか?
 何でもがむしゃらに吸収しようとしていたようです。スノーボード・フリ
ークライミングなども友達と楽しく遊んでいました。
 車も1年間フルに乗り回し、次の車検が受けられないくらい、外見は綺麗
ですが、中身はポンコツになるまで乗り回したようです。しかし、何かを決
めてからは、お金を貯める為、車は要らないと言って廃車してしまいました。
 青春18切符で独り北海道まで行ったり、お金を掛けずに楽しむ事はしてい
たようです。
 日本での最後の3ヶ月あまり、老健施設で働いていました。パート職員
だったし、男の子で力もありましたから、週3回の入浴日はフル回転で大変
だったようです。お年寄りとの暖かい交流もありましたが、あんな所で最後
を終わりたくないと言うのが本音だったようです。借りてきた本に、寝たきり
地獄はもう嫌じゃと言う題名の本がありました。このお年より達を何とかし
たいと思っても、何もできないジレンマも有りましたが、夢もたくさん描い
ていたと思います。

 ニュージーでもニュース雑誌を読み、からだを鍛え、空手を習いお友達も
たくさん作りました。生き抜く為に必要な事は何でもしていたのでは無いで
しょうか。最悪の状況が起こった時に、何でも出来るように、事前に出来る
事はやっていたと思います。

 最後の最期まで諦めず、捕われてもなお、友達になろうとしていたので
はないかと思います。雑誌かネットの情報を証生の友達が伝えてくれた事は、最
期の昼ご飯もちゃんと食べていたと言う事。親しくなり和やかな状況で食べ
たのか、最期まで体力を温存するために落ち着いて考えて食べたのかは、判り
ませんが、決して最期まで諦めていない事を思います。

近年自殺する人が増えております。たった一度だけの人生ですから、自分から
投げ出す事だけはしないで欲しいと思っています。

 事件以来、我家にも色々な方がやってきたり、電話をしてこられたりされま
した。自分の境遇と事件が重なり、深く傷つきながらも立ち直ろうと一生懸命
頑張っておられる様子が伺えました。

 五年の月日が事件を風化させても、証生の笑顔はいつまでも永遠です。

               香田 真澄・節子

なお、このメッセージに手書きで以下のように書き添えられています。

プリンターが故障して、この手紙は没にして、書き直して
手書きの物だけを送ろうと思っていましたが、今日は
機嫌を直して、動いてくれたので、どちらも中途半端な
手紙になりましたが、送付させて頂きました。
一年振りのお便りになりますが、お元気で
いらっしゃしますか?

先日は、証生の妹と同じ16歳になられる方から
お手紙を頂きました。

当時、小学校5年生だったのですから、記憶も薄く
16歳になられ、インターネットでの出会いがあった
様ですね。毎日、証生の事を調べるうちに、
若い方々が、真剣に考えてサイトに投稿を
寄せられているページに出会ったとのこと、
多分、このサイトではないかなと思っています。

毎年、複雑な思いで、この季節を迎えております。
未だに信じられない思いと、証生は、私達に
何を、どのようにして欲しいと思っているのかを
考えるのですが、何も答えは教えてくれません。

10月末〜11月初旬の空は青く澄み渡り
この空は、地球の裏側まで続き、異国の地でも
平和を待ち望み、戦闘機の飛ばない空を
どんなに願っているのだろうかと思うと
心が傷みます。

何も出来ず、証生からの答えも探せないまま、
今は、ただ、証生の事を心にとめて、悩んだり
話かけたいと、我家を尋ねて下さる方に
心を添わせるのみです。

新聞に、フランス在住の日本人の方が
31編の詩集を出され、そのうちの3詩が
証生の事を詞ったとの記事が載っていました。
地方紙面ですから、全国版ではないと思いますので、
コピーを同封しています。
まだ我家には、詩集は届いていませんので
内容は判りません。

季節の変わり目は、体調を崩す事も多く、又、
インフルエンザも流っておりますので、健康に
留意されてお過ごしください。

      香田 真澄・節子