通信ログ
国公私立大学通信 2003.07.18(金)

--[kd 03-07-18 目次]--------------------------------------------
[1] 豊島耕一「学長クーデターの横行か」

  [1-1] 7/15 佐々木毅東京大学総長「今後の法人化作業についての所信表明」より
     2003年7月15日 http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/admin/1268.htm

  [1-2] 7/15 共同通信: 法人化で名工大学長を信任 続投支持60%、異例の投票

[2] ドクター桜井の日本診療〜273号 2003/7/17〜より

[3] 高橋千秋参議院議員(無所属、会派: 民主党・新緑風会)のウェブページより
http://www.chiaki.gr.jp/~chiaki/cgi-bin/hitokoto/

[4] 大仁田厚議員ウェエブサイ:国会レポート「国立大学法人法の成立について」
http://www.onita.co.jp/new/renew/politics/repo_20030714A.html

[5] かがわだいがく Mail Magazine  第27号     2003年7月17日
http://mm.kagawa-u.ac.jp/magazine/select_result.php?ITEM_ID=41
  ■オリーブの葉かげで──学長随感   ▽国立大学の法人化がきまりました
 ■国立大学法人とはどんなものか(2)......副学長 高橋正俊

[6] 7/14 国立大学協会臨時総会資料
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030716kokudaikyousoukai3kenn.html

  [6-1]  国立大学法人化についての国立大学協会見解
   http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714kokudaikyou-1.htm

  [6-1]  国立大学法人制度運用等に関する国に対する要請事項等
   http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714kokudaikyo-3.htm

[7] 7/14 国立大学長・大学共同利用機関長等会議−文部科学大臣挨拶(15.7.14)−
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/03071401.htm
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東大評議会が「総長への全権委任」の可否投票を24日
に行うそうです[1-1]。ほとんど脅迫ともいえるこの所
信表明を誰が書いたのかわかりませんが、全国の国立大
学に大きな影響があることですので、東大の方々は慎重
な判断を示して欲しいものです。少なくとも、具体的リ
コール制を同時に導入することが不可欠です。

また、早急に判断を迫られることが多いことをもって全
権委任を正当化することは、一大学については全学投票
などが即時に実行可能であることから無理です。大学は
軍隊ではないのですから、学長への全権委任は、大学の
活性化には百害あって一利なしでしょう。

現在、この「所信表明」について東大の各部局で議論さ
れているようですが、今後の国立大学全体に甚大な影響
がありますので、東大の方々の智恵と責任ある対処が期
待されます(編集人)。

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[1] 豊島耕一「学長クーデターの横行か」
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 いつもの,日本人の好きな「非常時」が来たようだ.
メディアも「生き残り」を喧伝している.「危機感がな
い」と言われるのを恐れて多くの人は「狼が来るぞ」と
いう類の言説に反論することを怠る.もちろん個々の大
学の存続は重要な問題だ.しかし「大学」という文化,
概念の「生き残り」こそが,わが国全体としては最重要
課題であるということを忘れていないだろうか.

 私学高等教育研究所主幹の喜多村和之氏は,「大学は
生まれ変われるか」(中公新書,2002年3月刊)という
本の中で,「学問の自由とその制度化としての自治を喪
失した大学は,もはや大学の名に値しない.仮に大学の
形態は保ち,生き残りは保てたとしても,それはもはや
大学ではないと著者は考える」と述べている.

 今日の大学人に最も欠けているのは,まさにこのよう
な危機感である.これが「法人法」の安易な国会通過を
許してしまったのではないか.

 しかし,事態はあたかも「戦時中」の雰囲気が復活し
たかのような方向へ進んでいる.「東大総長の所信表明」
*なるものが公表され,24日に「信任投票」**が行わ
れるそうである.この「所信」の中には喜多村氏のよう
な意味での危機感は全く見られない.

 この所信が出されるに至った詳しい背景は全く知らな
いが,文面から判断する限り独裁政権が求める信任投票
に似ている.必要な権限の付与はよしとしよう.しかし
その範囲については「相当包括的な授権」などという言
葉で全く曖昧にしか定義されていない.これでは「敬愛
される将軍様になりたい」と言うのとあまり変わらない.

 権限の強化が行われるならば同時にそれとのバランス,
すなわち権限に対するチェック機能,例えばリコール制
のようなものが必要だが,それが示されなていないのも
+,独裁政権樹立の疑いを持たせる.少なくとも,大学
運営の原則をその構成員による民主主義を基盤とするの
であれば,構成員によるチェックは不可欠である.そう
ではなく,会社と同様の,経営陣によるトップダウンに
切り替えようとするのであれば,経営陣の中だけでの
チェックでいいのかも知れない.「トップダウンかボト
ムアップかという議論は意味がない」などとごまかすの
ではなく,どちらの原則を取ろうとしているのか,明白
にすべきであろう.さもなければこれはまさしくクーデ
ターとなるであろう.

* http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030716toudaisutyou.html
** http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030716yomiuri.html

+「所信」の中に,「勿論、総長についても法人全体の
管理運営能力の観点から評価がなされ、解任の手続きを
とることが学内的にできることは周知の通りです。」と
あるが,東大の方によるとこの意味は不明とのこと.

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[1-1] 7/15 佐々木毅東京大学総長「今後の法人化作業についての所信表明」より
     http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/admin/1268.htm
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「国立大学法人法の成立によって本学の歴史における大
きな転機が訪れようとしています。本日はこれを受けて
今後の法人化作業に臨む私の基本的な立場を表明し、そ
の是非について評議会の判断を仰ぎたいと存じます。」

「・・・自分たちの組織は何を目標にし、何を達成しよ
うとしているかについて学内的に説得できないならば、
そうした組織は大学にとって意義のある組織とは言えま
せん。存在意味の曖昧な組織の持っていた資源は別の形
で有効に活用されることになります。・・・これまでは
定員とそれを根拠とする各組織があり、その連合体のよ
うな形で大学が意識されてきましたが、法人化の結果と
して全体よりも部分が先にあるという議論は基本的に根
拠を失いました。法人がないのに部局や各組織がそのま
まの形で存続するということはあり得ません。これはい
わば版籍奉還を前提にして全てを発想しなおすというこ
と、全ての部分や組織(この中には本部の事務局も入り
ます)、そして財源を大学全体の観点から考え直すとい
うことを内に含んでいます。これがこれからの法人化作
業の大前提です。」

「そのために必要な資源の集約について、学内の意見が
一致して支持しない場合にも実行に移さなければならな
い事態や、時間が限られていますから早急に判断を迫ら
れる重大な案件も当然覚悟しなければなりません。この
点について相当包括的な授権がなければ法人化作業に責
任を持てないことははっきりしています。また、法人の
将来のためには当事者の利害や意向ばかりに耳を傾けて
いるわけにはいきません。この第一の場合のリーダーシッ
プはいわば立法者的な機能であり、更には法人化以後の
総長が行うべき事柄を法人化以前の総長が行うというこ
とに関わるものであり、今回信任を求めるのは主として
この点に関わっています。」

「今回の所信表明は、評議会に対し今後の総長職の執行
につき私に対する信任の存否を求めることを目的として
おります。これは極めて異例のことであることは十分に
承知しておりますが、事柄の重大性に鑑み、このような
措置をお願いする次第です。なお、評議員が各部局の意
見を徴し、その判断を固めるためには一定の日時を必要
と考えますので、評議会を改めて開催していただき、正
規の手続きに従い、投票によって判断を下されるよう要
望します。」

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[1-2] 7/15 共同通信: 法人化で名工大学長を信任 続投支持60%、異例の投票
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名古屋工業大(名古屋市昭和区)は十四日、国立大法人
法が成立したことを受け、臨時教授会を開き、柳博明学
長(68)が進める改革の是非を問う異例の信投票を行っ
た結果、柳田学長は教官二百三十人の約6%の支持を得
て続投することが決まった。

 来年四月の法人化を前に、柳田学長は教官を学科所属
から切り離す組織再編に着手。これに対し学内で「改革
が急すぎる」との反発が強まり、学長が自ら教授会を招
集、信任投票に臨んだ。

 柳田学長は投開票後に会見し「法人化を進める設計者
として信を問いたかった。改革に強い支持が得られた」
と勝利宣言。「教授会では『学長が独裁者になるのでは』
との声も聞かれたが、学内の意見も聞きながら学長の強
いリーダーシップを発揮したい」と述べた。

 教授会には投票権を持つ助教授以上の教官二百八十六
人のうち二百三十人が出席し、投開票の結果、支持が5
9%の百三十六票、不支持は33%の七十八票。白票や
無効票が計十六票あった。

 柳田学長は東京大教授から二○○○年十一月に学長に
就任。教官組織を専門分野別に縦割りになった学科から、
設計や製作などの四領域に再編する改革を進めている。

 柳田教授は投票前の所信表明で「強い支持が得られな
かったら辞任する」と宣言していた。(了)
[2003-07-15-07:34]
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[2] ドクター桜井の日本診療〜273号 2003/7/17〜より
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◇あきれるばかり。

 先週予算委員会で質問した。TV中継入りで、総理と経済等の
問題点について質問するのは初めてで、いささか緊張した。「良
かったよ」という意見から「いい気になるなよ」まで反応は様々
だった。

 しかし、小泉総理の答弁の内容にはあきれるばかりだった。持
論である郵政事業民営化についてだが、郵貯が民営化された場合、
さらに民間のメガバンクができるが運営はどうするのかという私
の質問に対して、これから検討するという答弁だった。国会議員
を20年以上務め、唯一の持論である郵政事業の民営化について
この程度である。後は推して知るべしで、道路公団を民営化する
ということは高速道路の料金を永遠に取り続けるということで、
最初の約束と違っていますよ、という私の質問に対し、民主党の
無料化論は極めて危険な考えだと答弁された。すり替えもいいと
ころ。経済の問題はまったくわかっていないし、イラク攻撃の根
拠も、フセインが見つからないのだから大量破壊兵器がなかった
と言えるのかと、子供でもおかしいとわかるような答弁の繰り返
し。

 もともとフセインは存在していたが、大量破壊兵器はあったか
どうかわからないのである。そこが根本的に違うだろう。とにか
くどうしてこのような議員が総理として務まるのか、不思議でな
らない。それと同時にこの総理を、国会質疑で追い込めない民主
党も本当に情けないが。

 途中から小泉総理の答弁が長くなり、この姑息な手段のため質
問時間がなくなり、予定していた国立大学法人化等の問題の質疑
ができなかった。予定していた残りの質問は質問主意書という文
章で提出する予定。国立大学の問題については関係の先生と質問
を作成しているところである。前回の宣言通り、これからも戦い
続けるつもりである。

                 参議院議員・医師 桜井充

・・・・・・
◇桜井充HP◇ http://www.uranus.dti.ne.jp/~sakurai/
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まぐまぐ: http://www.mag2.com/j/14/01/0001.htm
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【ドクター桜井の日本診療】(毎週木曜日発行+α)
発行元  :桜井充国会事務所
発行責任者:山本 修
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[3] 高橋千秋参議院議員(無所属、会派: 民主党・新緑風会)のウェブページより
http://www.chiaki.gr.jp/~chiaki/cgi-bin/hitokoto/

●国立大学

昨日の本会議で国立大学法人法案が通過しました。

「大学にも競争原理を入れて100年に1度の大改革」
というのが文部科学省の言い分ですが、中身はそれとは
程遠い内容です。

これは国立大学を法人化して、自立させるというもので
すが、それとは逆に、基本的な目標になる「中期目標」
を文部科学大臣が定める、それも財務大臣と事前に協議
をした上で定める、ということになっています。 

これでは自立させるのではなくて、より文部科学省の統
制を強めることになります。

また、後の運営交付金を決める「国立大学法人の評価」
を、文部科学省の中に設置される評価委員会が行なうこ
とになっています。

つまり、入り口も出口も文部科学省が握ることになり、
今以上に文科省の影響が強くなってしまいます。

実際にこの法律によって法人化されると、新たに理事、
監事がたくさん生まれることになり、その多くが文部科
学省の天下りになると言われています。

まったく時代に逆行するし、こんなことで自由な学問が
できるとはとても思えません。

この審議の最中、まだ法律が出来ていないのに、文科省
が各大学に事細かい法人化の準備をさせていることが明
らかになりましたが、大臣はそれを否定し、後でその事
実が明らかになるなどで、何度も審議が中断するなど、
ともかくも文科省のためにこの法律を通すという姿勢で
した。

来年には教育基本法の改正が言われていますが、誰のた
めの教育なのか、省益しか考えていない文科省に腹が立
ちます。
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[4] 大仁田厚議員ウェエブサイ:国会レポート「国立大学法人法の成立について」
http://www.onita.co.jp/new/renew/politics/repo_20030714A.html
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【大仁田の意見】                           

「オレは基本的に、この大改革に賛成の立場である。た
だ、まだ詳細な部分まで煮詰められていない状況で法案
に賛成するのには、正直なところ少なからず心苦しい気
がした。決して国立大学が文部科学省の天下り先になっ
てはならないし、改革の今後を注意して見守っていく必
要がある。

 ただし、どうしてもマスコミは三面記事的なニュース
を取り上げる傾向にあり、この改革について充分に論じ
られていないように感じられるのが残念だ。

 この件については、『目安箱』にも数多くのメールが
寄せられました。国立大学法人化への反対意見も含め、
皆さんが寄せてくださったご意見は、貴重なものとして
受けとめています。

 国会議員としてのみならず、大学へ通う者の一人とし
て、大学のあり方、国立大学のあり方を考えさせられる
ものばかりでした。中には、国立大学を廃止して、全大
学を一律に競い合わせるべき、とのご意見などもあり、
興味をそそられるところがありました。これからも、皆
さんがどんどんご意見を寄せてくださることをお待ちし
ております。」
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[5] かがわだいがく Mail Magazine  第27号     2003年7月17日
http://mm.kagawa-u.ac.jp/magazine/select_result.php?ITEM_ID=41
  ■オリーブの葉かげで──学長随感   ▽国立大学の法人化がきまりました
 ■国立大学法人とはどんなものか(2)......副学長 高橋正俊
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[6] 7/14 国立大学協会臨時総会資料
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030716kokudaikyousoukai3kenn.html

[6-1]  国立大学法人化についての国立大学協会見解
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714kokudaikyou-1.htm

[6-1]  国立大学法人制度運用等に関する国に対する要請事項等
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030714kokudaikyo-3.htm

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[7] 7/14 国立大学長・大学共同利用機関長等会議−文部科学大臣挨拶(15.7.14)−
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/03071401.htm
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd