p112『現在の日本では、大学に勤めていても、顧客主義の浸透を実感せざる を得ない。魅力ある大学づくりのための改革が必要だと叫ばれるが、要するに、 学生というお客をどれだけ集めるかだけが問題なのである。そのためには、受 験生のニーズに応えることが何よりも優先される。』『しかし、高校生の好みによって中身を"改革"してゆくというやり方は、テレビ のバラエティ番組と何ら変わるところはない。顧客の満足こそが第一で、テレ ビは視聴者を集めればよいし、大学は学生を多く集めればよい。(中略)だか らこそ、国立大学でさえ法人化され、各大学は自由競争で"経済的に" 生き残れ ということになるのである。大学の生き残りとは、教育や研究ではなく、商店 と同様、経営なのだ。大学側に与えられた選択肢は、研究・教育機関として絶 命するか、商業施設として生き残るかの二つに一つである。』
p113『今日では、多くの受験生や大学生もまた、自分たちがお客様であることを当然 だと感じているようだ。楽しい科目を用意しろ、立派なリクレーション施設を 作れ、就職は大学で世話をしろ、それならカネを払ってやるぞ、という次第で ある。もちろん、それらの要求自体は、否定されるべきものではない。しかし 問題は、そんな要求しか寄せられないことだ。豊富な研究業績を持つ先生の下 で懸命に真理を探究したいといった要求は、ほとんど皆無なのである。かくし て、顧客の要求がないサービスーー真理の探究、文化の涵養ーーは、軽視され る一方になる。』
p114『ともあれ、顧客主義が蔓延する状況では、極端な話、レジャーセンターと職業 訓練校と就職斡旋所、これを三つ足せば、大学は"生き残る"ことができる。』