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「就業規則」「懲戒手続規程」に関する理工学部の意見

2007.11.20 学科長会議

「就業規則」および「懲戒手続規程」については,11月6日の理工学 部学科長会議で各学系および学科会議での議論を要請した。併せて, 11月13日の理工学部教授会(全体)において両規程について理 工学部長から報告を行い,討議を行った。理工学部での代表的な意 見を纏めると下記のようになる。

1.理工学部教授会としての全体意見

 ・今、この時点で規程を変更しなければならない根拠が希薄である。

 ・内容を検討するための時間が短すぎる。もっと時間をかけて検討を行うべき
である。

 ・仮に、現在の就業規則に法令上問題があるのであれば、その部分のみを修正
すればよい。

 ・今回の「就業規則」新規制定案における解雇や懲戒の規定の変更内容や新規
に制定される「懲戒手続規程」が、教職員にとっては現状より不利な内容となる
ことから、教授会として、今回の規程の新規制定案については反対をする。


2.教授会での意見および各学系・学科での意見まとめ

(1)「就業規則」について

<就業規則のもつ考え方について>

・現在の就業規則では、第4条「職員は職制に則り、相協力して業務に当らなけ
ればならない。」となっているが、改正案では、就業規則第第46条の2「教職
員は、この規則に定めるほか、所属長の指示命令に従い、誠実に職務に専念する
とともに職場の規律を維持しなければならない。」となっている。

・この第46条の2は所属長の指示命令に盲従する義務があるように思える。こ
れでは、これまでの全構成員の協力を基盤とし、それぞれの立場から適切に判断
し行動するという自主性を重視した学園運営を前提とした規程から、上司の命令
を徹底させるようなトップダウン型の規程への変更である。理事会への信頼感を
失った教学現場において、このような変更は認められるはずがない。 <就業規
則の分類について>

・期限を定めない教員・職員の就業規則を1つの規程でくくれるものではない。
分けた方が明確になる。

<就業規則第18条「解雇」について>

・今回の改正案の「解雇」にはその解雇に至るプロセス(手続きや細則)が全く
定められていない。しかし、とりわけ以下の2つの号については、これに「該当」
するかどうかは客観的に判断できない。またこれらの2つの号に該当するため解
雇ということは、事実上の「懲戒解雇」ともいえるので、解雇判断に至るプロセ
スが明記されなければ乱用される危険がある。

  6号:勤務状況または勤務成績が、著しく不良で改善の見込みがないと認め
られたと   き

  7号:職務遂行能力または能率が、著しく劣り改善の見込みが認められない
とき  その解雇判断に至るプロセスについては、教員の場合、当然ながら、教
授会および大学協議会での審議に基づかなければならない。

・他各号についての意見

  1号:職務に堪えないとはどのような障害か

  2号:大学において解雇事由に「経営上」を入れるのはどういう意味か?こ
のことを理由にし、乱用される恐れがある

  5号:なぜ15日以上なのか、その根拠は?


<就業規則第25条「裁量労働制」について>

・本来は、教員に対して裁量労働制を導入することについて、きちんと提起し、
その議論をすべきである。今回は就業規則改正の1つの項目としてしか提案され
ておらず、その制度内容(法令上の位置づけや具体的な勤務管理方法など)も不
充分な説明しかされていない。これでは、どのように制度が変わるのかが議論で
きない。

(多くの教員は「裁量労働制」に関しては知識がないし、説明している学部長も
その制度に関する理解が不十分なまま説明している)

・なぜ、裁量労働制にしなければいけないのか、今まで通りの運用を規定に盛り
込むことではどこに支障があるのか、それを具体的に明確に述べていただきたい。
 また、そもそも「業務の中心が研究」でない教員を裁量労働の対象にしてもよ
いのか?

