通信ログ
国公立大学通信 2003年5月8日(木)

--[kd 03-05-07 目次]-----------------------------------------------------
[1] 衆議院文部科学委員会5/7参考人質疑(ビデオライブラリー)
  [1-1] 田中弘充(前鹿児島大学長)5/7
  [1-2] 山岸駿介(教育ジャーナリスト)5/7
[2] 鹿児島大学理学部教授会から衆議院文部科学委員会への要請5/7
[3] 「国立大学の法人化問題」に関する千葉大学理学部の見解 5/6
[4] 全大教九州から衆議院文部科学委員会への要請 5/7
[5] 鬼界彰夫「「国立大学法人法案」批判要綱―全国民が反対すべき理由」(下)
----------------------------------------------------------------------

国立大学・大学共同利用機関全体投票の予定していた期間を終了しました。投
票数は教官が2391名で、全教官数の約4%です。広報が不十分であったことや、
投票の仕方が若干複雑だったために敬遠された方もあったようです。しかし、
最終的賛否の比率「1:35」は、途中経過でもだいたい一定していましたし、大
学ドメイン名だけ記録していますが、参加者所属機関数は101ありましたので、
国立学校全体の意見分布をある程度反映しているように思います。

ひき続き「国立大学・大学共同利用機関の全体投票」は継続し広報活動を強め
投票率を高める一方、第二期は「ac.jp ドメイン全体投票」とする準備をして
います。学セクターに属する者全員が、国立大学法人法案の当事者である、と
いう視点で実施します。

              ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

昨日の衆議院文部科学委員会の一部をオンラインビデオで見ましたが、教育
ジャーナリストの山岸駿介氏[1-2]が、マスメディアがいまだにこの問題につ
いて本格的な報道をしていないことに激怒しておられたのが印象的でした。ま
た、永井道雄氏の大学公社化案における「新幹線方式」(新幹線と従来線の併
存と同様に、新旧制度を平行させる)に言及し、独法化したいところは独法化
して改革し、そうでないところは国立大学で改革する、というのが本当の競争
であり、日本という国にとってもリスクが少い、と主張されました。(編集人)


--[第一期全体投票結果 2003.4.28-5.7]-------------------------------------
 賛成   79(教官  51,事務官 5,技官  3,非常勤職員 5,院生12,学生 3)
 反対 2851(教官2340,事務官89,技官171,非常勤職員55,院生125,学生71)
cf: 理由の分布は http://ac-net.org/rfr を参照。
----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
[1] 衆議院文部科学委員会5/7参考人質疑(ビデオライブラリー)
  [1-1] 田中弘充(前鹿児島大学長)
http://www.shugiintv.go.jp/rm.ram?deli_id=20530&media_type=rb&time=00:26:04.3
  [1-2] 山岸駿介(教育ジャーナリスト)
http://www.shugiintv.go.jp/rm.ram?deli_id=20530&media_type=rb&time=00:56:12.5

----------------------------------------------------------------------
[2] 鹿児島大学理学部教授会から衆議院文部科学委員会への要請5/7
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030507kagosima.html
----------------------------------------------------------------------
「国立大学法人法案の慎重審議をお願いします

衆議院文部科学委員会委員長
古屋圭司 殿
委員各位

貴委員会におかれましては、国立大学法人法案の審議がなされておりますが、
私ども、鹿児島大学理学部教員はこの法案についてたいへん憂慮しております。

これまでに各大学の教授会を含む数多くの団体と個人からこの法案の問題点が
指摘され、反対、あるいは慎重な検討を要望する声明が出されてきました。鹿
児島大学理学部でも

『新しい「国立大学法人」像について』に関する見解
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/jhsrc/opinion.html
(2002年5月15日)
でこの問題についての意見を表明してきました。

特に、その後の法案の具体的な条文については、中期目標を文部科学大臣が定
め示すことが明らかになっており、私達の危惧が現実のものとなっていると考
えています。この法案は、基礎科学、長いスパンの研究などを阻害し、地方国
立大学の存立を危うくするものとならないか、また、このような環境の中で育
つ学生が、自由に発想し、未来を切り開いていく知的創造力を持てなくなるの
ではないかなど、多くの疑念を抱かせるものとなっております。

