To: giin
Cc: kd
Subject: 国立大学全体投票中間集計報告
From: TSUJISHITA Toru 
Date: Mon, 12 May 2003 00:44:15 +0900

                                            平成15年5月12日(月)

     国立大学法人法案の賛否を問う国立大学全体投票中間集計報告


                                        国立大学レファレンダム準備会 

  国会議員各位

  前略

 現在衆議院で審議中の国立大学法人関連法案は、国立学校設置法を廃止し、
そこに規定されている、国立大学、大学共同利用機関、国立高等専門学校等の、
研究教育にかかわる機関をすべて独立行政法人に変えるものですが、これらの
機関の研究と教育の現場に居る教職員と学生の意思が問われたことがありませ
ん。そこで、国立大学教官有志(呼掛け人[1])で、国立大学法人法案の賛否
を問う国立大学全体投票を実施しております。第一期(4月28日〜5月7日)
の投票結果をご報告いたします。

  最初に電子投票システムについて簡単にご説明します。投票者が、投票サイ
トで大学名のメールアドレスを入力すると、確認番号(10桁ほどのランダム
な数字)をメールで送付し、その番号を使った投票だけ受けます。この方法に
より、投票者を、国立大学と大学共同利用機関のメールアドレスを持つ者に制
限するとともに重複投票や偽装投票を防止しています。なお、メールアドレス
は復号化できない暗号化をして記録しており、投票者の個人情報は完全に保護
されています。

  第一期(4月28日から5月7日)の投票者総数は2930名、内訳は、教
官2391名、事務官94名、技官174名、非常勤職員60名、大学院生1
37名、学部学生74名です。参加可能な機関は、国立大学と大学共同利用機
関で、101機関からの参加がありました。各機関の投票数は別表[2]の通り
です。投票システムの詳細と投票結果は http://ac-net.org/rfr をご覧くだ
さい。

--投票結果-------------------------------------------------------------

国立大学法人法案に賛成 総計:  79票(2.7%)
(内訳:教官  51票、事務官 5票、技官  3票、非常勤職員 5票、
	大学院生 12票、学生 3票)

国立大学法人法案に反対 総計:2851票(97.3%)
(内訳:教官2340票、事務官89票、技官171票、非常勤職員55票、
	大学院生125票、学生71票)

----------------------------------------------------------------------

■賛成理由(複数回答)■

59名: 法案には問題があるが、国立大学の抜本的改革の契機となるから。

37名: 大学・部局・教職員間の生き残り競争が、研究と教育の質を向上させ、
        大学の国際競争力を高めるから。

19名: 企業的経営となり教育研究活動の選択肢が広がるから。

17名: 非公務員化により教員の兼業が自由になるから。

13名: その他


■反対理由(複数回答)■

2416名:大学が行政と企業に従属し、憲法と教育基本法が保障する、研究
	と教育の独立性と公共性が損なわれるから。

1232名:強力なトップダウンの経営組織は、構成員の意欲と自律的活動を
	阻害するから。

 932名:学費値上げと大学統廃合により、憲法が保障する教育の機会均等が
	損なわれるから。

 672名:大学・部局・教職員間の生き残り競争は、大学の使命遂行に必要な
	信頼関係を広汎に損うから。

 251名:その他
----------------------------------------------------------------------

  特筆すべきは、賛成理由では「法案には問題があるが、国立大学の抜本的改
革の契機となるから。」が一番多かったことです。これは、法人化の賛否にか
かわらず、法案には問題がある、と大学関係者が認識していることを推測させ
るものです.また,現在の国立大学のありように批判的であると思われる学生
層にも法人法案反対の声が多く観られる点は,是非認識していただきたいと思
います.               

  以上の結果をどのように判断されるかはむろん、議員のみなさまに委ねられ
ております。しかし、ご指摘しておきたいことは、法案の検討過程では、学長・
所長・校長等の関係機関の運営者はある程度は参画してきましたが、2月28
日の法案公表以前も、それ以後も、法案で改変される165機関で教育と研究
の諸活動に直接関与している教職員および学生の意見を調査する試みは、公的
にもマスメディアによっても、一切行われていません。大学の性格を根本から
変更する制度変更を、教育と研究の現場の判断を無視して断行しても成功する
見込みは少いことが懸念されます。

  わたしたちは、法案の是非の判断に不可欠な情報がないままに国会審議が行
なわれていることを危惧し、必要な情報の欠如を少しでも補うことを目的にこ
の全体投票を実施しています。法案への反対が97%という第一期の結果は、
国立大学にいる者の大半が、この法案が大学を駄目にするという危惧を抱いて
いる可能性を示しています。そうした状況で「法」を採決し,大学「改革」を
進めようとしたところで,成功しないのは目に見えています.大学の未来に明
るい展望を全く感じることが出来ない,そんな「法」の下で大学人が日夜教育・
研究に励むとは考えられません.もしも、わたしたちの「調査」を信用されな
いのでしたら、ぜひ、教職員全員が匿名で判断を呈示できる機会を作っていた
だきたいと思います。「匿名」が必要なのは、実名で率直な意見表明ができな
い状況におかれている国立大学教職員が非常に多いからです。

  衆議院文部科学委員会で来週にも採決される可能性がある、ということも聞
いております。第一期の投票から、大学関係者の大半が法案を危惧しているこ
とが推測されますので、採決前に、その理由について十分な調査をし、慎重な
立法を国民から委任されている国会議員としての使命を全うされますことをお
願い致します。


国立大学レファレンダム準備会 
実施責任者 辻下 徹
北海道大学 大学院理学研究科教授

連絡先:辻下 徹
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
北海道大学 大学院理学研究科 数学専攻
tel/fax 011-706-3823, tel: 080-5715-3963

      ----------------------------------------

追伸

  なお、5月10日より、第二期の投票に入りました。第二期は、公立大学・
私立大学に通勤通学する方など、教育と研究に関連する方はだれでも参加でき
るようにしました。同時に第一期の国立大学全体投票の継続としての集計も行
なっています。中途結果は投票サイトで誰でも見るとができます。

  対象を拡大しましたのはつぎの理由によります。55国立高等専門学校は、
国立大学法人法案と一括審議されている独立行政法人国立高等専門学校機構法
案で独立行政法人化されます。また、ご存知のように、公立大学の独立行政法
人化の前提となる地方独立行政法人制度の法案がまもなく国会で審議されよう
としています。さらに、有馬元文相の持論であった「私立大学の独立行政法人
化」も、私学への国庫補助金増額が議論される場合には現実化する可能性もあ
ります。国立大学の独立行政法人化(別名:国立大学法人化)は、これらの変
革を加速することは明らかですので、この意味で、高等教育と学術研究に関係
するすべての人が当該法案の当事者といっても誇張ではありません。以上の理
由で、国立大学法人法案の「全体投票」への参加を学セクターに属するもの全
体に呼びかけることに致しました。

  投票は6月13日まで行ないますが、適切な時期に中間報告をまた行なう予
定です。

----------------------------------------------------------------------
[1] 呼びかけ人

池内 了(名古屋大学)、上野 純包(都城工業高等専門学校)、落合豊行
(奈良女子大学)、加古冨志雄(奈良女子大学)、 神沼公三郎(北海道大
学)、小森 陽一(東京大学)、近藤義臣(群馬大学)、佐藤清隆(広島大学)、
白井浩子(岡山大学)、鈴木恒雄(金沢大学)、田端博邦(東京大学)、辻下 
徹(北海道大学)、仲尾善勝(琉球大学)、永井 實(琉球大学)、中村富美
男(北海道大学)、服部昭仁(北海道大学)、藤原 昇(奈良女子大学)、藤
本喬雄(香川大学)、古川 泰(高知大学)、山口二郎(北海道大学)、安野
正明(広島大学)、和田 昌昭(奈良女子大学)、渡辺信久(北海道大学)、
渡辺勇一(新潟大学)

----------------------------------------------------------------------
[2] 機関別投票者数
旭川医科大学,6                  
小樽商科大学,19			
帯広畜産大学,6			
北見工業大学,5			
北海道大学,316			
北海道教育大学,46		
室蘭工業大学,56			
弘前大学,40			
岩手大学,50			
東北大学,76			
宮城教育大学,1			
秋田大学,20			
山形大学,80			
茨城大学,24			
福島大学,2 			
筑波大学,25			
図書館情報大学,0		
宇都宮大学,11			
群馬大学,41			
埼玉大学,24			
千葉大学,44			
お茶の水女子大学,7		
政策研究大学院大学,0		
電気通信大学,3			
東京大学,135			
東京医科歯科大学,4		
東京外国語大学,12		
東京学芸大学,5			
東京芸術大学,3			
東京工業大学,66			
東京商船大学,4			
東京水産大学,2			
東京農工大学,9			
一橋大学,5			
総合研究大学院大学,0		
高エネルギー物理学研究所,3	
国立極地研究所,0		
国立天文台,2			
統計数理研究所,0		
国立遺伝学研究所,0		
岡崎国立共同研究機構,0		
核融合科学研究所,0		
国際日本文化研究センター,0	
国立民族学博物館,0		
横浜国立大学,22			
上越教育大学,5			
長岡技術科学大学,20		
新潟大学,166			
富山大学,44			
富山医科薬科大学,6		
北陸先端科学技術大学院大学,2	
金沢大学,151			
福井大学,12			
福井医科大学,7			
山梨大学,26                     
山梨医科大学,3                  
信州大学,34                     
岐阜大学,71                     
静岡大学,24                     
浜松医科大学,7                  
愛知教育大学,18                 
豊橋技術科学大学,5              
名古屋大学,110                  
名古屋工業大学,39               
三重大学,22                     
滋賀大学,16                     
滋賀医科大学,2                  
京都大学,113                    
京都教育大学,21                 
京都工芸繊維大学,7              
大阪大学,109                    
大阪外国語大学,4                
大阪教育大学,12                 
神戸大学,56                     
神戸商船大学,4                  
兵庫教育大学,1                  
奈良先端科学技術大学院大学,0    
奈良教育大学,75                 
奈良女子大学,50                 
和歌山大学,11                   
鳥取大学,14                     
島根大学,61                     
島根医科大学,1                  
岡山大学,73                     
広島大学,75                     
山口大学,35                     
徳島大学,25                     
鳴門教育大学,1                  
香川大学,18                     
香川医科大学,2                  
愛媛大学,16                     
高知大学,23                     
高知医科大学,1                  
九州大学,184                    
九州芸術工科大学,5              
九州工業大学,34                 
福岡教育大学,9                  
佐賀大学,102                    
佐賀医科大学,1                  
長崎大学,23                     
熊本大学,75                     
大分大学,28                     
大分医科大学,0                  
宮崎大学,25                     
宮崎医科大学,3                  
鹿児島大学,103                  
鹿屋体育大学,1                  
琉球大学,64