次のメッセージの修正キー:
メッセージ148:
Subject: [kinugasa-forum:0287] 総長選評価
Date: Thu, 26 Oct 2006 07:42:48 +0900

衣笠フォーラム通信(2006年10月25日)

今回の総長選任についての評価
  ー理事長の理事長による理事長のための総長選任ー

はじめに

  去る10月15日(日)に行われた総長選任のための「投票」が行われ
  ました。いろいろな場所において総長選任のことは話題になってい
  るかと思われます。私たちも今回の「選任」について話し合ってき
  ました。本来はもう少し早く、その「評価」をお伝えすればよかっ
  たのですが、各方面の人からの情報を得なければなりませんでした
  ので、お伝えする時期が今になってしまいました。いま、改めて確
  認できることは、総長選任の全過程が「理事長の理事長による理事
  長のための選任」であったということです。以下、そのことを示し
  ていきましょう。もちろん、以下の評価は、1つの評価であり、他の
  評価もありうるでしょう。


?、「総長選任規程」の問題点

  今回、実施された総長選任の「規程」は2004年秋に、上田 寛法学
  部前学部長(当時)を委員長とする総長選任に関する委員会の報告
  書を、各教授会の反対にもかかわらず、理事会が重要な部分につい
  てはほとんど修正を行うことなく強行的に決めたものです。

  この「規程」の問題点は少なくとも4点あります。第1は推薦委員会
  の構成です。「旧総長選挙規程」(第14条2項)において、推薦委員
  会は、理事、評議員だけでなく、各学部から教員1名(教授会で決
  定)、専任職員3人、2つの大学それぞれから学生1名も参加して構成
  されていました。ところが、今回の「規程」では理事長自ら委員に
  なったうえで、他の7名の委員を推薦し(第7条4項)、推薦委員は一
  人の学外の「有識者」を除いて、6名が理事でなければならなくなり
  ました。つまり、理事でない教職員、学生・院生は推薦委員から完
  全にはずされたのです。

  新たな「規程」の第2番目の問題点は、実際に投票する「選考委員」
  の人数です。「旧規程」(第23条)では、理事(教員理事を除く)
  13人、評議員(学外)14人、立命館大学の教員は各学部から12人、
  専任職員36人、研究科は各1 人、学部生は各5人、APUの学生は各学
  部4人、付属生徒各校2人などとなっていました。それが、新「規程」
  では理事8人(理事長を含む)、評議員16人(2人増加)、教員は各
  学部から2名と大幅減、職員13人(大幅減)、各学部生1人(5人から
  1人へ)、各研究科1人、父母3人、卒業生4人へと変わりました。明
  らかに、現場の構成員である教員、学生、職員の選考委員が大幅に
  減らされています。

  第3には、当選人は、「旧規程」では有効投票数の過半を得なければ
  ならなかったものが、「新規程」では、過半数という規程がなくな
  り、少数第1位でよくなりました(第16条3項)。広範な支持を得な
  くても、総長になれるという制度がよいものでしょうか。

  第4には、「旧規程」にあった選挙管理委員会の規程が新「規程」に
  はなく、選挙管理は総務課が行うとなっており(第22条)、公正が
  保たれるか疑義が残るものになりました。

  以上のように、新「規程」は、新「規程」自身が謳っている「学園
  の構成員の意向を反映して、候補者の推薦と選考を行う」(第2条)
  という精神から程遠いものになっており、「平和と民主主義」「自
  由と清新」の教学理念に背くものになっていると言わざるを得ませ
  ん。


?、「規程」および「総長選任実施要綱」運用における問題点

  「規程」では各区からの選考委員の選出は各区分の定めるところに
  よるとあります。教員の区分ではほとんどが投票等によって選ばれ
  ていますが、職員職場では「半数以上は部課の課題や学園像・総長
  像の議論がなく部会議で選出され、業務会議では報告のみとなって
  います」(「ゆにおん」No85)とあるように、必ずしも、
  「(現場が)納得できるやり方を前提にする」(7月19日の業協での
  理事長発言)ことになっていません。ましてや、理事会、評議委員
  会、父母、卒業生の区分ではどのように選考委員が選出されたのか
  不明です。「規程」「総長選任実施要綱」に不備があるといえましょ
  う。どのように選出されたのか今からでも説明される必要があるで
  しょう。

  さらに、推薦委員会の立ち上げにも疑義が残ります。7月21日(金)
  に理事会がありましたが、この理事会では推薦委員会は立ち上げら
  れませんでした。総長選任に関心を持っている人たちや学部長たち
  は、推薦委員会はこの理事会で立ち上げられるものと考えていまし
  た。というのは、通常では理事会は夏休みの8月、9月には行なわれ
  ないからで、理事会の議案書にも次回の理事会は10月27 日(金)と
  記されていました。本年5月の理事会で定められた「総長選任実施
  要綱」によると、10月2日(月)に推薦委員会は総長候補者を公開す
  るとあります。そこで、9月29日(金)に臨時に理事会が開催され推
  薦委員会が立ち上げられました。推薦委員会は、立ち上げされるや
  否や理事会直後に開催され、短時間のうちに川口、久岡、平田の3人
  の総長候補者が決められたのです。これでは、推薦委員会が実質的
  な推薦活動を行なう余裕などあるはずがありません。理事長主導の
  「推薦」が行われ、他の推薦委員は理事長の意向にOKを与えるだ
  けの役割しか果たせなかったものと思われます。7月21日ではなく、
  9月29日に推薦委員会が立ち上げられたのも、実質的な推薦の議論を
  させない目論見からではなかったのではないでしょうか。「総長選
  任実施要綱」の「専制的な運用」といわざるを得ません。

  以上のような経緯で3名の候補者が「推薦」されたことから、多くの
  教員、学生、職員が推したい候補者が推薦される余地は乏しくなり、
  「規程」第2条の「学園構成員の意向を反映して、候補者の推薦・・
  を行う」という精神からは遠いものになってしまいました。

?、「学園政策」の一致は存在せず

  いわゆる「長期計画」案に関連して、常任理事会の「中期計画の答
  申をうけて」(06年5月7日)には「総長選任は、政策で争う選挙で
  はなく、・・確定した本中期計画が、新総長の業務執行の基本とな
  る」と記されていました。周知のように、「中期計画」案に対して
  は前期中に厳しい批判があがりました。しかし、常任理事会は「総
  長選任」を目前とした9月27日の常任理事会で「中期計画」を「制定」
  したと強弁するに至りました。教授会や、組合等が前期中に提出し
  た管理運営や財政の部分に対する修正提案はほとんど取り上げられ
  ていません。9月27日以後の教授会においても、いくつかの教授会で
  は依然として異論、反対論が出ました。組合も「ゆにおん」(No
  85)にあるように、継続論議を求めています。したがって、「中
  期計画」は全学において「合意」されたものにはなりきっていると
  はいえないものです。

  今回の総長選挙はこのような「中期計画」案を巡る意見の違いが残っ
  た状況で行なわれたものでした。したがって、「学園政策の一致を
  前提とした総長選任」とはならず、「総長選任は、政策で争う選挙
  ではなく、・・確定した本中期計画が、新総長の業務執行の基本と
  なる」と言えるものではありませんでした。のちに見るように、現
  場の構成員が今回の投票で示した結果は、以上のことを反映したも
  のと言えましょう。


?、公開質問状??なぜ理事長が答えるのか?? 

  組合や学友会、院協が提出した3人の総長候補者に提出した「公開
  質問状」に対して、なぜか理事長が文書を寄せましたが、これは
  多くの人を驚かせ、異様な感じを与えることになりました。理事
  長は候補者が「公開討論」へ参加したり、「公開質問状」へ個別
  に回答を寄せることは選任制度の趣旨に馴染まないと述べていま
  す。その理由は、選任制度が候補者としての本人の了解を得ない
  制度である、また、「政策の一致を前提にした総長選任制度」で
  あるというものです。

  この2つの理由は、ともに根拠をもたないものです。たとえ、総長候
  補者が事前に推薦の了解を得ていなかった(?そういう人も3人の中
  にはいるでしょうが)としても、本人がその気になれば、公開討論
  会に参加すること、「公開質問状」に答えることは候補者各自の自
  由であります。さらに、理事長の文書の末尾で、理事長は3人の候補
  者に「総長候補者に推薦されて」という統一の表題で答えることを
  「お願いしました」と回答の内容まで強要しています。

  これらは理事長の越権行為であり、不当といわざるを得ません。ま
  た、「学園政策の一致」は、前に見たように今回の総長選任におい
  てはなかったのです。したがって、この理由は成り立ちません。

  さらに、3人候補者へも苦言を述べざるを得ないでしょう。3人の候
  補者は、総長候補者としての自らの見解表明の自由を奪われたこと
  に対して、理事長に意見を述べなかったのでしょうか。候補者の
  「主体性」はどうなったのでしょうか。選考委員は、このような3人
  の候補者への疑問をもったまま投票行動を行なったものと考えられ
  ます。


?、投票結果について

  投票結果については早い時期に伝わり、多くの学部においては教授
  会へ報告され、多くの教員、職員はすでに知っています。投票総数
  95(一人が病欠)、有効投票70、うち、川口候補62、平田候
  補5、久岡候補3、無効票25でした。

  第1に特徴的なことは、川口候補に票が集中したことです。これには
  多くの学園関係者が驚いています。きわめて不自然です。事前にか
  なりの「選挙運動」があったものと推測されます。現に、少なくな
  い選考委員のところには「川口候補で」という電話攻勢、その他の
  働きかけがあったと伝わってきています。

  第2の特徴は「無効票」が25にものぼったことです(無効の中には
  「白票」が入っています??実施要綱)。これは、3人の候補者の中
  には推したい候補者がいないということ、理事長主導の「選任」へ
  の疑問の意思が込められていたと考えられます。したがって、単な
  る無効票というよりも、明確な意思表示を行なう票であったと考え
  るべきです。

  第3の特徴は第1の特徴の裏返しですが、第2位、第3位の候補への投
  票があわせても10にも満たなかったことです。それだけ、川口候
  補を推す人々の激しい「選挙運動」があったものと推測されます。
  しかし、結果は「不自然さ」「異様さ」が目立つものとなりました。
  また、「5票、3票しか出ない候補を推薦した推薦委員会はなんだっ
  たのか」という推薦委員会の「責任」も出てくるでしょう。さらに、
  川口候補を推す人々の激しい「選挙運動」に従った選考委員の「無
  責任さ」も問われるべきでしょう。

  第4の特徴は、川口候補を推す人々の激しい「選挙運動」に従った
  選考委員の大半が、学園外に籍を置く選考委員であったと推測され
  ることです。

  10月12日に行なわれた組合、学友会、院協、3者のフォーラムなど様々
  な論議から立命館大学の選考委員、学生、院生の投票行動等をあわ
  せて考慮しますと、川口候補への票の集中の「中心」は理事、評議
  委員、父母、卒業生などの外部に籍を置く選考委員と、学園内のい
  くつかのパートの選考委員であったと思われます。おそらく、学園
  内の構成員である選考委員に限定しますと投票結果は、川口候補に
  投票した票数と、無効票も含め川口候補に投票しなかった票数は拮
  抗するでしょうし、さらに、立命館大学の選考委員に限定しますと、
  後者が前者を上回るものと考えられます。このことのもつ意義はき
  わめて大きいものと思われます。「選任」の全過程を「主宰」した
  理事長と選ばれた川口候補は、このことをどのように受け止めるの
  でしょうか。

おわりに

  以上に見てきたように、今回の「選任」の全過程が、「選任規程」
  第2条の「学園構成員の意向を反映して、候補者の推薦と選考を行
  なう」(第2条)という精神から完全に逸脱しているということが
  明らかです。それに、そもそも、「選任規程」それ自体が、前回の
  「規程」から大きく後退したものであり(推薦委員の全メンバーを
  理事長が推薦するという「規程」(第7条)、選考委員の数を限定
  した条項(第8条)等)、今後、「選任規程」の改革が速やかに行
  なわれる必要があります。

  最後に、総長が教学の最高責任者として、いろいろな「圧力」を排
  しながら、責任を果たしていくのでしょうか、注目していきましょ
  う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
衣笠フォーラムメーリングリストへ参加する方法:所属・氏名・電
子アドレスを owner-kinugasa-forum@freeml.com に送付。