通信ログ
国公立大学通信 2003.07.03(木)
--[kd 03-07-03 目次]--------------------------------------------
[1] 国会情勢速報 No.30(2003.7.2) 参議院文教科学委員会、3日審議なし。
[2] 財務省財政制度審議会建議における国立大学法人の学費値上げ方針
[2-1] 2003-06-09 平成16年度予算編成の基本的考え方について
[2-2] 2003-05-23 財政制度等審議会 財政制度分科会歳出合理化部会及び
[2-3] 2003-05-23 財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出合理化部会
[2-4] 2003-05-23 16年度予算編成に向けての課題
[2-5] 2002-11-20 平成15年度予算の編成等に関する建議
[2-6] 2002-06-03 平成15年度予算編成の基本的考え方について
[3] 北海道大学前副学長 藤田正一氏から参議院文教科学委員への書簡
----------------------------------------------------------------------
昨日の文教科学委員会理事懇談会で、来週火曜日(7月
8日)採決の予定が了承されました。ただし、共産党は
反対、民主党も「審議内容次第」という留保をつけてい
ます。ぜひ、4月3日以来の国会議事録*を通読し、答弁
にある矛盾や虚偽を吟味し、また、未審議の重要論点の
有無を検討ください。
* http://ac-net.org/dgh/03/703-kokkai-gijiroku.html
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
4月まで北海道大学副学長を務められた藤田正一氏が法
人法案への危惧の念を国会議員に伝えられました[3]。
大学運営に関与された方々からのメッセージは、延長国
会会期末までの4週間の審議において重要な役割を果す
ものと思います。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
財務省財政制度審議会の「建議」は、日本の予算編成の
骨格を決めるものです。国立大学法人化に関連する部分
では明確に「受益者負担主義の徹底」を一貫して強調し、
文部科学省による学費コントロールを批判し、国立大学
の学費値上げ、学部別の学費導入方針を明確にしていま
す[2]。こういった政府部内での主張の対立を国会でき
ちんと議論すべきではないでしょうか。
予算配分に大きな権限を持つ財務省が、国立大学法人化
後の大幅な学費値上げ方針を公言している以上、文部科
学省が大幅な学費値上げはないと国会審議でいくら強調
しても、それは、達成可能性がほとんどない努力目標の
陳述にすぎません。国民が最大の関心を持つ国立大学の
学費という論点において、このような答弁で事足れり、
と判断するようでは、文教科学委員会の存在意義が問わ
れかねません。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
昨日、北大教職員組合主催の「国立大学の法人化を考え
るつどい」がクラーク会館で開かれました。その中で、
山口二郎氏が、オーウェルの小説「1984」における
完全統制社会の合言葉
War is peace
Freedom is slavery
Ignorance is power
を引用し、これは今の日本そのものだ、「従属は独立な
り」という国立大学「独立法人化」政策はその一例だ、
矛盾ある主張を憚からない人々が言論界とメディアを占
拠するとき普通の者が正気を保つのが困難になる、No
を言う人たちが居ることは普通の人たちが正気を保つこ
とを可能にする効果がある、時流に何の影響もないから
Noを言っても始まらないという効率主義はいかがなも
のか、等々、話されました。(編集人)
----------------------------------------------------------------------
[1] 国会情勢速報 No.30(2003.7.2) 参議院文教科学委員会、3日審議なし。
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030702kokaijouhou30.html
----------------------------------------------------------------------
独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局/独立行政
法人問題千葉大学情報分析センター事務局:共同編集
参議院文教科学委員会、3日審議なし。
8日質疑後採決へ。
7月8日(火)9時50分理事会,10時委員会
国立大学法人法案の質疑,民主党修正案提案,討論,採決
時間等詳細は7月7日(月)15時の理事懇談会で決める。
