通信ログ
Subject: [kd 03-02-28] 法人化関連法案を文科省が公表
Date: Fri, 28 Feb 2003 

国公立大学通信 2003.02.28(木)

--[kd 03-02-28 目次]--------------------------------------------
[1] 千葉大学有志から閣僚への要望書2/27
[2] 小林正彦東職委員長(前東京大学副学長):法人化法案の新たな問題点
[3] 毎日2/27 国立大学:文科省、法人化法案を公表 経営協議会新設へ  
[4] 日経2/27  学長の権限強化・国立大法人化法案 
[2] 千葉大学有志の活動報告 2/27
[6] 市川昭午「日本の大学ーーその過去形と未来形ーー」より
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各位

法案が昨日公表されました[3,4]。法案は約400ページにのぼる膨大なもの
だそうです。本日、閣議決定が予定されていますが、当事者である国立大学の
「代表」であり文科省の「一部」とも言える国大協が未了承のまま法案が国会
に提出されることは、無理に無理を重ねている国立大学法人化強行軍の危うさ
を象徴するもののように感じます。

  昨日、北大では大学主催の「法人化全学説明会」が午後5時から約2時間開
催されました。1999年に独立行政法人化政策が現実的になって以来始めて
の大学当局主催全学集会でしたが、内容は「法案概要について国大協や学長会
議において北大として意見を述べない理由の説明会」でしたが、参加者との対
話の時間を30分ほど設けられていた点は運営側の誠意を示すものあったと思
います。最初に実質的に常勤の仕事を長年しておられる臨時職員の方が質問さ
れ、その後、教官だけでなく事務官・技官の方々も種々の発言をされましたの
で、参加できなかった多くの方々のためにテープリライト記録を公開して頂き
たいと思います。

  質疑でも述べたことですが、北大では2年前に評議会が設置した「法人化検
討WG」が独立行政法人化について検討し中間報告をまとめていますが、その
中で、国立大学法人大学は、放送学園大学のような間接設置方式とは違い、国
が直接設置する法人大学であることを強調していました。間接方式となった法
案について北大として当然意見を述べるべきではないでしょうか。

  もしも法技術的に間接方式以外の選択肢がないのであれば、北大の法人化検
討WGや国大協専門委員会に加っていた法学系教官には当然わかっていたでしょ
うから、それについて沈黙していたことは大学社会全体への背信行為になりま
す。もしも法技術的にそれ以外の選択肢があるのであれば、この法案概要は受
け入れられないと意見表明することが、北大や国大協の最低限の義務ではない
でしょうか。

  もちろん、最終的には国会が判断することですが、大学自身の真の望みを表
明することは、国会議員が法案を的確に審議するときに何よりも必要とするこ
とではないでしょうか。最終的に大学の考えが認められるかどうか、それは、
別問題です。
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[1] 「国立大学法人法案」に関する閣議決定への要望(千葉大学有志)
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[he-forum 05136] 2003.2.27

「田栗 正章(千葉大学理学部)です。
千葉大学の有志は、28日に予定されている「国立大学法人法案」についての閣議
決定に対して、それを行わないことを要望する文書を、首相官邸ホームページの
「ご意見募集」欄に送付しました。ご参考までに、その内容をご報告します。

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 首相官邸 御中

             「国立大学法人化問題」についての千葉大学有志
             の集まり(代表:千葉大学文学部長 南塚 信吾
             263-8522 千葉市稲毛区弥生町 1-33
             千葉大学 文学部;Tel:043-290-2270;
             E-mail:shingo@bun.L.chiba-u.ac.jp)

拝啓

 小泉内閣閣僚の皆様には、国政に関わる重要諸問題に、日頃尽力されているこ
とに敬意を表します。

 さてご存知のように、国立大学の法人化問題については、文部科学省・国立大
学協会(以下「国大協」)を中心に、各国立大学においても鋭意検討を重ねてお
ります。しかし2月24日開催の国大協理事会においては、同件についての国立大
学の合意を得るにはいたりませんでした。これは、1月31日付けで各大学に配布
された「国立大学法人法案の概要」(以下「概要」)の内容について、大学の教
育・研究に直接携わる者として、いくつかの重要な点において深い危惧の念を抱
いている大学人が、相当数いるためであります。

 この件については、私たち千葉大学有志も声明を公表し、署名活動を行ってま
いりました。[http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/webtibadaiyuusi03.html
参照;その他千葉大学関連では「国立大学法人法案の概要」に関する千葉大学理
学部の見解(http://www.s.chiba-u.ac.jp),「国立大学法人法案の概要」への
文学部将来構想委員会の見解
(http://www.L.chiba-u.ac.jp/jp/hojingai.html)を参照]

 その主要な点は、(1)「教学」と「経営」の分離による教育・研究の自律性に
対する懸念(特に基礎科学について)、(2)「学長権限の強大化」により大学が
個人の資質に左右されてしまうことへの懸念、であります。

 同様な懸念は、各国立大学においても相当強いものがあります。しかるに国大
協執行部は、当初総会を開催することなく国大協としての総意を取りまとめよう
としましたが、2月24日開催の理事会において合意を得ることはできませんでし
た。

 以上のように、「概要」に基づく「国立大学法人法案」については、国大協お
よび各国立大学における十分なる検討を済ませたとは、到底言えない状況にある
と考えます。特に「国立大学法人法案」すら各国立大学に提示されていない現状
では、慎重に議論が進められているとは言えない段階にあると考えます。

 小泉内閣閣僚各位におかれましては、上記のような現況をご賢察いただき、2
月28日に予定されている閣議においては、本件に関する決定を行われないよう、
切にお願い申し上げます。
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[2] 小林正彦東職委員長(前東京大学副学長):法人化法案の新たな問題点
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre44444.html
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「                         2003年2月27日
                   東職委員長 小林 正彦

 法人化法案の新たな問題点

 2月27日文部科学省から国立大学法人法案が公表された。すでに指摘されてき
たような多くの重大な問題点をもつ法案であるが、今回の法案には、2月7日付け
で首都圏ネットによって公開された法案(骨子素案)にもなかった新しい問題が
含まれている。

 法案骨子素案にあった、「学部及び研究科等」の項目は完全に脱落した。「各
国立大学に置く学部及び研究科については、文部科学省令で定める」という骨子
素案の条文がなくなり、役員会の権限に加えられた。今後の学部・学科・研究科
等の設置、改廃等は省令によらず、役員会の決定に基づき、学校教育法、同施行
規則、大学設置基準に従った手続きでなされることになると思われる。

 遠山プラン以来大学改革の柱の一つになっている重点投資と研究教育分野のス
クラップ・アンド・ビルドを容易にするねらいがあるものと思われる。」
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[3] 毎日新聞2/27 国立大学:文科省、法人化法案を公表 経営協議会新設へ  
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030227mainiti35.html
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「文部科学省は27日、国立大学を独立法人化するための「国立大学法人化法案」
を公表した。経営について審議する「経営協議会」を各大学に新設して大学外の
委員を過半数置くことや、文科省内に評価委員会を設けて、第三者評価を実施す
ることなどが盛り込まれている。同省は今通常国会に法案を提出し、来年4月か
らの法人化を目指す。・・・」
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[4] 日経2/27  学長の権限強化・国立大法人化法案 
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030227nikkei38.html
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「文部科学省は27日、2004年4月から国立大学を法人化するための法案をまとめ、
事務次官会議に報告した。学長に役員会理事の解任権を与える半面、文科相は職
務上の義務違反や業績悪化を理由に学長を解任できる。法人化で学長は従来より
大きな権限を与えられる半面、経営面での責任も厳しく問われることになる。法
案は28日に閣議決定する。

・・・独立行政法人通則法も準用、文科相が立ち入り検査で帳簿類を調べることも可
能にする。・・・」
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[5]  [he-forum 5134] 千葉大学有志の活動報告 2/27
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030227tiba343.html
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・・・
 2月25日付けの独行法反対首都圏ネットワーク
(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030226syuto.html)によれば、「国
大協総会開催」の確認がなされたとのことであります。しかし同ネットワークに
よれば、この件に関する閣議決定は2月28日に行われようとしているとのことで
あり、このままでは「概要」が何ら修正されることなく閣議決定される可能性が
高いと言えます。したがって私たちは、早急に「28日の閣議決定は行わないこと」
を要求する意見を、しかるべき宛先に送付すべきではないでしょうか。千葉大学
有志の会も、早急に意見をまとめたいと考えています。」
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[6] 市川昭午「日本の大学ーーその過去形と未来形ーー」より
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高等教育研究叢書71「大学組織の再構築」2002.11.1 発行
編者 広島大学高等教育研究開発センター(TEL:0824-24-6240)
ISBN 4-938664-71-2

広大高等教育研究開発センター第29回研究員集会2001.11
市川昭午「日本の大学ーーその過去形と未来形ーー」

2.現在形の大学 限りない多様化と理念の消失

「・・・第五は社会、特に企業への直接的サービスが求められるようになった
ことです。近代大学では研究・教育の延長線上に結果として社会サービス機能
が出現することはあっても,大学機能とは見なされてはきませんでした。しか
し,「現在形の大学」では運営の効率化とともに社会サービスの必要性が強調
されようになりました。

その理由として挙げられるのが,“これまで大学が社会から遊離した象牙の塔
であり,世間知らずで,お高くとまっていた”ということです。しかし,この
謗りは必ずしも当っていません。前述したように日本の高等教育はむしろ実学
志向の傾向が強かったからです。社会から遊離している状況がまったく見られ
ないわけではなかったにしても,せいぜい“一歩離れて,一段高い”程度にす
ぎませんでした。」

3.未来形の大学 知の企業体化と大学の融解


「・・・ 大学関係者にしばしば見られる国立大学が法人格をもてばさまざまな
制約から自由になれるという期待は幻想にすぎません。実施機関の裁量権限を一
定の枠内で拡大し,国が評価権限をもつのは,運営の効率化を促すとともに現場
のアカウンタビリティを求めるもので,政府の監督権限を拡大するための手法で
す。独立行政法人はエ一ジェンシーの日本版だといわれますが,エ一ジェンシー
はあくまでもプリンシパル(委託者)のエ一ジェント(受託者)なのです。

 むろん,「過去形の大学」であろうと,「現在形の大学」であろうと,さま
ざまな形の評価を受けてきました。しかし,これまでと違うのは評価が制度化
された日常的な活動となり,その結果が大学に対する資源配分と密接に結びつ
くようになることです。わが国の大学評価はイギリスがモデルだといわれてい
ますが,そのイギリスではすでにさまざまな問題が生じており,大学側の不満
が高まり,抵抗が生じていることが報告されています。中には大学評価制度自
体が存亡の岐路に立たされているという人さえいます。

 わが国では大学評価・学位授与機構という巨大な大学評価機関が生まれまし
た。しかし,大学評価を財源配分に結びつけることで効率性を増進できるとい
うのは多分に幻想にすぎません。正確な評価をしようとすればするほど各大学
に膨大な作業を強いる必要が生じるし,評価が自己目的化するなどかえって効
率性の向上を阻害する虞があります。

  わが国でも大学が監督官庁に対して膨大な報告文書を頻繁に出さなければな
らなくなり,教授が研究や教育よりも中期計画や自己評価の報告書作成に忙し
あい時代がまもなくやってくるでしょう。官僚統制が進むにつれて学内には関
係官庁の官僚と結託して縄張りを拡張するやり手が従来以上に幅を利かすこと
になるかもしれません。・・・」


「・・・大学が「知の共同体」から「知の企業体」ヘの変身に成功したとしても,
知識資本主義の世界では企業の中からも「知の企業体」となるものが出てきましょ
う。両者が競合した場合どちらが勝者となるかも興味のあるところですが,それ
以上に問題なのは両者は区別できなくなるのではないかということです。

 すでに述べましたように,日本の大学は社会から遊離しているといいまして
も,“一歩離れて,一段高い”ところに位置していたにすぎません。これが
“数歩離れて,数段高い”のであれば,“一歩近づき,一段降りる”ことにも
意味がありますし,それでもなお大学はアイデンティティを保持できます。し
かし,“一歩離れて,一段高い”状態から“一歩近づき,一段降りる”ならば
どうなるでしょうか。大学は自己のアイデンティティを見失い,社会の中に消
えていくに違いありません。30数年前のキャンパスでは大学の解体が熱っぼ
く叫ばれましたが,これから30数年後には大学は解体されるのではなく,融
解している確率の方が高いといえましょう。・・・」
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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