国公私立大学教員有志から 京都地裁民事三部裁判官への要望書
資料

大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議事録の整理

阿部泰隆=位田央


◎目次

はじめに

大学の教員等の任期に関する法律

一 任期制導入の目的、現状認識

(1)目的
(2)人材流動化の実例―放送大学、素粒子論グループの例
(3)現状認識

二 任期制は適切な手段か

(1)任期制の問題点
(2)学問の自由に関して
(3)事実上の任期制について
(4)任期制以外の手法

三 身分保障との関係

(1)米国のテニュア(tenure)制の運用、外国法制度との比較
(2)給与体系
(3)インセンティブ
(4)女性教員
(5)任期切れ後は?
(6)国家公務員法等との関係

四 任期制導入の三類型  助手の任期制は妥当か?

(1)任期制を導入する三つに類型は適切か?限定的か?
(2)なぜ教授まで対象とするのか?
(3)流動化と再任制度は矛盾しないか?
(4)助手の任期制は妥当か?

五 業績評価

(1)業績評価はどのように行われるのか?
(2)大学の教育研究活動に対する自己評価、外部評価、情報公開

六 恣意的な運用の恐れ、任期切れ教員の救済方法

(1)恣意的な運用の恐れ
(2)救済手段

七 私学の場合、労働基準法との関係、教授会

八 選択的導入と予算等による事実上の強制

(1)選択的導入の根拠
(2)選択的導入と文部省の圧力
(3)選択的導入の弊害―市場の狭さ

九 大学ではどんな再任ルールを作るべきか? 規則作成過程は? 規則の変更は?

十  労働組合との関係、団体交渉


はじめに 大学の教員等の任期に関する法律が平成9年に制定されたとき、その合憲性、 政策的な妥当性について種々疑問が示された。学問の自由を侵害し、実際上は 大学の活性化に寄与せず、混乱を生ずるだけであるということである。  しかし、その後、6年間の間、その議論はほとんど行われずに経過した。こ の法律は、一般には活用されていないので、あまり気にもとめずに、死せる法 と思われていたのではないか。たしかに、医学部系統では全教官に任期制を導 入しているところも増えているが、実際に、任期を理由に失職させる事件はな かったので、それは普通は形だけと思われているだろう。 しかし、今、国立大学法人化などを契機に、全教官に任期制を導入する動き が出てきている。そこで、今一度、この法律の合憲性、政策的な妥当性を再検 討する必要がある。 しかも、全教官の一律任期制が拡がりそうである。横浜市立大学は前教員に 任期制、年俸制を導入する方針を決定した。しかし、同大学では商学部教授会 が10月2日全教官への一律任期制導入は違法との法的な意見を提出している。 http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20031002NinkiseiKyojukaiIken.htm  たしかに、この法律は任期制を導入できる場合を限定し、しかも、職に就け る場合に限っているから、現職の教員を全員任期制に切り替えることは違法で ある。この意味では、この法律のしくみを正確に理解することが必要である。  さらに、2002年12月には、京大再生医科学研究所で、任期制初の任期 切れ失職扱い事件が発生した。これは、外部評価で7人の高名な医学者が「国 際的に平均」「再任可」と評価したのに、教授会が、無記名投票で、白票も反 対に数える方法で、再任賛成が過半数に達しないという理由で、再任拒否を行っ て、失職に追い込んだものである。さらに、もともと、任期制であることは、 この教授のポストの公募のさいには示されず、任期への同意は、発令直前にば たばたと事務官から求められた。任期制法の下でも、任期が適法に付されたこ とと、再任審査が合理的であることが前提で、失職になるものであって、この 任期自体が違法であり、また、再任審査が恣意的である(しかも、この再任審 査のルールは、この法律に基づく学則とそれから委任されたと見られる研究所 「内規」で規定されている)場合には、任期を理由とする失職扱いは、失職へ 追い込む失職・免職処分と解される。しかし、裁判所は、その救済に消極的で ある。原告は執行停止を申請したが、京都地裁は失職だから、処分ではないと して門前払いとし、大阪高裁も同様の態度を取ったので、原告は即時抗告を取 り下げざるを得なかった。目下、京都地裁で、失職処分の取消訴訟が進行中で あるが、これでは研究の中断のため、実際上は、救済はできないし、任期制法 が狙った学問の進展を阻害する結果となることは明らかである。  このように、この法律への疑問は解消されるどころかますます深まっている。 阿部泰隆は、別稿でこの点を検討するところであるが、そのための準備作業と して、ここでは、国会での議論を整理することとした。  これを見て感ずることは、国会では、野党側は問題こそ提起しているが、文 部省は、まともに答えずに、はぐらかし、これに対して野党側が徹底的に追及 しないので、問題点が十分に解明されずに終わっている。この資料は、この問 題を考える素材として役立つというつもりで、分析を始めたし、多少は役立つ が、他面では、日本の国会では、まともな法律論を展開していないと慨嘆せざ るを得ず、立法過程論の講義で悪しき例として参照して頂きたいという思いを 持つこととなった。 この資料は、 http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KOKUMIN/www_logout?SESSION=18978&MACIE=1043336549 の検索画面で、第139回から第141回の国会の期間を選択し、大学and教員and任 期で検索した。以下の項目が出てきたので、明らかに関係ないと思われる部分 を除いて、全てコピーandペーストでMSWordの文書に取った上で、項目毎に整 理し直し、大部になるので、できるだけ重複を避け、無駄な発言を削除した。 141 衆 文教委員会高等教育に関する小委員会 01 1997/12/03 140 参 文教委員会 18 1997/06/18 140 衆 文教委員会 20 1997/06/17 140 参 本会議 32 1997/06/06 140 参 文教委員会 15 1997/06/03 140 衆 文教委員会 17 1997/05/30 140 参 文教委員会 14 1997/05/29 140 衆 文教委員会 16 1997/05/28 140 参 文教委員会 13 1997/05/27 140 参 内閣委員会 11 1997/05/27 140 衆 文教委員会 15 1997/05/23 140 衆 本会議 37 1997/05/22 140 衆 議院運営委員会 37 1997/05/22 140 衆 文教委員会 14 1997/05/21 140 衆 文教委員会 13 1997/05/20 140 衆 文教委員会 12 1997/05/16 140 衆 文教委員会 11 1997/05/14 140 衆 本会議 33 1997/05/09 140 衆 議院運営委員会 33 1997/05/09 140 衆 文教委員会 10 1997/04/25 140 衆 文教委員会 09 1997/04/23 140 参 文教委員会 06 1997/04/08 140 衆 文教委員会 06 1997/04/02 140 参 文教委員会 05 1997/03/27 140 参 文教委員会 04 1997/03/18 140 衆 本会議 14 1997/03/05 140 衆 文教委員会 03 1997/02/19 140 参 文教委員会 01 1997/02/14 140 衆 文教委員会 02 1997/02/14 【大学の教員等の任期に関する法律】 第一条  この法律は、大学等において多様な知識又は経験を有する教員等相 互の学問的交流が不断に行われる状況を創出することが大学等における教育研 究の活性化にとって重要であることにかんがみ、任期を定めることができる場 合その他教員等の任期について必要な事項を定めることにより、大学等への多 様な人材の受入れを図り、もって大学等における教育研究の進展に寄与するこ とを目的とする。 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定 めるところによる。 一  大学 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する 大学をいう。 二  教員 大学の教授、助教授、講師及び助手をいう。 三  教員等 教員並びに国立学校設置法 (昭和二十四年法律第百五十号)第 三章の三 、第三章の五及び第三章の六に規定する機関(第六条において「大 学共同利用機関等」という。)並びに独立行政法人大学入試センター(以下 「大学入試センター」という。)の職員のうち専ら研究又は教育に従事する者 をいう。 四  任期 国家公務員としての教員等若しくは地方公務員としての教員の任 用に際して、又は学校法人(私立学校法 (昭和二十四年法律第二百七十号) 第三条 に規定する学校法人をいう。以下同じ。)と教員との労働契約におい て定められた期間であって、国家公務員である教員等にあっては当該教員等が 就いていた職若しくは他の国家公務員の職(特別職に属する職及び非常勤の職 を除く。)に、地方公務員である教員にあっては当該教員が就いていた職若し くは同一の地方公共団体の他の職(特別職に属する職及び非常勤の職を除く。) に引き続き任用される場合又は同一の学校法人との間で引き続き労働契約が締 結される場合を除き、当該期間の満了により退職することとなるものをいう。 第三条  国立又は公立の大学の学長は、教育公務員特例法 (昭和二十四年法 律第一号)第二条第四項 に規定する評議会(評議会を置かない大学にあつて は、教授会)の議に基づき、当該大学の教員(常時勤務の者に限る。以下この 条及び次条において同じ。)について、次条の規定による任期を定めた任用を 行う必要があると認めるときは、教員の任期に関する規則を定めなければなら ない。 2  国立又は公立の大学は、前項の規定により学長が教員の任期に関する規 則を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければなら ない。 3  第一項の教員の任期に関する規則に記載すべき事項及び前項の公表の方 法については、文部科学省令で定める。 第四条  任命権者は、前条第一項の教員の任期に関する規則が定められてい る大学について、教育公務員特例法第十条 の規定に基づきその教員を任用す る場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、任期を定めることが できる。 一  先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究 組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性にかんがみ、多様な人材の確保 が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。 二  助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内 容とするものに就けるとき。 三  大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行 う職に就けるとき。 2  任命権者は、前項の規定により任期を定めて教員を任用する場合には、 当該任用される者の同意を得なければならない。 第五条  学校法人は、当該学校法人の設置する大学の教員について、前条第 一項各号のいずれかに該当するときは、労働契約において任期を定めることが できる。 2  学校法人は、前項の規定により教員との労働契約において任期を定めよ うとするときは、あらかじめ、当該大学に係る教員の任期に関する規則を定め ておかなければならない。 3  学校法人は、前項の教員の任期に関する規則を定め、又はこれを変更し ようとするときは、当該大学の学長の意見を聴くものとする。 4  学校法人は、第二項の教員の任期に関する規則を定め、又はこれを変更 したときは、これを公表するものとする。 5  第一項の規定により定められた任期は、教員が当該任期中(当該任期が 始まる日から一年以内の期間を除く。)にその意思により退職することを妨げ るものであってはならない。 第六条  第三条及び第四条の規定は、大学共同利用機関等の職員のうち専ら 研究又は教育に従事する者について準用する。この場合において、第三条第一 項中「国立又は公立の大学の学長は、教育公務員特例法 (昭和二十四年法律 第一号)第二条第四項 に規定する評議会(評議会を置かない大学にあつては、 教授会)の議に基づき」とあるのは「文部科学省令で定めるところにより任命 権者は」と、同条第二項 中「国立又は公立の大学」とあるのは「文部科学大 臣」と、「学長」とあるのは「文部科学省令で定めるところにより任命権者」 と、第四条第一項中「教育公務員特例法第十条 の規定に基づきその」とある のは「その」と、「任期を」とあるのは「文部科学省令で定めるところにより 任期を」と読み替えるものとする。 第七条  第三条及び第四条の規定は、大学入試センターの職員のうち専ら研 究又は教育に従事する者について準用する。この場合において、第三条第一項 中「国立又は公立の大学の学長は、教育公務員特例法 (昭和二十四年法律第 一号)第二条第四項 に規定する評議会(評議会を置かない大学にあつては、 教授会)の議に基づき」とあるのは「大学入試センターの理事長は」と、同条 第二項 中「国立又は公立の大学は、前項の規定により学長が」とあるのは 「大学入試センターの理事長は、前項の規定により」と、第四条第一項中「教 育公務員特例法第十条 の規定に基づきその」とあるのは「その」と読み替え るものとする。 第八条  一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律 (平成十二 年法律第百二十五号)の規定は、国家公務員である教員等には適用しない。 2  地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律 (平成十四年法 律第四十八号)の規定は、地方公務員である教員には適用しない 大学の教員等の任期に関する法律案に対する附帯決議 【論点】任期制法については、その濫用の可能性が国会審議において繰り返し 指摘され、その防止のために付帯決議が行われた。以下のものは衆院での付帯 決議の内容であるが、参院でもほぼ同様の決議が行われた。 ○政府は、学問の自由及び大学の自治の制度的な保障が大学における教育研究 の進展の基盤であることにかんがみ、この法律の実施に当たつては、次の事項 について、特段の配慮をすべきである。  一 任期制の導入によって、学問の自由及び大学の自治の尊重を担保してい る教員の身分保陣の精神が損なわれることがないよう充分配慮するとともに、 いやしくも大学に対して、任期制の導入を当該大学の教育研究条件の整備支援 の条件とする等の誘導等を行わないこと。  二 任期制の適用の対象や範囲、再任審査等において、その運用が恣意的に ならないよう、本法の趣旨に沿った制度の適正な運用が確保されるよう努める こと。  三 任期制を導入するに際して、教員の業績評価が適切に行われることとな るよう評価システム等について検討を行うとともに、特に、中長期的な教育研 究活動が損なわれることがないよう、大学の理解を深めるよう努めること。  四 国公立大学については、公務員制度における均衡等に配慮して、任期付 き教員の給与等の処遇が一層適切な取り扱いとなるよう検討すること。  五 高等教育の活性化と充実を図るため、各地の大学が優れた教員を確保で きるよう、それぞれの大学の特色に応じた教育研究条件の整備に配慮すること。 一 任期制導入の目的、現状認識 (1)目的 【論点】任期法制のメリットとして、文部省側からは、大学教員の流動化向上 による教育、研究の活性化、及び多様な経験を通じた若手教員の育成が指摘さ れた。また、民間企業などの学界以外の世界との人的交流促進のためにも活用 すべきではないかという意見が出され、政府側は任期制によってこの動きが促 進されていくことを期待している。しかし、次に述べるようにこれは当たって いないという批判も強い。 (i)この法律案の目的(中略)は、大学等において多様な知識または経験を有す る教員等相互の学問的交流が不断に行われる状況を創出することが教育研究の 活性化にとって重要であることにかんがみ、教員等の任期について必要な事項 を定めることによって、大学等への多様な人材の受け入れを図り、もって大学 等における教育研究の進展に寄与することを目的として定めております。(小 杉文部大臣・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日・法案提出趣旨説明) 〔同旨の発言として、雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-03号・平成9年2 月19日、小杉隆文部大臣・140回-参-文教委員会-04号・平成9年3月18日、雨宮 忠政府委員・140回-参-文教委員会-05号・平成9年3月27日、小杉文部大臣・ 140回-衆-文教委員会-11号・平成9年5月14日、小杉文部大臣・140回-衆-文教 委員会-12号・平成9年5月16、有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・ 平成9年5月20日、勝見允行参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月 20日、小杉文部大臣・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、馳浩委 員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、有本章参考人・140回-参- 文教委員会-15号・平成9年6月3日、慶伊富長参考人・140回-参-文教委員会- 15号・平成9年6月3日がある。〕 (ii)専ら大学の間の流通というか流れがずっと問題にされていますけれども、民 間の企業とかあるいはNGOとか(中略)と大学、一つの任期、五年なら五年 間大学で研究して、それから例えば国会のスタッフとして政策立案をして、ア メリカなんかはそれからいろんな大学の教授になっていくケースも多いわけで すけれども、日本では本当にそういう専門家が国会のスタッフにもならないし、 それから逆に国会のスタッフが大学の教授になるということも少ないと思いま す。そういう形で任期制の中で、そういう外へ出た方を今度は大学が拒否しな いでどんどん活用していくということもやっていただきたいと思いますが。 (堂本暁子委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) 〔答弁〕具体的に企業の研究者等の社会人の登用が図られておりますし、今言 われたような市民団体とかNGOとか、そういった在野の才能を広く社会に求 めていくことは重要なことだと思っております。(中略)私は、やはり任期制 の導入に伴って、よりそうした積極的なあるいは柔軟な対応が進むことを期待 しております。(小杉隆文部大臣・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3 日) (2)人材流動化の実例―放送大学、素粒子論グループの例 【論点】政府側から、多様性を重視し、新陳代謝を常に行うことが求められる 放送大学にとって、任期制は当初の目的に照らして機能している、放送大学の みが任期制をとっていても、その後の就職先のことを考慮すると難しいので、 全国規模で実施されることが望ましいとの意見が出された。しかし、不明朗な 形で一方的に再任を拒否されるといった問題があった。また、素粒子論グルー プの例から、研究所での研究を活性化させるには任期制は優れた手法であると の主張が参考人からなされた。これに対し、京都大学基礎物理学研究所や名古 屋大学理学部物理学教室の例から、任期制によって長期間にわたる研究が阻害 される、ポスト増が見込めない時代には運用が困難だとの批判が出された。 (i)放送大学では、(中略)できるだけ多くの各方面のすぐれた先生方に放送大 学の授業の提供に参加をしていただきたい、こういう気持ちを持っております し、また、(中略)特定の教員が(中略)永続的に放送大学の教員の地位を占 めることは適当ではないのではないか、こういった観点から教員について任期 制を採用しているわけでございます。これまで任期満了に伴って再任された方 も大勢おられますし、また任期満了に伴っておやめになった方も大勢おられま す。また、本人が再任を希望しながら、しかし審査によって再任されなかった という例もございます。そういう意味では、任期制は放送大学にとって当初の 目的に照らして機能しているのではないかなという感じはいたしますけれども、 しかし任期制を実施するためには放送大学だけが任期制をとっていても、教員 の後の就職先を考えるとなかなか難しい(中略)全国的な規模でこういう任期 制というものが導入されるような、あるいは日本全体の中に教育者、研究者の 流動性が高まるような素地が育ってくれば放送大学の任期制ももっと機能する のではないかな。(草原克豪政府委員・140回-衆-文教委員会-10号・平成9年4 月25日) 〔同旨の見解に、小杉文部大臣・140回-衆-文教委員会-10号・平成9年4月25日 がある。〕 (ii)放送大学はそういう内規をもって進めているわけですけれども、学長とか評 議会に非常に権限が集中している。だから評議会にも学長が議題を提案すると いうことですよね、それ以外にないわけですね。そしてこの経過のように学長 が、あなたはこういう理由でやめてくださいと言ったら、その根拠も示されな い、どういう議論があったかの中身も示されない。ですから、本人にはもう本 当に不明朗な形で一方的に通告される。(中略)これがやはり任期制なんだろ う。(石井郁子委員・140回-衆-文教委員会-10号・平成9年4月25日) (iii)素粒子論グループの任期は有効であったかということでございますけれども、 有効でございました。基礎物理学研究所あるいは私がかつて属しておりました 東京大学の原子核研究所、これは今高エネルギー研究所に合併いたしましたけ れども、あるいは高エネルギー研究所、こういう国公私立のすべての大学の人 たちが行って研究をすることができ、教育をすることができる共同利用研究所 はほぼ任期制がついておりまして、こういうところの研究の活性化を増進する という意味で、任期制は大変有効であったと思います。素粒子論グループとい うのは理論でございますので、引っ越しするなんて、わけないということもあ りますけれども、継続をして研究することは十分できるわけであります。(有 馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (iv)京都大学の基礎物理学研究所ですね。この点につきましては、(中略)国際 物理学会の元会長の山口嘉夫先生が「任期制をきめた前夜」という文章を書か れております(中略)、この任期制については、当時「意外にも――というの は我々の若気の至りであろうが――朝永・坂田先生等の素粒子論のリーダーた ちから反論があった。」その反論は、「任期があると、次の職を確保するため 小さな仕事で論文を乱作する傾向を生じよう。それでは息の長い大きな仕事を するのに妨げとなろう。即ち、学問の一大山脈を形成することは出来なくなろ う。それは、素粒子論という若い学問にとって由々しいことである。」という ふうに言われたそうでございます。そのことが一点。それから、当時の事情で すね。どうも一九五〇年代、五三年、四年というのは、若い研究者というのは ほとんどが独身であった。それから、大学、学部の拡充の時期で、ポストがた くさんあった。それから、先輩の先生方が、次の職については心配しなくてい いと、先生方が探してくださったという点があるんですね。だから、任期が来 たら自分で職探しをしなければいけないという今言われている事情とは随分違 う。しかも、今はポストがないという点でも、山口先生は「ゼロ成長期で空き ポストが少なくなれば、任期制をうまく機能させることはむずかしい。」とい うふうにも書かれていらっしゃいます。既に、名古屋大では九三年に理学部物 理学教室の任期制は廃止になっているというふうにも伺っているわけでありま す。そして、(中略)京都大学の基礎物理学研究所の当時所長の長岡先生は、 昨年の学術会議の任期制シンポジウムで、今回の任期制については、いろいろ ありますが(中略)、「結論を一言えば、私は法制化された任期制は基研の 「任期制」にはそぐわないと思う。」(石井郁子委員・140回-衆-文教委員会- 13号・平成9年5月20日) 〔答弁〕基礎物理研究所で、当時の山口氏を中心とした若手とそれから坂田、 朝永先生たち、湯川先生は中立でおられたと思います、そこで任期制をめぐっ て議論があったことは事実であります。しかしながら、そこで坂田先生は初め は慎重論を唱えておられたけれども、納得された上でいち早く名古屋大学では 任期制を導入されたということを申し上げておきましょう。しかしながら、今、 石井先生がおっしゃられたように、流動性が最近悪くなってきたということで 名古屋大学では廃止したことも事実であります。(中略)今後、特に若手に対 して任期制を導入する場合には、そこの教員達は責任を持っていい人を選び、 そして、その人がさらに発展する職場が見つかるように努力すべきであると私 は思っております。(有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年 5月20日) (3)現状認識 【論点】大学教員の流動性について、政府側からは現在は流動化が進んでいな いとし、、教員の流動化のためには多くの手法を活用することが必要であり、 任期制はその中の一つだとの主張がなされた。これに対し、現在でも流動性が 高く、また、任期制によって流動性は高まらないのではないかとの意見も出さ れた。 (i)ただ大学でこの任期制を導入したから教員が流動化する、流動性が高まると いうことはどうも私はにわかに信じられないわけなのですけれども、この法案 によってどの程度教員の流動化が進むと見ていらっしゃるのか、その辺をちょっ と伺っておきたいと思います。(井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・ 平成9年5月16日) 〔答弁〕教員の流動化を促進するということの方策として任期制も考えている わけでございますが、それは方策の一つとして考えているわけでございまして、 (中略)教員の流動性を高める取り組みといたしまして、そもそも、例えば、 採用の際にできるだけ学外の専門家を登用するものでありますとか、あるいは 公募制を活用するものでありますとか、あるいは弾力的な教育研究組織を工夫 して例えば客員ポストを設けるものでありますとか、あるいはポストドクトラ ル・フェローシップのように、助手があるいはそれ以下のところの部分でござ いますけれども、この制度を整備するものでありますとか、各種の取り組みと いうのがやはり流動化に関連するわけでございまして、答申におきましてもこ れらの努力はやはり今後とも必要であるというように言っておるわけでござい ます。しかし、それで十分かということになりますと、それでは十分ではない。 さらに何かをつけ加えるとするならば、やはり今まで、公務員制度のもとにお きまして、一たん任用したら定年までは継続的な任用ということしか考えられ ておらなかった、あるいは民間のことを考えましても、終身雇用というような 全体的な労働慣行のもとでやはり同様の措置がとられていたというようなこと に対して、一つ制度的な枠組みを設けて、それによって、一定の手続要件のも とではございますけれども、期間を限った任用あるいは雇用というものを可能 にするような手だてを講ずる、そのことによって教員の流動性が高まる、そう いう可能性というものはやはり出てくるであろう、こういうことが基本的にあ るわけでございます。もちろん、諸外国のように必ずしも任期制をとらなくて もおのずからなる流動化というものがかなりなされている場合もあるわけでご ざいますが、日本の場合には、(中略)同じ大学を出てそこの大学にずっと勤 めている人の割合がこのところ改善されておらないわけでございますし、また、 他の国と比べまして、これまでほかの大学を経験したことのある、あるいはほ かの研究機関を経験したことのあるというデータをとってみましても、我が国 の場合かなり低いわけでございます。こういうような状況を見たときに、とり 得る方策はやはりいろいろとった方がいいだろう、(中略)任期制だけが流動 化の絶対的なポイントではないとは思ってはおりますけれども、しかしやはり 有力な手だてにはなるであろう、(中略)一定の手続要件を課してはございま すけれども、これらの措置を通じまして教員の流動化を極力図る手だてにいた したいということがその趣旨でございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文 教委員会-12号・平成9年5月16日) (ii)大学審議会の答申を拝見いたしまして、私はこれは、日本の例えば東大とか 京都大学とか、一流の大学にいらっしゃる先生方がおつくりになった、いわば 机上のプランだという感じがいたしました。(中略)現在でも既に流動性は極 めて高い、これ以上流動性が高くなったら、地方の大学は教員を確保すること が困難だ(中略)。現在でも、日本の大学の流動というのは、横に動くのでは なくて、縦型に、ピラミッド型に上昇していくという志向がありまして、地方 大学は一番底辺部分にあるわけですが、そこから、変な言い方ですが、少しで も東京に近いところ、少しでも格の上の大学へという、そういう上昇志向があ りまして、そのこと自体、私は大変問題だとは思いますが、実態としてそうい うことがあるので、流動性が低いので任期制という議論は全く成立をしない。 (浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月20日) (iii)流動化がいろいろ議論されて、さも民間でも進んでいるような感じ、印象に 聞こえるわけですけれども、民間企業は積極的に中途採用とかあるいは任期つ きの研究者を採用しているかというと、そういうふうにはなっていないと思う んですね。平成八年度の科学技術庁の出した科学技術の振興に関する年次報告 (中略)を見ましても、流動化というのはむしろ民間の方が進んでいないとい う実態、私は読んで改めて驚いたわけです。そうしますと、国立試験研究機関 では研究員が減らされて、民間でも今申し上げたような状況で、いろんな可能 性があると言われても、受け皿としては十分なものがほとんどないままに任期 つきの制度が導入されれば、これは二十代後半とか三十代の最もフレッシュで 創造的な研究ができる、そういう人たちがそういう期間だけ三年間原則使われ て、終了した後は保証がない。自動的にあなた方は出ていって自分で探しなさ いよということでは、制度としては使い捨てということになるんじゃないでしょ うか。(笠井亮委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9年年5月27日) 〔答弁〕いずれにしましても科学技術基本計画におきましては、国立研究所の みならず民間あるいは大学等も含めてこういう研究者の流動性を進めていこう (中略)というのを一つの国の方針として考えているわけでございまして、こ れまで我が国の科学技術の発展に大きな貢献をしてきた安定的な終身雇用的な 研究者、このパターンも今後ともなくしていくわけじゃございませんで、それ と相まって今後研究職の流動化をあわせて図っていこう、こういうものである わけでございます。(菊池光興政府委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9 年年5月27日) (iv)日本の場合は、大学組織の閉鎖的構造については既にOECDの調査団とか 内外の学者によって指摘をされてきておるわけでございます。社会とワンセッ ト化した大学の終身雇用・年功序列制、これが我々のタームで言いますと競争 異動よりも庇護異動型であったというふうになろうかと思います。つまり、十 八歳で選抜をしました人材をできるだけ純粋培養しまして、三十歳前後で講師 にいたしますと、三、四十年間はところてん式に定年まで庇護されるという構 造でございます。その結果、ピラミッドの上位校から人材をできるだけ確保し ていきまして、その結果いわゆる系列校、学歴主義、学閥、インブリーディン グ、たらい回し人事といったようなものが優勢になる傾向が見られます。これ は大学版の学歴社会でございまして、世界的に見ましてやはり閉鎖的な構造を 持っておったのではないか。(有本章参考人・140回-参-文教委員会-15号・平 成9年6月3日) (v)カーネギー財団の大学教授職の国際比較研究というものが最近発表されまし た。(中略)これは世界十四カ国、香港が入っておりますが、一応十四カ国の 二万人の学者に対して調査をやったもので、世界最初の大規模なものでござい ます。この調査の結果は、(中略)性別では七六%が男性、平均年齢では四十 五歳といったような特徴が見られますし、それから在籍した高等教育機関の数 で見てみますと、大学や専門分野によって違いがある、国によって違いがある。 こういうふうに大学教授の世界というのは非常に多様でございます。多様であ るということを特徴にしております。それから雇用形態も国によってかなり違 いがございます。南米では非常勤型が多くなっておるというようなこともござ います。(中略)世界平均〇・八回大学を移動しております。日本の教員は〇・ 五二回でございます。生涯では世界平均が一・六三であるのに対して日本は〇・ 七八でございます。つまり、欧米の国では大体二回程度大学をかわっておるわ けでございますが、日本は一回就職をしますとその大学から動かないという傾 向があるわけでございます。先ほどの終身雇用型でございます。こういった特 徴が先ほどの任期制的なシステムを入れているところとそうでないところの違 いとしてあらわれてきておるということでございます。つまり、日本では大学 教員の大事に関しては流動性が乏しいという構造を呈しております。(有本章 参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) 二 任期制は適切な手段か (1)任期制の問題点 【論点】任期制の問題点として、人事院規則と労働基準法に違反していること、 及び、雇用不安から安心して研究ができなくなること、研究の自主性、継続性 が損なわれ、任期切れによって指導教官が大学を変った場合、学生は指導を受 けられなくなるなどの研究、教育面でマイナスであること、大学間格差が拡大 すること、また、大学教員が不安定な職となることから優秀な人材が大学に来 なくなるとの指摘があった。政府はこれらの批判に対し、流動化が促進されて 大学が活性化されることで研究や教育にプラスになると反論した。 (i)人事院規則に、(中略)恒常的に置く必要がある官職の職員の任期を定めた 任用は禁止をする。だから、うちは五年制にする、四年の任期にしようといっ て、任期が切れたら自動的に、あなたは定年です、再採用なしです、こうなっ てしまうことは禁じられているわけですよ。労働基準法でも一年以上の任期を 付した雇用の禁止という条項があるわけですね。これはやはり労働者の(中略) 雇用不安をなくしようという法の目的でしょう。(中略)公務員の定年六十歳 を(中略)大学の先生は任期五年で、再任用されなければ、たとえ四十歳でも 次に雇用されないわけですね。そんな乱暴なことで、大学が落ちついて仕事を してもらえる、日本の教育あるいは研究というものがまともに進んでいくとい うふうには私は思えません。(山元勉委員・衆-文教委員会-03号・平成9年2月 19日) 〔短期退職による生活不安によって教育、研究へ障害がもたらされるという点 で同旨の発言として、阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-04号・平成9年3月 18日、西博義委員・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日、石井郁子委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日(石井委員に対する小杉文部大 臣の答弁では、各大学が業績評価等で工夫を凝らせば対処可能であるというも の。)、山原健二郎委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、笠 井亮委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9年年5月27日がある。〕 (ii)京都大学の基礎物理学研究所が、任期制の法制化は、「むしろこれまでのよ うな円滑な人事交流を阻害する可能性がある」(中略)こう指摘しているんで すね。既に引用した「学術の動向」三月号に、京都大学基礎物理学研究所長の 長岡洋介氏が執筆しておられます。「任期は初期には、教授・助教授が五プラ ス・マイナス二年、助手が三プラス・マイナス一・五年であった。後にこれが 教授・助教授五〜十年、助手三〜六年に変更任期は内規としての了解事項であ り、その期間内での転出が厳密に義務づけられているわけではない。五〜十年 という決め方も、これは在任期間の目安を意味するものと了解されている」と のことです。そしてこう言っているんです。「任期をまもることが所員個人、 あるいは研究所自身のみの責任とされていたとしたら、早い時期に破綻しただ ろう。「任期制」を支えてきたのは研究者グループだった」とも述べている。 つまり、学問研究の論理に従った研究者グループの存在が自主的な任期制を有 効に活用してきているわけです。ここにもし法制化された任期制が導入される とどういうことになるか、次のように述べておられるんです。「任期が厳格に 定められたとしたら、所員は任期がきたときに転出先がないことをおそれて早 めの転出を考え、基研で落ち着いて研究する雰囲気が失われるのではあるまい か。そのような基研は研究場所としての魅力を失うだろう」こう述べておられ ます。これは、学問研究の論理から遊離したいわゆる任期制が教育研究の活性 化につながるどころかむしろ有害だということだと思います。(阿部幸代委員・ 140回-参-文教委員会-06号・平成9年4月8日) (iii)こういうふうにして有能な教員あるいは実績を持っている教員というものに、 それぞれの大学が(中略)どうしてもやはり任期つきの教員として来てもらい たいということになってくるだろうと思うのです。そういうことによってみず からの大学をよくしていこう、いい大学にしよう、(中略)その場合に、例え ば地方の大学あるいは中小の大学から人が、吸い上げられるというのはおかし いですけれども、異動をして、大学間の格差が拡大をしていかないかというお それがあるわけですね。そういう意味で、私はやはり、先ほど節度あると言い ましたけれども、そういう中小あるいは地方の大学に対する大学教員の誘いと いうものも節度がなければいかぬというふうに思うのですが、このことによっ て大学間の格差が拡大する、そういうおそれは感じていらっしゃいませんか。 (山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨の質問として、保坂展人委員・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5 月20日、阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日がある。〕 〔答弁〕仮に地方の大学から優秀な人を引っ張ろうとした場合には、その大学 にとっては一時的にはマイナスが起こるかもしれませんが、しかしそれによっ てまたその地方の大学がそういう優秀な教員をもっと育てようということで、 また別の優秀な人材を引っ張ろうという努力もありますし、またそこから優秀 な人材が出てくるということで、私は、決して地方大学とか私立大学とかそう いうところにマイナスばかりではなくて、むしろそういう刺激を与えるという か活性化の条件を与えるということになるんじゃないか、こう期待しておりま す。(小杉文部大臣・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (iii)独創的、創造的な研究は、その成果を上げるまで長期の期間を要するものが 少なくありません。湯川秀樹博士も、五年間論文を書かず、研究を重ねた末に 有名な中間子論を発表し、ノーベル賞を受賞しました。また、考古学研究に必 要な遺跡の発掘作業は、調査結果の公表まで十年単位の作業と言われています。 次の職も危うい任期制のもとで、こうしたじっくり腰を据えた研究ができるで しょうか。任期制が時代を画する研究の芽を摘み取る危険を持つことについて、 総理の御認識をお伺いいたします。(中略)大学教育の充実改善にとって大き な障害となっている一つに、我が国の大学教員が、欧米に比べ、近年特に入試 業務などで過重な負担を負わされ、多忙化していることがあります。このよう な中で任期制を導入すれば、教員が研究業績を上げることに追われ、教育どこ ろではないという状況に追い込まれるのは明白ではないでしょうか。また、次々 に教員が入れかわるようでは、とても系統的な教育はできません。(石井郁子 委員・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) 〔同旨、山原健二郎委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日。〕 〔答弁〕任期制を導入することは時代を画する研究の芽を摘む危険があるとい う御意見でありますが、私はそうは思いません。むしろ、任期制の導入によっ て大学における教育研究の活性化を図ることによって、未知の分野を開拓して いく創造的人材の育成や独創的研究の推進などに資するものと考えております。 次に、任期制導入による教育面への影響という御指摘がありました、任期制は、 大学において異なる経験や発想を持つ多様な人材を受け入れ、相互に刺激を与 え合うことによって、教員の能力を向上させるものでありますし、これは研究 面だけではなく教育面でも大きなメリットを有するものと考えております。 (橋本総理大臣・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) ・任期制の導入による教育への影響についてでありますが、大学において教育 面での業績評価が適切に行われることによって、一層すぐれた教育指導が期待 されること、また、多様な知識経験を有する人材を大学に受け入れることによっ て、より充実した教育指導を受ける機会を学生に提供することなど、教育上の メリットがあると考えております。さらに、各大学において組織的な教育研究 指導等を強化することにより、任期満了により教員が異動しても教育面の継続 性を保つことはできるものと考えております。(小杉文部大臣・140回-衆-本 会議-33号・平成9年5月9日) (iv)「英国における大学教員の任期制採用」という報告書がございます。文部省 学術国際局学術課日本学術振興会ロンドン教育連絡センターの岩佐敬昭氏によ るものですが、これは「週間教育資料」平成七年十二月十八日・二十五日に載っ ていますが、ここには次のようなデメリットが記載されています。経済的な理 由のため大学の研究を断念せざるを得ないという言葉ですね。それから、大学 雇用教員側も任期制の教員のことを外部から一時的に借りている助っ人と考え ているため、重要な研究を任せるよりも研究の補助をさせることが多い、こう いうふうに出ています。さらに、任期制の教員は、契約期間の後半になると次 の職探しを始めるため、研究に身が入らなくなることが多い。さらにまた、英 国薬学産業協会は、三年間の契約期間であっても実際に質の高い研究ができる のは十二カ月から十八カ月だけであると指摘をしております。そしてさらに、 前述のような状況が続く結果、優秀な研究者は安定性と高収入を求めて海外の 大学に向かい、頭脳流出現象が生じる。(中略)私は、こういう点から考えま して、任期制が適当な制度だということを判定することはできないわけでござ いまして、まさに今後日本でも類似した問題が生じる可能性があるのではない か。(山原健二郎委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕今御提案申し上げております法案の本来の趣旨が実現されるというこ とでありましたならば、(中略)この本来の目的といたします教員の流動化が 促進され、また大学の教育研究の活性化というものが一層促進されるものと確 信しておるわけでございまして、(中略)大学に対してこの法案はこういう趣 旨のものなのだということを十分周知徹底を図り、この制度の趣旨に沿った実 現が図られるように努力してまいりたい。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教 委員会-12号・平成9年5月16日) (v)研究のことでありますけれども、(中略)若いうちに十年、十五年、じっく りと落ちついて基礎的な研究をするということが大事でありまして、それをやっ て、四十過ぎといいますかに、文科系の場合には特にそうですけれども、その 時期になって一遍にいろいろな成果が花開くものだというふうに思っておりま す。若いうちからぐるぐる回るということは、私にとっては決して好ましいこ とではないというふうに思いますし、まして、本人の意思で動く場合は別であ りますけれども、任期を切られて、五年なり七年なりというふうな話を聞いて おりますが、そういうことで、いわば強制的に異動をするということは、決し て研究上プラスにはならないというふうに思っております。(中略)移動に伴 うさまざまな負担があって、例えば、(中略)実験系の方は機械を持って移ら れるし、(中略)大学院生まで引き連れて九州大学に移られたという話であり まして、そうなると、そう簡単に移れることではありません。機械の引っ越し に百万円かかった(中略)が、そういうお金はどこからも出てまいりません。 しかも、落ちついた先で今までの研究がすぐ継続できるかというと、そういう ことにはなりませんで、やはり、その研究がその場所で再開をされるまでには 半年なり一年なりがかかって、結局は研究上マイナスが大きいということであ ろうかというふうに思います。(中略)学生に対する教育が(中略)任期制の もとでは一層教育は手抜きになるのではないかということを心配いたします。 (浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) 〔異動による負担につき、同旨、阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-14号・ 平成9年5月29日。〕 (vi)現在、やはり環境問題は日々深刻になっております。そして、宇井先生のそ ういった志を継ぐような若い研究者や大学の教員の方が続々と生まれているか どうか、そしてまた、そういう方から見て今回の任期制ということがどのよう に受けとめられるのか。(保坂展人委員・140回-衆-文教委員会-13号・平成9 年5月20日) 〔答弁〕実は、そういうことに取り組もうとする若い人は依然としていること はいるのですが、恐らく、任期制を採用するような研究機関では、あえて名乗 りを上げることはないのではないかというおそれがあります。一例を挙げます と、日本のごみの焼却炉あるいは下水道の汚泥の焼却炉からは実はダイオキシ ンより以前に重金属の汚染が大量に出ているということが予想されておりまし た。しかし、それを大学の研究者が発表した事例は一つしかございません。こ れは、京都大学の大学院学生が、ちょうど大学闘争の最中に、教授の制止を振 り切りまして、京都市の下水処理場の焼却炉の周辺の大気汚染と土壌汚染を公 表してしまいました。これは当時大変なスキャンダルとしまして我々の間で話 題になりました。スキャンダルとして話題になったのは、教授が学生を抑え切 れなかったということでスキャンダルになったのであります。そういう経験を 振り返ってみますと、その後そういう研究は一例も出ておりません。それだけ、 もう大学院に残る段階から、私のおりました東大の都市工学科などでは学生を 選別しまして、変な学生が残らないように、あるいはまた変な大学院学生が助 手に残らないようにという選別は東大闘争の教訓としてずっと今日まで引き継 がれております。そういうことを考えますと、決して事態は楽観できないと思 います。(宇井純参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (vii)今回のこういう任期制が、例えば若手の助手というこれから将来有望な皆さ んに導入されるということによって、大学教員の人材確保という点から、今後 のことを考えたらやはり非常に問題があるんではないのかなというふうに私は 懸念をいたしております。というのは、終身雇用制が一部崩れてきたとはいっ ても、社会全体の人材が流動があるというのはなかなか、やはり進んでいると いうように私は感じていないわけですね。そういう状況の中で、今回こういう 制度が導入されて大学教員の身分を不安定なものにすれば、優秀な若者が大学 教員という職業を選択しなくなるのではないのか。我々の世代からもうそうで したけれども、特に近年の若者というのは安定志向が非常に強いというふうに 言われております。だから、いわゆる任期制を(中略)否定的にとらえるんで はないのかなというふうに私は心配をいたしております。特に、大学教員、友 人なんかに聞いておりますと、多額の学費と奨励金を費やして、長年にわたっ て修学をする、勉強をする、それを経てやっと就職できる。本当は、それから 長年にわたって社会に奉仕すべき大学教員の身分を何とか確保していきたい、 そういうふうに思っておったと思うんですけれども、今回のこの任期制の導入 によって、ある視点から見ると、最初から不安定、不利益な状態に置かれて、 そういう意味で、人生で希望しておったそういう長期的な人生設計も崩れて、 社会的にも非常に不安定になってくる。(中略)大学教員というのは、今まで は安定しておったと思ったけれども、そんな不安定な職業だとわかってしまえ ば、今の若者というのはだれも大学教員にならないのではないか。そういうよ うな研究者離れというのが、逆に、この今回の目的とは裏腹に進んでいくので はないか。逆に、この目的と裏腹に、二十一世紀の日本というのは本当に教育 研究の発展ということが、そういう若者の心理状況から考えても、大学離れが 進んで、研究者離れが進んで、逆に人材の確保という面でも困難になるのでは ないかなという危惧を私なんかはしているんですけれども、そのことについて、 文部省の所見をお伺いしたいと思います。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委 員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕現在、いわゆる事実上の任期制ということで紳士協定的なことで行わ れている任期制、あるいはいわゆるポスドク一万人計画という計画のもとで推 進されておりますポスドク、例えば学術振興会で行っております事業で、特別 研究員という事業があるわけでございます。これらにつきまして見てみました 場合に、事実上の任期制というのが助手を中心にかなり広範囲に実施されてお るという実態があるということ。それから、日本学術振興会の特別研究員、こ れは、例えば大学院を出てから三年間任期を付してということで運用されてい るわけでございますけれども、意欲のある優秀な若い人材が毎年多数応募をし てきているということでございます。したがいまして、今先生御指摘のような 御懸念というものももちろんあろうかとは思うわけでございますが、私どもと いたしましては、今現実に行われております。そのような実態あるいは制度の 運用というようなことを考えた場合に、そう懸念する必要はないのではなかろ うかなというように考えておるわけでございます。(雨宮忠政府委員・140回- 衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (viii)現場の先生方は、一番の悩みは授業をよくするための時間がない、今大学の 教師は時間がないとおっしゃっているのですよ。この点は、実業の日本の四月 号では、文部省の産学協同懇談会メンバーの一人でいらっしゃる生駒俊明さん、 日本テキサス・インスツルメンツ社長、この方が本当にリアルに書いていらっ しゃいます。「産学協同研究で産業界がおカネを出したり、研究者を派遣して も、研究する場所がない。膨大な書類をつくる人がいない。」「日本の先生は アメリカの先生の二倍ぐらい働いている。研究をすればするほど、雑用がふえ る。」こういう実態なんです。(中略)こういう状態の中で任期制を導入した ら一体どうなるのか、やはりこのことを文部省はリアルにつかむべきですよ。 任期五年の場合、四年目、五年目では職探しに走るわけです。公募に応ずるに は業績書類の作成をしなければいけません。もちろん業績そのものもつくり上 げなければいけません。そういう膨大な実務があるわけです。だから、ますま す時間をとられて教育どころではない、こういうことになるのじゃありません か。(石井郁子委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕大学の教員につきましては、昨日の参考人のお一人もおっしゃってお られましたけれども、教育と研究の両輪の職務を持っているわけでございます。 (中略)それぞれどれをとりましても重要な職務であるわけでございまして、 そのうちのどれかをなおざりにするというようなことはあってはならないこと でありますし、大学の教員といたしましても両方とも重要だというように考え ておるに違いないと私どもは確信しておるわけでございます。教育をよくしよ うと思ったらそれなりの手間暇がかかるわけでございまして、その分教員の労 力の負担というものが増す面というのは、もちろん先生のご指摘のとおり出て くるかとは思うわけでございます。(中略)これをなおざりにすることは、当 然大学の機能としてやってはならないことでありますし、これは任期制を取る とかとらないとかということに直接かかわりなく、やはり期待されることでは ないかというように考えておるところでございます。(雨宮忠政府委員・140 回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (ix)今回の法案審議でキーワードになっているのは流動化、活性化という言葉だ と思うんですが、何しろ大学の先生を動き回せば物事がよくなるというのは大 間違いだと思うんです。年がら年じゅう出入りのある大学がいいとは限らない でしょう。つまり、学問研究の本質、学問研究労働の本質が本当に欠落してい るというふうに思うんです。学問研究そのものの論理、真理ですよ。ですから、 学問研究労働というのは、その真理にのみ従う自由な精神、自発性、これが命 だと思います。それ抜きに、期限が来たらそのときに職がなくなるんですから。 それで、選択的任期制とか本人の同意とか言いますが、その選択的任期制、本 人の同意でこれが実施されていったらどうなるか、その先の見通しを行政は持 つ必要があるんだと思います。ですから、責任転嫁をしないでいただきたい。 大学教員の給与水準が製造業の半分程度で極めて低い上に、使い捨ての任期制 を導入すればどうなるか、(中略)大学はよりすぐれた人材を得ることが不可 能になるだろう、また、今でも大学の一極集中が進み、施設整備、研究費、学 生定員、教官定員もすさまじい勢いで偏差値序列に組み入れられている、任期 制で一極集中が一層強まるでしょうと。つまり、任期制が大学の活性化につな がらないということを警告しているんですね。(阿部幸代委員・140回-参-文 教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕いかなる制度も動かすのは人でございます。その制度本来の趣旨に従っ て運用するということでありますれば、私どもといたしましてはその制度のね らった効果というものはおのずと出てくるものだというように考えておるわけ でございます。その意味におきまして、今回の任期制につきましても基本的に は大学の良識ある判断というものを私どもは任せてあるわけでございまして、 そういう意味合いにおきまして、大学として十分慎重な配慮と改善、いろんな 意味での改善、工夫の努力をお願いいたしたい。(雨宮忠政府委員・140回-参- 文教委員会-14号・平成9年5月29日) (x)制度を実施すれば効果が出るというふうにおっしゃいましたけれども、実は これはもう既に試され済みで、一九八八年の教育改革法でテニュア制を廃止し たイギリスでどんなことが起こっているか。これは、国立教育研究所教育政策 研究部長喜多村氏が、「IDE 現代の高等教育」、一九九七年三月号に書い ているんですが、「試練にさらされる大学教授職」という論文です。その中で、 「イギリスではすでに今から五年も前に大学教員の身分に対する重大な変化が 生じているのである。その結果、大学の教職に魅力を感じず、他の職を求めて 大学を去る教員も激増していることも、タイムズ高等教育版は伝えている。」、 こういうことを書いています。こうした先例に学ぶべきではないのでしょうか。 この方は、「イギリス高等教育は日本の高等教育の未来を暗示するものなのか、 それともわれわれは独自に、イギリスとは違った道をえらび、より活力のある 高等教育体制をきずき上げることができるのか。」、これが問われているんだ、 こういうことをおっしゃっています。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会- 14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕イギリスのテニュアの仕組みと、それから我が国のいわゆる終身雇用 的な身分保障の仕組みというのは基本的に違うと(中略)考えておるわけでご ざいまして、イギリスもアメリカも(中略)、雇用者とそれから被用者との契 約によって事を決していくというのがまず基本にあって、その契約の上に立っ て、その契約内容をある意味で制限するような形でテニュアというのが乗っかっ ているというようにも理解できるわけでございます。それに対しまして、日本 の例えば公務員の場合に認められている身分保障と申しますのは、公務員制度 のもとで法律に定められた事由がなければその身分を失わない。(中略)イギ リスの場合と日本の場合とを同じ紙の上で比較するというのはなかなか難しい ところがあると思うわけでございます。今、先生が御指摘の論調でございます が、これは基本的には、イギリスにおいて外部資金によって期間を定めて雇用 される研究員が増加しているということに関連しまして、これらの研究員が大 学の経常予算によって定員管理されていないことから、過度に増加すると大学 教員としてのキャリアパスとしての位置づけが困難となるおそれがあるという 指摘があるということでございまして、(中略)異なった状況にあるというこ とをまず出発点として考えておかなきゃならないということを申し上げておき たい。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) (xi)研究の環境、社会的な環境などが欠けていますと、こういう任期制というの は研究の進展に沿った状況に合わせて幾ら柔軟な運用をやってもうまくいかな いということが起こってきました。今度の任期制法案による任期制というのは こうしたモラルによる任期制とは全く異質のものでありまして、かなり機械的 で血も涙もないと言っていいんじゃないかと思うんですが、時間が来たら物理 的に首になってしまうというものです。この任期制が制定されますと、さまざ まな外的環境を考慮して紳士的に人間味を持って研究状況に合わせて運用でき るような実質的な任期制がもし可能な状況が生まれたとしても、そうした試み を実際に行うというのはかえって難しくなるんじゃないかというふうに心配し ております。どうしても任期制というのをやっていかなきゃいけないというこ とになるんでしたら、任期が切れてポストが見つからない研究者がその研究者 にふさわしいポストを見つけるまで首をつないでその研究者の研究能力を生か すような、そういう別の定員枠をつけなきゃいけないんじゃないかというふう に思います。せっかく大学院まで長い努力によって研究能力を鍛えて、そして 難しい審査を経て教員になった有能な人材というのを使い捨てにするというの は、国にとっても損失ですし人類社会にとっても大きな損失だというふうに思 います。(沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (xii)名古屋大学に来たときにドクターコースの三年生が四人いましたけれども、 それぞれいろいろ議論をしますと、まだ論文を一つも書いてない人が、これは 将来すばらしい研究者になるだろうなと思っていたその人が京都大学の基礎物 理学研究所の所長に今なっていらっしゃいますけれども、ということが起こる わけです。それは日常的なそういう交流をやっていく中で初めてつかめるもの ですから、ちょっと違った分野から論文の数だけでというふうになってしまう と、本当に独創的な研究というのが見出せないことになってしまう。湯川先生 でも、有名な中間子論でノーベル賞をもらいましたけれども、ボーアという有 名な物理学者が日本にやってきたときに、湯川先生に、君は新しい粒子が好き だねと言ったわけです。というふうに、そういうすぐれた研究者でも、ちょっ と新しいそういう芽が出たものが本当に将来すごく大きな山脈をつくるかどう かというのはなかなか判断が難しいわけですね。研究というのはそういう側面 がありますので、任期制というのもそういう点でそういう芽を摘んでしまうと いう可能性を心配しております。(沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15 号・平成9年6月3日) (2)学問の自由に関して 【論点】任期制法は学問の自由を阻害するのではないかとの意見に対し、政府 側は、任期制の導入の可否にいて大学が決定するということになっているので、 教員の人事制度を動かす主体として大学の自主性が守られていることから、学 問の自由に反するものではないと主張した。しかし、任期法制を契機に教授会 の権限が縮小されるようなことがあれば、大学の自治に対する重大な侵害にな る、教員の間に任期のついた教員と任期のついていない教員という差別がある と、任期のついた教員は再任拒否ということを恐れて批判的な発言を控えるよ うになり、自由に相互批判するという雰囲気が失われて、学問の自由が大学の 内部から失われていくとの批判があった。また、ユネスコの勧告原案では、高 等教育機関における終身在職権が学問の自由の手続的な保護手段とされている ことから、任期制はこの動きに逆行するものであるとの指摘がなされた。 (i)大学審の組織運営部会での議事要旨によりますと、(中略)「任期制に係る 今後の検討では、次の点に留意すべきである。」として五点を挙げ、その第一 番目に「アカデミックフリーダムの確保」を挙げた方がいます。その後の審議 の中では、どうもたったの一度も検討された様子が(中略)ないんですね。 (中略)国立大学協会がその意見の中で、「米国において任期なしの任用がマッ カシーイズムが大学を脅かした時代にアカデミック・フリーダムを擁護するた めに広がったという歴史が教えるように、任期制の議論においてアカデミック・ フリーダムを尊重するという視点が欠落しないことを強く希望する」というふ うに最初に述べています。それから、「総括」のところでも、大学審議会の審 議において十分考慮されていると期待しているが、アカデミック・フリーダム を正しく確保するこの重要性を強調させていただきたい」と念を押しているん です。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-06号・平成9年4月8日) 〔答弁〕今回の任期制の場合につきましても、これは教員の大事にかかわるこ とでございますので、学問の自由、あるいは現在の教育公務員特例法で認めら れておりますような教員人事の基本的な仕組みということに思いが及ぶことは 当然のことである(中略)。それで、任期制の今回の法案におきましては、任 期制をとるやとらないか、あるいはどういうような任期制にするのかしないの かというようなことどもにつきまして大学がそれを決めるということになって おるわけでございまして、したがって教員の人事の制度と言っていいかとも思 うわけでございますけれども、教員の人事の制度を動かす主体として大学の自 主性が守られておるということでございますので、学問の自由には何ら反する ものではない。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-06号・平成9年4月8 日) (ii)今の答弁を聞いていまして、要するに大学審の審議の中で具体的にアカデミッ ク・フリーダムについて検討したということをおっしゃらなかったんです。そ れを前提としているということを長々と述べておられたと思うんですが、前提 にするということと尊重するということとは違うんだと思うんです。実際に、 この議事要旨を見てみますと、アカデミック・フリーダムの論議の欠落のかわ りに、教育研究労働を利潤追求と競争原理中心の企業経営の中でとらえる論議 が盛んで、本当に驚きを禁じ得ません。外資系企業の、どこかで解雇されても 別のところで雇用されるという、こういう人的交流市場を例にして、解雇する 企業があるから雇用する企業もあると言わんばかりに、大学教員についてはそ ういった市場がないから任期制を導入できないというのは話が逆さであるとか、 あるいは労働市場の流動化と新たな雇用形態、これは労働省の説明を受けてお られるんですが、そういう議論の中で人間の教育と真理の探求にかかわる教育 研究労働者を論じるとか、余りにも乱暴な議論だ。(阿部幸代委員・140回-参- 文教委員会-06号・平成9年4月8日) 〔学問の自由について慎重な配慮を求める意見として、他に、山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日、粟屋敏信委員・140回-衆-文教 委員会-14号・平成9年5月21日がある。〕 〔答弁〕大学の教育研究の必要上、従来の終身雇用の雇用形態ということだけ にこだわっているというよりも、それとはまた別に、任期を限った任用をもで きるというような道を開くことが重要であるという考え方に立っているわけで ございまして、そういう意味におきましては選択の幅を広げたというように私 どもも理解しております。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-06号・平 成9年4月8日) (ii)文部省流に言いますと、大学の自治というのは大学が決めることなんだから、 大学の中でどういうふうに決めようとそれは大学の自治だというのが文部省流 の解釈のように思いますが、私どもが大学の自治と言っておりますのは教授会 自治です。(中略)現在の制度は教授会自治でありまして、それは、学校教育 法で、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならな い。」という法的な規定がございます。「重要な事項」というのは何かという 範囲はいろいろあるかもしれませんけれども、教授会が大学運営の中心であっ て、そこで自主的に物事を決めていくことが大学自治だ、現在はそういうふう に理解をすべき。それを、教授会権限を縮小して、学長、あるいは私立大学の 場合には理事会の方が、それこそ先ほどどなたかの御意見でございましたけれ ども、独断先行的に決めていくという形になりますと、形の上では、いや大学 が決めているというふうに言われるかもしれませんけれども、内容的には、や はり事実上大学自治の剥奪だというふうに私は考えておりまして、もし任期制 がそれの突破口になるのであれば、これは、日本の戦後の大学制度をもう根底 からひっくり返す大問題だ。(浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-13号・ 平成9年5月20日) (iii)教員の間に任期のついた教員と任期のついていない教員という差別がありま すと、任期のついた教員は再任拒否ということを恐れまして批判的な発言を控 えるようになってしまいます。そうしますと、大学の研究や教育にとって最も 大事な自由に相互批判するという雰囲気が失われて、アカデミックフリーダム が大学の内部から失われていく。(沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15 号・平成9年6月3日) (iv)大学は失業救済機関ではないと考えております。研究者集団は社会に対する アカウンタビリティーを持っております。学問を発展させるという義務を持っ ております。そのために、あくまでも研究条件をよくしていただきたい、こう いったことを堂々とお願いをしてまいりました。それはあくまでも目的を果た すためであります。それは社会に対するアカウンタビリティーの我々のとり方 であると考えております。そういう点で、現在いる人だけでなくて、表にもい るタレント、研究に合っている人、それからやっている人、それがすべて緊張 関係の中でそれぞれ自分の独特なアイデアを生かす。学問の自由とは、決して 勉強しない自由は含みません。学問を発展させないような研究を認めるもので はありません。(中略)あくまでも学問の自由、それからオートノミー、これ はすべて社会に対する研究者の役に立つ部分、この役に立つというのは技術を 介してという点がございまして大変複雑な点もございますけれども、基礎研究 者といたしましては、学問の伝承、発展、その中における次代を担う独立研究 者の養成、そういったことをやるわけでございまして、私は心からやっぱりそ ういう点で、日本がともかくこれほど優秀な若手がいっぱいいながら、それが 世界的な成果に近づきながら突破できないでいる唯一のことは閉鎖性にあると 考えております。そういう点で、任期制はやってみる価値が大いにあると。ま た、これをやっているところが非常にあると。ただ、日本の社会でありますの で、社会の方がいろいろ終身雇用制その他ございます。大学というのは新しい 挑戦をすべきところでございまして、そういう点でもって私は積極的にやって まいりたい。(慶伊富長参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (v)現在ユネスコが準備を進めております高等教育の教育職員の地位に関する勧 告について(中略)勧告原案ですと四十四ですけれども、「加盟国及び高等教 育機関は、終身在職権が学問の自由の手続き的な保護手段となり個人の責任を 助長するものであることを認識しなければならない。」(中略)任期制という こととどうもベクトルが逆方向なんじゃないかというふうに思うわけです。し かも、去年の四月三十日を期限に各国政府に対しての意見提出要請があったと いうふうに思うのですけれども、文部省としてどのように対応なされたのか。 それから、この勧告が正式に出された場合、(中略)我が国としてはどう対応 するのか。(井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同趣旨の質問・意見として、石井郁子委員・140回-衆-本会議-33号・平成9 年5月9日、山原健二郎委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、 沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日、長谷川道郎委 員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日がある。〕 〔答弁〕大学を含めました高等教育教員の大事につきましては、大学の自主性 が尊重されて、またきちんとした手続のもとで、すなわち恣意的な判断を排除 するということが特に重要だというようなこと、また、任期を定めた雇用や定 年までの継続雇用など多様な雇用形態が認められることもまた必要だというよ うな、大要でございますけれども、そういうことどもを意見として出してござ います。勧告が(中略)正式に成立したという場合にどういう対応をするか (中略)はまだ勧告内容自体が固まっていないわけでございますので、(中略) コメントをすることは差し控えたい。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員 会-12号・平成9年5月16日) (3)事実上の任期制について 【論点】文部省は、助手を中心に教授も含めた事実上の任期制が行なわれてい る場合があるが、紳士協定として運用されており、法的に安定したものとは言 えないので、法的な裏づけを与えるべきだと主張している。これに対し、任期 制という制度を自己目的にした考え方であって、研究や教育の発展を考慮して いないとの批判があった。 (i)事実上の任期制と言われておりますのは、(中略)この法律が制定される前、 (中略)大学の学部、研究所などの部局の判断によりまして、当該部局の教員 に対しまして一定の教育研究期間の目安を示しまして、(中略)その期間経過 後にはほかの大学等へ異動するなどの取り組みをしていたということを指すも のだというように理解しておるわけでございます。これらの取り組みは、目的 としては、今回の法律と同様、当該大学の部局の教育研究の活性化にあるとい うように考えられるわけでございますが、今回のように国の制度上の裏づけを 持たない、(中略)口約束と申しますか、あるいは紳士協定と申しますか、 (中略)法的な意味合いから申しますと安定的なものではなかったというよう に言えるわけでございます。例えば五年なら五年という目安を示したからといっ て、それによって今回の任期制のように五年たったらばその任期を満了してや めるというようなことがきちっと保障されているわけではないわけでございま して、そういう意味合いにおきまして法的に安定したものとを言えないわけで ございます。今回の法律が制定された後は、大学の判断によりまして、改めて この法律に定める要件によりまして一定の手続を経た上で、制度上明確な裏づ けを有する任期制が実施されるということが当然考えられるわけでございます し、また期待もされるわけでございます。ただし、大学や部局が、(中略)今 回の法律に基づく制度に切りかえずに従来の取り組みを継続することも考えら れるわけでございまして、これは違法なものでない限り、例えば無理やりやめ させるというようなそういうような違法なものでない限りは、これをすべて一 律に今回の法律に基づくものに全部転換せよ、こう強制的に指導するというと ころまでは考えていない、そのような必要もないのではないかというように考 えておるわけでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・ 平成9年5月16日) (ii)紳士協定的に行われてきた任期制と今法制化によって行われようとしている 任期制というのは全く違うものではないのか。(石井郁子委員・140回-衆-文 教委員会-13号・平成9年5月20日) 〔同旨、粟屋敏信委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日。〕 〔答弁〕もし今までどおり法制化しなくても運用がうまくいっていれば、それ はそのやり方でいいと思います。しかしながら、(中略)法律によってきちっ と裏づけされていない場合には、仮に人事院に(中略)提訴すれば、明らかに 大学なり研究所が負けるわけであります。この辺に対しては、裏づけがきちっ と法律化されている、それを利用するしかないか、利用しなくても任期制は導 入できる、これは明らかでありまして、ただし、今言ったような問題が今だと ありますけれども、今後きちっと任期制というものが法律的に許されるように なれば、これは、仮に紳士協定、淑女協定でも任期制を十分やれると思います。 (有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日)  〔法的な裏づけがないと問題が生じるという点で同旨、雨宮忠政府委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、慶伊富長参考人・140回-参-文 教委員会-15号・平成9年6月3日。〕 (iii)ゼロ成長で任期制がうまくいかなかったのは任期制が紳士協定だったからと いう、今度の法案のように法的拘束力を持たせて、任期が切れたら即首になる ような任期制にすれば任期制はうまくいくんではないかという議論があります けれども、私はこれはかなり乱暴な議論ではないかというふうに思います。こ れは研究とか教育の本当の発展を考えて、そして研究者の能力をどう発揮して もらうかという観点よりも、任期制という制度の方を自己目的にしているよう な考え方だというふうに思います。坂田昌一先生は(中略)人事交流のための 制度というのは形式あるいは表面的に見える現象であって、人事交流というの も研究の発展という本質を背後に考えておかなきゃならないと常々おっしゃっ ていました。紳士協定の任期制でも、それを行う条件がないときには、任期制 を厳格に守るということだけを優先させようとしますと研究や教育の発展にとっ て本末転倒になって、極めて深刻な害悪をもたらすことになってしまいます。 それを法律でもって機械的に実現させようとすれば事態はもっと深刻になるの ではないか。(沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (4)任期制以外の手法 【論点】大学での研究、教育に妨げとなる事項(例えば、入試業務や極端な大 学間格差)の解決が先である、任期制以外の手法(例えば、学会参加への補助 等)があるとの指摘がなされた。 (i)大学の研究教育を本当に活発にするというなら、政府が行うべきは任期制の 導入ではありません。例えば、法案提出の理由としている教員人事の流動化に しても、任期制が役に立つでしょうか。アメリカのカーネギー教育振興財団に よる大学教授職国際調査によると、大学教員の定年までの平均異動回数は、任 期制が基本的にないヨーロッパの方が任期制を一定範囲認めるアメリカより高 いという結果が出ているのです。(中略)任期制をとらない方が教員の流動性 が高くなることを示しています。日本は〇・七八回と確かに低い数字ですが、 その原因は任期制がないからではなく、多くの関係者が指摘するように、我が 国の大学間の極端な格差にこそあります。(中略)自由な人事交流を可能にす るため、大学間格差を根本的に改めるべきだと思います。(石井郁子委員・ 140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) 〔答弁〕大学間格差を改め、大学全体の教育研究条件整備を急ぐべきとのお尋 ねでありますが、各大学には固有の歴史や沿革があり、現状におけるそれぞれ の規模や内容は異なっておりますが、文部省としては、今後とも、各大学の教 育研究の活性化に向けた多様な取り組みを支援してまいります。なお、大学の 教育研究条件の整備につきましては、厳しい財政事情のもとではありますが、 最大限の努力をしてまいりたいと考えております。(小杉隆文部大臣・140回- 衆-本会議-33号・平成9年5月9日) (ii)「経験を有する教員等相互の学問的交流が不断に行われる状況」、これが目 的だというふうに先ほどお話があったわけです。この「学問的交流が不断に行 われる状況」ということとそのプライオリティーを考えますと、私どもの友人 に大学の教員がたくさんおりますけれども、学問的交流であれば、例えば学会 がたくさんあります。国立大学の皆さん、要するに学会に入るということは個 人の資格で入るわけでございまして、そのお金も非常に大変ですし、それから、 例えば学会に参加をするとか、海外での学会に参加をするとか、年間、旅費五 万円ぐらいしか支給されていないわけでございまして、旅費を工面するだけで も大変だ。こういう現状があって、もしこの目的が学問的交流が不断に行われ る状況を創出するということであれば、任期制という(中略)かなりトラスチッ クな変革をやる前に、先ほどから、交流が不断に行われるということは流動化 というふうに変わってきているのですけれども、もっとやることはいっぱいあ るんじゃないか。(井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月 16日) 〔答弁〕例えば学会での活動を活発にできるような方策でありますとか、ある いは海外での研修と申しますか、あるいは留学と申しますか、そういう経験を ふやすような工夫でありますとか、これは当然必要なことであり、また重要な ことであると思うわけでございまして、それ自体先生方の資質向上ということ に大変重要な意味合いを持つわけでございます。それで、任期制の法案という ことで、これを出せばすべて片づくなどと私どもは考えているわけではござい ません。今先生おっしゃったようなこともあわせて努力するということがやは り必要であるというように考えておるわけでございます。(雨宮忠政府委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔任期制以外にも他にすることがあるのではないかとの趣旨の質問として、他 に粟屋敏信委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、本岡昭次委 員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日がある(粟屋、本岡両委員 に対する小杉文部大臣の答弁は、雨宮政府委員と同様、任期制は大学教育研究 の活性化の一つの方策であり、他にも様々な方策があるので従来から実施して いるし、これからも経費措置を含めて取り組んでいくというもの。)。〕 三 身分保障との関係 (1)米国のテニュア(tenure)制の運用、外国法制度との比較 【論点】アメリカの場合は、テニュアという終身在職権制度があるが、アメリ カでは法律で決められているわけではなく、各大学の判断の積み重ねが慣行と して広まった。諸外国と比較して、任期制を導入しているイギリスよりも、テ ニュア制を取っている米国の方が大学教員の移動回数が多く、これは学問の論 理によって移動が行われている証拠ではないかとの指摘があった。 (i)諸外国において、教授まで含めて大学教員全体に任期制を導入している国は ありません。(中略)基本的にこの任期制がないイギリスとか、助手などごく 一部に限定して任期制を導入しているドイツの方が、准教授や助教授にまで任 期制を導入しているアメリカよりも移動の回数が多いんです。(中略)これは、 学問の論理によってこそ自由な研究者の移動がなされる(中略)ことのあかし だというふうに思います。任期つきポストで教員を無理やり退職させて流動化 を図るというのは、学問の世界にふさわしくない暴論であるというふうに私は 思います。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-06号・平成9年4月8日) (ii)アメリカの大学では、テニュア、終身雇用の保障という制度がございますね。 教員の解雇などが相次ぐ中で、こういう権利侵害を起こさせてはいけないとい う形でテニュア法などが制定されている。だから、教員の身分の保障、または 定年までの安定雇用ということは世界の流れだというふうに私は思うのです。 そしてまた、それは歴史にも学んでいるからこそ、そういう任期制などをつけ てはならないということだというふうに思います。(石井郁子委員・140回-衆- 文教委員会-10号・平成9年4月25日) 〔同旨の意見として、石井郁子委員・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日 がある。〕 (iii)継続任用が原則である、このことを制度的に今の任期制においてどう確保し ようとしているのか、相反する問題があると思う(中略)。例えば、アメリカ においては、(中略)一般的に任期制というのは、テニュア、終身雇用権を取 得するまでの間、特に若手教員である講師、助教授の間に適用されていて、任 期制とテニュア制というのは補完的な関係にある、こういうふうに言われてお ります。アメリカの場合には、任期制から終身雇用に至る道筋が、そういう意 味でははっきりしているというふうに考えられます。大臣から、継続任用、言 いかえますと終身雇用ということだと思うのですが、これが原則である、こう いうふうに御答弁いただきましたけれども、今回の法案で任期制ということと 終身雇用、この関係がもう一つはっきりしていないのではないか、こう思うわ けでございます。終身雇用の道筋を制度的にどのように示していただけるのか。 (西博義委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕アメリカと日本では、(中略)一概に並べて比較することはできない と思います。アメリカの場合は、今お話しのとおりテニュアという終身在職権 制度というのがありますが、これも、アメリカでは法律で決めているわけでは ありませんで、各大学の判断の積み重ねが慣行として今日広まったものという ふうに考えております。我が国は、従来から終身雇用という、これは教員に限 らず、一般の労働慣行として行われてきたわけですけれども、今回は法律で、 そうした従来の終身雇用という形に加えて、任期制という仕組みも採用できる ということにしたわけであります。先般の本会議で答弁したように、従来のそ うした終身雇用という制度は維持しつつ任期制も採用し得るという、選択的に こういう制度を導入する、こういう位置づけてありますが、将来、終身雇用と 任期制との関係というのは、今後の各大学の運用の積み重ねの中でいずれ慣行 として定着していくのではないか。(小杉文部大臣・140回-衆-文教委員会-12 号・平成9年5月16日) (iv)米国では、(中略)講師あるいは助教授として就任いたしましてから、その 教員が教育研究の面で果たして十分な任務を、あるいは責任をとってきたかど うかということがしかるべき委員会によって評価されまして、そして終身在職 権を与えていいかどうかという判断を行うわけであります。こういう評価は形 式的であってはいけませんし、また身内でのみ行われても意味がありません。 客観的に行われるような制度がなければならないわけであります。(中略)学 問的評価というのは、広く世界に求めて、客観的であるというのがよろしいか と思います。任期制導入の理由の一つに、一度教授になれば研究活動は低迷し てもそのまま居続けられるのは極めてよろしくないという批判がございました。 (中略)終身在職権を与えるに当たっては、むしろそのような可能性のないこ とをよく吟味して与えるべきであると思います。米国ではテニュアを得た教員 が教育研究活動の面で低迷することはないかといいますと、そうではございま せん(中略)。しかし、このような場合には、給与の昇給のストップとか研究 室の召し上げとか、そういうようなことで大学はそれらの教員に対応いたしま す。(中略)なお、テニュアの評価は、研究の論文の数だけによるのではなく、 その質が重んぜられなければなりません。かつて(中略)、ただ数だけが問題 になったことがございます。しかし、現在は、私は、少なくともやはり論文は 数だけではなくて、その質によって評価されていると信じております。そして また、評価は、少なくとも教育活動と大学への奉仕というようなものが重要な 項目として取り上げられます。米国のテニュアを審議する委員会では、この三 つが重要な項目として取り上げられます。私の知っている優秀な州立大学のあ る教員が、教育と大学の奉仕に対することが熱心でなかったために、研究はす ぐれていたけれどもテニュアを取れなかったという例を知っております。とも すれば日本では、研究業績だけが大学教員の十分条件のように考えられている のは、改められるべきであると思います。(勝見允行参考人・140回-衆-文教 委員会-13号・平成9年5月20日) (2)給与体系 【論点】終身雇用と異なる雇用制度ができるのであれば、それに応じた給与体 系が必要になるのではないかとの指摘があったが、人事院は、現時点では任期 制の下での業務内容等が明らかになっていないため、現行の給与体系と異なる 新たな給与体系を作るのは困難だとした。また、任期制によって給与に不利益 がでないかが問われたが、人事院は不利益な取り扱いを受けないとしたが、退 職金については不利な取り扱いを受けることは認めた。 (i)プロジェクト型の研究員が今ございます。それから、もうすぐ総務庁から出 てくるであろう研究業務に従事する一般職の職員の任期を定めた採用等に関す る制度、(中略)招聘型・若生育成型という特別な任期をつけた研究員の制度 が出てまいります。それと、今回の若手教員の任期つきの制度、この三つを比 べてみたいと思います。(中略)任期をつける合理的基準と、それから、それ に対して給与体系、これを考えてみたい(中略)。まず、(中略)プロジェク ト型の研究員といいますのは、これは、ある一定の(中略)期限があって、そ の研究のために必要な人材を任用する(中略)。そのときの給与はどうなって いるのかといいますと、これは年功序列型の(中略)給与体系をそのまま当て はめて働いていただいている(中略)。その次に、(中略)総務庁関係の制度 なんですが、これは、(中略)研究所の研究の活性化をねらって今回この制度 をつくるというふうになっております。ですから、基準としては研究の活性化、 こういうふうに考えて間違いはないと思います。そのときに給与はどういう基 準になっているかといいますと、(中略)あらかじめ別体系の給与、その能力 に応じた給与体系が想定をされております。(中略)それに対して、今回のこ の任期つきの大学教員のあり方といいますのは、これは、今回の法律の第四条 の中に三種類の任期の条件が決められております。初めは先端的、学際的研究 をということで特に必要な人たち、それから助手を中心とする人、それから三 番目がプロジェクト型の研究員、こういう三種類があるのですけれども、プロ ジェクト型の研究員というのは、どちらかというと、ある意味では時間が決まっ ているプロジェクト、(中略)少なくとも、初めの学際的な研究をするとか、 それから助手というようなポストにはあらかじめ時間が限定されているわけで はなくて、逆に、これは法律によって時間を我々が決めて(中略)そこで任期 制を採用しよう、こういう意味合いでございます。そういう意味で、(中略) これは研究の活性化というものをねらったものである、(中略)そう見て間違 いではない(中略)。しからば、それに対する対価としての給与体系はどうな るか、(中略)少なくとも三番は、若干、時間が初めから設定されているとい う意味ではプロジェクト型ということも考えられないわけではございませんが、 活性化ということを主眼にしてまいりますと、これは業績重視型の給与体系を 採用すべきではないか。(西博義委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年 5月16日) 〔答弁〕現在、教育職(一)の体系は五級制になっておりまして、採用から最 終の五級まで、それぞれの職務に応じた給与という形でずっと歩んでいくとい うことを前提にしております。今回の大学教員の任期制につきましては、その 職務そのものが一定の任期で区切られているというところに(中略)特徴があ ろうかと思うのでございますが、ただ、その職務そのものの内容というのはこ の法律案の枠組みの中では特定をされておりません。したがいまして、今後、 この大学教員の全部または一部につきまして、その範囲とか対象でありますと か、その任期でありますとか業務内容であるとか、こういう枠組みが明らかに されて、任期内における業務内容が任期のない一般の教員の業務内容と比べま して明らかに違う、特別の措置をするというようなことが必要であるというふ うに判断した場合には、今後そういうものについて検討をしなければならない。 (関戸秀明説明員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (ii)任期制教員というのは再任を原則としないということで、異動ということが 基本的には考えられるわけでありますけれども、一たん任期制で採用された方 が異動することによって給与上の不利益というものがないような、そういう仕 組みになっているのかどうか(中略)。例えば、再任された場合、これは改め て任用するということになると思いますけれども、それから一たんやめてまた 別な任期制教員に継続雇用、継続任用された場合もあると思いますし、それか ら例えば国立大学から私立大学、私立大学から国立大学に来るとか、あるいは 一たん切れちゃった、なかなか次のポストがなくて一年間ぐらいブランクがあっ たという場合、そういう継続しない場合(中略)、それが給与面それから年金 とか退職金とか、そういう面で任期制じゃない教員の人たちに比べて不利益を 生ずることがないのかどうか。(井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・ 平成9年5月16日) 〔答弁〕 ・現在、国立大学の教員として在職しておられます方が、この法律案によって 引き続き任期つきの教員に採用されるような場合、あるいは一たん辞職をされ て、一日とか数日とか間隔をあけて新たに任期つきの教員に採用されるような 場合があろうかと思います。いずれの場合につきましても、その方のそれまで の経歴というものを踏まえて給与上は格付をしていくことになっております。 したがいまして、任期つきの教員に任用されるがゆえに、任期のない教員に任 用される場合に比較して給与上不利益な取り扱いを受けるということはないと いうふうに考えております。(出合均説明員・140回-衆-文教委員会-12号・平 成9年5月16日) ・退職金について申し上げますと、国家公務員の退職手当につきましては、退 職した国家公務員が引き続いて国家公務員として採用された場合、その前後の 勤続期間を通算するということで、最終的に退職する場合にその手当を計算す ることになってございます。これは任期制の教員についても同様でございます。 (二宮洋二説明員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (iii)例えば五年の任期で、あなた、終わった、再任されないよと言われたときに は、そこで退職金は精算されるわけですね。あるいは年金の受給権なら受給権 がそれなりに保障される、計算されるわけですね。それから後、また次のとこ ろへ行ってまた五年やった。そこのところ、公務員としての身分が続けば五プ ラス五で十になりますけれども、例えば五年を二期やったという場合で考えて も、生涯賃金の発想でいうと、五で精算をして五という取り分と、十年続いて 十年目に退職金を一括して受け取るのとは随分とこれは差があると私は思うの です。ですから、できたら再任をされたい、続けた身分で仕事がしたいと思う ことは当然だというふうに思うのですね。そこのところは保障しなければいけ ないのと違うか。あるいは職員団体の意見というのはきっちりと受けとめられ なければいけない。とにかくそこのレール、ポイントを切りかえて、任期つき のところへ行ったら、五年目にはきっちりと退職金もあるいは年金の権利もそ こで一たん精算をされる、閉じられるということに決まってしまうようで、私 は、そこへ入っていく人は、これはたまらぬというのですか、よき意欲を持っ た人が入っていかないポストになってしまうのではないか。(山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨、菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日。〕 〔答弁〕任期制を導入するということ、そのこと自体は先ほど申し上げたよう な制度上の位置づけになるわけでございますけれども、(中略)それに関連い たして種種の勤務条件上の問題というのもまた関心を引く事柄であるというよ うなことにつきましては、私どもとしても理解するわけでございまして、その 辺につきましては、色々な形でのまた御議論というものがあろうというように 考えておるところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12 号・平成9年5月16日) (iv)文部省側は先日の当委員会で、同僚の井上議員の質問に対しまして、要は任 期つきの教員と任期のつかない教員で職務内容の差は生じないのだ、そういう ように答えておられたわけです。(中略)もし職務内容に差がないのであれば、 なぜ一般教員に対しては任期をつけずに――特に、今回の提案理由また第一条 の目的の中に書いてありますけれども、今回の任期制の目的の中でどういう先 生を求めておられるのかというと、「多様な知識又は経験を有する教員」とい うことを強調されておるわけです。一般教員に対して任期をつけずに、逆にそ ういう「多様な知識又は経験を有する教員」にだけ任期をつけるのか。(佐藤 茂樹委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕今回の法案を考えるに当たりまして、現在の公務員制度のもとにおき ましては、いわゆる職務給の原則というのがあるわけでございまして、異なっ た職務に対しては異なった給与が支給される、しかし、基本的に同じ職務であ るならば同じ給与が支給される、こういう原則があるわけでございます。今回、 任期制の法案を提出させていただくに当たりまして、任期の付された教員の職 務が任期を付されていない教員の職務と比べて異なったものである、制度を設 計する段階において、一般的な意味合いにおきまして異なったものであるとい うような考えをあらかじめ定める、あるいは想定するということは非常に困難 であるということでございまして、(中略)今回特別な給与上の措置は講じて いないということでございます。ただし、今後任期制の運用というものがどう いうようなぐあいに発展するか、これは大学の判断の問題でもございますし、 時間の経過も見ていなければならないということでございます。したがいまし て、それらの経過を見きわめながら、また職務内容等の実態というものも、あ るいはいろいろ異なってくることも実態上あり得るということも考えられるわ けでございます。そういう意味合いにおきまして、現在この任期制の法案を出 すに当たりまして、あらかじめ異なったものというような設定はできないわけ ではございますけれども、その後の運用の状態を考えながら、関係省庁ともま た必要に応じて給与上の措置についても検討してまいりたい。(雨宮忠政府委 員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (v)いわゆる招聘型がこの大学教員の任期法で明確に特定されていたら、任期つ き研究業務職員法と同様に特別の俸給表の採用は可能なのでしょうか。さらに は、この任期法で招聘型が特定されていなくても、将来各大学が作成する規則 に特定されていた場合にはどうなるのでしょうか。(馳浩委員・140回-参-文 教委員会-15号・平成9年6月3日) 〔答弁〕その職務の特定性をもってその職務にふさわしい給与を出すというこ とになっております。そういう観点から見ますと、任期つきの今回の法案は、 その業務内容、任期等々がそれぞれの大学の自主的な御判断にゆだねられてい る。したがって、今回、給与上特別の措置を行うということができなかったと いうことでございます。(中略)任期制につきまして、その範囲であるとか対 象でありますとか、その任期が例えば何年というふうな仕組みが形づくられて、 その中での教員の業務内容が任期がついていない教員の方と明らかに違うとい うような特定がなされた場合には、これはその時点において処遇の仕方につい て考えていかなきゃならない(中略)。それから二点目の御質問、(中略)あ る程度任期制の枠組みが横断的、客観的に整理される必要があるだろうという ふうに思っております。今回の場合には、任期制を実施するに当たって各大学 がそれぞれの大学の特性に応じた恐らく規則をおつくりになられるのではない かと思います。そこでの対応は非常に多様になってくるのではないかなという ふうに思います。そういう中で、例えば研究職における俸給表のようないわば 新しい形での整理を行っていくとすれば、かなりそれがまとまった形で一律的 な業務を特定できるようなものになっていく必要があるのではないかと思いま す。(出合均説明委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (3)インセンティブ 【論点】任期制については、給与や教育研究環境においてインセンティブが必 要だとの指摘に対し、政府側からは今のところ給与以外のインセンティブを各 大学で用意していただきたいとの見解が出された。 (i)要するに人事交流に不利な現行制度の方が実は問題で、それを何か任期制と いう形で、任期が来たら、もう、あなた退職ですよ、そういう一種のおどしみ たいなことを背景として人事交流の活発化を目指すのは本末転倒じゃないか、 こんな指摘もあるわけでございまして、もし、この任期制というものが流動化 を目的として原則的には再任をしないという前提に立てば、やはり人事交流に 積極的な教員を支援する体制を整備する必要があるというふうに思うわけです。 それで、先ほどからも指摘されていますけれども、「任期制が制度として導入 された場合、優れた人材を確保する上で、教育研究環境の充実だけでなく、給 与面においても何らかのインセンティブを工夫することが望ましい。その際、 別途任期制の導入が予定されている国立試験研究機関等における任期付き研究 公務員に対する給与上の措置とのバランスにも配慮して検討する必要がある。」 というふうに答申では明確に指摘しているわけでございますけれども、先ほど からの議論で、この待遇改善ということについて、今回はあわせて措置がされ てないというのが実態だと思うのですけれども、この法案をつくられるときに 文部省はどういうふうにお考えになったのか。(井上義久委員・140回-衆-文 教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕研究の活性化を図っていくためには何らかのインセンティブが必要だ ということは、私もそのとおりだと思います。ただ、給与につきましては、公 務員の給与は、いわゆる職務給の原則に従って、その職務と責任に応じて決定 されるということになっております。(中略)任期つきの教員と任期のつかな い、いわゆる従来の教員との間に職務内容に差が出るわけではないので、この 法案においては給与上の特別な措置を講ずることは予定しておりません。ただ し、実際には、各大学の工夫によって今でも現実に教員の流動というのは行わ れておりまして、そのプロジェクトに必要な人材を集める、その際には、例え ば研究室を少しでもスペースを広く提供するとか、あるいは、学長の判断とい うか権限の範囲内である程度の優遇措置を講ずるとか、さまざまな工夫が行わ れているというふうに聞いております。私も実際にいろいろな学長さんのお話 も聞きましたけれども、そういうことで、それぞれの大学が知恵と工夫によっ ていろいろな形態をとっておりますが、文部省といたしましても、この制度の 導入の後、各大学の運用の実態等を踏まえながら、必要に応じて、これからど う対応していくか検討してまいりたい。(小杉文部大臣・140回-衆-文教委員 会-12号・平成9年5月16日) (ii)任期制の教員について給与面でのインセンティブを工夫する考えはないよう に受けとめられるんですけれども、将来の問題として、やはり何らかのインセ ンティブがなければこの法案というのは生きてこない。(井上義久委員・140 回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔インセンティブについて同旨の質問に、井上義久委員・140回-衆-文教委員 会-12号・平成9年5月16日、佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成 9年5月21日、石田美栄委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日、 馳浩委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日がある。〕 〔答弁〕この法案でこういうポストの職務を書いているわけでございまして、 これを今の時点で、これが他の職務とかくかくの理由で特に重い責任があると か、あるいは特に重い職務であるとかということを一般的な意味合いであらか じめ申し上げるということは難しいだろうということでございます。しかし、 具体の運用の実態を重ねてまいったときに、ある種の給与上の特別な措置を必 要とするというような実態が出てくる可能性もあるわけでございまして、その ような場合には、やはり私どもといたしまして、任期制を側面から促進すると いうような意味合いも込めまして給与上の措置も検討していきたい。(雨宮忠 政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨、出合均説明員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日小杉文 部大臣・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日。〕 (iii)任期制を導入すれば異動を伴ってくるわけでありまして、この異動に伴うマ イナス面の解消、あるいは逆にプラス面としてのインセンティブの付与を図ら なければ人材の流動性の向上は実現しないであろうと考えます。(中略)任期 制の関連で異動する場合には、(中略)実験設備の輸送費は国または大学が負 担すべきものと考えますが、いかがでしょうか。(中略)さらに、その先生の スタッフである院生も移動するのが通常であります。そのためには移動先の大 学院の編入試験を受けて合格しなければなりません。(中略)編入試験の検定 料の支払いはやむを得ないとして、合格した後に再度入学金を支払わせるのは おかしいと思います。院生は総じて苦学生が多く、先生が立てかえる場合も間々 あります。同じ国立大学問同士の移動であるならばせめて入学金の免除をする べきと思います。(馳浩委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔院生への配慮を求める意見として、馳浩委員・140回-参-文教委員会-14号・ 平成9年5月29日がある。〕 〔答弁〕物品管理上の問題といたしましては、必要な場合以外は認められてい ないということでございまして、必要な場合とは、物品の効率的な使用のため、 こういう限定が物品管理法上ついているわけでございます。この場合には、物 品管理法上の概念といたしまして管理がえという手続があるわけでございまし て、移転を行いたい両大学問で協議を行いまして、学長の承認を得た上で移転 することができる、その際の輸送費については国が負担すべきものだ、こうい うことでございます。具体例としましては、前の先生が使っていて、次の先生 はほとんど使わないというようなものが多分該当するのではなかろうかと思い ますが、制度的にはそういうことになっておるわけでございます。国立大学か ら公私立大学に物品を移転することにつきましては、財政法の規定によりまし て、国の財産を「適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはなら ない。」ということになっておるわけでございますので、制度上難しいものが あるのではなかろうかというように考えております。現在の物品管理法上はそ ういうことでございます。(中略)インセンティブという観点からいたします と、行った先にやはりそれなりの設備が整っておらなきゃ何にもならないだろ うということはまことにごもっともなところでございまして、文部省といたし まして今年度の予算に、十分とは言えないわけでございますが、教員流動化促 進経費というのを計上いたしまして、例えば民間の研究機関から教授や助教授 として採用したという場合に、その受け入れ先の大学の研究環境の整備のため に必要な経費を支給するというような努力もいたしておるところでございます。 (中略)異動する先生が強制的にその指導下にある大学院学生を連れていくと いうことが一体受け入れられるものなのかどうかというのは一つあるわけでご ざいますが、あえて申しますと、大学院学生の自主的な判断で、ぜひ引き続き 当該先生の指導を受けたい、籍を変わっても、大学を変わってでも行きたいと いうようなことはないわけではなかろうと思うわけでございます。そういう場 合でのお尋ねであろうかと思うわけでございます。基本的に国立大学の入学料 につきましては入学許可の際に徴収するわけでございまして、その学生が当該 大学の学生としての地位を取得することについて徴収する、(中略)したがい まして、国立大学の学生が他の国立大学に動くということの場合につきまして は、取り扱いといたしましては、改めて転入先の大学で入学料を徴収する、こ ういう扱いになっておるところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-参- 文教委員会-14号・平成9年5月29日) (4)女性教員 【論点】任期制は、出産、育児などに重なれば、継続任用、再任、または就職 活動において女性が不利なことは明らかであるとの指摘があった。これに対し、 政府側から、任期制によって女性が特に不利な扱いを受けるとは考えられない。 むしろ、女性のライフスタイルに合わせた任用が可能になる、教員評価が教育 にもウエートを置くようになると、女性に有利になるとの反論があった。 (i)女性教員について、任期制というのは必ずしもプラスではないというよりも かなり厳しい条件になってくるのではないか。異動を前提にしているというこ とですので、その点についてマイナスの要因になるのではないかというふうに 危惧をいたします。それは、育児それから家族の介護、家庭生活の中の本当に 多くの役割を女性が担っているという今の日本の社会の現実を考えるときに、 任期制による職場の異動、転勤、これは、特に継続的な就業を困難にする側面 に働いてくるのではないかというふうに考えるからでございます。(中略)任 期制の導入によって不利益をこうむらない配慮が女性には特に必要ではないか。 (西博義委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨、石井郁子委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、堂本 暁子委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、石田美栄委員・140 回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日。〕 〔答弁〕任期制の法案の趣旨自体が本来の趣旨に従って実施されるということ でありましたならば、そのことが女性教員の採用にマイナスに作用するという ようには必ずしも考えていないわけでございます。(中略)任期制が幅広く導 入されていくという将来のことを考えていきますと、いわば教員採用のチャン スというものがそれだけふえていくということにもなるわけでもございますの で、(中略)女性のライフサイクルに応じた就業の機会が増加する、そういう メリットというものもあながち否定できないのではないか。(雨宮忠政府委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨の答弁として、雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号 平成9年5 月21日、小杉文部大臣・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、同140 回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日、慶伊富長参考人・140回-参-文教委 員会-15号・平成9年6月3日、有本章参考人・140回-参-文教委員会-15号・平 成9年6月3日。〕 (ii)日本の社会では、女性がそういう研究と(中略)子供の世話とかいろんなこ とを両立させようとするのはかなり苦しいことになりますよね。そうしますと、 どうしてもじっくりと時間をかけてやる仕事の方にウエートがかかってくるよ うな気がいたします。短期間で業績を上げなきゃいけないというふうになって しまいますと、逆に女性にとっては、一般的には日本の社会の現状では不利に なってくるんじゃないかというふうに、その点ではちょっと心配をしておりま す。(沢田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (iii)世界的に比較してみて、やはり教育にウエートをかなり置いていくという時 代になってくれば、女性の方が非常に教育の方に執心でございますので、その 辺の物差し、評価基準をどういうふうにするかによって上がってくる(中略)。 これからは任期制もそういうふうに、組織の活性化とか、それから考え方の活 性化とか、世界的レベルで考えるとか、こういうふうに発想を変えてくるわけ ですから、そうしますと今までとは違う基準で教授会も行動するようになって きますから、女性をできるだけ入れていくとか考慮するとか、アメリカあたり ですと、同じ業績だったら女性を先に採るとかいうことをやりましたけれども、 例えば日本でもそういうようなことが起きてくる可能性はあるんですね。これ は、だから大学人がどういうふうに意識を変えていくかという問題で、これを 私は、自己点検・評価をきちっとやっていくということ、それから大学人が自 分たちの教育研究サービスの活動をもう一遍問い直していく。これは(中略) ファカルティー・ディベロップメントと言っているんです。これは外国では比 較的発展しているんですが、日本ではまだ比較的弱いわけですね。学問の自由 とかかわる、その辺のことを大学の中から変えていくということがようやく今 動き始めたんですね。こういうことと今の任期制というのは非常に関係がある わけですから、カンフル注射と言いましょうか、(中略)そういうものを契機 にしながらもう一遍考え直していく。それで活力があるものにして、学問的な 発展をさせて、それで社会に貢献するというのが一番大事なことですから、そ このところに合わなければもう一遍考え直すということ(中略)で私は賛成を しているわけですね。(有本章参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年 6月3日) (iv)高等教育局長は衆議院で、(中略)任期制が幅広く導入されていくという将 来のことを考えていくと、教員採用のチャンスはそれだけふえていくことにな る、女性のライフサイクルに応じた就業の機会が増加するというメリットもあ ながち否定できないと。これは、女性の教育・研究者が出産、育児の間はそれ に専念して、一段落ついたらまた戻ればよいと、教育職、研究職に戻ればよい ということですか。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6 月3日) 〔答弁〕任期制が導入されてきました場合には、そうでない場合と比べまして、 (中略)任期制がとられている場合の方が応募するチャンスがふえるわけでご ざいます。したがいまして、そういう意味合いにおきまして、これは男性であ ると女性であるとを問わないわけでございますけれども、今先生は女性のライ フサイクルとおっしゃいましたけれども、女性のライフサイクルだけではなく て、そのいろいろな事実上の生活条件と申しますか、個別の状況に応じて応募 するチャンスがふえるでありましょうと、ただし、それは任期制が非常に限定 された形で導入されたとしても余り効果はないのではなかろうか。(雨宮忠政 府委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (v)文部省ですからもっと女性の研究者・教育者に着目をしていただきたいと思 うんですけれども、女性の教育者・研究者の場合は、研究の充実期と、それか ら妊娠、出産、育児の時期とが重なるわけなんです。そういう特性をきちんと つかんで対策を立てていただきたいと思うんですね。それで、日本学術会議は 一九七七年に「婦人研究者の地位の改善について」という要望を提出している んですけれども、それ以来、女性研究者が科学研究と母性の二つの責任を果た すことができるような施策の強化を求め続けているんです。ですから、女性教 育者・研究者の本流というのは、母性も研究もともにその責任を果たしたいと いうことです。時期をずらせてやればいいというのは、女性たちの願いの本流 にも反するし、研究の論理にも反するんです。中断するということはできない んです、研究というのは。科学技術庁の「女性研究者の現状に関する基礎調 査」、九三年七月に発表されておりますが、ここでも育児をしながら研究を継 続できる体制の整備を求めています。結局、任期制というのはこの流れに反す るんです。任期制の導入によって、出産や育児が業績評価のマイナス要因にな らないと保証できますか。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-15号・平成 9年6月3日) 〔答弁〕業績評価というものはいろいろな意味合いにおいて公平なものでなけ ればならないと思いますし、(中略)母性保護というような立場をも念頭に置 かれてしかるべきであろうかと思うわけでございますが、(中略)業績の評価 ということに際しまして、女性であるということのゆえに差別があるというよ うなことがあってはならない。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-15号・ 平成9年6月3日) (5)任期切れ後は? 【論点】任期切れ後の教員に対する失業保険、就職斡旋システムの整備が必要 だとに指摘がある。就職斡旋システムとして学術情報センターを活用する。任 期が切れた後にも研究が継続できるようなシステムの構築が必要である。 (i)任期満了で退職される人をどうするのかということでありまして、(中略) 例えば、三十歳で大学へ勤める、もう少し早いかもしれませんが、五年任期だ、 三十五歳で退職ということになるわけです。そうしたら、そのときにお答えを いただいた先生は、(中略)定年が早くなったのだと思ってくださいと言う。 三十五歳で定年ということでは、大学へ勤めようという人がなくなってしまう のではないかと思います。(浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平 成9年5月20日) (ii)任期が満了をした教員の後の処遇の問題であります。(中略)私は、やはり 全体の仕組みとして再就職を適切にやっていく、そういうことが必要ではない かと思うわけでございます。(中略)欧米では横断的な労働市場ができている からこのことがスムーズにいくんだけれども、我が国ではそこまでいっていな い、これがやはり今回の任期制に対する大きな不安の原因になっている、(中 略)そのことにつきまして、これは有馬先生でございましょうか。(粟屋敏信 委員・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) 〔同旨の質問として、山本正和委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5 月29日がある。〕〔答弁〕大学審議会といたしまして、今回、任期制を提案を いたしました際に、御指摘の問題点も指摘いたしまして、学術情報センターと いうのがございますが、これは文部省の共同利用研究所であります、ここに大 きな情報のセンターがございます、(中略)各大学、各研究所の大事に関する ことを報告してまとめていただくということにいたしました。そこで、どこそ この大学のどの講座の人があいたとか、どこの研究所の何部門の助教授があい たとか教授があいたとか助手があいたとか、こういうふうな情報を学術情報セ ンターで集約し、これを公開するという手段を現在とっております。したがい まして、ネットワークで学情センターを呼び出しますと、そういう大事に関す る情報が的確にとらえられるように努力をいたしております。(有馬朗人参考 人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (iii)特に大事な身分保障という観点から見て、任期制により不利益な処分を受け た場合の退職金制度や年金制度に対して、どういうようにきちっと保障してあ げるのか。さらには、転任先の確保であるとかそういう救済措置というものを やはり明確にしていただきたいということ。具体的に、健康を害することもあ るでしょうし、病気であるとか災害に遭われたときの特例措置を、特に今回任 期が付される可能性のある当事者の皆さんに納得いただけるような制度をきちっ と整備した上で任期制を導入すべきである。法案を見ますと、これは三カ月以 内にということになっておるんですけれども、周知期間も含めてまだまだそん なのは、たとえ通ったとしても短過ぎると思うのです。そういう環境整備をき ちっと整えた上で導入すべきではないの。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委 員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕年金の関係につきましては、一般の社会保険制度と異なったものであっ たとしても、いわゆる公的な社会保険制度というものを渡っていくわけでござ いますけれども、そういう場合には特段の大きな問題はなかろうかと思うわけ でございます。(中略)やはり任期制という制度を制度的に開くということに よってあわせてその関連施策の推進も、それを横目で見ながら、それが円滑に 動いていくように検討してまいりたい。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委 員会-14号・平成9年5月21日) (iv)国公立大学の教員の場合、雇用保険の適用外とされている(中略)。失業し ても失業保険も受給できないという点もどうですか。(石井郁子委員・140回- 衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔同旨の意見、質問として、浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平 成9年5月20日、西博義委員・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日、 保坂展人委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日がある。〕 〔答弁〕国家公務員につきましては法律によって身分が保障されておるわけで ございまして、民間の労働者のように景気変動によります失業が予想されにく いというようなこと等の理由から、基本的には雇用保険法の適用対象から除外 されているということでございます。したがいまして、保険料を負担するとい うこともないかわりに失業給付もないということでございます。ただし、国家 公務員の場合には、退職後、職を失っている、失業している場合につきまして は、雇用保険法による失業給付程度のものは保障する必要があるという考え方 があるわけでございまして、このような考え方によりまして、国家公務員の退 職手当法の第十条の規定におきましては、支給された退職手当の額が雇用保険 法の規定による失業給付相当額に満たない者が退職後一定期間失業している場 合には、その差額分を特別の退職手当として支給することとされている。(雨 宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号 平成9年5月21日) (v)時期が来たらばさっともうそれで首というのでは、やっぱりすごく恐怖感の 方が強くなると思いますね。ですから、ぜひこれをやろうとするんだったら、 そういう教員のポストのプールみたいなものをつくっていただいて、次のポス トが見つかるまでそこにいるということが保障されていて、それで、その人を そのままそこに閉じ込めておくのはもったいないですから、研究や教育の方は 継続していただくようなシステムをつくって、それでやっていただくんだった らまだそういうモラルの任期制に近づくなと思うんですけれども、そういうこ ともしないでやればまさに首切り法案だというふうになると思いますね。(沢 田昭二参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (vi)この任期制が採用されて、じゃこの任期制にこの教授のポスト、助教授、講 師、助手のポストとなりましたときに各大学で規則を設けるわけでありますが、 その任期についての情報の公表、これを各大学に任せるのではなくて、文部省 としても日本全体として取り組んで、何か一冊の本にまとめるなりあるいはデー タベースにして、そういったソフトがあればそのソフトに乗っけて、だれでも 検索できるようなそういったものの開発をして、意欲的な、次へ次へと昇任を 目指したり転任を目指したりする教員の皆さん方に対する基盤整備といった、 そういう労働市場の形成についての御努力を、これはぜひ文部省としては全国 的にお願いをしたい。(中略)任期が来て評価をされて、あなたはもううちで はいいですよとなったときに、そのポストの任を退職することになった方の次 の仕事の問題でありまして、これはあなたの教育研究業績が一定レベルに行か なかったから再任もされなかったし退職になったんですよといって、自業自得 だといってほうり投げてしまうと、これはせっかくの任期制が有効に活用され るとは私は思わないわけですね。そういう観点で、有能な方々がむしろ心理的 なプレッシャーを受けて、この任期制に応募をして次の研究所あるいは学部ポ ストを目指そうというふうな気持ちを持たなくなるかもしれないという懸念は ある。(馳浩委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) 〔労働市場の情報センターについて同旨、石田美栄委員・140回-参-文教委員 会-15号・平成9年6月3日。〕 〔答弁〕大学共同利用機関といたしましての学術情報センターにおきまして公 募情報を出すことにいたしております。これは今年度からの事業ということで 始めておるわけでございまして、既に百件余りの公募情報(中略)を集めて流 しておるわけでございます。こういう情報自体が幅広く収集され、それが流布 されるということが(中略)横断的な労働市場ということの形成に役立つわけ でもございます。こういう事業は私どもとして大いに支援してまいりたい、こ れが一つでございます。それから二番目に、先生御指摘の任期が切れた方の先 の問題をどう考えるかということでございます。(中略)ある程度自助努力と いうことにも期待するところがあっていいかと思うわけでございますが、それ が定着するまでの間は、任期を付されたポストを擁する大学において、当該先 生の任期中の教育研究活動の実績というものを常日ごろからよく把握しておく のと同時に、次の就職先ということについてもいろいろな工夫の上で配慮をし ていく、(中略)面倒を見ていくという態度がやはり必要なのではなかろうか というように考えておるわけでございまして、その点につきましては、大学の 方にそのような考え方を述べてみたいというように考えておるわけでございま す。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日)  〔学術情報センターに関する同旨の答弁として、小杉隆文部大臣・140回-参- 文教委員会-15号・平成9年6月3日がある。〕 (6)国家公務員法等との関係 【論点】任期制を導入することは、原則的に任期制を否定してきた公務員制度 の根幹にかかわる大きな方針転換ではないのかとの意見が出された。公務員全 体に導入するのは様々な問題があるので、それぞれの職務の特性を勘案しつつ、 必要に応じて導入していくこと、大学教員の場合は自主的な研究という特殊性 があるので任期制を導入するが、これもあくまでも例外であるとの政府側答弁 があった。 (i)原則として国立大学教貝を含む国家公務員については任期を定めないことと されている。それどころか、法で決められた事由を除いては、免職等の不利益 処分を受けずに定年までの雇用保障、身分保障があるというのが公務員のもと もとの労働関係であり、またそのことが逆に、労働基本権制限を正当化する一 つの論拠とされてきたことは周知の事実であるわけです。だから、要するに今 回の大学教員への任期制導入というのは、これまでの公務員制度の根幹を揺る がすような制度の導入であるがゆえに、やはり慎重に見ていかないといけない であろう。特に、この任期制導入が今回のような大学審議会の答申に基づい て――文部省内の問題であればこれまでの法令改正という形でずんずんと進ん でおったのですけれども、こういうような文部省所管法令の改正程度で処理し ておいていいのか、(中略)やはり一般法たる公務員法に任期に関する条項を 整備して、その上で、例えば教育公務員特例法を改正するなりなんなり、そう いう手順を踏むべきではなかったのか。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委員 会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕国家公務員法は、原則として任期を定めない任用を想定しているわけ でございます。ただ、任期を定めることを必要とする特段の事由がありまして、 (中略)身分保障の趣旨に反しないという場合においては、従来から任期を定 めた任用も認められているところでございます。御指摘の人事院規則の八−一 二でございますけれども、これは職員の任免関係について定めた人事院規則で ございます。この第十五条の二で臨時的任用なり併任の場合を除きまして、定 員内の常勤職員を任期を定めて任用してはならないということをまず第一項で 定めております。そうしつつも二項の方で、特定の場合につきましては、(中 略)任期を定めた任用ができる旨規定しているわけでございます。ただ、この 人事院規則上の規定は(中略)現在も(中略)外国人の大学教員への採用の問 題ですとか外国人の研究公務員への採用など、別途法律によりまして任期を定 めた任用が認められているところでございます。今般のこの大学教員等の任期 制につきましても、教育研究活動の活性化を目的といたしまして、大学教員等 の流動化を図るために、他の法律による任期を定めた任用と同じように、法律 によって任期が導入されるものというふうに考えております。(関戸秀明説明 員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (ii)もともとの公務員法制に対して根幹を揺るがすようなものではないのか、そ ういう質問があって、(中略)大臣の答弁を読ませていただきますと、「今回 の法律案は、大学教員の職務が教員自身の自由な発想で主体的に取り組むもの という特殊性を有していることにかんがみ、定年までの継続任用の例外として、 教育研究上の必要がある場合について任期制を導入できるようにするものであ ります。」そういうように答弁でお答えになっているのですね。そのことから いくと、人事院規則で(中略)任期を定めて任用してはならない、(中略)例 外として幾つか挙げられておられる。今回の任期つきの大学教員の皆さんにつ いては、この(中略)例外に属するものであるというようにお考えになってい るのかどうか。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21 日) 〔答弁〕あくまでも定年までの継続任用というのが原則であるけれども、その 職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めることができるということで、今回 の法律案が、大学教員の職務が教員自身の自由な発想で主体的に取り組むとい う特殊性ということにかんがみて、定年までの継続任用の例外としてこの任期 制を導入できるようにする。(小杉隆文部大臣・140回-衆-文教委員会-14号・ 平成9年5月21日) (iii)この現行法制でのとらえ方ということを、(中略)特殊性を有していること にかんがみて定年までの継続任用の例外という扱いにしたものであるというこ とであるならば、この現行の人事院規則の八−一二の第十五条の二の二項以下 に幾つか、先ほど外国人教員であるとか教師であるとか、またプロジェクト研 究員であるとか、そういうのは入れましたが、そういうところと同様の扱いと いうか、人事院規則から見るとそこに属するような考え方である、そういうふ うにとらえてよろしいのでしょうか。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委員会- 14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕 ・人事院規則自体は、実は先生も御指摘いただいた任期制の中で、三年以内に 廃止予定の官職とプロジェクト研究型の場合、この二つについてのみ規定して おりまして、先ほども説明しましたように、それ以外については別に法律を定 めることによって国家公務員法が原則として想定していない任期つきの任用を 認めるという形になっているものでございます。今回のこの大学教員の任期つ き任用についても同様のものであるというふうに理解しております。(関戸秀 明説明員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) ・国家公務員に限って申しますと人事院規則との関係というのが出てまいるわ けでございます。ただし、いずれにしましても公務員制度に対する影響という のは当然あるわけでございまして、したがいまして、その例外を定めるという 場合には当然慎重であってしかるべきだというように考えておるわけでござい まして、そういう考え方に立ってこの法案を立案させていただいたということ でございます。したがいまして、任期をとり得るというのは、一体どういう趣 旨のもとでこういう任期をとるのかということをまず明らかにし、また、どう いう場合に任期を付すことができるかというその場合を特定し、また、その場 合にはどういう手続でやらなければならないかということもこの法案の中に書 き込んだつもりでございまして、私どもとしましては公務員制度への影響、そ ういうことを考えまして、例外措置を定める場合にはやはり慎重であるべきだ という考え方に従って立案したつもりでございます。また、法案の体裁といた しましては、これは単に国家公務員のみを対象とするということではございま せんで、国公私を問わず大学全体に共通にわたってやはり望まれるべき事柄だ ということなものですから、国公私にわたってということに配慮いたしまして 特別の、独立の立法とさせていただいた。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教 委員会-14・平成9年5月21日) (iv)学教員への任期制導入はこれまでの公務員制度の根幹を揺るがす改革になる と考えますが、今後、大学教員に限らず公務員全体へ対象を広げていくという 考えをお持ちかどうか(中略)。さらに、任期制度は日本社会の労働慣行の大 きな変動を促進するものと思われますので、この点についてもどのような考え をお持ちなのか。(西博義委員・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) 〔答弁〕私は任期制を公務員全体に広げるということには様々な問題があると 思います。その職務の性質などを踏まえ、必要性のある特定の場合に限って導 入していくべきものではないでしょうか。今後とも、個別の必要性などを勘案 しながら対処していくべきだと考えております。(中略)大学の教員などの任 期制は、大学等におきまして教員同士の学問的交流が常に行なわれ、教育研究 の活性化を図るために導入されるものでございます。こうした意味での任期制 の導入というのは、私は直接的には日本の労働慣行に影響を及ぼすものではな いと思います。(橋本龍太郎総理大臣・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9 日) (v)確かに現代の世界は非常に激しく流動化をしていて、多面的な知識が必要で すね、そして多様な人材が求められておる。そういう複合的な、いわゆる創造 的集団ということが求められているということが根拠になって大学のこの任期 制ということが出てきたと思うのですが、これは実は、例えば大学教育をより 創造的に発展させていこうとする局長の部署でも必要な発想じゃないか。つま り、文部省の中にみずから率先して任期制を入れていくという発想はお持ちに ならないのか、なぜ大学の教員にだけこの任期制が入ってくるのか。(保坂展 人委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕今回の法案は、大学における教育研究の活性化ということをねらいと いたしまして、そのために教員の流動化というものがもっと必要ではなかろう かという問題意識に立って、そのための一つの有効な方策として任期制という ものを考えたわけでございます。したがって、ねらいといたしましては、やは り大学という職場における人の流動性ということに着目しているわけでござい まして、(中略)直接教育研究を行っていない私どもとはやはり性質が異なる ものだというふうに考えてもおりますし、また、文部省職員の身分扱いという ことは、当然文部省限りのこととして取り扱うわけにもまいらない点があるわ けでございまして、これは国家公務員全体のことにもかかわることでもござい ますので、これはかなり大きな別の問題を生じてくるというように考えておる ところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9 年5月16日) 四 任期制導入の三類型  助手の任期制は妥当か? (1)任期制を導入する三つに類型は適切か?限定的だ 【論点】大学によって教員のすべてに網をかけるようなやり方が行われるのを 避けるために、任期制の対象が限定されていることを明確にすべきだという意 見が出された。文部省側から、大学の自主的な判断と、公務員としての国立大 学教員の身分保障という観点から、任期制の対象を三類型に限定したとの説明 があった。 ○任期制を導入することによって、短期的に目の前の研究成果を上げよう、業 績を上げようという傾向が出てきはしないかという危惧があるわけです。長期 的な研究だとかあるいは粘り強い、あるいは日が余り当たらないけれどもとい うような、そういう研究が軽んじられていくような傾向というのが出てくるの ではないかというふうに思う。(中略)勤務条件等ともかかわってそういうこ とが危惧をされるわけです。そういうことにある程度歯どめをかけるために、 四条で一、二、三というタイプが示されてありますが、この範囲というのは、 ある程度限界があるのですよ、限定があるのですよということを見えるように しないと、(中略)大学がやろうと思ったら、もうだれでもどれだけでもでき るような感じがするわけですね。先端的、学際的、総合的、あるいは分野の特 性にかんがみ、こう言うと、大学がこれはこうですということを決めるすべて の教員に網がかけられるという状況になるだろうと思うのですね。(中略)範 囲を限定をする、あるいはその限界を示すということが必要なんだというふう に思うのですが。(山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16 日) 〔同旨、菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、馳浩 委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、山本正和委員・140回- 参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、石田美栄委員・140回-参-文教委員会- 15号・平成9年6月3日。〕 〔答弁〕第四条の一号から三号までの考え方でございます。私どもといたしま しては、大学審議会の答申におきまして教育研究上の必要に応じて任期制がと り得るようにということで、しからばその教育研究上の必要性とは何だという ことについて、答申で書かれてあることを比較的素直になぞったつもりでござ います。それからもう一つの観点は、それ以外にも、大学の自由な設定の仕方 というようなものも許されていいのではないかということも考えられなくはな いのですけれども、例えば国公立大学の場合ですと公務員制度のもとにおきま す教職員の身分保障という観点から、やはりここはきちっと限定的に書くべき であるということで、一号から一、二、三と三つに限定して書いたつもりでご ざいます。したがいまして、制度的な意味合いにおきましては、私どもとして は、例えば教員個々人に応じて任期を定めたり定めなかったりということは許 されるわけではございませんし、これらの一号から三号までのどれかに該当す るという説明が少なくともなされなければ、この任期制の導入ということは考 えられない、こういうことでございますので、当然大学に対してもそのような 趣旨が生かされるように、私どもとしても周知徹底を図ってまいりたい。(雨 宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (2)なぜ教授まで対象とするのか? 【論点】なぜ教授まで任期制を採用できるようにしたのかという疑問に対し、 各大学によって弾力的に運用が可能なようにするために、教授を含めて任期制 をしくことを可能としたと、文部省側からの説明があった。 ○本法案では教授、助教授、講師、助手となっておるわけでございますが、諸 外国の例を見ますと、教授は大体対象となっていない、そういう例が多いよう でございますけれども、この法案で教授まで任期制にされた理由、そういう点 についてもお聞かせをいただきたい。(粟屋敏信委員・140回-衆-文教委員会- 14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕お尋ねの諸外国との比較ということでございますけれども、例えばア メリカの場合でございますけれども、いわゆるアシスタントプロフェッサーと いうところに至るまでは、これは、むしろ実態上は一律の任期制と言ってもよ いくらいの任期制が支配しているわけでございまして、むしろある意味では准 教授、教授に至る試用期間的な位置づけだというように言っても差し支えない ような実態にあろうかと思うわけでございます。それで、それを経て、テニュ アを得るための審査を経、その上でアソシエートプロフェッサーなり、あるい はフルプロフェッサーの地位を得る、テニュアを得る、こういう仕掛けになっ ておるわけでございます。それに対しまして、我が国の場合には、いずれの職 位につきましても一律のという発想はいたしておらないわけでございまして、 大学の教育研究上の必要に応じて、かつ、どういう場合にかということは限定 しておるわけでございます。それと、助手にしく場合もありましょうし、また 教授にしく場合もあるというように、概括的に申しますと、かなり弾力的な運 用が可能なような、そういう仕掛けであるというところが異なったところであ ろうかと思うわけでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14 号・平成9年5月21日) (3)流動化と再任制度は矛盾しないか? 適当な任期の長さとは? 【論点】再任を可能としたのは、具体的な運用を各大学の判断に委ねるためだ とされているが、再任が繰り返されれば、流動化という法目的にそぐわないの で、自ずと再任には限界がある。また、任期の長さについては各大学によって 判断されるべきであるが、流動化という法目的から、極端に長すぎる任期は適 当ではないとされた。 (i)学問的交流とか大学教員の流動化ということがこの法案の目的だとするなら ば、この任期制の教員というのは基本的には再任しない、交流が目的であれば、 流動化が目的であれば再任しないということが原則でなければいけない。(井 上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨、馳浩委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日。〕 〔答弁〕任期を定めて任用できるようにする、雇用できるようにするという制 度でございますので、基本的には、その任期を終えたら退職する(中略)とい うことが建前であるわけでございまして、そのことについて、この法案の任期 という言葉の定義の中にもそれを書いてあるわけでございます。ただし、具体 の運用におきまして、すべてそういうことで仕切ることが適切かどうか、これ はまた大学の判断にもよるわけでございます。場合によって再任することもあ り得るということは、(中略)大学の工夫の中の一つとしてあり得てもいいの ではないかというように考えておるわけでございます。ただし、(中略)再任 を繰り返すということによって、せっかくの任期制というものが本来の趣旨か ら外れるというようなことになりましたら、これはおかしなことになるわけで ございます。おのずと限度があろう。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員 会-12号・平成9年5月16日)) (ii)無試験の国家公務員の国公立の教授という職業について、大体任期は何年が 妥当だとお思いでしょうか。(江本孟紀委員・140回-参-文教委員会-14号・平 成9年5月29日) 〔答弁〕今回の法案におきましては、任期の期間の長さにつきましては、学問 分野や職の性格等によって事情が異なることなどを考慮いたしまして、法令等 におきまして任期の長さの上限を定めず、各大学において定めるということに いたしておるわけでございます。もちろん、私立学校の場合には民法の規定が ございまして、任期の長さ五年を超えて定めてはならぬという規定がございま すので、再任があるなしはともかくといたしまして、そこが一つの上限になろ うかと思うわけでございますが、国公立大学の場合につきましては民法のそう いう規定はございませんものですから、特段に定めてございません。いずれに しましても、任期の期間を定めるに当たりましては、各大学におきまして教育 研究の継続性やら、あるいは教員の流動性を高めるという任期制導入の意義を 踏まえまして決定していただくべきことだというように考えておるわけでござ います。したがいまして、文部省の方として妥当と考えられる任期の長さは何 年だということをあらかじめ数字であらわすことは必ずしも適当なことではな いであろうというように考えておるわけでございます。ただ、極端に長い任期 を定めるというのは任期制自体の性格からして適切ではなかろうというように 考えておるわけでございまして、現在いわゆる紳士協定のもとで行われており ます事実上の任期制の状況を見ておりますと、短いところでは一年というのも ございますし、長いところでは十年というようなところがあろうかと思うわけ でございまして、だからこの範囲内とは申しませんけれども、一つの参考には なろうかなというように考えております。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教 委員会-14号・平成9年5月29日) (4)助手の任期制は妥当か? 【論点】助手がすべて任期制の対象となるのではなく、助手の中で四条の一項 二号に該当する人だけが任期制の対象となる。 (i)大学院から助手にかけて研究を進めておりますときに、なぜああいう勝手な 研究をやっている助手をやめさせないのだというふうな声が聞こえてきたこと もございます。その中で辛うじてどうにか研究を続けさせてくれたのは、教育 公務員特例法にある身分保障の制度のおかげでありまして、(中略)最も不安 定で、かつ研究の第一線で勤務するような生活をしておりました助手の時期に、 もし任期制が導入されておったら、私の研究は続かなかったであろう(中略)。 東大あるいはその周辺には、やはりそのときの時流に合わない研究をやったた めに昇進の道を断たれたという研究者はたくさんおります。(中略)時流に合 わない研究、あるいは、いつか後の世に役に立つような、しかしそのときには 目立たない研究をしている人間は、このような任期制が採用された大学の中で は生き残ることは不可能だろうと感じます。大学の流動性あるいは活性化を図 るのには、まだまだほかにやらなければならないことがたくさんあるだろうと 大学の中で暮らして感じます。例えば、採用、昇進の不透明性。(中略)そう いう不透明性を残したまま、助手のところに主として任期制のような制度を採 用する。しかも、その過程で助手の意見はほとんど聞かれていないようであり ます。つまり、当事者の声を聞くことなくして制度がつくられるというのは、 やはり大学の中におって、これは甚だしく不当であるというふうに感じます。 (宇井純参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (ii)「実際にどの職に導入するかは、各大学が判断することとする。」と言われ ていながら、その下の行で、「なお、特に、若手教員の育成の観点から、助手 への任期制の導入は重要であると思われる。」そういうふうにうたっておられ るわけですけれども、なぜ助手にだけそういうように、重要であるというよう に強調されておられるのか。(佐藤茂樹委員・140回-衆-文教委員会-14号・平 成9年5月21日) 〔答弁〕助手は、一般的に、大学教員としてのスタートを切る一番最初の職位 だということでございまして、したがって、異なる経験や発想を持つ人材と交 流いたしましたり、あるいは多様な経験を若いうちに積んでおくということは、 その後の長い大学教員としてのキャリア形成、大学教員として全うするかどう かはともかくといたしまして、(中略)アカデミックコミュニティーの中でキャ リアをつくっていくという上において非常に大きな意味を持つんだということ でございます。思考の柔軟な時期に任期制によって大学間の異動を促進する、 いろんな経験をするということによっていろいろな能力を培う、あるいは幅広 い視野を養う、こういうことが非常に重要だということを大学審議会としても 考えており、また現実にそういうような考え方に従って、事実上の任期制と呼 ばれておるもので行われているのも、かなり助手を中心に行われているという 実態に着目した、こういうことでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆- 文教委員会-14号・平成9年5月21日) (iii)助手(は)(中略)現行の教育公務員特例法では教員ともされていない、準 用程度の扱いである。さらに、今までの学校教育法では、(中略)「教授及び 助教授の職務を助ける。」その程度にしか法として決められていないのに、今 回いきなり「助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主 たる内容とするものに就けるとき。」全く整合性がとれてない。(佐藤茂樹委 員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔同旨、本岡昭次委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日。〕 〔答弁〕「助手」と学校教育法にも書いてございますし、それは「教授及び助 教授の職務を助ける。」ということが書いてございますし、また教特法上準用 職員であるということで、他の職とは異なった扱いになっている(中略)。た だ、実態といたしまして、助手の職務内容といたしましては必ずしも一律なこ とにはなっておらない(中略)、一言に助手と申しましても大変広うございま す。そういうたくさんの職務を現実の問題として抱えております助手のすべて について、今回の公務員制度の例外措置を適用することが適当かどうかという ことになってきた場合に、これはやはり教員と匹敵するほどの、教授、助教授 らと匹敵するほどの例外的な扱いを行うに必要なほどの位置づけになるような 助手、やはりそういうものに限定すべきではなかろうかということで、今回の 法律では「自ら研究目標を定めて」云々、それを主たる職務にするそういう助 手に限定した。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月 21日) 五 業績評価 (1)業績評価はどのように行われるのか? 【論点】任期制が導入されると業績評価の機会が増加するので、各大学におい て教育、研究の両面について信頼性と妥当性のある評価方法を工夫することが 重要であるが、研究評価は定量的、客観的に可能だと考えられるが、教育評価 は非常に困難である。大学審議会の答申では、長期的な視野に立った研究がお ろそかにされることのないよう、研究途上の業績等も含めた広い意味での研究 業績を考慮するとともに、論文の多寡ではなく、その質を重視した評価の方法 を工夫することが重要と指摘されている。 (i)論文といったっていろいろなところの論文の評価がまた個別にあるわけです から、はっきりしたことは言えないとしても、まだそれでも客観的、定量的な 評価が可能だ、こう思いますが、もう一つの大事な論点である教育評価という のは、これは非常に困難だと思います。一方では、(中略)教育をするという ことが非常に重要な大学教育の内容になってまいりました。これまで以上にこ の教育に対する業績の評価がなされるべきだ、こう思います。そのほか、大学 の中での運営にどれだけ寄与したか、また一般社会に対してどれだけ積極的に いわばサービスを行ったかというようなこと、貢献度なんかも考慮して、信頼 性と妥当性のある評価システムをつくっていくべきではないか。(西博義委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨、菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日。〕 〔答弁〕例えばアメリカのニューヨーク大学の教育学研究科において、教員に 毎年年間活動報告を提出させて業績評価を行う、その結果を給与に反映させて いるというような例もございます。この場合の年間活動報告といたしまして、 (中略)研究活動のほかに、教育業績、それからその効果、部局での活動、地 域社会等への貢献度等々を項目別に記載するということが求められておるわけ でございます。教育業績などの項目におきましては、授業科日数がどのくらい か、カリキュラムの企画開発にどの程度参画したのか、論文、プロジェクトの 指導がどの程度であるかというようなことどもについて報告するというような ことも挙げられているわけでございます。(中略)イギリスのウォーリック大 学の場合につきましても、やはり同様の項目が取り上げられているわけでござ います。これらの例につきまして、大学審議会でも議論されまして、これから は単に研究業績ということだけではなくて、教育業績等の部面におきましても 手間暇をかけた業績評価というのがやはり必要だというふうに言われておりま して、その事例を示してもおるわけでございます。我が国におきましても、例 えば筑波大学やらあるいは国際大学やらにおきまして、教育業績ということを かなりはっきりと示しておるところもあるわけでございまして、(中略)これ らの事例というものをできるだけ多くの方々に参考にしていただく。(雨宮忠 政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔同旨の答弁として雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5 月29日がある。〕 (ii)任期制を導入することによって、短期的に目の前の研究成果を上げよう、業 績を上げようという傾向が出てきはしないかという危惧があるわけです。長期 的な研究だとかあるいは粘り強い、あるいは日が余り当たらないけれどもとい うような、そういう研究が軽んじられていくような傾向というのが出てくるの ではないか。(山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔長期的な研究に対する配慮の必要性について、同旨、粟屋敏信委員・140回- 衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日。〕 〔答弁〕大学審議会におきましてもいろいろ議論されたわけでございまして、 答申の中におきましても「長期的な視野に立った研究がおろそかにされること のないよう、研究途上の業績等も含めた広い意味での研究業績を考慮するとと もに、論文の多寡ではなく、その質を重視した評価の方法を工夫することが重 要である。」とされているところでございます。大学で行っている研究の中に は、比較的短期の目標を立ててやっているものもありますれば、また大変長期 的な、いつ結果が出るかもわからないような研究もあるわけでございます。し たがいまして、これをどう評価するか(中略)は大学の腕の見せどころと申し ますか、大学の努力にまつところが大であるという分野ではなかろうかと思っ ているわけでございまして、したがって、大学に対しましては、今のような観 点も含めまして、適切な評価方法につきまして、ぜひ開発、工夫していくよう にということで、私どもとしても大学に対して促してまいりたい。(雨宮忠政 府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (iii)任期制の導入により業績評価の機会がふえることになりますので、従来にも 増して信頼性と妥当性のある評価方法を各大学で工夫することが必要不可欠で ございます。その場合、研究面の評価に偏ることなく、私は大いに教育面でも 評価をしてほしい(中略)。また、大学の管理運営、地域社会への貢献、特に 地域社会への貢献といったことについても適切に評価をしていくことが必要で ございます。(中略)長期的な視野に立った研究がおろそかにされることのな いよう、仮に研究途上のことでありましても、研究途上の業績について詳しく、 きめ細かく検討し、論文の数だけでなく、その質を重要視した評価方法を工夫 することが重要である。(有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成 9年5月20日) (iv)この任期制というものが導入されたときに私が懸念することは、果たしてど れだけ公正さが保たれるかということです。今、学部長なり教授なりが、先ほ ども徒弟制度的という言葉が出ましたけれども、大変心配されるのは、そういっ たところでごく客観的な評価がなされるかどうかということなんです。(堂本 暁子委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕世界の趨勢は、特に私ども理工系におきましては、例えば研究業績の 評価基準は国際的にはっきりしております。日本の中で通用する、あるいは自 分の大学の中だけで通用するというものではございませんので、そういう点で 国際的な評価基準、これを大学の中に明らかに持ち込むことによって、それを クリアする、カバーする、ある時期において大いに実力を発揮する必要がある。 (慶伊富長参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (v)教授のそういう資格要件、そういったものはあってもいいのではないか。そ れから、そういうことがあった上でこの任期制というようなものを採用すべき ではないか。それから、任用に当たっての資格審査委員会というようなものを こういったものに設けるとか、これはずっとお話ししていますとどうもその辺 があいまいになっていて、実際に具体的には、公正かつ客観的にどういった人 たちがいいかということを受けられるような第三者機関、外部からのそういう 機関みたいなものもつくった方がいいんではないかというふうに思っておりま すけれども、その点いかがでしょうか。(江本孟紀委員・140回-参-文教委員 会-15号・平成9年6月3日) 〔答弁〕大学の教員につきましても大学設置基準上資格要件が書いてあるわけ でございますが、やはり高校以下の先生とは扱いが異なっているわけでござい ます。まず、トレーニングする、要するに日ごろの授業を行うということにつ いての基礎的なトレーニングを必ずしもしなくても済むような仕掛けになって おるとも言えるわけでございます。また、評価の問題がまたかかわってくるわ けでございまして、学生の立場からしましたら四年間だけいるわけでございま す。したがって、多少我慢したら四年間過ぎてしまうということかもしれませ ん。そこで、授業をいかに充実するかということについての最近の傾向といた しまして、(中略)学生による授業評価というのも出てきておるわけでござい ます。(中略)それらさまざまなことを含めまして、大学の先生の単に教育研 究能力ということだけではなくて、やはり日ごろの教育活動をきちんとやって いただくということが必要でありまして、その点は(中略)まずもって日ごろ のそういう授業活動を大切にする、それはそれぞれの教員自身の御努力による のが一番でございますけれども、やはり側面的には今申し上げましたような諸 種の努力というものも必要ではなかろうか。(雨宮忠政府委員・140回-参-文 教委員会-15号・平成9年6月3日) (2)大学の教育研究活動に対する自己評価、外部評価、情報公開 【論点】任期制の導入の前提として、自己評価、外部評価、および評価の結果 の公表が重要である。 (i)任期制の導入の前提といたしまして、まず大学自体が教育研究活動を不断に 見直し改善を図るといった観点から、自己点検あるいは評価システムの導入が 図られることが非常に重要ではないかと思うわけでございます。(中略)その 点検・評価の客観性を確保するためには学外の有識者による外部評価が欠かせ ないんではないかと思うわけでございます。(菅川健二委員・140回-参-文教 委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕確かに、自己評価並びに外部評価というのは重要だと思います。それ ぞれの大学でも、そういった外部評価を導入してその結果を公表している大学 もかなり挙がっております。(中略)やはりそうした内部の評価、外部の評価 というものを公表することによって、よりその大学に対する社会的な信頼感な り評価を高めるということに私はつながっていくと考えております。(小杉隆 文部大臣・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) (ii)点検・評価の結果というのは一般国民や受験者にわかりやすい情報公開が必 要ではないかと思うわけでございます。現在の取り組み状況やそのあり方につ いて局長にお伺いいたしたい。(菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・ 平成9年5月29日) 〔答弁〕自己点検・評価ということ自体は、平成三年の大学設置基準の改正に よりまして、(中略)大学の教育課程自体を大学の自主的な判断のもとに自由 な教育課程を編成することができるようにというような規定を設けたこととの 関連で、そういう一種の自由裁量的な場が保障されたということをいわば自己 規律という形で補っていく、制度的に補っていくというような意味合いを込め まして、自己点検・評価というのを大学設置基準上の義務としてそれぞれの大 学にお願いしたわけでございます。その結果、(中略)教育研究活動の状況を 点検・評価の結果という形でオープンするという大学が大変多くなってきてお るわけでございます。(中略)いずれにしましても、大学が行っております活 動のありさまというものを世間に広く知っていただくということが、やはり大 学の社会におきます存在意義と申しますか、そういうものをまた際立たせてい くことにもなるわけでございまして、そういう意味合いからも(中略)できる だけ大学の状況というものの広報、PRと申しますか、そういうような意味合 いも含めまして、広く世間に知らしめるということを大学に対しまして勧めて おるということでございます。(中略)外部に知っていただくという活動を通 じましてみずからを省み、自らの教育研究活動の改善の種にしていくという意 味合いがあるわけでございまして、そういう意味合いからも大変重要なことで ある。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 六 恣意的な運用の恐れ、任期切れ教員の救済方法 (1)恣意的な運用の恐れ 【論点】文部省は、意に添わない任期制のポストを強要されることはないし、 これを拒否したことを理由に不利益をこうむるようなことがあってはならない と説明した。 (i)例えば、そういう給与上の優遇というか配慮なりがない、だから任期ポスト につくことを拒んだ場合、あなた、五年制のここの助教授ポストへ行け、行っ てほしい、こう言われたときに、いや、私は五年後にレールの切れるところに は入りませんというふうに拒んだ場合には、どういう状況になるわけですか。 (山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕任期制の導入に関連いたしまして、その任期を付したポストへの任用 という場面におきましては、本人の同意を得て行うということが法律上明記さ れているわけでございます。したがって、本人の意に反してそのような任用行 為がなされるということは考えられないというように思うわけでございますし、 また、それを本人が受けないというようなときに、そのことによって何らかの 不利益な取り扱いがあるというようなことも、もちろんあってはならない。 (雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (ii)例えば評議会とかあるいは理事会とかあるいは学長、こういう人たちの専断 といいますか恣意といいますか、そういうものが入ってきて、本当の意味の、 長い展望の中での活性化ということが難しくなるのではないかという懸念がご ざいます。そういうことが起こらないように、教特法十条の定めもありますけ れども、しっかりと管理機関で本当に学内の合意を大事にしながら決定をして いくということが必要なんだろうと思いますけれども、そういうための(中略) 配慮というものは今きちっとしておくべきだ。(山元勉委員・140回-衆-文教 委員会-13号・平成9年5月20日) 〔答弁〕私どもの審査報告の中で、恣意的なものが入らないように、特に私立 大学に関しては強く要望いたした次第であります。そして、経営側、特に理事 長等々の恣意的な判断で任期制が導入されたり任期制によって首を切るという ことが起こらないように、学長並びに教員の人たちの意見が十分入るようにと いうことを書いてあります。同じように国公立でもやはり恣意的なことが行わ れないようにすることは極めて重要だと思いますけれども、しかし、国立には 評議会というものがあり、それから教授会がかなり強いのでありますから、そ ういう点で、仮に任期制を導入しようとすれば、教授会がきちっと審議をして くれるものと私は信じている次第であります。率直に言って、学長はその辺に はほとんどリーダーシップをとれないということが普通だと思います。ですか ら、むしろ教授会がどういうふうな合意を形成していくかということが一番の ポイントであろうと思います。(有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・ 平成9年5月20日) (2)救済手段 【論点】再任の手続について、採用と同様に厳格な審査が行われる旨を本人に 明示して、任期制が円滑に実施されるように努める必要がある。文部省は再任 が拒否された場合、不服申立はできないが、再任が拒否された場合に非常に不 合理な扱いがなされたということであれば、当然司法上の救済という道が閉ざ されているわけではないとした。 (i)そのポストへ入った、再任を望んでいた、来年自分は五年が切れる、続けて やりたい、仕事も半ばであるというときに再任が拒まれる。そうすると、その 本人は、現実的にある程度仕事も探さなければならぬでしょうし、そういうと きに救済をされる措置、例えば訴えることができる、公務員は人事院だとかあ るいは労働委員会だとかいろいろあるわけですけれども、そういう手だてが保 障されるのか、あるいはやはり一定期間公務員としての身分を保障するという ような救済措置があってもいいのではないかというふうに私は思いますけれど も、とにかくだめだと言われて三月三十一日になってしまった、次からは全く の権利もあるいはそういう救済の道もないということでは大変だと思うのです が。(山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕任期制とは、任期満了によりまして当該任期を付されたポストに係る 身分を失うことを前提とした制度でございまして、したがって、再任されない 場合もあることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、再任を認め る任期制をとる大学におきまして、教員を任期つきの職に採用する場合には、 再任の手続について、採用と同様に厳格な審査が行われる旨を本人に明示して、 任期制が円滑に実施されるように努める必要があるというように考えているわ けでございます。なお、再任を拒否された教員が身分を失うことだけを理由と して、暫定的なポストやあるいは任期なしのポストに採用するというようなこ と(中略)は、教員の流動性を高めることにより教育研究の活性化を図るとい う任期制本来の趣旨からして不適切なことではないかというように考えるわけ でございます。また、不服審査の対象となり得るかということでございますが、 教員の人事の審査と共通のことでございまして、したがって、これについては 不服申し立てをするというようなことは考えられないというように考えておる ところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9 年5月16日) (ii)公務員でいいますと昇任だとかあるいは降格だとかあるいは懲戒処分だとか いう身分にかかわる問題については、御承知のように人事委員会なり中労委な りに提訴をして争う、そういう不服申し立ての権利があるわけですけれども、 この間の答弁では、不服申し立てができない、こういうふうにおっしゃられた わけです。例えば、具体的な例でいいますと、本人は再任を厚く希望していた、 しかし審査の結果、どう考えてもこれは私に対する評価が誤っている、重大な 誤りがある、あるいはその再任の拒否が特定のある人の、例はよくないかもわ かりませんけれども悪意による中傷でこれが拒まれた、他の人が探されている という状況の中で、私の権利が侵されたと考えたときに、やはり救済する道が ないと、これは泣き寝入りだ、ばっさり切り捨てたということになるだろうと 思うのですが、その道についてお尋ねしたいと思うのです。(山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔同旨の質問に菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日 がある。〕 〔答弁〕大学が任期制を導入しようとする場合に、そのポストが一体再任を許 すものなのか許さないものなのか、これもまた大学の定めるところによるわけ でございますけれども、再任をしないのだというように定めた場合には、多分 これは本人もそういうことだということでございますので問題は出てこないか と思うわけでございますが、今、先生の御指摘のところは、再任もあり得ると いうようなことを大学として定めた場合の扱い、そういうことかと思うわけで ございます。任期の満了によりまして当該任期を付された職に係る身分を失う ことは、これは法案にも任期の定義ということで書かれてあるとおりでござい まして、任期制の本来の趣旨からして明らかなことでございます。任期満了後、 引き続き同じ職に採用されない、本人は希望したのだけれども採用されなかっ たという場合の不服をどうするのだ、こういうお尋ねでございます。これは、 基本的には教員の採用選考の場合に、それは人事の選考ということでございま すので、基本的には通常の採用選考において自分が採用されなかったというこ とに対する不服と同じ性格のものだというように考えざるを得ないわけでござ います。したがって、このような場合につきまして、これを採用しないという ことは処分といういわゆる行政法上の処分ということには当たらないというよ うに解釈されるわけでございまして、今御指摘のような状況のもとで当該教員 から人事院に対して国家公務員法に基づく不服申し立てを行ったといたしまし ても、これは受理されない。(中略)極めて不合理な扱いがなされたという場 合に、不服申し立てというようないわゆる行政部内での手続というものは無理 がとは思うわけでございますけれども、非常に不合理な扱いがなされたという ことであれば、当然それは司法上の救済という道が閉ざされているわけではな いというように考えているわけでございます。いずれにいたしましても、再任 があり得るというような扱い、これは再任しないという場合も同じでございま すけれども、一体どういうことになるのかということは、任期制を導入する場 合にはやはり当該教員も含めて、こういうことなのだ、こういう仕組みになっ ているのだということを十分あらかじめ承知しておいていただく、そういう必 要があるのではなかろうかということで、任期制あるいは再任があり得るとい う規定が置かれたからといって当然再任が保障されるというような誤解を当人 が持たないような、十分な事前の理解というものを求めておく必要があるので はなかろうかというように考えておるわけでございます。(雨宮忠政府委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (iii)すべて個々の、例えば八十九条、九十条ですか、こういうところで保障され ている権利があるのですよ。それではこの任期制の意味はなくなってくるとい うのか曲がるだろうと、それはわかる。けれども、(中略)極めて不合理な審 査というのか結果が出されたことに対しては、これは再任される権利はあるわ けですから、これが認められるかどうかは別です、再任される場合があるとい う定めがあるときに、自分はそれを希望して、極めて不合理な理由によってこ れが認められなかったという場合は、最終的には司法のとおっしゃいましたけ れども、私はやはり、導入する場合の規則の制定なり学内の合意という中でしっ かりとそのことについては、(中略)極めて高いレベルの業績評価の基準がき ちっとある、あるいは透明度の高いそういう審理が行われる、そういうことが 保障されなければいかぬと思うのです。そういうことが欠けていた場合には、 極めて不合理な判定だ、あるいは結果だというふうに思うのです。その場合に は、私は、国公法上の国家公務員としての身分にかかわる問題として訴えるこ とができるという権利は認めなければいかぬのではないか。(山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕再任があり得るとしておきながら、当人が希望したのにもかかわらず 当該再任の候補者のリストの中に載せられないというようなことは、これは非 常に不当なことであるというように考えるわけでございますが、ただし、数あ る候補者の中の一人として人事選考が行われた結果、再任が認められなかった ということもあり得るわけでございまして、そのことについて不服申し立てと いうのはなかなかしにくいだろうということを申し上げたわけでございます。 もちろん、今先生が御指摘のように、業績評価、これは今回の任期制に限らず 重要なことなわけでございますが、特に今回の任期制の導入ということをきっ かけにしましてさらにその重要度を増すわけでございますが、この業績評価と いうものがきちっとした形で、(中略)教員の間で支持されるような、できる だけ客観的な業績評価というものが大学の中で工夫した形で打ち立てられると いうことが重要なことは申すまでもないことでございますが、その努力は努力 として大いにやってもらわなければならぬということでございますが、ただし、 不服申し立てということに関して申しますと、そのような難しさがあるという ことを申し上げたわけでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員 会-14号・平成9年5月21日) (iv)どうも局長、すれ違いがあるようです。そういうことが大事だとおっしゃる わけです、業績評価とかそういうことについて大事だとおっしゃるわけです。 そういうことが欠けて極めて不合理なそういう判定が起こった場合、何人かの 候補者がいて透明度の高い比較がされて、あなたはだめ、こっちの人の方が適 任だとなったときには、これは、やりたかったのにという単なるそれだけでは 提訴はできないだろうと思いますけれども、極めて不合理な場合があったとき というのは、昨日の参考人の先生の一人の意見にも、やはり現在の大学で三つ の問題があるという、その一つのところに人事が極めて不透明であるというこ とをおっしゃった参考人がいらっしゃるわけですね。ですから私は、今の大学 のそういう人事のあり方、昇任あるいは昇格等でそういう不透明さがあるとい うふうに残念ながら思いますから、ですから、そのことについてきっちりと、 そういう極めて不合理な場合についてはしっかりと受けとめられる場がある。 例えばこれは、管理機関かもしれませんし、人事院かもわかりません、私学の 場合でいうと労働委員会かも。そういうところの道として司法の道しかないよ というのは、これはやはり酷なといいますか、そういう善意の再任希望という のを妨げることになるのではないかというふうに思うのです。(山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔答弁〕いわゆる人事選考ということに絡んでの不服申し立てというのは、今 の制度のもとではなかなか難しいということを申し上げたわけでございます。 もちろん、それに関連いたしまして、人事選考ということをめぐりまして諸種 のトラブルというものがないにこしたことはないわけでございまして、そのよ うなトラブルをできるだけ少なくするために、先生御指摘のようにできるだけ 業績評価というものが客観性を持った、あるいは非常に説得力のあるようなも のであるべきであること、あるいはできるだけ、一〇〇%透明にというのは人 事選考ということにつきましてはなかなか難しいところではございますけれど も、しかしできるだけ透明な形にすべきであること、そういうことは当然望ま れるわけでございまして、それについては、私どもといたしましても大学にそ のような努力は促してまいりたい、こういうように考えておるわけでございま す。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 七 私学の場合、労働基準法との関係、教授会 【論点】文部省によると、私学が教員の任期制を定めるという場合に、もしこ の第四条の一項三号に該当する場合には、この法に基づく任期だということで 運用されることが期待され、非常勤講師も任期制の対象となる。労働者側の退 職の自由が保障されているいわゆる雇用保障期間というようなものであれば、 一年を超える期間を定めても労働基準法十四条には違反しないと従来から解さ れてきたので、本法律案による任期制は任期の途中であっても大学教員の退職 の自由は確保されているので、労働基準法十四条には違反しない。また、手続 きの透明化などによって、恣意的な運用は防止される。 しかし、任期制を導入することが、教授会と理事会の間の力関係をさらに経営 に有利にするようなことにならないか、学長の意見を訊くだけで教授会の意見 を訊かなくて良いのかとの反論があった。 (i)この任期制をいわゆる私立大学にも導入するということに今回なっているわ けでございます。それで、労働基準法の第十四条で、原則として一年を超える 期間を定める労働契約を禁止している。こういう法文があるのです。労働省の 見解によると、一年を超える部分というのは雇用の保障期間である、いつでも やめられるのだ、だからいいのだ、こういう解釈になっているわけであります けれども、これは言いかえると、解雇という措置をとらないでやめさせること ができる、退職させることができる、こういうふうになっているわけでござい ます。こういう点から、多くの私立大学の関係者の皆さん、私立大学における 任期制の導入は教員の流動化として働く以上にいわゆる経営側に都合のよい首 切り法だ、いわゆる大学合理化の手段として使われるという懸念をなさってい る方が多いわけでございまして、私の友人の私立大学の教師なんかも、私が経 営者だったらこの法案大賛成だ、こういうふうに言っているわけでございます。 (井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕大学教員の流動性を高める(中略)これは国公立にとどまらず私立大 学にも共通に期待されることでございまして、基本的に、そういう意味合いで 今回の法案では国公私立すべてについて考えた(中略)。今先生御指摘の私立 大学の場合でございますけれども、(中略)単に教員を解雇するために任期制 が乱用されるというようなことはあってはならないわけでございます。現行の 労働環境法制の枠内で任期制が可能であるということを前提といたしまして、 私立大学教員につきましても、第四条第一項に定めます三つの場合について任 期を定めて教員を雇用することができることを確認的に規定したものでござい まして、特にその際、各学校法人におきましては、任期に関する規則を定め、 また公表しなければならないというようにしておりまして、制度的にも透明性 を高める工夫をしておるところでございます。各大学の判断でございますけれ ども、文部省といたしましては、各大学に対しまして今回の法案の趣旨を十分 周知することによりまして、各大学の良識ある判断によりまして、教育研究の 活性化という本来の趣旨のために運用されるように配慮してまいりたい。(雨 宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日)) (ii)非常勤講師も任期制の対象になる、こういうことなんですけれども、非常勤 講師の方、多くの方は事実上継続雇用で常勤化されている方が多いわけでござ います。継続雇用をめぐって争いも起きているわけでございまして、逆に言い ますと、例えば任期制採用ということになりますと、これは任期が来たら退職 ということが前提でありますから、(中略)解雇に法的根拠を与えてしまうの じゃないか、こういう恣意的な運用というのがこの法案によって可能になるの じゃないか。これはそのとおりだと思うので、その辺の歯どめについてどのよ うにお考えなのか(井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月 16) 〔答弁〕この法案によって非常勤講師の方について任期を定めるということに なりますと、この法案において定めておりますように、(中略)第四条に定め る三つの場合、あるいは規則にあらかじめ教員の任期の長さでありますとかポ ストでありますとか再任等の取り扱いの問題でありますとか、それらについて の問題、それから公表すべきであるとかいうこと、それから私立大学の場合で すと、それらの規則を定めるに当たって学長の意見を聞いて定めなければなら ないというような諸種の手続要件が課されているわけでございまして、それら がいわばこれらの措置をとる場合の手続として、透明性を確保するという意味 におきまして機能するということを期待しておるところでございます。(雨宮 忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日)) (iv)一体教員それぞれがどのように参加をできるのか。例えば、任期制を導入す る、どういうポストでする、どういう労働条件、給与条件にするということに ついては、私学にあっては、いわゆる労働協約を結ぶための労使の協議、労使 交渉というのが当然保障されなければならぬと思うのです。(山元勉委員・ 140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕私立大学におきまして任期制を導入することは、教員の労働条件にか かわる事項と考えられるわけでございまして、団体交渉事項に該当するという ように考えるわけでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12 号・平成9年5月16日) (v)だでさえ私立大学の場合には、理事者側、経営者側と教授会の間にはある種 の緊張関係がございまして、力関係は多くの場合経営者側の方が有利でありま す。教員の人事等においても、やはり経営の立場が優先する場合がしばしばあ ります。これは、残念ながら、私立大学で働いておりまして身の周りに数多く 見ることができます。ここにさらに任期制を導入することが、教授会と理事会 の間の力関係をさらに経営に有利にするようなことにならないか。(宇井純参 考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (v)私立大学の場合には(中略)理事会が決定をいたします。私は、教授会との 間にトラブルが起こるのではないかという感じがしております。大学審議会の 答申では、教学側の意見を十分に踏まえてとなっておりますけれども、この法 案では、学長の意見を聞いてと大変軽くなっていまして、(中略)教授会を無 視して任期制が私学の場合には導入をされる。その場合には、現に悪用されて いる例もあるわけでありますけれども、経営者にとって好ましくない人をいわ ばパージするために任期制が乱用されるという可能性は大変に大きいというふ うに私は思います。(浜林正夫参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年 5月20日) (vi)この法案の目的はあくまでも教育研究の活性化ということでありますから、 今度の法案でも、任期を私立大学が決める際には学長の意見を聞くべし、こう いうことにしているところでありますし、また各私立大学でも、教学部門の運 営に関しては独自に規則を定めて、それに基づいて運営が行われていると承知 しております。(中略)理事長が学長を兼任していて、理事長が恣意的に大学 運営をやるというような場合も懸念されるわけですけれども、各大学の運営の ルールに従って、単に経営上の見地からだけではなくて、教学部門の意見が適 切に集約されるように、制度の趣旨に沿った運営がなされるように私どもとし ても十分注意してまいりたいと思いますし、そう期待をしたいと思っておりま す。しかし、教授会の意見を聞くかどうかというのは、これはそれぞれの大学 の自主的な判断にゆだねられておりますので、今ここでそういうことを答弁す ることは控えたいと思います。(小杉隆文部大臣・140回-衆-文教委員会-14号・ 平成9年5月21日) (vii)私立大学の場合、(中略)経営をしている理事者の立場とそれから学長、教 授会、この辺の関係が非常に微妙だ(中略)。ですから、私立大学において任 期制導入の場合は学長の意見を聞くとされているんですけれども、その辺の手 順、そしてまた大学内における教授会との関連、この辺を今の法案の趣旨に照 らした考え方はこうだということをちょっともう一遍説明してくれますか。 (山本正和委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕法案の第五条の第三項でございますが、「学校法人は、前項の教員の 任期に関する規則を定め、又はこれを変更しようとするときは、当該大学の学 長の意見を聴くものとする。」、こういうような規定ぶりをしておるわけでご ざいます。これについてのお尋ねでございますが、御案内のように、私立大学 におきましての任命権者は学校法人、具体的には理事会が持っているというよ うに言えるわけでございます。ただし、私どもとして、理事会だけの判断、手 続でこの任期制の導入云々ということが処理されていいのかどうかということ について検討した結果、やはりここはいわゆる教学側の意見というものも聞く 必要があるのではなかろうかということでこのような規定ぶりにさせていただ いたわけでございます。さらに進んで、「学長の意見」ということの中身と申 しますか、その前段階としてどのような手続が想定されるかということでござ います。これは、それぞれの大学の教授会の運営の仕方なり、あるいは学長が 何か物を判断しなければならないときに部内でどういう手続きをとるか、これ は多分いろんな多様なものがあろうかと思うわけでございまして、これをあら かじめ法律の段階でかくかくの手続を経るべしというような形で規制すること は、私学の運営の自主性という観点から見ても必ずしも適当なことではなかろ うということでございます。この法律の上では「学長の意見を聴く」というこ とにとどめているわけでございまして、その大学内部の先のことにつきまして はそれぞれの大学の自主性に任せる。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員 会-14号・平成9年5月29日) (ix)任期制の乱用を防止するためにも、選択的任期制の運用が重要なかぎを握る ことになります。そこで確認をしたいのですが、私立大学が任期制を導入する 場合、つまり法律案の第五条に関してですが、「学長の意見を聴くものとす る。」とあります。その際、理事長が学長を兼任している場合、教学部分の意 見を尊重し運用されることを期待している、教授会の議を経るかどうかは大学 の判断と、衆議院における我が党石井議員への答弁でありましたが、というこ とですが、学校教育法第五十九条に照らしてどうなのか、伺いたいと思います。 学校教育法第五十九条は、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を 置かなければならない。」としています。任期制を実施するかしないかは、ま さにここで言う重要な事項、教育研究体制にかかわる重要事項であり、憲法上 の要請である学問の自由と大学の自治にかかわる重要事項であります。この立 場に立てば、教授会が任期制を実施しないと決定したときには、それが尊重さ れるべきではありませんか。(阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-15号・平 成9年6月3日) 〔答弁〕任期制につきましても各大学の運営のルールに従って教学部門の意見 が適切に集約され、制度の趣旨に沿った運用に努めていただけるものと期待し ているわけでございます。教授会は重要な事項を審議するという学校教育法の 規定の御指摘がございました。そのとおりでございます。ただ、学校法人にお きまして、任命権は学校法人、具体的には理事会が持っているわけでございま して、教学部門の審議機関であります教授会との調整をどう図るか、この辺は 私学の運営の自主性に任せるのが得策ではなかろうかということでございます。 したがいまして、教授会等が何らかの意向を表明したときにそれをどう酌み取 るか、これにつきまして、国の法律の段階であらかじめこうこうだというよう な定め方をするのは必ずしも適切なことではない、むしろ各大学の自主的な判 断にゆだねることが適切である。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-15 号・平成9年6月3日) (x)これは労働法制の問題なのですが、労基法十四条に、「労働契約は、期間の 定のないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一 年を超える期間について締結してはならない。」という点があります。ここの 部分と、今回、国公立の大学及び私立大学が入っているわけですから、ここを 労働省としてはどういうふうにお考えになっているのか。(保坂展人委員・ 140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) 〔同旨の質問として馳浩委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、 山本正和委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日がある。〕 〔答弁〕一般に行われています労働契約は、期間の定めのない契約ということ になっておりますけれども、そのほかに、一定の期間を定めて労働契約を締結 するというような場合も一方であるわけでございまして、そういう場合には、 (中略)労働基準法上では、(中略)不当な長期の人身拘束を排除するという 趣旨から、一年を超える期間を定める労働契約の締結を禁止している(中略)。 こういった趣旨でございますので、労働者の側の退職の自由が保障されている いわゆる雇用保障期間というようなものであれば、一年を超える期間を定めて も労働基準法十四条には違反しないという解釈を従来からとっている(中略)。 本法律案による任期制は、(中略)任期中、教員がその意思により退職するこ とを妨げるものであってはならないというふうに規定されているように、任期 の途中であっても大学教員の退職の自由は確保されているというものでござい ますので、本任期制は労働基準法十四条には違反しない。(労働省労働基準局 監督課長・青木登説明員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日) (xi)私立では、非常勤講師のほかにいわゆる嘱託講師とか特定任用教員など任期 つき教員がいろいろいます。この教員の場合ですが、現行の労働法制下では不 当解雇からは救済されることになっています。実際に、十二年間特任教員とし て勤務した旭川大学のギャラガー先生とか、十七年間声楽の非常勤講師として 勤務した徳島文理大学の杉尾先生とか、駒沢女子短期大学の音楽担当の先生と か、明治学院大学の常勤嘱託職員十数人等々が解雇を撤回しているんです。こ れらは、労働基準法第十四条が一年を超える期間の有期雇用を禁止し、一年契 約の雇用でも、更新を繰り返せば期限の定めのない雇用と同じとみなすという 判例が定着してきているからなんです。任期制の法制化はこうした努力に逆行 して、一握りの終身雇用教員と、大半を占める有期雇用教員から成る大学のマ クドナルド化を招くものだ(中略)。教育研究の活性化とは言いがたい大学教 員の首切り合理化のために任期制が悪用されるようなことがあってはならない。 (阿部幸代委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) 〔答弁〕単なる経営上の問題のためにこの任期制が乱用されるということがあっ てはならない(中略)。また、(中略)今回の任期制につきましては、あらか じめきちんと任期を定め、その任期を定めることについて一定の要件、手続を 課しているわけでございまして、そういう透明性の高い制度を立てておるわけ でございまして、それに基づいて任期を区切るということによって、これは労 働者側にとりましても雇われる先生方の方にとりましても、非常に透明度の高 い、単に将来どうなっていくかわからないというようなものではなくて、将来 の見通しのきくそういう雇用形態であるというように考えておるところでござ います。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) 八 選択的導入と予算等による事実上の強制、その弊害 (1)選択的導入の根拠 【論点】政府側の説明によると、各大学、学問分野ごとの実情に合わせて、各 大学の判断により導入する方が適切であることが、選択的導入の根拠とされて いる。 (i)答申においては、大学や学問分野ごとに実情が異なっておりますので、各大 学の判断により任期制を導入し得る選択的任期制が適切であると考えた次第で あります。(有馬朗人参考人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) (ii)画一的な任期制の実施は問題があるわけでございます。選択的任期制という ことを法案ではうたっておりますが、(中略)できるだけ柔軟にソフトランディ ングをしていくということが少なくとも当面は大事なんではないかなと思いま す。専門分野、セクション、セクターによって大学人の世界というのは非常に 多様性を持っている(中略)ので、これを無視していくということはできない (中略)。それから、学問の自由ということを大学人は非常に大事にいたしま すので、ここのところをきちっと担保してやっていくということが大事だろう。 (有本章参考人・140回-参-文教委員会-15号・平成9年6月3日) (2)選択的導入と文部省の圧力 【論点】文部省によると、任期制導入は各大学の判断に委ねられ、予算等を通 じて文部省が任期制を強制することはないとされているが、実質的には強制さ れるのではないかとの批判があった。 (i)文部省は、任期制導入は大学の判断にゆだねる選択的任期制だと言います。 しかし、本当にそうかという声が大学から上がっています。なぜなら、財政誘 導などによって大学に文部省の方針を押しつけるやり方は、この間目に余るも のがあり、産業界の大学提言にも、「文部省による厳しく不透明な窓口指導」 と指摘されているではありませんか。文部大臣、概算要求や新学部、新研究科 設置の許可の際の条件などで任期制を押しつけないと断言できますか。さらに、 国立大学には、民営化を踏み絵に任期制を押しつける動きすら伝えられていま す。(石井郁子委員・140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) 〔同旨の質問として、井上義久委員・140回-衆-文教委員会-12号 平成9年5月 16日、山元勉委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日、山原健二 郎委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日、佐藤茂樹委員・140回- 衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、石井郁子委員・140回-衆-文教委員会- 14号・平成9年5月21日、笠井亮委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9年 年5月27日、菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、本 岡昭次委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日がある。〕 〔答弁〕文部省としては、大学に対して概算要求や新学部、新研究科の設置の 際に任期制の導入を強制するようなことは考えていない。(小杉文部大臣・ 140回-衆-本会議-33号・平成9年5月9日) 〔同旨の答弁として、雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年 5月16日、小杉文部大臣・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日、小杉 隆文部大臣・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日、雨宮忠政府委員・ 140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日、小杉隆文部大臣・140回-参-文 教委員会-14号・平成9年5月29日がある。〕 (ii)科学技術の調整費みたいなものがあって、(中略)その任期制の研究員も含 めて特定の研究プロジェクトを国立の研究所で推進するというような場合には、 そういう調整費的な科学技術研究費を重点配賦する(中略)。そういうような 面で言いますと、(中略)任期制の導入というようなものを契機にその研究予 算が配賦されるということは当然ある。(菊池光興政府委員・140回-参-内閣 委員会-11号・平成9年年5月27日) 〔菊池政府委員の発言に対して〕それはちょっと重大な問題ですね。任期制と いうことでやらないとそういう重点予算が来ないということになりますと、こ れは一律にやらないと言われながらそういう余地が出てくるということですか ら、そこは厳格にしてもらわなきゃ困るというふうに思うんです。(中略)研 究員調整手当というのがあります。(中略)四つの観点から選定基準を設ける というふうに言われていたわけですが、そしてその中には幾つもあるというこ とがありましたが、今度の任期つき研究員の採用状況をそういう具体化として 研究員調整手当の対象に研究所を指定する選定基準に加えるようなことはない でしょうね。(笠井亮委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9年年5月27日) 〔答弁〕研究員調整手当の選定基準項目というのを四点、もっと細かいのは二 十点ばかり公にしておるかと思います。その中に直接的に、任期制云々という ことをその選定基準項目に入れるということは考えておりません。(武政和夫 政府委員・140回-参-内閣委員会-11号・平成9年年5月27日) (3)選択的導入の弊害―市場の狭さ 【論点】選択的任期制によって、任期制を採用する大学が少数に留まれば、教 員の労働市場が非常に限られたものになり、他大学に移ることが困難になる。 ○選択的任期制でありますので、ごく少数の大学だけが導入をするとなります と、そこを退職をした人が移る先がございません。つまり、教員のマーケット が非常に狭いわけで、といって、全部の大学が任期制をやりますと、私は、こ れまた大混乱が起こるだろうと。大学の教員が職を移るというのは、会社にい る人間の配置転換とは違いまして、手続的にも大変なこと、新任人事の採用と いうのは、(中略)少なくとも半年はかかる仕事であります。(浜林正夫参考 人・140回-衆-文教委員会-13号・平成9年5月20日) 九 大学ではどんな再任規則を作るべきか? 規則作成過程は? 規則の変更 は? 【論点】任期制法は再任規則の策定を各大学に委ねているが、再任に関してど のようなルールを作るべきかが問題とされた。文部省は、再任の任期は就任時 の任期と同じにすること、再再任も可能だが、流動化促進という目的から、再 任を繰り返すことは適切ではないこと、任期途中での再任の内定は可能である こと、学長は、教員の任期に関する規則の内容を定めるに当たり、当該大学の 評議会の決議に拘束されること、任期を定めたポストの新設、任期の長さを変 更、再任の取り扱いの変更などを行うときには任期に関する規則を変更するこ とが必要であり、一定の手続を踏むことで規則の内容を変更することは可能で あるとした。 (i)この第二条四号、任期の規定の中に「引き続き任用される場合」とあり、こ の条文からは再任は可能である、こう読み取れます。もちろん大学の判断とい うことは当然のことであります。再任の際、例えば五年以内の期間に更新がで きるという期間限定つきの任用なのか、それとも五年の任期終了後さらにまた 五年、合わせて合計十年いける、こういう任用ができるのか、再任の基本的な 考え方、これをお示しを願いたい(中略)。また再々任、(中略)何回ぐらい は可能なのか、期限等についても、(中略)教えていただきたい。(西博義委 員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕例えば、三年という任期が付されている場合に、そのポストにつけら れた教員についてさらに再任ということになりますと、もしその任期が三年と いうことでありましたらもう三年ということになろうかと思いますし、もしも ともとの任期自体が五年ということでありましたら、再任ということになりま すとさらに五年というように考えております。再々任というお尋ねもございま した。全くあり得ないことではない。(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員 会-12号・平成9年5月16日) (ii)五年の任期がついた講師がいらっしゃる。これは大学が自主的に行うことな んですが、この法律の運用に当たり、現実にどういうことになるのかという情 報提供を、一つのモデルケースとして考え方を示していただきたい(中略)。 最初に、この講師のポストについては再任ということになりますと、どの機関 がいつごろに(中略)手続を始めるのか。その際に、任期終了時、あるいは直 前に任期期間中の教員の業績評価は行うのか、行うとすればどの機関が行うの か。再任を行う方法として、大学審議会の答申では、「再任とは再びその職に 採用するということであることから、通常の採用手続に基づき、選考を行うこ と」、こういう答申が出ております。今の答申は、また一から皆さんと一緒に 採用の条件の中に、大勢の中の一人として採用に臨んでください、こういう意 味だと思うのですが、この方法によらないで、任期が切れる前に評価を行い再 任を内定する、(中略)こういうことができるのか。(西博義委員・140回-衆- 文教委員会-12号・平成9年5月16日) 〔答弁〕大学が再任を妨げない任期制を採用する場合に、(中略)現に任期を 定めて任用されている教員の円滑な異動という観点にも十分配慮して、次の任 用についての手続を開始する時期を定める必要がある(中略)。文部省といた しまして、具体的に任期満了時から逆算して何カ月前が望ましいというような モデルケースを示すことはなかなか難しゅうございます。ただ、一般的に、現 在でも教員の異動により空きポストが生じることが明らかな場合、教員の任用 に当たって慎重な審査を行う必要から、余り空白期間が生ずることのないよう にということで、例えば一年というように相当期間の余裕を持って募集選考が 行われているところでございます。したがいまして、任期制の導入に当たって も、こうした余裕を持ったスケジュールで後任補充のための募集選考が行われ るものと考えられるわけでございますが、(中略)そのマーケットの規模であ りますとか分野の特性等によりましてどの程度の期間を設定するのか異なるこ ととなるので、最終的にはそれぞれの大学において適切な判断がなされるとい うように期待している(中略)。また、現に任期つきポストにおります教員の 審査でございますけれども、例えば、後任補充のための選考の時期が任期満了 の一年前ということでございましたならば、五年任期の四年目の終わりに行わ れるというような姿を思い浮かべることができようかと思うわけでございます。 こうした場合、教員の選考につきましては採用の場合と同じ機関によって行わ れるわけでございますので、例えば国公立大学の場合におきましては、教特法 の規定によりまして、教授会の議に基づき学長ということでございます。した がいまして、実質的には教授会で教員の業績評価が行われるということでござ います。(中略)後任の教員の任用に当たりまして慎重な審査を行う必要から、 余り空白期間が生ずることのないように後任補充のための募集選考が行われる ことは十分考えられるわけでございます。したがいまして、任期つきポストに おる教員につきまして、任期終了前に選考審査を行いまして、審査にパスすれ ば任期中に再任の内定を出すということは大いに考えられることであろう。 (雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-12号・平成9年5月16日) (iii)法の第三条について質問いたします。ここで言う大学管理機関とは、国公立 大学については「評議会の議に基づき学長」という意味と思いますが、問題は、 「評議会の議に基づき」の意味でありまして、この意味は、任期に関する規則 の内容すべて評議会の承認を得ていることを意味するのか、あるいはこの規則 の内容について評議会の一任を学長が取りつけておればそれで事足りるという 意味か。(馳浩委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕「評議会の議に基づき」としておりますのは、任期制を導入するに当 たりまして、それぞれの大学におきまして任期制が必要であるか否かは全学的 な見地から評議会において十分検討されるべき事柄であるということでござい まして、学長といたしましては、教員の任期に関する規則の内容を定めるに当 たりまして、当該大学の評議会の決議に拘束されるというように考えるわけで ございます。したがいまして、教員の任期に関する規則の内容につきまして、 今お尋ねの評議会の一任を学長が取りつけておくことで足りる、一切学長に任 せてくれ、あるいは評議会の方も学長に任せて結構だというような扱いという ことは、全学的な見地から任期制の導入云々について審議、決定するという評 議会の位置づけあるいは立法の趣旨ということからいたしまして適切ではなか ろう(中略)。なお、現在、教特法上、評議会の議に基づき学長が行うことと されている事項(中略)につきまして、各大学におきましてはそれぞれ評議会 において審議、決定が行われておるわけでございまして、国立大学のうちでこ れらの事項について学長に一任というような運用を行っておるところは、私ど もとして聞いておらないところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-参- 文教委員会-14号・平成9年5月29日) (iv)第三条の二項で規則変更権を大学に認めておりますが、この変更権について 二つ質問いたします。時間的に、いつでも一定の手続さえ踏めば変更は可能な のでしょうか。二番目に、内容的な変更の限界はないのでしょうか。(馳浩委 員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕任期を定めたポストの新たな設置でありますとか、あるいは任期の長 さを変更するのでありますとか、あるいは再任の取り扱いの変更などを行うと きには任期に関する規則を変更することが必要でございまして、一定の手続を 踏むことによりまして規則の内容を変更することは可能であります。ただ、例 えば、既に三年の任期ということで現に任期つきのポストに教員がおる場合に、 途中で五年に改めるんだとかというようなことはいかがかというようなことで ございますし、逆に、五年と定めておって三年と変更するということも、これ はおかしなことでございます。(雨宮忠政府委員 140回-参-文教委員会-14号 平成9年5月29日) 十 労働組合との関係、団体交渉 【論点】文部省は、国立大学の場合、任期制の導入の可否、どういう形での導 入をするかについては、任命権の行使に密接不可分な事柄であり、職員団体と の交渉の対象にならないいわゆる管理運営事項に該当するが、任期を定めて任 用される教員の給与や勤務時間等の勤務条件は交渉の対象になり得る、また、 私立大学の場合、任期制導入は、一般に教員の労働条件にかかわる事柄であり、 団体交渉事項に該当すると答弁した。 (i)それぞれの大学に労働組合の職員団体があると思うんですが、その任期制の 導入ということは、これは管理運営事項だから大学の管理機関等、学長とか理 事長とかいう責任者によって決めていくのであって、労働組合、職員団体は一 切関係ないというわけにいかぬ(中略)。やはり賃金の問題、(中略)労働条 件、あるいは年金の問題いろんなことにかかわってきます。したがって、地公 法上の職員団体との交渉ということをそれぞれの大学が踏まえ、また文部省も、 労働条件、賃金、今言ったようなことは労働組合との交渉事項であるという認 識をきちっと持ってもらって、そして各大学を御指導いただきたいし、私学の 方も、これは公務員じゃありませんから、任期制という問題を労働協約という 中にきちっとうたい込んでやるということができなければ、これは労働組合の 存在そのものが否定されるということになるわけで、国公立と私学の職員団体、 労働組合の関係を間違いのないように、ここのところをきちっとすることが、 困難なくこのことが正常に導入され、そして所期の効果を上げると、私はこう 思う。(本岡昭次委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日) 〔答弁〕国立大学やあるいは公立大学におきましては、(中略)それぞれ国家 公務員法それから地方公務員法がかかってくるわけでございます。任期制の導 入をするとかしないとか、あるいはどういう形での導入をするとかというよう な事柄につきましては、任期を定めた任用という任命権の行使に密接不可分な 事柄でございまして、職員団体との交渉の対象にならないいわゆる管理運営事 項というものに該当するというように考えるわけでございます。ただし、任期 を定めて任用される教員の勤務条件、例えば給与でありますとか勤務時間等に つきましては交渉の対象になり得るというように考えておるところでございま す。以上が国公立大学の教員の場合でございますが、他方、私立大学の場合で ございます。私立大学におきまして任期制を導入することにつきましては、一 般に教員の労働条件にかかわる事柄だというように考えられるわけでございま して、団体交渉事項に該当するというように考えるわけでございます。労使交 渉後に労働協約を締結するかどうかということにつきましては、これは労使当 事者間で決定されるべき事柄である。(雨宮忠政府委員・140回-参-文教委員 会-14号・平成9年5月29日) (ii)管理運営事項だからそこの職員団体が一切かかわってはいかぬということで はない(中略)。要するに、団体交渉等で最後に確認したり協約を結んだり合 意したりという性格のものではないけれども、少なくとも任期制導入について その相談にあずかる(中略)対象であるとかというものでなければいかぬ(中 略)。だから、そこのところを一切口出しするなとか、(中略)こういう関係 は私はよくないというように思いますので、文部省の考え方として、管理運営 事項は管理運営事項として結構です、しかし、今言いましたように相談、意見 を聞く、そういう最後の判こを押すとか協約を結ぶということでない相談事の ようなことをやる立場に職員団体はあってもいいということはひとつお認めい ただきたいと。(本岡昭次委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29 日) 〔答弁〕こういう基本的な人事制度がどう円滑に機能するかということがやは り大きな問題であるわけでございます。したがって、教員の勤務条件に密接に かかわる事柄も出てくるということもございますし、任期制を円滑に実施する という観点に立って、交渉というような形に必ずしもこだわらなくても、日ご ろからいろんな形での大学当局と職員団体あるいは職員との意思疎通を図って おくということはそれなりに重要なことではないか。(雨宮忠政府委員・140 回-参-文教委員会-14号・平成9年5月29日)