2日午後の理事懇談会において、与党は3日(木)に
採決をとの提案。しかし、野党各党が応じられないと反
対した。
与党は、「採決に応じてもらえない以上,3日の委員
会はやめる。8日に採決を。」と改めて提案した。これ
に対して、民主は「質疑時間をもっととり,しっかりし
た答弁であれば,採決はやむをえない」,共産は「8日
であってもまだ審議は尽くされておらず,採決前提の日
程は応じられない」との態度を表明した。国連は「十分
質疑を行ないこれまでの疑問にこたえたのなら,採決も
やむをえない」とし,さらに総理の出席を求めた。
結論として、8日10時より法案の質疑、民主党修正案
提案,討論,採決ということになったが、民主、国連と
も、採決入りの条件として、しっかりした答弁を行うこ
とと、これまでの疑問にこたえることを提示している。
これまでのように、いい加減な答弁を繰り返すならば、
野党は一致して採決に反対の態度をとることになろう。
全国から寄せられた採決反対の声と、野党理事の奮闘に
よって、3日の採決が8日に延期された意義は大きい。
残る6日間、全力で闘い、8日採決を阻止し、法案廃案
を勝ちとろう。
追って、各方面から、週末、さらには7〜8日の連続闘
争の行動提起がなされる。首都圏ネットのホームページ
等に注目されたい。」
----------------------------------------------------------------------
[2] 財務省財政制度審議会建議における国立大学法人の学費値上げ方針
----------------------------------------------------------------------
[2-1] 2003-06-09 平成16年度予算編成の基本的考え方について
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/zaiseia150609a.htm
高等教育に対する公的支援については、国立大学に対
する財政措置や私学助成等の既存の支援策を見直し、国
公私を通じた競争原理に基づく支援へシフトさせる必要
がある。
また、平成16年4月に予定されている国立大学の法人
化に当たっては、いわゆる「PLAN−DO−SEE」
の考え方を十分踏まえつつ、市場原理・競争原理の下で、
各大学が自らの経営判断に基づいて自律的運営ができる
ようにするとともに、客観的かつ厳格な事後評価により
重点的な支援が可能となるような制度設計を行うべきで
ある。こうした考え方を踏まえ、学生納付金については、
学部別授業料を含め各大学の自主的な判断に基づく設定
を可能とすべきであり、運営費交付金の算定の基礎とな
る学生納付金の水準に関しては、受益者負担の徹底、自
己収入確保の努力を踏まえて設定する必要がある。
----------------------------------------------------------------------
[2-2] 2003-05-23 財政制度等審議会 財政制度分科会歳出合理化部会及び
財政構造改革部会合同部会〔議事要旨〕
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/gijiyosi/zaiseic150523.htm
「国立大学の法人化については、法人化後の予算配分に
ついて文部科学省により大学の自主性が制約されること
にならないか危惧している。また、「Plan,Do,
See」がしっかり行われないと、法人化がマイナスの
結果を招くおそれがある。授業料も文部科学省は一律的
な考え方をもっているようだが、法人化の趣旨と矛盾す
るのではないか。」
----------------------------------------------------------------------
[2-3] 2003-05-23 財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出合理化部会
及び 財政構造改革部会合同部会 西室部会長 記者会見
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/kaiken/zaiseic150523.htm
「それから、2つ目は、国立大学の独法化の話ですけれ
ども、大学の予算制度も大きく変わると思うけれども、
予算配分について、文部科学省との関係で大学の自治が
制約されるのではないかという懸念を、これは大阪大学
副学長としてのご発言だったと思います。
それから、3つ目は予算の、失礼、2つ目は同じく国
立大学独法化にもかかわる話ですけれども、プラン・
ドゥー・シーがしっかりと行われないと、かえってマイ
ナスになるだろう。それから、授業料についても、文部
科学省は一律の考え方をしているけれども、きちんとそ
れは検証していくことが必要だということ。」
----------------------------------------------------------------------
[2-4] 2003-05-23 16年度予算編成に向けての課題
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseic/c150523_3-1.pdf
財政制度等審議会財政制度分科会 歳出合理化部会及び財政構造改革部会合同部会
16年度予算編成に向けての課題( 文教・科学技術)平成15年5月23日
財務省主計局 資料3−1
2.高等教育(国立大学法人等)
① 高等教育に対する公的支援については、国立大学に
対する財政措置や私学助成等の既存の支援策を見直し、
国公私を通じた競争原理に基づく支援へシフトする必要
がある。
② 平成16 年4月からの国立大学の法人化に当たっては、市場原理・競争原理
の下で自律的運営を可能とするとともに、客観的かつ厳格な事後評価により重
点的な支援を可能とする制度設計とすべきである。
④ 学生納付金については、学部別授業料を含め大学の
自主的な設定を可能とするとともに、運営交付金の算定
の基礎となる学生納付金の水準に関しては、受益者負担
の一層の徹底等の観点を踏まえ、決定する必要がある。
----------------------------------------------------------------------
[2-5] 2002-11-20 平成15年度予算の編成等に関する建議
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/zaiseia141120.htm
平成15年度予算の編成等に関する建議
平成14年11月20日財政制度等審議会
義務教育以外の文教予算については、「6月建議」で
も述べたとおり、受益者負担の徹底と資源配分の重点化
を図り、施策の効率的、効果的実施を徹底すべきである。
具体的には、高等教育について、国立学校特別会計や
私学助成を通ずる機関支援を見直し、国公私を通じた競
争原理に基づく支援へ重点化を図る必要がある。これと
関連して、国立大学の法人化にあたっては、市場原理・
競争原理の下で第三者評価に基づく支援に重点化するよ
うな制度設計が必要であり、平成16年度からの円滑な
移行に向けて、早急にその具体像を明らかにしていくべ
きである。
また、育英奨学事業について、適正な受益者負担を求
めるとともに、事業の一層の効率化、合理化を図ってい
く必要がある。
このほか、高等学校等や生涯学習・社会教育等に関す
る補助金等の縮減を進めるとともに、文化予算について、
費用対効果、官民の役割分担の観点から施策の厳格な絞
り込みを行う必要がある。
----------------------------------------------------------------------
[2-6] 2002-06-03 平成15年度予算編成の基本的考え方について
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseia140603a.pdf
平成15年度予算編成の基本的考え方について
平成14年6月3日 財政制度等審議会 財政制度分科会
国立大学の学生納付金については、受益者負担の徹底と
自己財源充実の観点から、引上げを図る必要がある。
また、国立大学の法人化に当たっては、市場原理・競争
原理を導入するとともに、第三者評価に基づく重点支援
を推進するような制度設計を検討すべきである。
----------------------------------------------------------------------
[3] 北海道大学前副学長 藤田正一氏から参議院文教科学委員への書簡
----------------------------------------------------------------------
#(文教科学委員全員にFaxで送付された書簡)
平成15年6月30日
北海道大学前副学長 藤田正一
国立大学法人化に付いて
前略
大学の運営にあたった経験者として、今回の大学法人化論に我が国の教育の将来を危
うくする危険性を感じています。行政の方針に異論を挟むことから生じる私自身が被
るかもしれない不利益を鑑みても、発言せざるを得ない思いに突き動かされて以下の
一文を書きました。審議の参考にして下さい。
国立大学法人法と大学教育の将来
国立大学法人法案が衆議院を通過し、参議院での論議がスタートしましたが、大学人
の間ではこの法律に対する様々な批判があり、特に重要な指摘として、この法律の施
行が「学問の自由」を侵害するのではないかと危惧する声があります。一方で文部科
学省は、今回の国立大学法人化が、大学運営の自由度と自主性、自律性を増すもので
あると言うことを強く主張しています。確かに「自由こそ学問と道徳の生みの親であ
る」とはアメリカ独立宣言の起草者トーマスジェファソンの言であるし、札幌農学校
の開校式辞でクラーク博士も、明治維新の改革による「封建制や階級制度からのこの
すばらしい自由の獲得は学問を志す若者達の胸に大志を抱かせずにはおかないでしょ
う。」と述べています。自由こそ学問教育の発展に不可欠な要素でありましょう。こ
のことについては後で考察するとして、自由が束縛されると言う大学人の見解と、自
由が増すと言う文部科学省の見解の相違点は何処にあるのでしょうか。国立大学法人
法案によれば、大学は、自らの中期目標を自主的に決定できず、主務大臣が大学の意
見を聞きながら決定し、大学は、中期目標に従って実施計画を作っても、認可を主務
大臣から受けなければならない。計画を実行した結果が主務大臣の意向(目標)と違
えば、低い評価を得て、次年度からの予算は減額されるというものです。運用次第で
大学の自由度は縮小され、国家統制が強化される感があります。ただし、大学はこの
ような枠の中で交付された予算の使途の自由裁量による決定だけは認められています。
これをもって文部科学省は大学法人が自主的自律的に大学を運営することができると
主張するわけです。金魚鉢の中を「自由に」泳ぐ魚は果たして自由なのでしょうか。
いや、金魚鉢の中でさえ自由に泳げない仕組みになっている様です。「第3者評価」
とはいえ、文部科学省の息のかかった評価機関による予算執行の事後評価が控えてい
ます。私が恐れるのは、このようなシステムが少なからず学問の自由を侵害する可能
性があることです。
「学問の自由」の概念は、西洋における学問と権力との関係の長い歴史の中から生ま
れてきました。「地球は動く」と言ったガリレオを弾劾した宗教裁判に代表されるよ
うに、権力によって、自由な発想による研究が阻止されたり、学問研究を通して知り
得た知識や情報が、権力の望む方向にねじ曲げられたり、事実の公表や、教育として
のその伝達を妨げられたりしてきた苦い経験から生まれてきた概念です。大学におけ
る「学問の自由」とは、(1)学問を志す人が、自分の自由意志で学んだり研究した
りする対象を決定し、学問を遂行できる自由と、(2)学問研究の結果知り得た知識
や事実を曲げることなく公表する自由と義務、さらに、(3)その知識や事実を曲げ
ることなく教育と言う形で伝達する自由と義務を指します。(2)は「報道の自由」
とも相通ずるものがあり、(3)とともに正しい情報を知る権利を持つ学生や国民に
とっても重要な基本的概念です。これらのことは、学問研究を志す人の良心に基づき、
国民に直接責任を負ってなされるべきもので、いかなる権力からの圧力でも、事実の
歪曲や、過った情報が国民に伝えられるようなことはあってはなりません。大学は良
識の府として、いかなる権力からの、いかなる圧力にも屈することなく、正しい情報
や見解を自由に発信できる組織で無ければなりません。従って、時にはその専門知識
を持って、国の政策に批判的な見解を提示する御意見番的役割りをも国民に対して負っ
ているといえます。
我が国の大学の歴史において、戦前、戦中を通して、特に政権の戦争政策や歴史認識
に批判的な見解や論文の発表に対する厳しい弾圧が加えられ、「学問の自由」の侵害
があったことは歴史的事実ですが、世界的に見ても、政権による学問の自由の侵害が
特に危惧されるため、1950年ユネスコにより召集され、ニースで行われた世界の大学
の国際会議では、「大学と不可分の3つの理念」の1つとして、「多様な意見に対す
る寛容と、政治的干渉からの自由」をあげています。最近では1998年にユーゴスラビ
アのセルビア大学の管理職および教授を任命制にしたことに対して、大学人の主張が
入れられない可能性があるとして、ユネスコはミロシェビッチ大統領に「学問の自由」
を尊重する様、強い勧告を出しています。我が国の文教政策もこのような失態を演じ
ない様望みたいところです。
前述のような国立大学法人法案の許認可制度が 学問研究教育の内容にまで及ぶこと
になれば明らかに「学問の自由」の侵害で憲法23条に抵触するばかりか、独創的な
研究も不可能にしてしまいます。さすがにこのことについては、大学の独立行政法人
化を検討した自民党の文教部会も「大臣が大学に目標を指示したり、学長を直接任命
し、解任するような制度は、諸外国にも例がなく、国と大学との関係として不適切で
ある。」と平成12年3月30日発表の「提言 これからの大学のあり方について」
で述べています。「学問の自由」が保証されない民主主義はあり得ませんが、この法
案の解釈・運用によっては「学問の自由」が侵害され、我が国の民主主義の根幹を揺
るがすことになりかねません。昨年ある会合で文部科学省の大学法人化に関する説明
を聞いたイギリスの大学長が「学問の自由はどうなってしまうんだ。イギリスの法人
化に範をとったと言うが、これはいかにも日本的な法人化だ。どうなるか非常に興味
深い。」と私に囁きました。さすがに時の政権による大学統制の危険性を鋭く読み取っ
た様です。
明治の初期、帝国憲法発布以前に帝国大学の法人化論と言うものがありました。帝国
議会が召集され、帝国大学の予算も議会で決することになれば、時の政権によって、
大学の教育研究が左右されることになる。教育は国家100年の大事、時の政権に左
右されることがあってはならない。大学を法人化し、一定額を帝国議会の予算審議に
よらずに支給する、あるいは、その一定額を皇室からの基金でまかなうことにより、
政権の影響力から大学を独立させる事が望ましいと言うものでした。福沢諭吉や大隈
重信も「学の独立」を説いています。驚くべきことにこのような案が文部省内部から
も出ているのです。徒に主務省の権限拡大を狙わず、国家100年の計に思いを巡ら
す明治の官僚には素晴らしい人がいました。しかし、残念ながらこのような法人化は
実現せず、帝国大学は国権に支配され、国家主義教育の中心として戦争への道をひた
歩むことになります。
国立大学の存立基盤からの抜本的改革を行うのであれば、国立大学の100年に余る
歴史を評価し、改めるべき問題を洗い出し、改善策を含めて今後の国立大学の取るべ
き道を明確に示し、それを保証するための制度とすべきでありましょう。最大の反省
点は戦争と言う犠牲を払って知った教育の国家統制の恐ろしさです。しかし、今回の
国立大学法人法案では国の大学統制は現状よりも強化されています。そもそも今回の
国立大学法人化の構想は、大学の歴史や教育現場からの反省から生まれてきたもので
はありません。国の行政改革の一環として公務員25%削減の圧力の下、突如大学に
降って湧いたのです。それまで大学内で検討されていた大学改革案などこの法人化を
巡る論争の嵐の中で吹っ飛んでしまいました。この法案によれば13万人の国立大学
教員を非公務員化することにより、官僚を一人も削減することなく、公務員定削25%
は見事に達成されることになります。さらに驚くべきことに今回の論議には大学にお
ける教育の質的向上と言う大学改革に最も重要な視点が欠落しています。経済窮乏の
時とは言え、国立大学の統制強化や経営効率化、経済界への貢献を主眼とするあまり、
教育の質をおろそかにすることは、国家100年の向後に憂いを残す事になります。
今こそ、米100俵の訓を思い出していただきたいものです。
当然のことですが、大学改革を考える時、大学で教育を受ける学生と彼等を経済的に
支援する家族である一般国民の視点を加える必要があります。この視点も今回の法人
化論議で全く欠けていました。日本は世界で最も教育を重視する国民性を持っている
と言っても言い過ぎでは無いでしょう。日本国民が、国立大学の効率化、教員定員の
削減等で大学における教育研究の質が後退することを願っているでしょうか。国民は、
国費の無駄使いの改善は求めてはいるが、大学教育の衰退は求めていません。むしろ、
大学教育の強化充実と科学技術の振興を望んでいます。国民から見て同意できる国家
公務員の定員削減は官僚の削減で、大学の教職員の削減による教育の弱体化は求めて
いないはずです。国民は法人化による経営効率の追求から、産業に直結する研究のみ
がサポートされ、基礎研究や文系の科目がおろそかにされ、やがては大学の持ってい
た文化が廃れてしまうことを望んでいるでしょうか。教育の国家支配の強化により、
学問の自由が束縛され、一歩間違えば、国を再び間違った方向に進めてしまう可能性
を強化する法律を望んでいるでしょうか。大学に最も求められているのは、次代を担
う優秀な人材の育成と文化の創出です。これが教育研究の最高学府たる大学の第一義
的な社会貢献であり、大学における知と技術と研究力による産業界への貢献が第二義
的な社会貢献です。教育の質を犠牲にする大学改革などあり得ません。今回提案され
た法人化法案は学問の自由に抵触して健全な学問研究の発展をさまたげ、産業界への
貢献や大学の経営効率の追求から教育の質的低下をもたらし、大学の文化を歪めてし
まう可能性を色濃く持っています。このような法律の下での大学法人化は大学改革に
逆行するものに他なりません。国民的視点からの再検討を求めます。
最後までお読みいただき有り難うございました。
札幌市北区北18条西9丁目
北海道大学大学院獣医学研究科 教授
藤田正一
----------------------------------------------------------------------
配信停止連絡:Subject欄に以下を記載してメールを発行人までお送りください。
配信停止連絡は
no-kd
配信停止るアドレスが、連絡状の発信アドレスと異る場合は
no-kd-1
二度目の配信停止連絡の場合は、
no-kd-2
登録等:http://ac-net.org/kd/a.html
----------------------------------------------------------------------
編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
転載・転送歓迎。ただし URL "http://ac-net.org/kd" を併記してください。
----------------------------------------------------------------------