通信ログ
国公私立大学通信 2003.07.15(火)

--[kd 03-07-15 目次]--------------------------------------------------
[1] 首都圏ネットワーク事務局声明
    国大協臨時総会にあたり、学長諸氏に訴える
  http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714syutkenseimei.html

[2] 福岡県在住の国立大学教員からNHKへの質問書
   7/9放映『あすを読む「大学法人化への課題*」』 について
   * http://ac-net.org/kd/03/711.html#[3]
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昨日の国大協臨時総会は、15分を越す事務方の発言以
外には宇都宮大学長の発言があっただけで、20分で終っ
たと伝えられています(編集人)。

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[1] 首都圏ネットワーク事務局声明
    国大協臨時総会にあたり、学長諸氏に訴える
  http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714syutkenseimei.html
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     国大協臨時総会にあたり、学長諸氏に訴える


                             2003年7月14日

          独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局


1 国立大学協会臨時総会にあたり、まず、日本におけ
る国立大学制度を死に導いた主要な責任の一端が、協会
執行部と、その独走を抑えることの出来なかった国大協
全体にあることを強調しておきたい。そのことは、本日
の臨時総会の時期設定にも象徴的に現れている。詳しい
経緯はもはや学長諸氏には不要であろうから、国会審議
期間中に明白となった以下の諸点を付加しておく。

 第1に、新旧会長下の国大協執行部は、総会という最
高決定機関における法案の検討をあくまで回避する一方、
国会参考人質疑に出席して、あるいは複数の全国紙を使っ
て、法案賛成の意思を繰り返し表明した。石特別委員長
に至っては、国大協全体が法案に賛成しているかのよう
な、国民と国会を欺く発言を幾度となく行った。

 第2に、法案成立はおろか法案成文化以前から、準備
作業が強制・強行されてきた。国会では、このことが立
法権を侵害する行政権の濫用として糾弾され、審議が長
期にわたってストップした。だが、このような準備作業
が可能であったのは、法人化特別委員会等の国大協執行
部が、文科省と極めて深く癒着・融合していたからであ
る。このことは同特別委員会の審議経過と資料をみれば
明らかである。

 第3に、国会審議を紛糾させた労働安全衛生法適用猶
予等の違法脱法行為の要請も、公式には4月17日の国
大協特別委員会に端を発している。しかし、その実態は、
同委員会に文科省幹部が出席していることからも明らか
なように、文科省と国大協執行部が協議した上、違法脱
法行為の要請を準備したのである。



2 本日の臨時総会では、これまでの経過からみて、衆
参両院での附帯決議よりも遙かに弱々しい要望が議決さ
れることであろう。そして、臨時総会よりも時間の長い
国立大学長等会議が文科省によって開催され、準備作業
が公式に開始される。学長諸氏には、これから法人化準
備という困難な作業が待ち受けている。しかし、本日を
もって4年間の長きにわたって議論されてきた国立大学
独立行政法人化問題が終わるわけではない。準備作業の
再開(公式開始)という新たな局面のなかで、改めて国
立大学法人法の問題点を具体的に明らかにし、その一つ
一つと闘うことこそ、学長諸氏に求められていることで
ある。学長諸氏には、この困難な課題に取り組んで頂き
たく、さしあたり以下の諸点を強く要請する。

 第1に、衆参両院での審議と、それを反映した附帯決
議を厳密に踏まえて、準備作業を進めなければならない。
もし文科大臣が「お詫びの言葉」で述べたような理不尽
な事態が引き続き起こるならば、学長は直ちにそうした
準備作業を停止させる義務を負っている。

 第2に、準備作業で浮かび上がる問題点については、
国大協執行部が採ってきたような違法・脱法行為を黙認
する方針や、事態を先送りする玉虫色の解決で誤魔化し
てはならない。問題点を大学内外に公開し、それが法そ
のものに関わる場合には、法の凍結等を国会に対して要
請しなければならない。それが学長の社会に対する責任
である。

