通信ログ
国公私立大学通信 2003.07.28(月) 司法行政の問題

--[kd 03-07-28 目次]--------------------------------------------
[1] 官僚裁判官制度における裁判官弾圧の実態
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000041.html

[2] 櫻井よし子: 国立大学を潰す「遠山」文科省
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000040.html

[3] 朝日新聞、NHKなどの虚偽報道について
                [35年前も「東大総長の信任投票」は行われていない]
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000039.html

[4] 北海道新聞記事(7/25)イラク特別措置法可決における与野党談合
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000037.html

[5] 東京外大教授会が外国人学校受験資格許可要請を決議
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000036.html

[6] 福岡県立大学が外国人学校からの受験許可方針を断念
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000035.html

[7] 7.24東大臨時評議会の決議内容
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000034.html

[8] NHKより巧妙な朝日の粉飾報道:東大総長の「信任」
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000033.html

[9] 【行政文書の開示請求(対岐阜大学長に)によりえた記録】
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000032.html
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「裁判官の業績」とはなにかは理解しがたいものがあり
ますが、裁判官の間に、給与や任地や地位で大きな差別
があるという証言があります[1]。しかも、違憲判決や
人権を優先するような判決をすれば必ず差別されるよう
です。このような、国の根幹で発生している重大な問題
が放置されたままであることは驚くべきことです。最高
裁判事の国民審査制度を機能させて、司法行政全体が組
織的かつ恒常的に行っている「違憲人事」に歯止めをか
け、日本の司法機能を育成し法治国家を形成していくこ
とが、日本の復興には不可欠なことの一つですが、国民
審査制度を機能させる鍵を握るメディアの現状を見れば、
ほとんど不可能のように思われます。しかし、ここでも、
大学界がすべきことはかなりあるのではないかと思いま
す(編集人)。

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[1] 官僚裁判官制度における裁判官弾圧の実態
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000041.html
                                     分類:司法制度の形骸化 , 本の紹介
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安部晴彦 著「犬になれなかった裁判官--司法官僚統制に抗して36年」 
(NHK出版2001.5 ISBN 4-14-080609-5)

p57 「人間の生活は、真剣に自分や他人の幸福追求をは
かっていけばいくほど、必然的に社会的に、そして思想
的・政治的にならざるを得ない。ある場合には、それが
一部の他人との対立関係をもたらすこともあるのであろ
う。しかし、それが、「歴史」に責任を持つ「人間」の
「家畜」とは違うところではないか。そこでは、市民の
生活をまもり、平和を求め、幸せを求める能動的な「動
き」の中に、「自分も」参加し、いっしょに苦労するこ
とが重要なのではないだろうか。」

p214 「これまで述べてきたとおり、裁判所・裁判官の
問題に限定してみても、現実の事態は深刻である。現在、
日本の裁判官の置かれている状況について整理して言及
してみる。

現在の官僚統制は、有無をいわせぬ転勤制度と小刻みな
昇給制度を武器として、「公正らしさ」という意味不明
の理屈を振りかざし、裁判官の市民との接触の場を失わ
せている。その結果、裁判官たちを、自主的な考えので
きない、もの言わぬ裁判官に育てあげている。裁判官自
治は後退し、最高裁に集中させた管理権限を行使して、
職務の指定・配分を行い、裁判内容も含めて、一定方向
へ向けて統制された裁判所・裁判官にしていく。これが、
日本の裁判官統制の方向である。

そして、その方向が、政治勢力の望む方向にただ従うの
みで、ともすれば、憲法を護り、平和と民主主義を前進
させ、人権を擁護しようという動きに背を向げているこ
とが気がかりなのである。

映画『日独裁判官物語』の中で、梶田英雄元裁判官は、
裁判官に対する人事上の処遇についての質問に対して、
次のように答えている。

「具体的にいえば、一応三つあるのですがね。一つは任
地ですね。任地上の差別があります。これはやはり希望
する所へなかなか行けない。それから二つ目は給料です
ね。それから三つ目は部総括裁判長の指名を受けられな
い。部総括裁判官というのは裁判長になることですね、
合議体の裁判長。裁判官としては非常にやりがいのある
仕事なんですけれど、こういうポストになかなか就けさ
せてもらえない。この三つが人事上の差別の非常に大き
な要素になっているわけですね」。

