通信ログ
Subject: [kd 03-05-25] ガラス細工の法案
Date: Sun, 25 May 2003 17:06:34 +0900
国公立大学通信 2003.05.25(日)
全文:http://ac-net.org/kd/03/525.html

--[kd 03-05-25 目次]--------------------------------------------
[1] 記者会見5/23の報告
 [1-1] 文部科学省記者クラブでの記者会見5/23出席者
[2] 講演会 5/29「「評価」のための研究は、大学をどこへ導くか」
[3] 椎貝博美(前山梨大学長)「国立大改革  独創力で制度疲労克服を」について
[4] 金沢大学経済学部決議  2003.3.23
[5] 金沢大学理学部見解 2003.5.23
[6] 全大教:「国立大学法人法案」等関係6法案の衆議院可決に対する声明
[7] 5/23asahi.com 文科省事務次官ら処分 国立大病院再編巡り虚偽答弁書 
[8] 5/23共同通信:国立大法人法案が審議入り 参院本会議で趣旨説明
[9] [he-forum 5618] 5/22-23しんぶん赤旗記事
 [9-1] 5/22 教育・研究への国家統制 国立大学法人法案が衆院通過
 [9-2] 5/22 主張 大学法人法審議 説明不能のうえに採決強行とは
 [9-3] 5/23 国立大法人法案 衆院通過に全大教抗議
 [9-4] 5/23 大学統制を強化 国立大法人法案
[10] 5/24 静岡新聞:静岡大学長 天岸祥光氏(上)
[11] 5/23 奈良県国立大学付属学校・園教職員組合/第35回総会決議
----------------------------------------------------------------------

国立大学法人法案の審議の報道は、審議中の5月13日と14日に地方紙でか
なり詳しくされました[1]。しかし、大手紙は沈黙したままであり、審議中に
発覚した問題について文部科学省であった処分が報道[7]されたくらいで、編
集人が知る限り、衆議院で可決されたことすら報道されていません。編集人は
特定の政治的立場を持ちませんが、政党機関紙の「しんぶん赤旗」が公共的報
道を担当する[9]一方で、大手新聞は連立政権の機関誌のごとく、欠陥法案が
話題に上ることを恐れ、ひた隠しに隠し続けているかのように、感じます。

  この法案は、種々の勢力の要求を呑んでできた「ガラス細工」のようなもの
なので、一箇所でも破綻が生じると、全体が粉々に碎け散ってしまう、という
話しを聞きました。与党がまともな審議を恐れるのは当然かも知れません。政
府も与党も国大協も大新聞も、なにゆえか、一致団結して、この法案が可決さ
れるまで、世論の風に曝されて碎け散らないよう、細心の注意を払って取り扱っ
ている、という風に見えます。

法案可決後に、欠陥をいかに運用で回避すればよいか、について特集を組む準
備をしている大新聞社もあるそうですが、担当者は報道の倫理規定を読み直し
て頂きたい。(編集人)

----------------------------------------------------------------------
[1] 5/23記者会見報告
----------------------------------------------------------------------

参議院で審議が開始された5月23日に、法案廃案を求めて運動を進めている
6団体の関係者6名[1-1]が文部科学省記者クラブで記者会見した。最初に首
都圏ネットワークを代表して田端氏が、衆院可決の問題点(特に5/7の石文
書で明らかになった違法状態発生問題が放置されたまま可決されこと)につい
てコメントした後、各団体が、用意した資料をもとに運動の意図と経過を紹介
し、鬼界氏は法人化に期待していたにもかかわらず「国立大学法人法」批判要
綱を発表するに到った経緯について説明し、「法案が日本の高等教育の将来に
壊滅的な影響を与えるために、結果として日本経済、そして世界経済の長期的
な安定に対する潜在的脅威である」として教育問題ではなく経済問題と認識す
べきことを指摘した。会見後には、記者数名と議論することができ、また、T
BSが法案審議が終わる前に計画しているという「特集」の準備として2名が
取材を受けた。

なお、共同通信の所澤記者から5月13日・14日に各地で報道された記事の
コピーを頂いたので、見出しの一部を以下紹介する。電子投票のことが紹介さ
れていたが、投票が続行中であることと、URL(http://ac-net.org/rfr)
が紹介されていたならば、と思わずにはいられない。(編集人)

秋田さきがけ「「大改革」に懸念の声ー「地方の衰退は確実」
茨城新聞「国の介入、懸念隠せずー競争導入で地方大が衰退」
北日本新聞(富山)「地方大学衰退に懸念ー「国介入で規制強化」」
福井新聞「競争導入、地方大は衰退  目標設定で規制強化も」
岐阜新聞「国立大「大改革」に懸念ー国家介入強まるー競争激化で地方大衰退」
奈良新聞「「国家介入」に懸念  競争導入で基礎研究衰退?」
山陽新聞(岡山)「国の介入強化 懸念の声強く 「金になる学問」優先?」
中国新聞(広島)「大改革、賛否で火花ー関係者:規制強まり「地方」衰退」
四国新聞(香川)「地方大 衰退 ほぼ確実」
高知新聞「国介入、地方大は危機感」
佐賀新聞「国の介入拡大ー地方大衰退 大学法人化 懸念消えず」
長崎新聞「賛否で火花 国立大学法人法案」
熊本日日新聞「研究活発化?国家の介入?ー「大改革」に課題山積」

----------------------------------------------------------------------
[1-1] 文部科学省記者クラブでの記者会見5/23出席者
----------------------------------------------------------------------

出席記者(敬称略): 所澤 新一郎(共同通信), 丸山謙一(読売新聞), 松
井 哲(日経新聞), 山本 恵子(NHK), 遠山 友季(TBS), 佐藤 直子(東京
新聞)、他

出席団体等

独立行政法人反対 首都圏ネットワーク
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html
田端博邦(東京大学)

国立大学独法化阻止 全国ネットワーク
http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html
豊島耕一(佐賀大学)

大学改革を考えるアピールの会
http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/
池内 了(名古屋大学)

国立大学法人法案に反対する意見広告の会
http://www.geocities.jp/houjinka/
野村剛史(東京大学)

国立大学レファレンダム準備会
http://ac-net.org/rfr
国立大学協会への共同意見書 事務局
http://ac-net.org/recall
辻下 徹(北海道大学)

「国立大学法人法」批判要綱
http://ac-net.org/dgh/03/505-kikai.php
鬼界 彰夫(筑波大学)

----------------------------------------------------------------------
[2] 講演会 5/29「「評価」のための研究は、大学をどこへ導くか」
----------------------------------------------------------------------

「評価」のための研究は、大学をどこへ導くか
――イギリスの大学の経験から1980〜2000――

 国立大学法人法案の成立をめぐって大きく揺れ動いている日本の大学。日本の
大学はいったい今後どうなるのだろうか。それを占う上で参考になるのがイギリ
スだ。イギリスでは、サッチャ−政権以降、政府が教育体系に大きく介入し、大
学をめぐる環境は様変わりした。その焦点になったのが、今まさに日本の大学で
も問題になっている「評価」だ。「評価」の書類作成のための膨大な労力、教員
のランク付けによる信頼関係の低下、イギリスの大学ではこうしたことがおきて
いるという。

 「評価」のための研究は日本の大学をどこへ導くのか。このことをひろく議論
するために、私たちはシンポジウムを企画した。シンポジウムでは、イギリス高
等教育研究の第1人者である秦由美子さんをお招きし、またこの問題に詳しい研
究者の方にも加わっていただき、日本の現状をふくめて討論をする予定である。

日時: 5月29日(木)16時から18時30分
場所: 横浜国立大学教育文化ホール
講師: 秦由美子(滋賀大学助教授)
討論参加者: ロバート・アスピノール(滋賀大学助教授)
       E・H・キンモンス(大正大学教授)
参考文献:秦由美子『変わりゆくイギリスの大学』学文社、2001年
     秦由美子『イギリス高等教育の課題と展望』明治図書出版、2001年

     主催:大学改革のあり方を考えるフォーラム実行委員会

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
横浜国立大学教育人間科学部(学校教育講座)
   新 井 秀 明
   Tel&Fax 045-339-3306(ダイヤルイン)
----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
[3] 椎貝博美(前山梨大学長)「国立大改革  独創力で制度疲労克服を」について
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523syutkenseimei.html
----------------------------------------------------------------------
      奇妙な言明―椎貝博美(前山梨大学長)
            「国立大改革  独創力で制度疲労克服を」について

                                                        2003年5月23日
                              独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

  『朝日新聞』5月22日付の「私の視点」に椎貝前山梨大学長の投稿論説が掲
載された。この論説は、学長経験者でありながら、多くの認識不足を露呈する
ものであり、見すごすことはできない。以下、問題点を指摘したい。

  まず、現在の争点についての誤認がある。椎貝氏は論説の最後を「・・・大
学統合に続く国立大学の法人化はこれらの延長線上にあり、国立大学にそれぞ
れの法人格を与えることだ。これは大学統合に劣らない難題だが、すでに国大
協総会において挙手による圧倒的多数で決定されており、それは当然尊重され
なくてはならないだろう」と結んでいる。法人化と大学統合とを並列して語る
こともおかしいが、それ以前に、国大協総会の合意についての事態誤認を広め
る罪は大きい。

  昨年4月19日の臨時総会で、挙手で強行採決して了承したのは最終報告の内
容である。いま問題となっているのは、この最終報告の内容と、国立大学法人
法案とが重要ないくつかの点で違っているということである。昨年4月の「決
定」は、その内容を見れば、この法案への反対を意味する、と理解するのが正
しい。そして事実、2月に出された法案の概要の段階で、24の国立大学が多く
の問題点を指摘したのである。

  法人化の賛否とは関係なく、現在国会で審議されている国立大学法人法案の
是非が、いま争点となっているのである。

  他にも2点、大きな思い違いをされているので指摘しておきたい。

  椎貝氏は、山梨大学と山梨医科大学の統合を「大学の独創力」の例として誇
らしげに掲げている。前例のない大きな提案は法令の改正が必要となる場合が
多いが、それは文部科学省の協力なしには実現しない。山梨大学と山梨医科大
学の統合は「大学の独創力」の例ではなく、政府が掲げている主要な政策に合
う限り、前例のない改革でも実現できる、という例でしかない。もちろん、そ
れは大変な作業であるには違いないが、そういった独創力しか発揮できない環
境に国立大学が置かれてきたことが「国立大学制度疲労」の真相であろう。

  国立大学制度の疲労は、自然に「疲労した」という自動詞ではなく、「疲労
させられた」という他動詞として語るべき面が大きい。

  また、企業会計制を重要な経営学上の発明として大学で教えているのに大学
に導入するのを恐れるのはおかしい、という発言に到っては、何を考えておら
れるのか、という思いがする。企業会計原則は、営利目的の経済活動を明確に
記述するために進化してきたものであり、それを営利を目的としない組織であ
る大学に適用することは的外れであり、そのために、種々の歪みが発生するこ
とを大学人は「恐れている」のである。

  今の国立大学を疲労させているのは、政策に合致しない大学改革が困難であ
ることであり、国立大学法人法案の問題は、それが不可能となることにあるの
である。この点を看過している点で、この論説は現在の状況ではほとんど無意
味なコメントとなっている。
----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
[4] 金沢大学経済学部決議  2003.3.23
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523kanazawakeizai.html
----------------------------------------------------------------------
          国立大学法人法案に対する決議


 いま国会で審議されている国立大学法人法案とその関連諸法案は、学問の自由
と大学の自治を脅かし、研究・教育の荒廃をもたらし、国民・学生の学ぶ権利を
侵すものといえよう。
 法案は、国立大学の設置者を法人とすることによって、国の費用負担の責任を
後退させ、文部科学大臣が定める中期目標などを通じて大学の研究・教育の内容
を統制しようとするものである。また、学長の権限を大幅に拡大し、教授会を有
名無実化しようとするものである。法人化により、各国立大学法人は研究・教育
よりも経営的観点を優先させざるをえず、授業料の引き上げ、大学間・学部間格
差を避けられないものとし、研究・教育の質の低下をもたらさざるをえない。法
案がもたらす研究・教育の停滞、後退は日本の将来に大きな損失をもたらすもの
であることを強く危惧する。
 法案のもつこうした問題点を検討した結果、金沢大学経済学部教授会は、国民
の負託にこたえ、学問の発展と高等教育の実践に責任を負う立場から、国立大学
法人法案および関連諸法案に反対するとともに、内閣総理大臣・文部科学大臣に
法案を撤回されることを、衆参両院に法案を廃案とされることを、要請する。ま
た、国立大学協会、各政党など関係諸機関・諸団体に、研究・教育の発展を願う
国民のみなさんに、法案を成立させないために努力されることを呼びかける次第
である。

   2003年(平成15年)5月15日
                           金沢大学経済学部教授会
----------------------------------------------------------------------
[5] 金沢大学理学部見解 2003.5.23
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523kanazawarigaku.html
----------------------------------------------------------------------
                            平成15年5月22日
国立大学法人化に対する金沢大学理学部見解

 「国立大学法人化法案」が国会に上程され審議が行われつつあります。国立
大学法人化問題に関して、金沢大学理学部では平成12年1月11日に学部会声明
を発表し、その中で、国立大学理学部長会議が発表した声明「危うし! 日本の
基礎科学 --国立大学の独立行政法人化の行方を憂う--」(平成11年11月10日)
において指摘された点、すなわち、国立大学の法人化は長期的視野に立って行
われるべき基礎科学の教育・研究の発展に重大な支障をきたす危険性がある点
に対して、私たち理学部会構成員も同様の強い危惧を持つことを表明しました。

 現在審議中の「国立大学法人化法案」の内容はこの危惧をますます強めるも
のと言わざるを得ず、あらためて、特に基礎科学の教育・研究という視点から
この法案に対する私たちの意見表明を行いたいと考えます。

1.法案では、中期目標について各大学法人の意見に配慮するとのみ記され、
中期目標策定についての各大学法人の自主性が強く制限されています。また、
評価委員会の評価が次の中期目標期間の運営費交付金に反映されるとされてい
ます。 文部科学大臣が中期目標を定めるという規定は、学問研究の目標を先
験的に決定することが元来不可能であることに反してそれを行おうとしており、
矛盾に満ちたものと言わざるを得ません。特に、このようなシステムは、基礎
科学のように短期間で目に見える成果が得られにくく、短期的な「効率」の視
点、単一の指標による評価が困難な学問領域における教育・研究の発展に対し
て大きな障害となり、日本の基礎科学全般を衰退させることになることを強く
危惧します。

2.法案は、学長と学長の任命する理事から構成される役員会が、学部や学科
等の改廃を含めた強大な権限を持つものとする一方、学部の自主性については
一切言及されていません。
 このような一極集中の意志決定システムは大学における教育・研究のバラン
スの良い発展に重大な障害をもたらす可能性があることを強く危惧します。特
に、大学における教育・研究の評価方法が確立しているとは言いがたい現状に
おいて、当該研究分野の専門家の集団である学部の自主性・自律性を保証する
ことなく、仮に数値化可能な事項のみに基づいた評価が行われることになれば、
評価そのものが本来難しく、また短期的な「効率」とは相容れない基礎科学の
教育・研究に重大な障害をもたらしかねません。

                                以 上
----------------------------------------------------------------------
[6] 全大教:「国立大学法人法案」等関係6法案の衆議院可決に対する声明
http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/03-5-22seimei.htm

----------------------------------------------------------------------
[7] asahi.com 文科省事務次官ら処分 国立大病院再編巡り虚偽答弁書 
asahi.com 2003年5月23日付
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523asahi.html
---------------------------------------------------------------------- 
「国立大学付属病院の組織改編に関する国会議員の質問主意書について、文部
科学省が作成した政府答弁書の内容が事実と異なっていたことがわかり、遠山
文科相は23日、同省医学教育課大学病院指導室長を訓告に、事務次官を含む
同省幹部ら6人を文書による厳重注意の処分とした。政府は同日、事実関係を
改めた答弁書を閣議決定した。内容を訂正する答弁書が作られるのは異例とい
う。

 遠山文科相は同日の記者会見で「誠に遺憾。二度とないようにしたい」と陳
謝した。

 質問主意書を提出したのは、三井辨雄(わきお)衆院議員(民主党)。全国
の国立大病院関係者が作業部会の委員となって昨年3月にまとめた「国立大学
付属病院の医療提供機能強化を目指したマネジメント改革について」と題する
「提言」に関し、昨年11月、文科省関係者のワーキンググループ会合への出
席状況や発言内容を明らかにするよう求めた。

 これに対し、文科省は「記録が存在しない」とする答弁書をまとめ、政府は
同月26日に閣議決定した。ところが、今年4月にワーキンググループの議事
録が存在すると週刊誌が報じ、文科省側は今月14日、国会で答弁書の誤りを
認めた。

 理由について文科省医学教育課は「会議の事務局を務めた九州大学がテープ
を起こしただけの発言の記録は正式な議事録ではないととらえていた」と説明
している。

 議事録をめぐっては、日本輸血学会副会長の元東大付属病院輸血部長・柴田
洋一医師が、情報公開法に基づいて文科省や九州大学に開示を求め、3月末に
「文書不存在」を理由に不開示となった経緯がある。

 同学会は、「提言」が臨床検査、輸血、病理、放射線などの「中央診療部門」
に専任教官を置かずにこれらの部門を統合する合理化案を盛り込んだことに対
し、「高度な医療を支える専門家の養成ができなくなり、安全な医療の実現に
逆行する」と強く反発。柴田医師は「文科省主導の病院改革に抗議する」と昨
年12月に東大を退官した。

 柴田医師によると、議事録は、週刊誌で報じられた直後に九大側から送られ
てきたという。」

----------------------------------------------------------------------
[8] 共同通信5/23:国立大法人法案が審議入り 参院本会議で趣旨説明
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523kyoudou-2.html
----------------------------------------------------------------------
「参院は23日午前の本会議で、国立大を国の直轄から切り離し、独立した法
人にする国立大法人化関連6法案の趣旨説明を行い、審議入りした。

 質疑で民主党の岩本司氏は「教育、研究や経営方針を決める中期目標は文部
科学相が策定し、運営交付金の配分に反映する評価も文科省に置く評価委員会
が行う。入り口、出口を官が握ったままの法人化だ」と指摘。共産党の畑野君
枝氏も「文科相が学長の任命、解任権を持てば、国が立てた目標を忠実に実行
させるだけだ。学問の自由に反する」と述べ、法人化で国の関与が強まるだけ
だと主張した。

 これに対し、遠山敦子文科相は「国による財政措置を前提としており、責任
ある対応として、一定の関与が必要。中期目標の策定でも、大学の意見に配慮
する。自主性、自律性を損なうことはない」などと反論した。」

----------------------------------------------------------------------
[9] [he-forum 5618] 5/22-23しんぶん赤旗記事
----------------------------------------------------------------------
[9-1] 5/22 教育・研究への国家統制 国立大学法人法案が衆院通過
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523akahata-1.html
----------------------------------------------------------------------
[9-2] 5/22 主張 大学法人法審議 説明不能のうえに採決強行とは
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/eb030523akahata-1.html
 学問の自由を脅かす国立大学法人法案の採決が衆院文部科学委員会で、日本
共産党をはじめ野党の反対を押し切って強行されました。与党はきょうにも衆
院通過をはかる構えです。国家百年の計にかかわる重要法案を参考人質問を含
めわずか五日の審議で採決するのはあまりにも無責任であり断じて認められま
せん。

政府説明の根拠崩れ

 審議では、法案のもつ深刻な問題点が次つぎと明らかになり、遠山文部科学
大臣は何度も説明不能となりました。「審議が尽くされた」(与党)どころか、
究明されるべき多くの課題が残されているのです。これでは、「審議を恐れて
の採決」といわれてもしかたがありません。

 政府は、法案提出の理由を「法人化によって大学の自主性を拡大する」と説
明してきました。ところが、日本共産党などの追及によってこの根拠は崩れま
した。「各大学が自ら決める教育研究の目標をなぜ大臣が定める必要があるの
か」「そのような例が欧米にあるのか」「独立行政法人化は教育研究の発展を
阻害するとした九七年の文相見解をなぜ変えたのか」などの質問に、文科相は
まともに説明できなかったのです。

 しかも、大学が文科相の認可を受ける中期計画について、大臣の変更命令に
従わなければ罰金を科せられること、六年後に教育研究の門外漢である総務省
の勧告をうけて、文科相が「廃止や民営化」を含む措置をとることも明らかに
なりました。

 また、大学の設置者を法人に変え、国の財政責任を弱めることも、学費値上
げなどの問題を引き起こすことになります。法案では、国立学校特別会計が抱
える一兆三千億円の借入金を各大学におしつけます。それによって大学法人と
しての経営は成り立つのか、学費値上げを引き起こさないのかを問う質問に、
遠山文科相は「各大学が負う債務であり、大学の責任」と言い放ちました。

 大学法人になれば、人事院規則にかわって労働者の生命と安全を守る労働安
全衛生法の適用対象となります。しかし、国が大学の施設整備を放置してきた
ために、その基準を満たさないで出発せざるをえないことが、審議で浮き彫り
になりました。遠山文科相は、この解決をはかる予算額も計画も示すことがで
きず、その責任追及に「来年四月の法人化までに一生懸命やるからいいじゃな
いか」と開き直りました。国会審議をないがしろにし、自らの責任を放棄する
ことは許されません。

 まさに法案は、大学の自主性を脅かし、教育研究への国家の介入、統制を強
めるとともに、国が果たすべき責任を大学におしつけ、大学に混乱と違法状態
を生み出す欠陥法案といわなければなりません。

 審議入り前には、法案の廃案を求めて四百人の大学関係者が国会要請を行い、
毎回の委員会審議に、大学の行く末を憂慮する多くの人々が傍聴につめかけま
した。法案への批判的見解を表明する教授会決議も相次いであがっています。

たたかいはこれから

 国会内外のたたかいが結び付いて法案の問題点が明らかになり、野党各党が
慎重審議を求めたことは、政府・与党の痛手になりました。問題点がさらに国
民の前に明らかにされれば、政府・与党をいっそう追い詰めることは間違いあ
りません。

 私たちは、衆院の採決強行に抗議するとともに、「熟慮の府」としての参議
院の徹底審議を要求し、法案を廃案とするために国会内外のたたかいに力を尽
くすものです。
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
[9-3] 5/23 国立大法人法案 衆院通過に全大教抗議
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030523akahata-2.html
----------------------------------------------------------------------

 全国大学高専教職員組合(全大教)は二十二日、国立大学法人法案等関連六
法案が自民・公明など与党の賛成多数で同日衆院本会議で可決、参院に送付さ
れたのを受け、声明を発表しました。

 声明は「審議を尽くしたとは言えない状況において与党が採決を行ったこと
に対して厳しく抗議」しています。さらに、衆院審議を通じ、大学への「文部
科学省による関与・統制を強化する」などの法案の問題点がますます明確になっ
たと指摘。「引き続き国会、職場、地域において法案反対のとりくみを強化す
る」と決意を表明しています。

----------------------------------------------------------------------
[9-4] 5/23 大学統制を強化 国立大法人法案
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030523akahata-4.html
----------------------------------------------------------------------
 国立大学を法人化する法案は22日衆院を通過し、参院での審議が23日からは
じまります。衆院ではその危険さがつぎつぎあきらかになり、反対の声が国会
内外で広がっています。

崩れた政府説明 明かされた危険性

大学目標 → 大臣が決定

国立大学法人法案に反対する大学関係者の国会行動=7日、衆院議員面会所前

 この間の国会論争で、「大学の自主性を高める」とのこれまでの文科省の説
明は破たんし、“大学統制強化法”ともいうべき法案の本質が浮き彫りになっ
ています。

 法案では、各大学の六年間の目標を文科相が定めることになっています。こ
の点に「学問の自由を脅かす」と各党からの批判が集中しました。

 日本共産党の石井郁子衆院議員は「大学の目標を大臣が定める必要があるの
か。教育研究への介入ではないか」と質問。遠山敦子文科相は「国が予算を措
置する上で最小限の関与は必要になる」と答弁しましたが、石井議員は「国立
大学への予算措置は現行でもやっていること、理由にならない」と指摘。遠山
文科相は「あらかじめ大学の意見を聞いて配慮する」と答えるのみで、説明不
能に陥りました。「配慮」では、大学の意見に拘束されないと、文科省自ら説
明しています。

 目標に基づき各大学が作成し文科相の認可を受ける計画について、石井議員
の質問に答えて、河村建夫文科副大臣は「変更命令に大学が従わない場合は過
料に科」と言明。大学統制強化の本質をあらわにしました。

業績評価 → 政府しだい

 「研究の評価がいかに難しいか」「軽々しくやると国を滅ぼす」。生命科学
を研究する赤池敏宏東京工業大学教授は参考人質疑でこう指摘し、国による学
問評価への危ぐを表明しました。

 法案では、目標の達成状況を文科省に置かれる委員会が評価します。しかし、
評価を“だれが”“どんな基準で”行うのかは政令に委ねられており、「これ
から関係省庁と協議する」(高等教育局長)とされています。

 石井議員は「大学の発展にかかわる重大な内容であり、きちんとださないと
審議できない」と強く資料提出を求めましたが、いまだ資料は提出されていま
せん。

 文科相は、評価に基づき「所要の措置」をとるとなっています。「措置」と
はなにか、石井議員の追及に総務省は「廃止・民営化を含めて見直しを行う」
と述べました。

 教育研究の業績が政府のさじ加減で評価され、場合によっては大学はつぶさ
れることになりかねません。

 国立大学は法人化と同時に、合計一兆三千億円近くの借金を抱え込む可能性
も明らかになりました。「一兆三千億円の債務を大学に押しつけて、学費を上
げないと断言するか」との石井議員の追及に、文科省は学費値上げの可能性を
否定しませんでした。

 政府は、国立大学の付属病院整備のため財投資金から借り入れし、毎年、償
還しています。法案では、この借入金を各大学が付属病院の収入から償還する
義務を負います。文科省は十二日、日本共産党の児玉健次衆院議員の要求に応
じて、各大学の借入残高を提出しました(別表)。それによれば、二〇〇二年
度末の国立大学の借入金残高合計は一兆二千六百億円にもなります。さらに、
二〇〇一年度決算で東京大学で八十億円、九州大学で四十四億円の単年度「赤
字」となっていることが明らかになりました。

 石井議員は「国が責任をもたずに各大学がどのように償還できるのか」と質
問。文科省は「各法人が病院収入を前提に償還計画を立てる」と、各大学の返
還義務をのべるものの、国としての具体策を明らかにしません。石井議員は
「債務償還のために医学部の学費が上がるのでは」と重ねてただしましたが、
「学費の標準額は各学部同一の方向」と答えただけで、学費値上げは否定しま
せんでした。

安全管理 → 違法状態に

 現在の国立大学が法人になると、新たに適用される諸法令に違反状態となる
ことが審議で明らかになりました。

 文科省の昨年十月の調査で、国立大学など百六十九機関の実験施設のうち百
五十六機関で安全管理上の問題をもつことが判明。排ガス処理装置、自家発電
装置、避難経路の未確保、緊急用洗浄装置、消火器の不備などです。

 法人化すれば労働安全衛生法が適用されるため、安全管理の不備の多くが違
法となり、法人が罰則をうけるという深刻な事態です。国が大学の施設整備を
長年怠ってきたためであり、児玉議員は「教職員、院生、学生の安全が法律に
もとづいて確保されるかどうかの根本問題」と文科相の責任を追及。遠山文科
相は「来年四月の法人化までに適法となるよう努力するからいいじゃないか」
と開き直りました。これに対して児玉議員は、そうした無責任な態度では「文
科大臣としての資格が問われる」ときびしく批判しました。

 野党各党も大問題にし、「来年四月に違法状態が生じたら法案を凍結せよ」
(民主・鳩山由紀夫議員)、「資料が出てから採決をせよ」(自由・佐藤公治
議員)などと追及。河村副大臣は「必要な数字(予算額)を今月中に出す」と
答えざるをえませんでした。
------------------------------------------------------------------------

審議のたびに問題点次々と

 法案は当初、四月中にも成立か、といわれていました。実際には、衆議院本
会議で可決し、参議院に送られたのは、五月二十二日と大きくずれこみました。

 審議が始まった四月三日の本会議。共産、民主、自由の三党の代表質問は、
「学問の自由、大学の自治を侵しかねない法案」であることを印象付け、その
後の委員会審議や参考人質疑でも、法案の重大な問題点が次々と明らかにされ
ていきました。

 毎回の審議には、大学の将来を憂える多くの人が傍聴につめかけました。そ
れらがあわさり、徹底審議を求める力となりました。いまその声はさらに広がっ
ています。

 与党の一員である保守新党の熊谷弘代表の「法律案に審議の光が当たるにつ
れて、実はなかなかの問題がある。百年に一度の大改革で、百年に一度の大失
敗にならないよう」との発言も出ました(五月十三日記者会見)。
------------------------------------------------------------------------

消せない矛盾 高まる危ぐ

9教授会が批判の見解

 国立大学法人法案に対してはこれまで九教授会が批判の見解を決議しています。

 千葉大学理学部の見解は、大学の中期目標の設定、中期計画の認可を文科相
が行う「法人化」では“規制緩和”になるどころか「逆に“規制強化”になる」
と指摘。同大文学部の見解は、法案が「国立大学の設置者を、国ではなく国立
大学法人」としたことで「国立大学の経費負担に国は直接には義務を負わない
可能性が生じる」とし、学外者を含む選考委員会で学長を選考することについ
て、「経営優先の観点から選考がなされる」と危ぐを表明しています。鹿児島
大学理学部の見解も慎重な審議を求めています。

 また、愛知教育大学では、法案の廃案を求める有志声明を発表。六十二人の
教職員が賛同しています。

 ほかにこれまで見解を表明したのは、東京外国語大学の外国語学部と地域文
化研究科、一橋大学社会学研究科、東京大学理学系研究科・理学部、山形大学
の人文学部と理学部の六教授会です。

マスコミや文化人から

 これまで法人化で、大学の独自性がたかまるなどとしていたマスコミにも、
大学人などの反対の声を受けて、法案の問題点を指摘する声が出てきています。

 「熊本日日」は、十一日付社説「強まる文部科学省の統制 学問・文化衰退
の懸念も」で、法案について「結果として、旧帝大などの有名大だけが生き残
り、地方の国立大は統合や民営化が迫られる事態もあり得る。大学内でも、産
業的な価値のある研究が厚遇され、基礎教育や人文系の研究の予算が削られる
事態や予算不足から授業料の値上げにつながる心配もある」と懸念を表明して
います。「福島民報」も「大改革に懸念 国立大学法人化法案 国の介入や地
方大衰退」(十三日付)と報じています。

 「朝日」七日付では元大阪大学事務局長の糟谷正彦氏が「こんどの法案は抜
本的に見直すべきだ」と主張。藤原正彦お茶の水女子大学教授も「産経」十日
付で「文科省が、高等教育までを台無しにしそうである」と述べています。

 法案に反対する著名な文化人、知識人らのアピールには二十一日現在、四千
七百四十八人が賛同しています。
------------------------------------------------------------------------

採決許さず 廃案へ運動

 衆議院の委員会審議は二日間の参考人質疑をいれてわずか五日。審議は始まっ
たばかりです。なぜ中期目標や計画を文部大臣が定めなければならないのか、
答弁不能のままです。また、国立大学評価委員会がどのような基準や内容で評
価するのかもいまだ不明確です。教職員の身分を非公務員とすることや、学長
権限の強化とチェック体制についても、本格的にはこれからです。

 しかも、審議の対象となる法案は「国立大学法人法案」だけでなく、五十五
の国立高等専門学校を一つの独立行政法人とする「法案」など六つの法案です。
法案に責任を持つならば、これら一本一本十分な審議がされなくてはなりませ
ん。ところが、国立大学法人法案以外ほとんど審議がされていません。

 参議院文教科学委員会の審議日数は会期末までわずか六日。国会内外が結び
ついて、法案の問題点を国民の前に明らかにしてたたかえば、政府・与党を追
いつめ、採決強行を阻む展望を切り開くことになります。
------------------------------------------------------------------------
[10] 静岡新聞5/24:静岡大学長 天岸祥光氏(上)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030525sizuoka.html
------------------------------------------------------------------------
『静岡新聞』2003年5月24日付朝刊

語る:静岡大学長 天岸祥光氏(上)

国立大学の独立法人化
目先の成果より基礎研究を充実

 国立大の独立法人化が二〇〇四年度に迫った。静岡大も旧来の護送船団方式
から脱却し、より自律的な研究、人材育成機関への転換が求められている。地
域ニーズの的確な把握と地域連携など、地方大学ならではの課題も多い。効率
化と競争原理にさらされる大学を、どうかじ取りするか。四月に就任した天岸
祥光学長に聞いた。

--- 独立法人化で大学はどう変わるのでしょうか。
「自己選択、自已責任の度合いが強まるということ。外部資金獲得などの民間
感覚や一層の説明責任が求められる。学長や理事による役員会が最高意思決定
機関となリ、その下に経営協議会と教育研究評議会が位置する。大学運営を実
質的に仕切り、大学自治に大きな役割を果たしてきた教授会の位置付けは非常
にあいまいになる」

--- 今国会に提出されている国立大学法人法案をどう受け止めますか。
「国立大学協会が了承した調査検討会議の最終報告に比べ、国の関与が強まっ
ているように思う。六年問の中期目標は、各大学の原案に基づいて文部科学省
が決めるが、国策に合わない部分はノーと言う可能性もある。全面的に裁量が
拡大するわけではない」

--- 国からの運営交付金は中期目標に沿った中期計画の達成状況への評価で決
まるようですね。
「評価が文科省の評価委員会と総務省の審議会によるダブルチェックになると
は、思いもよらなかった。客観的に数値化されたものだけが対象になリ、短兵
急な成果を求められることが懸念される。基礎研究の衰退が一番心配だ」

--- 教育研究内容のバランスを保つために留意したい点は何ですか。
「学外者が半分以上を占め、中期計画策定や教員の給料決定で強い発言力を持
つ経営協議会が、目先の成果至上主義に陥らないようにしたい。教職員個人レ
ベルで重要なのは評価。外部資金獲得や地域連携に積極的な研究分野、人材は
当然必要だが、それだけでは大学の研究や教育の質は向上しない。『稼ぎ』が
悪くても、大学に欠かせない人材やグループをしっかリ評価したい」

--- 法人化への準備を進める中でどんなことを実感していますか。
「民間会社と同じような体制を整える必要があリ、未体験のことが多い。特に
人事労務関係は、全くの素人。これまでは人事院規則に沿っていれば良かった
が、今度は非公務員となリ、就業規則を作って対応しなくてはならない」

--- 法人化に向けた準備の進ちょく状況をお聞かせください。
「法人化の準備本部を立ち上げて実務作業に入った。文科省からモデルが出な
いため、手探リ部分が多いが、七月までに基本を固める。法人法に問題な部分
もあり、学生不在の設置形態変更という思いは強いが、現実的にはやるしかな
い。われわれの裁量で決められることは100%活用し、ソフトランディング
させたい」

あまぎしよしみつ氏 東京都出身。東京教育大大学院理学研究科修士課程修
了。専門は宇宙プラズマの研究。国立高専講師を経て1971年静岡大講師、83年
教授。90年理学部長となり、4月から学長。静岡市在住、63歳。



国立大学の独立法人化
目先の成果より基礎研究を充実

 国立大の独立法人化が二〇〇四年度に迫った。静岡大も旧来の護送船団方式
から脱却し、より自律的な研究、人材育成機関への転換が求められている。地
域ニーズの的確な把握と地域連携など、地方大学ならではの課題も多い。効率
化と競争原理にさらされる大学を、どうかじ取りするか。四月に就任した天岸
祥光学長に聞いた。

--- 独立法人化で大学はどう変わるのでしょうか。
「自己選択、自已責任の度合いが強まるということ。外部資金獲得などの民間
感覚や一層の説明責任が求められる。学長や理事による役員会が最高意思決定
機関となリ、その下に経営協議会と教育研究評議会が位置する。大学運営を実
質的に仕切り、大学自治に大きな役割を果たしてきた教授会の位置付けは非常
にあいまいになる」

--- 今国会に提出されている国立大学法人法案をどう受け止めますか。
「国立大学協会が了承した調査検討会議の最終報告に比べ、国の関与が強まっ
ているように思う。六年問の中期目標は、各大学の原案に基づいて文部科学省
が決めるが、国策に合わない部分はノーと言う可能性もある。全面的に裁量が
拡大するわけではない」

--- 国からの運営交付金は中期目標に沿った中期計画の達成状況への評価で決
まるようですね。
「評価が文科省の評価委員会と総務省の審議会によるダブルチェックになると
は、思いもよらなかった。客観的に数値化されたものだけが対象になリ、短兵
急な成果を求められることが懸念される。基礎研究の衰退が一番心配だ」

--- 教育研究内容のバランスを保つために留意したい点は何ですか。
「学外者が半分以上を占め、中期計画策定や教員の給料決定で強い発言力を持
つ経営協議会が、目先の成果至上主義に陥らないようにしたい。教職員個人レ
ベルで重要なのは評価。外部資金獲得や地域連携に積極的な研究分野、人材は
当然必要だが、それだけでは大学の研究や教育の質は向上しない。『稼ぎ』が
悪くても、大学に欠かせない人材やグループをしっかリ評価したい」

--- 法人化への準備を進める中でどんなことを実感していますか。
「民間会社と同じような体制を整える必要があリ、未体験のことが多い。特に
人事労務関係は、全くの素人。これまでは人事院規則に沿っていれば良かった
が、今度は非公務員となリ、就業規則を作って対応しなくてはならない」

--- 法人化に向けた準備の進ちょく状況をお聞かせください。
「法人化の準備本部を立ち上げて実務作業に入った。文科省からモデルが出な
いため、手探リ部分が多いが、七月までに基本を固める。法人法に問題な部分
もあり、学生不在の設置形態変更という思いは強いが、現実的にはやるしかな
い。われわれの裁量で決められることは100%活用し、ソフトランディング
させたい」

あまぎしよしみつ氏 東京都出身。東京教育大大学院理学研究科修士課程修
了。専門は宇宙プラズマの研究。国立高専講師を経て1971年静岡大講師、83年
教授。90年理学部長となり、4月から学長。静岡市在住、63歳。

----------------------------------------------------------------------
[11] 奈良県国立大学付属学校・園教職員組合/第35回総会決議
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030525narafuzoku.html
----------------------------------------------------------------------
『安心して暮らせる社会と力を出し切れる労働環境を−有事法制化、教育基本
法の「改正」、国立大学の法人化に反対です−』

 戦火のアフガニスタンとイラクを見てきたある外国人が日本を訪れたとき、
「わたしは、日本に来て初めて希望を持っていない子どもを見た。」と言った
そうです。

 くらしや子育てに悩みや不安の多い毎日。このようなときこそ、みんなが人
間としての希望と展望を持てるように、わたしたちは組合としての力を出しき
りたいと思います。

 「まるで生『番組』のようにイラクの街への空爆が映し出される。その横で
晩ご飯を食べるのがつらい。」と言った組合員がいました。有事法制反対ジャ
ンボ葉書きには、「これ以上子どもたちが悲しむ世の中にならないように」と
いう訴えがありました。人間的な感情をもつ者であれば、誰もが同じように感
じるのではないでしょうか。いま厳しく求められていることは、有事に備える
努力ではなく、有事を避ける努力です。

 過去の大戦での加害と被害、その後の平和国家への踏み出し。これらをしっ
かりとふまえて憲法第9条について考えるとき、この条文がわたしたちの暮ら
しや世界の平和にとってなくてはならないものであることがよくわかります。

 わたしたちは、有事の法制化をくい止めまた平和憲法の精神を実現させるた
めに、多くの国民が手をつなぐことをめざします。それは、わたしたちが人間
として生きる希望と展望をもつためでもあります。

 この春もたくさんの子どもたちが入学・入園しました。どの子も、どの保護
者も、そしてわたしたちも、学校・園が希望と温もりの場であってほしい、学
び合うみんなの笑顔の輝く場であってほしいと願っています。

 ところが、有事法案審議のさなかに云々されている教育基本法の「改正」で
は、「国を愛する心の教育」が言われ、子どもたちの心が法律で縛られてしま
いそうです。また、「21世紀を切り拓くたくましさ」をめざすことのなかで、
人格の形成という教育本来の目標が、日本経済の「成長」にすりかえられてし
まいそうです。もしそうなれば、競争的な「学び」がいっそう激しさを増すと
考えます。

 平和な社会の形成者を育てることと人格の形成は切り離せないことであり、
ともに大戦への反省をふまえて制定された憲法と教育基本法のおおもとの願い
です。

 わたしたちは、教育基本法が憲法と一体となって一人ひとりの成長・発達を
めざし、豊かな社会の実現を願う素晴らしい法律であることを広く訴えます。
また、平和への願いもこめて、その「改正」に反対します。これは、わたした
ちが教育労働者として力を出しきり、生き生きと働くことをめざすものでもあ
ります。

 学校・園や大学は、国の権力からいちばん遠い存在であるべきではないでしょ
うか。ところが、「国立大学法人法案」では、高等教育・研究にたいする行政
の関与が顕著です。また、教職員の非公務員化は、安心して働き、公務員とし
て国民全体に奉仕したいというわたしたちの願いを踏みにじるものです。筋違
いの行政の関与や競争的労働環境は、教育現場により大きな混乱と困難をもた
らします。

 わたしたちは、国立大学の法人化に反対です。また、子どもたちやの願いや
教職員の勤務実態などをしっかりとふまえた、真剣な教育改革論議を広く呼び
かけます。

2003年5月23日奈良県国立大学付属学校・園教職員組合/第35回総会」
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
連絡等は以下をSubject欄に記して編集発行人へ

 no-kd:配信停止の連絡の場合
    停止まで数日かかる場合があります。
    送信リストに記載されていないアドレスには対応できません。

 sub-kd: 転送等で受信された方の直接配信申込の場合
    その際、ご氏名とご所属をお願いします。

転載・転送等の際はログページ「http://ac-net.org/kd」を併記してください。
----------------------------------------------------------------------
編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
----------------------------------------------------------------------