 第3に、理事・監事ポストについては官僚の「天下り」
用ではないのか、という批判が広範に湧き起こっている
こと、また学長選考過程にも社会の関心が高まっている
ことに十分留意しなければならない。不合理・不適切な
理事の人選、従来の民主的慣行を踏まえない学長選考に
対しては、徹底的に闘うことを表明しておく。

 第4に、定員外職員を含むすべての教職員の雇用の継
承を保証しなければならない。国家公務員身分の継続を
求める職員については、国会答弁どおり、その実現をは
かるべく努力しなければならない。給与等待遇の切り下
げには断固たる態度で臨むことを通告する。

 第5に、準備作業は、週40時間の労働時間内で進め
なければならない。部局長、評議員等の作業も同様であ
る。国会審議のなかでも取り上げられたが、過労の中で
亡くなったある大学の部局長の悲劇を絶対に繰り返して
はならない。いうまでもなく、超過勤務手当の支給でき
ない残業を絶対に行わせてはならない。そのような事態
が起こる場合には、われわれは躊躇なく告発することを
宣言しておく。

 第6に、労働安全衛生法、労働基準法等への対応準備
が間に合わないことが予想される場合には、直ちに国立
大学法人法の凍結を要求しなければならない。労働法制
をはじめとした違法・脱法行為に対しても、われわれは
躊躇なく告発することを宣言しておく。


3 国立大学法人法の成立は、法そのものの本質的問題
点を具体的に検証する過程が始まったことを意味する。
これに対するわれわれの基本的見地は、7月10日付の
声明「新たな局面と新たな闘い―国立大学法人法の「終
わりの始まり」に寄せて―」(別添資料*)で既に述べ
た。われわれは、同法による大学破壊を阻止するために
全力で闘うとともに、法そのものの廃止と新たな大学法
制の構築に向けての行動を開始する。

* http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030711syutkenseimai.html
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[2] 福岡県在住の国立大学教員からNHKへの質問書
   7/9放映『あすを読む「大学法人化への課題*」』 について
   * http://ac-net.org/kd/03/711.html#[3]
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「私は、国立大学の教員です。7月9日(水)に国立大学法
人法(以下「法」とします)が国会で成立し、これを受
けて同日 午後 11時55分 〜 翌 0時05分 に総合テレビ
で放送された「あすを読む」では、「大学法人化への課
題」と題して早川信夫解説委員がお話をされました。こ
の内容について、以下の通り意見を申し述べさせていた
だきます。

(1)お話の冒頭において、成立した法の特徴について、
「国がああしろこうしろという、いわば事前関与型から、
事後チェック方式に改めるとしているのが大きな特徴で
す」との説明がなされました。しかし、法では国立大学
の中期目標を文部科学大臣が定めることとしており、む
しろ国の「事前関与」が一層強化さているというほかは
ありません。ところで、早川解説委員ご自身も、お話の
なかで、法案が国会に提出される以前において、文部科
学省から大学側に対して中期目標の策定について具体的
な指示がなされ、これが参院での審議過程で大きな問題
になったことに言及されています。私も、文部科学省か
ら大学に来た指示を受けて、学内において中期目標の策
定に関連した具体的な仕事をするなかで、法の施行をい
わば前倒しするかたちで文部科学省による「事前関与」
が強化されていく状況をひしひしと感じました。法につ
いて説明するに際して、「事前関与型から事後チェック
方式へ」という一見わかりやすい、しかしあまりにも重
大な事実誤認にもとづいたキャッチフレーズを話の冒頭
に持ち出すことは、視聴者をミスリードするものという
ほかはありません。なぜこのような誤った説明がなされ
たのでしょうか。