裁判所は全国にあり、何処でも、いい裁判を受けること
を期待している人たち、国民がいる。裁判官それぞれに
は希望もあり、個人的事情もあるが、誰もが希望どおり
の仕事やポストに就けるものではない。このことは誰で
も理解している。

しかし、転勤、昇給、そして職務配分というような司法
行政上の方法手段を最大限に利用して、ある裁判官には
極端な冷遇を、ある裁判官には論功行賞的な厚遇を、意
識的に、露骨に、あるいは巧妙にもっていく「司法官僚
統制」が進められてきたのが、残念ながら現実の経過と
いってよいであろう。場合によっては「裁判官をやめよ」
といわんばかりの、狙いはそうとしか考えられない処遇
を受ける裁判官もいるのである。・・・」

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[2] 櫻井よし子: 国立大学を潰す「遠山」文科省
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000040.html
     分類:国会審議の形骸化 , 国立大学法人制度の欠陥 , 国立大学法人法
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週間新潮 2003.7.17 p146-147 連載コラム 日本のルネッサンス第76回

「確実に日本の力を削ぎ落としていく国立大学法人化法
案が、7月8日参議院文教科学委員会で可決された。・・・
この法律で、日本の知の拠点である国立大学の教育、研
究は自滅していくと幾千もの教授たちが語る。

・・・東大理学部教授の松井孝典氏もそのひとりだ。教
授は地球の起源と成り立ちを説いた新理論を、1986年、
『Nature』誌に発表、世界の注目をあびた気鋭の学者で
ある。・・・「本当に重要なのは、くだらない研究をい
かにやらないかです。・・・」くだらない研究とは、あ
る種の見当がつき、経費も大よそ予想できるような研究
である。プロの研究者なら目をつぶっていても書けるつ
まらない研究が、法人化された大学で幅をきかせるよう
になるのは風に見えている。・・・」

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[3] 朝日新聞、NHKなどの虚偽報道について[35年前も「東大総長の信任投票」
は行われていない]
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000039.html
                  分類:メディアの情報操作 , 学長の権限 , 大学内行政
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[iken koukoku --- news041 ] 「意見広告」事務局
Date: Sun, 27 Jul 2003 09:47:18 +0900

24日に開かれた東大評議会について、事実に反する報道がなされています。
取材力・分析力の欠如によるものか、悪意によるものか分かりませんが、東大
の評議会について、簡単に次の2点を指摘いたします。

1. 「国公立大学通信」より

    その内容は、たとえば「NHKオンライン」によれば、
   「東京大学は、35年ぶりに学長の信任投票を行い、佐々
   木学長が信任されました。来年4月から国立大学が国立
   大学法人に移行することを受けて学長の権限が強まるこ
   とから、今後ほかの大学でもこうした動きが出てきそう
   です。」とするものです。

これは、多くの人が騙されている点ですが、東大ではか
つて一度も学長の信任投票などということは行われたこ
とはありません。総長は教授会構成員の直接選挙で選ば
れており、これを評議会が信任することなどという事は
本来の評議会の議事に全くなじまない性格を持っていま
す。ところが、だれがこの様な虚偽を流し始めたのか分
かりませんが、佐々木総長が「信任」を求めた時点で、
「1968年以来異例の」という表現が出現しています。

1968年は、ご存知の通り東大紛争の大渦中でした。
10月に当時の大河内総長が学内混乱の責任を取って辞
任し、急遽加藤一郎氏が8学部長会議で「総長事務取り
扱い」として選出されました。選挙をしていないのです
から、加藤氏が総長職に就くことなどできるはずもない
ことです。これを評議会が取りあえず「信任」し、以後
加藤氏は総長職を「代行」として勤めるようになったの
です。すなわち、加藤氏は選挙で選ばれていなかったか
ら、しかも当時の混乱した状況でただちに総長選挙を行
うことがまず不可能だったため、「代行」として評議会
が認めたに過ぎなかったわけです。

当時の報道に接していた方々は、テレビ・新聞などに
「加藤総長代行」が盛んに登場していたことを覚えてい
らっしゃるはずです。ありもしない「35年ぶり」の信
任投票などと述べることは、マスコミの取材力、調査能
力の乏しさを暴露しているだけの話です。」

