立命館学園の教学分野の最高責任者たる総長を選出する「選考委員
会」が、本年10月15日に行われ、川口清史教授が新総長に選出
されました。
今回の総長選出のプロセスには、わが学園の民主主義的運営の観点
からみて、看過できない問題点をはらんでいたと考えます。
第1に、今次の総長選任にあたっては、昨年7月に改定されていた
総長選任規程が適用されましたが、この規程は、総長候補者推薦委
員会のメンバーから教授会代表や学生自治会代表を排除しただけで
なく、その人選と運営を学園の経営部門の長たる理事長に委ねたも
のでした。また選考委員の数を260名余から96名に減じただけ
でなく、選考委員中の学外者の比率を格段に高めるなど、これまで
の立命館民主主義の到達点を否定するものでした。
第2に、選考委員の民主的な選出をめぐる問題です。立命館大学教
員を代表する選考委員は公正な選挙で選出されたものの、職員から
の選考委員の選出にあたっては、管理職からなる「部会議」が専決
するなど、職場の合意にもとづかない選出が頻発したといわれてい
ます。
第3に、総長候補者推薦委員会をめぐる問題です。候補者推薦委員が
選任されたのは、投票日のわずか16日前の理事会においてでした。
候補者推薦委員会は、委員が選任された当日に1回だけ、ごく短時間
開かれただけで、3人の総長候補者を推薦する決定を行ないました。
候補者推薦委員会には、広い視野に立って推薦すべき人を探りあて
る活動が期待されていましたが、そのような活動が行われた形跡は
ありません。
第4に、このような状況のもと、学友会・連合院生協議会・教職員組
合が3人の総長候補者に公開質問状を提出し、所信表明を求めたとこ
ろ、「候補者個人 が『公開討論会』に応じたり、『公開質問状』に
回答をすることはふさわしくない」という「回答」を理事長が寄せ
るという奇妙な事態がおこりました。その結果、各候補者は「公開
質問状」には回答せず、「総長候補者に推薦されて」という短文を
提示されただけでした。学友会・連合院生協議会・教職員組合は、
10月12日に「学園創造フォーラム」 を開催し、3人の候補者の出席
を求めましたが、どの候補者も出席されませんでした。こうして選
考委員は、総長候補者を評価するに足る十分な材料を持たないまま
選考せざるをえない事態となりました。
第5に、10月15日に開かれた総長選考委員会では、95名の選考委員が
投票を行いましたが、推薦委員会の推薦した3候補すべてを不信任
とする「無効票」が25票投じられた一方、あきらかに候補者による
ものとは見られない「選挙運動」の結果、第2位・第3位の候補者に
は、5票と3票しか投じられないという異常な結果となりました。総
長選任規程第2条には、「学園の構成員の意向を反映して、候補者
の推薦と選考を行い、その結果を踏まえ理事会が決定する」とされ
ています。今回の総長選任プロセスを主導したのは理事長であり、
「学園の構成員の意向」を正確に反映させるという重大な責務があっ
たはずです。この点に照らしたばあい、理事長のこの間の行動には
大きな問題があり、このような異常な投票結果を招来したといわざ
るをえません。またこの間の事態は、「総長選任規程」自体にも大
きな問題があることを示したと考えます。
以上のような経緯をふまえて、新総長に就任される川口清史先生に
たいして、私たち62名は、つぎの3点を要請します。
(1)理事会は、今後の学園創造の基本となるべき文書として「中
期計画」を提案しましたが、ほとんどの教授会において反対ないし
危惧の念が表明されています。それにもかかわらず、理事会は、教
授会や学生自治組織の合意を得る努力を途中で放棄し、「自らの責
任で中期計画を決定した」と宣言するにいたりました。新総長にお
かれては「理事会の決定事項だから従え」として、これを押し付け
る立場をとらず、全学の民主的合意を踏まえた学園創造の大道を歩
んでいただきたい。
(2)今回の総長選挙のなかで噴出した問題点を正しく総括し、
「学園構成員の意向を反映」させ、民主主義を回復する方向で、総
長選任制度のありかたを改革していただきたい。
(3)昨年来理事会は、何の合理的な説明もできないままに、教職
員の臨時給与の1か月分カットを強行しました。新総長におかれては、
教職員の勤労生活条件にも配慮されるなど、教職員との信頼関係を
取り戻すうえで積極的な役割を果たしていただきたい。
末筆ながら、このような方向での新総長のご健闘・ご健勝を期待す
るとともに、私どもと意見を交換する場をもっていただきたいと希
望します。
発起人
赤堀次郎、荒井正治、池田研介、小笠原 宏、小野文一郎、里見 潤、
吉田真(理工学部)、金丸裕一、佐藤卓利、田中 宏、藤岡 惇(経済学部)、
三浦正行(経営学部)、小堀真裕(法学部)、
朝尾幸次郎(文学部)、 山下高行(産業社会学部)、
賛同者《転載時氏名略》
理工学部 11名
経済学部 13名
経営学部 8名
法学部 1名
産業社会学部 4名
文学部 2名
国際関係学部 3名
政策科学部 1名
独立大学院 1名
立命館高校 1名
連絡先 藤岡 惇 (経済学部教授)