(2)法の成立に至るまでの国会での審議経過や、そこ
で指摘された問題点を比較的詳細に取り上げられた点は、
一応は評価できますが、参院委員会で23項目にも及ぶ付
帯決議がなされた点については、一切言及がありません
でした。「大学法人化への課題」というテーマでお話を
されるのでしたら、国会での付帯決議というかたちで文
部科学省に対して課された「重い宿題」についてきちん
と言及されるべきではなかったでしょうか。お話の論調
は、法人化に対して国立大学教員が否定的な姿勢をとっ
ていて、ゆえに法人化という「改革」が進まない、といっ
たところに力点を置いていたようにも感じました。しか
し、本当に問題なのは、「改革」の名の下に法人化を強
引に進める政府・与党の姿勢や、ほかならぬその強引さ
のゆえに、多項目にわたって付帯決議がなされなければ
ならないほどに法の内容が杜撰なものにならざるをえな
かったことではないでしょうか。無論、付帯決議は、法
律上の効果(法的な拘束力)をもつものではありません
が、立法事実、すなわち今回の法の制定の基礎に関わる
社会的事実を反映したものとして一定の重みをもつもの
とおもわれます。そして、国立大学や大学人に対しては、
成立した法に唯々諾々と無批判に従うのではなく、付帯
決議の精神を今後の大学づくりに生かしていくことこそ
が求められていると思うのですが、いかがお考えでしょ
うか。

(3)お話のなかで、「事務職員が大学を教授たちと同
じように動かしているのだと意識できるようにすること
が必要です」と述べられ、今後は事務職員の大学運営へ
の参画を積極的に進めるべきであると主張されました。
このご主張については、基本的にもっともであると思い
ます。大学教員のなかには、教授会自治の本旨を履き違
え、事務官に対して王様のように振る舞う者も時におり、
ゆゆしきことであると思います。しかし、国立大学の置
かれた現状を踏まえた場合、「事務職員の大学運営への
参画」を無警戒かつ無条件に提唱することは、極めて危
険であるというほかありません。国立大学の事務組織は、
文部科学省から送り込まれる事務局長を頂点とするヒエ
ラルキーの構造を呈しており、ごく一握りの幹部職員は
ともかく、一般職員の発言や創意工夫が事務運営に生か
される余地は、実はかなり狭隘なものであると思います。
法人化後もこうした構造が温存されてしまうと(その危
険は少なからずあります)、事務職員の大学運営への参
画を積極的に進めた場合、文部科学省の意を受けた事務
局長(無論、法人化後のこのポストの扱いについては、
今もって不透明な点がありますが)や文部科学省出身の
天下り役員から事務職員への上意下達により大学運営が
なされ、結局は、国による大学への統制が強化されるこ
とにもなりかねないのではないでしょうか。「事務職員
の大学運営への参画」を提唱されるのであれば、その前
提として、国立大学からの官僚統制色の一掃をまず提言
されるべきではなかったのでしょうか。

(4)お話の最後で、「国会審議の影響で、6月をめど
としていました大学ごとの中期目標と中期計画の作成は
これからになります。いかに準備をしてきたとはいいま
しても、作業の遅れが気になるところです。(略)大学
同士の競争の時代が幕を開けます。これからの取り組み
方次第で、来年4月に大きな差がつくことになります。
あと9 カ月、残された時間を考えますと、大学にとって
の真価の問われる夏になりそうです」という発言が、気
のせいかやや語気を強めて、表情を若干険しくしてなさ
れました。発言の趣旨は、「来春の法人化まで時間がな
く、とにかく早急に法人化準備を進めなければならない。
悪法も法なり、ゆえに黙してこれに従うべし。これに従
わざる大学は、滅びるよりほかはなし」ということだっ
たのでしょうか。そうであるとすれば、これは、恫喝ま
がいの暴言ではないでしょうか。一瞬、早川解説委員に
文部科学省が憑依し、国立大学を叱咤しているような印
象を受けました。いっしょに見ていた家族も、その異様
さに強い違和感を感じたと申しておりました。(2)で
述べましたように、法人化という「国策」については、
多くの問題があり、これを糾すのがジャーナリズムの役
割であるはずです。報道機関であるNHKが、いつから国
策遂行機関に衣替えしたのでしょうか。

 私は、国立大学教員であり、法人化問題に関しては、
批判的な当事者です。したがって、その意見にはかなり
の偏向があるとお受け取りになるかもしれません。しか
し、私は、あくまで一市民、一視聴者としての感覚と立
場を踏まえて、上記のような疑問を申し述べさせていた
だいたつもりです。これらの疑問に対してきちんとお答
えいただくのが、報道機関としての責務ではないでしょ
うか。誠意あるお答えをお待ち申し上げております。」
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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