貴委員会におかれましては、「教育は国家百年の計」であることを考慮され、
なにとぞ、慎重な審議をしていただくようお願いいたします。

以下に、2002年の私達の「見解」を添付いたします。ご一読いただければ幸い
です。

平成15年5月7日

鹿児島大学理学部教授会
-------------------------------------------------------------------
「最近の大学改革の動きに対する鹿児島大学理学部の見解」2001.9.19
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/jhsrc/statement/index.html
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
[3] 「国立大学の法人化問題」に関する千葉大学理学部の見解 5/6
        ---「国立大学法人法案」についての十分な議論を!---
       http://www.s.chiba-u.ac.jp/dokuhoka/20030506.html
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
[4] 全大教九州から衆議院文部科学委員会への要請 5/7
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030507kyuusyuutoku.html
----------------------------------------------------------------------
                                                      2003年5月7日
衆議院文部科学委員会委員長、理事、委員 各位
 
「国立大学法人法案」と「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」
                         の廃案の要請

  私たち、全国大学高専教職員組合九州地区協議会(全大教九州)は、全国大
学高専教職員組合(全大教、国立大学教職員組合約90団体、国立高専教職員組
合約20団体)に加盟する、九州の教職員組合をもとにつくられています。

  現在、衆議院文部科学委員会において、標記の法案及び関連法案が審議され
ていますが、是非、それを廃案にしていただきたく、全大教九州全加盟単組お
よび九州地区私立大学教職員組合連合と国家公務員労働組合九州ブロック協議
会の連名で、本要請書を提出します。

この法案が成立した場合、次のような深刻な問題が生じます。

1. 学費の高騰によって、九州各県の若者の高等教育を受ける権利が著しく
侵害されます。
 ・・・・・・

2. 地方国立大学が統廃合され、国立大学のない県が九州に生れる可能性が
あります。
 ・・・・・・

3. 文部科学省による大学や高専の教育研究活動への統制が強化されます。
 ・・・・・・

4.地方国立大学や高専が官僚の天下り先となり、人事面からも文科省の統制
が強化されます。
 ・・・・・・

貴職におかれましては、地方各県の実状やこの法案がもつ問題点を是非ご省察いただ
き、「国立大学法人法案」「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」及び関連法案
を廃案としていただきますようお願い致します。

全国大学高専教職員組合九州地区協議会議長 気賀沢忠夫/九州工業大学教職
員組合委員長 坂本哲三/福岡教育大学教職員組合委員長代行 鈴木典夫/九州
大学教職員組合委員長 中江 洋/佐賀大学教職員組合委員長 白武義治/長崎
大学教職員組合委員長 宮原 彬/長崎大学医学系教職員組合委員長 松本逸郎/
熊本大学教職員組合委員長代行 堀浩太郎/大分大学教職員組合委員長 西本一
雄/宮崎大学教職員組合委員長 橋本修輔/鹿児島大学教職員組合委員長 山根
正気/琉球大学医学部職員労働組合委員長 比嘉元子/国立有明工業高等専門
学校教職員組合委員長 新谷肇一/国立大分工業高等専門学校教職員組合委員
長 工藤康紀/国立都城工業高等専門学校教職員組合委員長 剣田貫治/福岡女
子大学教員組合委員長 馬塲弘利/長崎県立大学教員組合委員長 綾木歳一/鹿
児島県立短期大学教職員組合執行委員長 長谷部剛
九州地区私立大学教職員組合連合執行委員長	山口一生	
国家公務員労働組合九州ブロック協議会	議長	南部祥隆」
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
[5] 鬼界彰夫:「国立大学法人法案」批判要綱―全国民が反対すべき理由(下)
   全文:http://ac-net.org/dgh/03/505-kikai.php
----------------------------------------------------------------------
目次 (*は前号)
*1.「国立大学法人法」に向き合い、批判しよう
*2. 法案批判の前に−大学運営と学長に関する基礎的知識
*3.「法人法」批判その1−「理事」
4.「法人法」批判その2−学長の選出方法
5.「法人法」批判その3−「評価委員会」
----------------------------------------

