立命館学園で働く方々へ
「総長選挙の民主化を新総長に要請する有志声明」【1】が次期総
長に送付されました。正月明けに賛同者数をもっと増やして第2版
としての最新版を新総長に届ける予定とのことです。立命館学園
総長の選任プロセスで、立命館大学の教員と学生から選出された
選考委員のほぼ全員が白紙を投じた事(*)は、立命館学園総長が立
命館大学長に自動的に就任するシステムの妥当性に疑念を抱かせ
ます。この声明の中で、総長選任制度のありかたの改革を求める
要望項目(2)がありますが、この要望は立命館大学長の決め方の再
検討も同時に要請していると言えるでしょう。要望書に賛同され
る方は世話人の藤岡先生( fujioka at ec.ritsumei.ac.jp )まで、
所属・氏名・職種と、できればメッセージを添えて、賛同の意を
お伝えください。(*) http://ac-net.org/rtm/No/147
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野路だより[2006.12.06 水]で岐阜市立高校移管についての記事を
紹介しましたが、その際に、守山市立の高校の立命館への移管が
地元だけでなく全国の高校の先生の間に立命館への反感を醸成し
たという趣旨の「噂」を紹介し、前回の立命志願者減少の原因が
不明なまま岐阜市立高移管計画を推進することの危惧を書きまし
たが、これに関連して、立命館の初等中等教育関係者の方々と話
しをする機会があり【2】、現状についての認識を深めると同時に、
立命館についての私自身の懸念を以下のように明確にすることが
できました。
立命館は、他の私大にはなかった経営力と全構成員の尽力により
大発展し「勝ち組」に入っています。しかし、BKC、APU、守山な
どの新しい学園展開に不可欠であった膨大な公的支援に対する感
謝と畏怖の念を組織としてどこまで保持できているか、仮に保持
できているとしても広く伝えることができているか、心もとない
ように感じます。
感謝の念は言葉と行動とを通して表わさなければならず、一方だ
けでは伝わらないと思います。行動で示す方が遥かに労苦は大き
いとはいえ、行動だけでは感謝の念は伝わらない。立命館という
組織は、行動で感謝の念を伝える困難な方法に力を入れていると
思いますが、それで十分と考えている節があります。しかし、そ
れだけでは立命館から直接に恩恵を受ける人にしか感謝の念は伝
わらず、遠くから立命館を見る人ーーつまり大多数の人ーーは立
命館の象徴的な言動を通して立命館のイメージを形成します。朱
雀キャンパスの威容や、学内外の公的な場での立命関係者の種々
の発言は、立命館という組織が「感謝の念」ではなく「勝者の傲
り」に浸っていると感じさせる効果があるようです。
守山高校設立への過程でも、立命の財務状況からすれば平安女学
院のキャンパス跡地を市から購入することは可能だったように思
います。「40 億円の節約」は「利得に抜目ない立命館」というイ
メージを定着させたダメージと見合う価値があるとは思えません。
このような評判が定着した状況では、立命館関係者がいくら努力
しても、利得を視野に置いた努力としてしか見てもらえず、現場
の士気は萎えます。
計測可能な指標の改善による改革については立命館は熱心で有能
ですが、いまや、計測不能な指標の改善を志向しなければ前進で
きない地点に来ているように感じます。まず「損得に抜目ない大
学」というイメージを払拭することは、どの方向への発展を目指
すにしても立命館にとり解決しなければならない課題のように感
じます。それなしには、教学上の具体的改善をどのように積み重
ねても、上記イメージにより無効となり、志願者の多くが立命を
第一志望とするような大学にはなりそうもないーー多くの教員は
そう感じているのではないでしょうか。
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【1】総長選挙の民主化を新総長に要請する有志声明
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《 世話人の藤岡先生からのコメント
「11月以来、標記の声明案にたいする賛同署名を募ってきましたが、
62名の教員の署名を得ましたので、先週末に、まもなく新総長に
就任される川口清史教授あてに、第一次分として、添付のような
声明を送付しました。私たちの要望につき、意見交換の場をもっ
ていただけるよう、こんご新総長には要望していきたいと考えま
す。」 》
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《 以下 => http://ac-net.org/rtm/No/188
(id:rtm, passwd:rtm) 》
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【2】立命館の初等中等教育部関係者との意見交換(12/26)
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野路だより[2006.12.06 水]のコメントについての発行人の補足説明
の概要:
(A1) 「噂」に関連する状況の一つ:滋賀県では今年4月に、県立高
校学区が全県二区から一区に移行した。この政策が提案された
2003 年春以来、一学区化は県立高校序列化を進め、生徒の公立離
れや他県への流出をもたらし、やがては定員割れする高校の廃校
にいたり、滋賀県の公教育を衰退させることを危惧した先生・父
母を中心に広汎な反対運動が展開され、3割程の自治体が反対決議
をしたほどの広がりを見せた。
その危惧を証明するかのように、2005 年4月に守山女子高移管計
画が報道され、一学区化反対運動にかかわった人達は一様に立命
館に悪い印象を持った。また、一学区化で間接的に「得」をする
私立関係者から県の有力者への働きかけが当初からあったと考え
られていて、特にBKC移転を通し県行政および県政界との種々のイ
ンタフェースを持つ立命館に不信の念がもたれた。こういった不
信感を決定的にしたのは、かなり複雑なプロセスを通し立命館が
結果的に40 億円を越える「利益」を得たことであった。
(A2) 前回の立命志願者数の減少に関連するデータの確認
代々木ゼミナールサイトの「2006 年度私立大学入試志願者数減少
20大学」(*3)では立命の4614減は、専修(6539 減)・中央
(5550減)についで第三位となっている。一方、「2006年度私立
大学入試志願者数増加上位20大学」(*4)では、関西5私大がランク
インしている(3位:関西学院8336 増、6位:同志社4740増、7位:
甲南4183増、9位:関西3927増、12位:龍谷2983増。)
(*3)http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/data/06/shutsugan_s/data_4.html
(*4)http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/data/06/shutsugan_s/data_3.html
立命館志願者数の地域分布(*5)は全国一様に減少し、北海道・東
北は328減で1988、関東は580減で4925、北陸甲信越は360減で
5582、東海は105減で16783、近畿は2120減で43528、中国は675減
で7643、四国は30増で4515、九州・沖縄は534減で7648となってい
る。関西では、滋賀県が458 増で6214、京都府は215増で8503、大
阪は1387減で16820、兵庫は993減で7214、奈良は139減で3471、和
歌山は274減で1306。
(*5)http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/annai/profile/data/pdf/2
守山女子高移管にまつわる経緯(A1)は高校教職員組合の横の繋が
りを通して全国の先生方に詳しい資料とともに紹介され、また、
いくつかのウェブサイト(*6)では事実経過や諸文書が公開されて
いて、守山高校移管にかかわる諸問題は他人事ではないとして全
国的に広く認識され、また、守山女子高移管の中での立命館の
「40 数億の利得」は「抜目ない立命館」というイメージを広め、
立命志願者数の全国的に一律な減少と、関西私大の志願者増加の
一つの因子となっている可能性は否定できない。
(*6)http://university.main.jp/blog3/moriyamajoshi.htm
もちろん、中期入学政策検討委員会(*7)が指摘しているように、
志願者募集のノウハウが多くの大学に広がったことは大きな原因
の一つと思うし、また、学園内で種々の紛争が生起していること
が学外にも伝わっていることの影響も否定はできないであろう。
一方、(*7)でも指摘されているように、志願者数のよりは実志願
者数を、実志願者数よりは立命館第一志望志願者数の増加に主目
標をシフトしていくことは重要。
(*7)2006年度中期入学政策検討委員会答申(2006 年7月)
以上に関連して初等中等教育関係者から以下のような説明がありました。
(B1) 守山高校の状況
最近では、12 月5日の「滋賀県県民環境学習のつどい」では9名の
生徒がポスターセッションで「サイエンスディスカバリープログ
ラム」の成果を発表(*8)し、12月24日の「もりやまいち」で守山
高校の音楽部が演奏(*9)し市民から感謝されている。これに限ら
ず、市民と生徒の交流や、市民がサイエンスと触れる場を設けて
いくなど、立命館は地元市民への感謝の念を種々の努力を通して
表わしており、市民からは立命館の誠意は理解されつつあり次第
に感謝されつつある。
(*8)http://www.ritsumei.ac.jp/mrc/news/061207/news.HTM
(*9)http://www.ritsumei.ac.jp/mrc/news/061225-2/news.HTM
(B2) 滋賀県の教育界の状況
滋賀県は、公立尊重私立軽視の風土が異様に強く、その中で、公
立の再編をもたらす全県一学区制への反対運動が公立高校の間で
拡がったことは自然なことであるが、一学区化は全国的な流れで
あり、たとえば、北海道立高校では石狩地区(札幌市を含む地域)
が平成21 年から一学区になる。
私立軽視の教育風土の中で、来年4月開始の守山中高一貫教育の最
初の中学入試への志願者は定員(160名)の約2倍に達した。これは、
滋賀県における立命館の教学活動を通し、私学でありながら滋賀
県民から一定の評価を得ていることを象徴していると考えている。
(B3) 中高大一環教育について
守山女子高の移管で立命館は利益を得た、と言われるそうだが、
守山高校のキャンパスにするために「寄付額」以上を支出を既に
している。このことから明らかなように「金儲け」のために守山
女子高校移管を進めたわけではない。
岐阜市立高校移管の件は、岐阜市の「教育ブランド化」政策の一
環として、市から立命館へ打診があり、それに応じて移管計画案
を提示したが、市議会では立命館からの提案時点以前の経緯が説
明されていない。また「白紙撤回」のように報道されているが、
説明不足により一部議員が反発しただけで岐阜市との交渉は継続
している。
なお、岐阜市立高校の場合は、先生は全員が県から出向している
ので移管後の処遇についての懸念はないことは強調したい。
附属校を拡大する学園政策は、学園財務の安定だけが目的ではな
い。初等中等教育部は中高大一貫教育の持つ教学的意義の大きさ
への信念の下で当該政策を進めている。
序に書いたことは以上の説明を聞いて思ったことで、その趣旨は伝
えました。
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