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[4] 北海道新聞記事(7/25)イラク特別措置法可決における与野党談合
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000037.html
       分類:メディアの情報操作 , 荒廃の諸相 , 国会審議の形骸化
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旧態依然の与野党談合でイラク特措法が可決された、と
いう以下の記事が正しければ、自由・民主が合流などし
ても国民からの支持などありえず、政権交代などあろう
はずはない。「野党攻撃」の世論操作の可能性はある。
記事が正しくないのであれば、民主党は、正式に抗議す
べきであろう。・・・

北海道新聞2003年7月26日付け
週末の採決 暗黙の了解 ーー野党 抵抗姿勢のアピール

「イラク復興支援特別措置法をめぐる与野党攻防の決着
が26日未明にもつれ込んだのは、秋の衆院解散・総選
挙が現実味を帯びる中、週末は選挙区に戻りたい与野党
の思惑が一致した結果だった。野党側は二日連続の未明
の審議で抵抗姿勢をアピール。一方、与党側は会期末の
28日まで同法案を持ち越すと不測の事態もあり得ると
計画、解散風が与野党の「談合」を成立させた。・・・」

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[5] 東京外大教授会が外国人学校受験資格許可要請を決議
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000036.html
          分類:外国人学校受験資格 , 大学の自治 , 大学内行政
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(共同通信07月25日) 外国人にも受験資格を 東京外大教授会が決議(7/26)

「朝鮮学校などの外国人学校卒業生が大学受験資格を無
条件で得られない問題で、東京外国語大の外国語学部教
授会は25日、文部科学省と池端雪浦学長に門戸開放を
要請する決議をした。

この問題では京大の部局長会議も今月、門戸開放が適当
と決めたばかり。今回の決議は大学独自の受験資格認定
も促し、さらに踏み込んだ内容。東京外大は外国語学部
だけの大学で、教授会の決議によって学長も何らかの対
応を迫られるとみられる。ほかの大学にも影響を与えそ
うだ。決議文は文科省の方針に沿ってすべての国立大が
受験資格を認めていない現状を「教育の機会均等に反し
差別的」と指摘。文科省に認定を求めたほか、文科省が
応じない場合は「本学独自の判断で受け入れるべきだ」
と学長に要請している。」

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[6] 福岡県立大学が外国人学校からの受験許可方針を断念
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000035.html
                分類:外国人学校受験資格 , 大学の自治
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(共同通信7月25日) 外国人学校に受験認めず 県の指
摘受け、決定変更(7/26) 福岡県立大(同県田川市)が、
2004年度以降の推薦入試で朝鮮高級学校など外国人
学校からの受験を認めることをいったん決めながら、福
岡県からの指摘を受けた後で断念していたことが25日
までに分かった。

同大は、国の法令で大学入学資格が認められていない外
国人学校の卒業生に、一般入試の受験を認めているが、
新たに推薦入試でもこれらの学校を対象に含めることを
5月の評議員会で決定。

ところが、6月下旬に福岡県学事課から「(改定は)法
令によく注意してやるように」と指摘され、学内で再検
討した結果、当初の決定を覆すことを決めた。

同大によると、一般入試は個人を対象としているのに対
し、推薦入試は学校単位のため、法令で認められていな
い学校を対象とするのは難しいと判断したという。橋口
捷久学長は「このような結論に達したのは仕方がない。
県が大学の自治に介入したとかいうことではない」と話
している。」

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[7] 7.24東大臨時評議会の決議内容
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000034.html
                    分類:学長の権限 , 大学内行政
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東京大学職員組合サイトより:
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030724hyougikai.html

7月15日の総長の所信表明を受けて、これに応える意
味で東京大学評議会は次のとおり決議する。

1 所信表明で述べられている諸点、具体的には、下記
の点について、評議会は同じ理解にたつ。

1)国立大学法人化にともない、法人への移行作業は、
従来の連続線上で取り組むことができない多くの課題を
抱えている。

2)法人化後も、東大憲章に則り、学問研究と教育にお
いて国際的に名誉ある地位を占めるという基本目標を堅
持する。短期的視野に立って行動しない。

3)法人化後は、大学が資源の管理に直接責任を負うこ
とになるので、法人の自立性を可能にする組織体を創り
出す必要がある。

4)そのためには、総長のリーダーシップを確立するこ
とが不可欠である。

5)その中には、短期間に法人への移行を可能にするた
めに必要な組織運営、人事制度、財務会計等に関する検
討を深め、迅速で有効な意思決定を進めることを含む。

6)総長がリーダーシップを発揮するためには、一定の
裁量可能な資源が必要である。

2 評議会は以上の認識を共有しつつ、法人化に向けて、
審議決定機関としての自らの責任を全うする決意を表明
する。総長のリーダーシップのもと、必要な事項につい
ては、大学構成員の意見を十分聞きながら、迅速、的確
な決定を下していく。評議会は最高意志決定機関として
の権能を有効・的確に発揮する。」

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[8] NHKより巧妙な朝日の粉飾報道:東大総長の「信任」
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000033.html
                                             分類:メディアの情報操作
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#(コメントの中の「68年に行った学長の信任投票と
同じこと」という部分は、メディアの情報操作にかかっ
た例[3]です。)

 東大学長が要求した信任投票を東大評議会が拒否した
事実をこの記事から認識できる人がどれだけいるのだろ
うか?68年に行った学長の信任投票と同じことが行わ
れ信任されたと大半の読者は思うのではないか?

ここまで明白な情報操作も平然と行うのは、当該新聞社
「デスク」では情報粉飾が日常茶飯事となっているから
であろう。

asahi.com 2003.7.24

「東大評議会、全員一致で佐々木学長「信任」 法人化前に

東京大の評議会は24日、来春の国立大学法人化を控
えて佐々木毅学長のリーダーシップを認めるかどうかな
どについて投票を行い、出席した41人全員が賛成した。
佐々木学長は、強力な中枢機能の確立などを求める所信
を15日に表明し、自身への信任投票を求めていた。

 佐々木学長は「実質的に信任されたと思っている。法
人の立ちあげは財務など難しいことが出て来るが、みな
さんと協力してやっていきたい」と話した。

 評議会は東大紛争時の68年に学長の信任投票をした
ことがある。」

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[9] 【行政文書の開示請求(対岐阜大学長に)によりえた記録】
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000032.html
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平成14年6月27日教職員組合会見メモ(抜粋)

  Q 特に事務官、技官は国家公務員になりたくて大学
  に就職した。大学以外の職場に移りたいという希望があっ
  た場合にはどのようにあつかわれるのか。

  A 希望者には現在も行っているが、他の官署へも異動
  することについて受け入れてもらえるよう当たることに
  なるが、相手方もあり希望に添えるよう最大限努力はし
  たい。

Qは私で、Aは事務局長です。

ほぼ1年前のことです。

最初の問いは、今回で正式に確認されたので、個別に対
応するとのことで、意思確認の行為は、「身分継承」な
ので行われないでしょう。

 ですから、公務員身分でいたい方は、自発的にアプロー
チしなくてはなりません。黙っていれば、3月31日に
公務員でなくなり、4月1日に大学法人職員になります。

 「個別に対応する」のには、上意下達のなかで育った
事務系職員はなかなか言いにくいです。そこで組合が間
に立つか、意思確認行為をするように交渉するかが現実
的な対応だと考えます。(事務系職員の組合加入がわず
かな本学ではどう動こうか思案するところです。)

 私がなぜこの件にこだわるかは、この会見メモには記
載されていませんが、このとき事務局長は法人化にあたっ
て自分も不安であると言っておきながら、その3ヵ月後
の9月30日付けで勧奨退職しているのです。

 その「退職勧奨の記録」も行政文書開示請求(対文部
科学大臣に対し)して、その理由を確認したら「後進に
道を譲るため」とだけでした。でも彼が私立大学に再就
職(天下り?)することは送別会の席で自らの口から発
し、今後ともよろしくとのことだったようです。

 まさに「みごと!」との感想をもち、憤りを感じまし
た。(自己都合退職と勧奨退職では、退職金に大きな違
いがあります。)

山口 利哉 岐阜大学専門職員(事務官)
http://www.h6.dion.ne.jp/~vc99/index.htm

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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
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  二度目の連絡:mailto:kd@ac-net.org?subject=no-kd-2