「4.「法人法」批判その2−学長の選出方法

残念ながら「法人法」はこの点に関しても自身が掲げる目的を大きく裏切ってい
るといわざるを得ません。前項で見たように大学運営に関する「法人法」の基本
思想は学長に権限を集中させるということです。このこと自身は組織の運営方法
として必ずしも批判の対象となるものではありません。例えばサッカーの日本代
表チームの監督はジーコ氏ですが、代表チームの運営に関して、メンバーの選定
から強化日程に関するまでほぼ全権が彼に与えられていますが、そのことによっ
て日本サッカー協会を批判する人はいません。問題となるのは権限を与えられた
組織の長の業績を評価し、その再任を認めるかどうかという判断のプロセスです。
権限集中型の組織運営がうまく機能するための最大のポイントは、組織の長の運
営実績に対して独立した客観的評価がなされ、「うまく運営した人は再任される
が、まずく運営した人は再任されない」という単純な原則が厳格に貫かれること
です。もしジーコ監督の任期を延長するかどうかを判断する組織のメンバーにジー
コ監督自身や、彼が選んだ人物が入っていたらどうなるでしょうか。サッカー協
会の幹部は見識を疑われて、批判の嵐にさらされることは間違いありません。そ
れは演技者と審判が同一人物であるに等しく、常識的に考えてあり得ないことだ
からです。ところが学長選出に関して「法人法」はこうしたあり得ない方法を規
定しているのです。

  「法人法」第十二条第一項、第二項は学長の選出について、文部科学大臣が
各大学の「学長選考会議」の申し出に基づいて任命すると規定した上で、各大学
の学長選考会議が(1)経営協議会においてその学外選出委員の中から選ばれた
委員、(2)教育研究評議会において理事、部局長の中から選ばれた委員、が同
数で構成すると規定しています。上で述べたように経営協議会とは基本的に学長
の意を体現する執行機関です。従って「法人法」の規定する学長選考会議は、学
長とその執行部の運営実績を客観的に判断するために必要な独立性を欠いている
ことになります。つまり「法人法」では、強大な権限を持つ学長に対するる最も
重要なチェック機構が予め骨抜きにされているのです。そればかりではありませ
ん、驚くべきことに第十二条第三項は付帯条項として、学長選考会議が決定すれ
ば学長とその理事を学長選考会議の委員とすることができ、彼らは会議の委員総
数の三分の一まで占めることができるとしています。これは先ほどの例を用いれ
ば、ジーコ監督の任期を延長するかどうかを決定する会議のメンバーにジーコ監
督とそのコーチがなるというに等しく、被告と裁判官が同一人物であるようなも
のです。巨大な学長の権限のチェック機構としては八百長まがいの仕組みだとい
わなければなりません。ナンセンスとしか言いようのないこの条項だけをとって
みても「法人法」のいかさま性が明らかですが、それに加え、こうした条項を恥
ずかしげもなく掲げている「法人法」は日本の諸制度の公正性と透明性に対する
国際社会の信頼に大きな影を投げかけるものです。もし日本社会がこうした条文
を含む法律を容認するような社会であれば、そこにおける様々な評価や判断の根
拠は、予め決まっている結論にとってつけた飾りだと国際社会は考えるのではな
いでしょうか。大学においてすらそうであれば、日本社会に公正で客観的な判断
と評価は存在しないと世界の人々は考えるでしょう。このように、日本が発する
情報に対する信頼性を根底的に失墜させる恐れがあるという点においても、「法
人法」は決して許してはならないものです。

5. 「法人法」批判その3−「評価委員会」

「法人法」は強大な学長の権限に対する二つのチェック機構を設けています。学
長の選出過程と文科大臣による重要事項の認可です。上で明らかになったように
前者は全く内実がありませんから、後者が学長に対する唯一の現実的規制となり
ます。その詳細を見るとき、「法人法」が具体的にどのような大学運営をイメー
ジしているかが明らかとなります。一言でいえばそれは学長の傀儡化を通じた文
科官僚による大学の不透明な一元的コントロールであり、旧大蔵省による銀行の
護送船団的一元コントロールに比すべきものであり、冷戦下では機能したかも知
れないが、今となっては全く時代遅れな役立たずの制度です。従って「法人法」
下での国立大学の未来を見たければ、現在の日本の銀行の惨状が最も良い参考に
なるでしょう。この時代遅れのコントロールの中身を具体的に見てみましょう。

  「法人法」第十五条は学長の任期の上限を6年と定めています(ただし再任
は無制限に可能です)。「法人法」が構想する大学運営では、この6年という期
間が基本単位となり、文部科学大臣は6年間で各国立大学法人が達成すべき目標
として中期目標を示すことになっています(第三十条)。こうした中期目標とい
う形で大学の組織的目標を設定することが果たして大学という組織の本来の目標
達成にとって有益かどうかについて大きな問題が存在することは皆さんご存知の
通りです。この点については既に多く論じられているので、ここでは中期目標−
中期計画という道具を使った大学のコントロールの仕組みと実体に焦点を当てた
いと思います。

このコントロールの仕組みを規定するのが第三十一条であり、それは、国立大学
法人は「当該中期目標を達成するための計画を中期計画として作成し、文部科学
大臣の認可を受けなければならない」と定めています。加えて第四十条は「文部
科学大臣の認可または承認を受けなければならない場合において、その認可また
は承認を受けなかったとき」、「国立大学法人の役員は二十万円以下の過料に処
する」と罰則を規定しています。つまり「法人法」下で学長は文科大臣が認可す
るような中期計画を作成せねばならず、それは罰則を伴った強制なのです。各学
長が提出する中期計画を認可するかどうかという権限を通じて文科省は学長とそ
の大学に対していわば殺生与奪の権力を持つことになります。ただし実際にこの
権力を行使し、大学をコントロールするのは文科大臣ではありません。「文部科
学大臣は、第一項の認可[中期計画の認可] をしようとするときは、あらかじめ、
評価委員会の意見を聴かなければならない」(第三十一条第三項)とあるように、
「法人法」はこのコントロールの機関として評価委員会という組織を指名してい
るのです。評価委員会こそが国立大学とその学長を、中期計画を認可するかどう
かという決定的な権限を通じて、自由自在にコントロールすることになるのです。
従ってこの委員会がどのような人物から構成され、その選出方法や任期はどのよ
うなものであり、彼らの評価業務自身がどのように評価・チェックされるのか、
というのは「法人法」下での国立大学像にとって極めて重要な事柄となります。
ところが我々はここでまたもや驚くべき事実に遭遇することになります。評価委
員会を規定している第九条の全文を次に引用します。


第九条  文部科学省に、国立大学法人等に関する事務を処理させるため、国立
大学法人評価委員会(以下「評価委員会」という)を置く。

2  評価委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。

   一 国立大学法人等の業務の実績に関する評価に関すること。

   二 その他この法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。

3  前項に定めるもののほか、評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の
職員その他評価委員会に関して必要な事項については、政令で定める。


この条文は評価委員会の委員の諸規定に関して白紙委任状を「事務方」すなわち
文科官僚に与えるものです。それは評価委員会を一切のチェックから独立した闇
の権力機構とすることを黙認することに他なりません。「法人法」が一方で学長、
理事、監事、様々な委員会の委員、について、適格条件、選出方法、任期、解任
法、等を詳細かつ厳密に規定して置きながら、そうして構成される大学の運営機
構に対する最大の権限を有する評価委員会に対して何も規定していないというの
は、法案の起草者が世の中を全くなめているか、それともここはスターリン政権
下のソ連であると誤解しているかのどちらかだとしか考えられません。この点
「法人法」とは真剣な議論にも値しないでたらめな(あるいは超アナクロな)作
文としか言い様がありません。しかしあきれてばかりもいられませんから、評価
委員会に関する批判をまとめておきましょう。評価委員会のような強大な権限を
持つ機構をチェックから独立した不透明なものにすると次のような重大な害悪を
社会にもたらします。第一にそれは評価委員と大学の間の癒着と腐敗を誘発しま
す(旧大蔵省と銀行MOF担の関係を思い出してください)、第二にそれは評価委
員会が果たすべき機能を最も良く果たす人材を日本社会全体からリクルートする
道を閉ざし、大学にとって本当に必要で質の高い評価を不可能にします、第三に
もし評価委員会の基本的時代認識(例えば何か将来最も有望な研究分野かに関す

る)が誤っている場合、日本の国立大学全体が誤った方向に導かれる可能性があ
る(旧大蔵省による護送船団方式の弊害と同じ)。従ってこうした内容を持つ
「法人法」を絶対に許してはなりません。」
----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
「・・・・・・」は、省略部分
連絡等は以下をSubject欄に記して編集発行人へ
 配信停止:"no kd" (停止まで時間がかかる場合があります。ご容赦下さい)
 転送等で受信された方の直接配信申込等:"sub kd"
----------------------------------------------------------------------
編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd