(転載)立命館学園広報VOL.37━2006.10.30━
川口清史次期総長・就任決定記者会見の概要
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「連携」の充実、世界と繋がる、世界に発信する学園へ
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これから立命館が私学として発展していくための一番大きな鍵は「社会との連携」
だと考えています。教育、研究において行政、企業そして国際社会とどのように
連携をしていくか、大学の教育・研究を資源として、地域の活性化にどのように
貢献をしていくかが重要になってきます。高いレベルで社会と連携し、コラボ
レーションを行うことが学園の発展に繋がっていくと考えています。
私のこれまでの立命館での経験で一番大きなものは、調査企画室長時代に携わっ
たびわこ・くさつキャンパス(BKC)の開学です。BKCは行政・企業・市民・大学
による新しい連携のモデルでありました。当初のプランが見事に実現し、開学後
も街は発展し続けており、大学と地域の連携の成功例だと自負しています。
そしてこの経験をもとに国際的なレベルで展開したのが2000年に開学した立命館
アジア太平洋大学(APU)です。
またもう一つ私が携わった取り組みとしてカナダのブリティッシュコロンビア大学
とのジョイントプログラムの実施があります。これは単に留学プログラムを作ると
いうことではなく、北米の有力大学とコラボレーションにより新しい教育モデルを
作ることが目的でした。このプログラムはこれまでにカナダの国際教育賞に2回輝
いています。
このような取り組みをさらに広げて、国内だけでなく海外の大学や政府・企業・
地域社会と新しいプロジェクト、コラボレーションを進めることが今後ますます
求められるでしょう。
人材開発の分野でも立命館は、国際協力機構(JICA)との連携で行っている中国
内陸部の大学管理運営幹部特別研修などをはじめ、アジア太平洋地域を中心に
多様な国際協力事業を行っています。立命館が世界的な連携の中心となって様々な
教育・研究資源を結び付け、世界レベルの人材開発をさらに推進していかなくて
はなりません。
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大学院をコアに、学部教育と研究の連携と質の向上を目指す
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立命館は歴史的伝統的に学生を大事にし、元気な学生を社会に輩出してきました。
私学立命館がこれだけ多くの学生を抱えながら有為な人材を輩出してきた背景に
は学生の力を伸ばそうと様々な取り組みを行ってきたことが挙げられます。
学生同士が学びあう「ピア・エデュケーション」は他にはない立命館の特色ある
活動ですが、これをもっと高いレベルで拡げていきたいと思っています。
そのためには大学院を強化し、大学院を中心に学部教育と研究を連携させ、その
質を高めていくことが必要です。私学は財政的な要因もあり、大学院の運営モデ
ルがまだ確立されていません。学園内外との連携を強化していくことで、新しい
立命館モデルの構築を目指していきたいと考えています。
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総合学園としての立命館モデルを発信していく
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私立総合学園立命館は、小学校から大学院までの一貫教育の仕組みを整えました。
2006年4月に小学校が開校しましたが、半年にして既に、実践を通じて日本の
初等教育に対して新しい提言を発信し続けています。
私の専門は非営利組織論でもありますが、なぜ非営利組織が重要かというと、
公共的な分野で民間の先進性を発揮した先駆的役割を果たすことができるから
です。小学校であれ大学であれそれぞれの分野での教育・研究の実践を社会的に
発信していくことが重要です。小学校はそれを見事に果たしています。
それぞれの学校が自由な立場で、自らの専門性と社会的なニーズの中から先駆的な
発信ができるような学園にならなければなりません。
一貫教育においても連携によってその教育研究内容を成熟させることはもちろん、
それぞれの学校が相互に連携しながら互いを高めあう流れを強化していくことで
真の一貫教育をつくりあげ、総合学園立命館の経験と実践を、私学化が進む世界に
対して立命館モデルとして発信していくことができると考えています。
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教育・研究は未来をつくる仕事
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ここまで私は「連携」という言葉を強調してきましたが、これは主体的な力が
強くないとできないことです。日本のNPOの問題の一つに、それぞれの力が弱く、
行政に頼り切ってしまい本当の意味での連携ができないことが挙げられます。
私立学園が連携のコアになるためには、それ自身が教育・研究や財政など様々な
面で強くならなくてはいけないのです。
今日お話したことは、2010年を見据えた戦略目標を定めた「中期計画」を私流に
表現したものです。衣笠キャンパスの正門をくぐると故末川博名誉総長の
“未来を信じ、未来に生きる”という言葉が目に入ります。
常に未来志向でいきたい。教育・研究は未来をつくる仕事です。
立命館の総長に就任し、その一翼を担うことに強い責任を感じています。