・「裁量労働制」は、労使協定(法第38条の3)で定めた「勤務時間」を労働
したとみなす制度であるが、これは研究を自分の自由な時間や場所でできる制度
ではなく、実際の労働時間が何時間であろうと協定で定めた「勤務時間」みなさ
れる制度である。したがって、運用にあたっては、実際の労働時間が「勤務時間」
に相当するかどうかを評価することが通例であり、そうなれば、当然勤務評価の
問題が発生する。この「評価」が数値評価になれば、立命館は、独立行政法人研
究所の理研や産総研と同じようなところになってしまう。また、裁量労働制であっ
ても、時間外労働(みなし労働時間を超えた場合)や深夜労働は発生するので、
その管理するためには、結局勤務管理をきちんと行う必要があるので、労働時間
を教員の裁量に委ねる必要があるかどうか疑問がある。


<就業規則第50条「懲戒」>

・1号、2号はあいまいで、適用の仕方によっては非常に危険である。

そもそも上司からの指示命令が必ず正しいということは有り得ない。


(2)懲戒手続について

<全体として>

・そもそも役員に対しては、懲戒がなく(寄付行為の第11条のみ)、その手続
規程がないのはなぜか。

・1984年に定められた申し合わせ(手続きモデル)に較べて、今回の手続規
程はどこが改善されたのか。

 少なくとも、前回の申し合わせ(手続きモデル)は、教授会が主体であった。
今回理事会(理事長)が主体となっており、教授会が軽んじられているように思
える。

 ・従来と同様に教員の懲戒・解雇は、あくまで教員の人事に責任をもつ教授会、
大学協議会の権限で行うべきである。

 ・審査委員会の委員の過半数を理事長が選任するのは問題である。これは理事
長の独断専行とその批判者を「懲戒」により排除することになりかねず、大学の
民主的運営を危険にさらすものである。また、これでは現場(教授会)の意見が
反映できない。

 ・審査委員会を理事会のもとにおくのではなく、教授会のもとにおくべきであ
る。

 ・審査委員会の議決要件は過半数ではなく、「懲戒」という重大案件であるこ
とから、より高い要件とすべきである。

 ・また、前回の申し合わせ(手続きモデル)に較べると、手続がかなり簡略化
されている。懲戒手続の制定理由には、「懲戒処分という重大案件を扱う手続き
については、公正・透明性の確保が・・・」とある。それならば、前回の申し合
わせ(手続きモデル)に即した具体的な内容を盛り込むべきである。

 ・今回の懲戒手続規程の制定により、教授会規程を変更する必要があるという
が、どのように変更するのか?現行規程の成立要件や議決要件との関係はどうな
るのか?

以 上

各学系および学科から出された意見は、下記のようである。


数理科学科の意見集約

「就業規則」に関して

(全体的な意見)

これまでに、種々の「必要性」を理由になされた学則等の改定を通して理事長の
権限が劇的に強化された経験を私達はしてきた。私学法改定を理由になされえた
寄付行為改定で理事長が巨大な権限を掌握し、学園規模拡大を理由になされた総
長選任規程改定では理事長が総長を事実上指名できるようになったことは記憶に
新しい。2度あることは3度あるものである。理事会への信頼感が根底から失わ
れたままの教学現場では、今回の就業規則改定も、また、理事長や幹部職員の権
限拡大を意図したものである推測せざるを得ない。事実、改正案は、理事長に教
員懲戒権を付与する点や、懲戒事由に「職務命令違反」を加え、これまでになかっ
た「命令遵守」を職員の義務に課している。この意図は、全構成員の「協力」を
基盤とした現行の就業規則と比較すると歴然としている:

現就業規則 第4条 

 職員は職制に則り、相協力して業務に当らなければならない。

就業規則案:服務の義務 第46条の2

 教職員は、この規則に定めるほか、所属長の指示命令に従い、 誠実に職務に
専念するとともに職場の規律を維持しなければならない。

幹部職員に見識があり適切な指示をすれば誰でも喜んで従うものである。幹部職
員が現場にそぐわない不合理な計画をたて実施を指示するだけで、現場の批判や
提言に耳を貸さない場合、軍隊ではなく、教育と研究を行う組織である以上、そ
れに従う事を拒否することは、教育と研究の現場が機能していることの証しであ
ろう。

職務命令の徹底を重視することが象徴するように、今回提案の就業規則案の根本
にある発想は、学園の全構成員が、それぞれの立場で適切に判断し行動する、と
いう自主性に基づくこれまでの学園運営の原則を破壊するもので、立命館そのも
のを破壊するとさえいえるものである。以前の「ガバナンス文書」で目標と定め
た「トップダウン体制」の基礎固めの意図が歴然としており、理事会への信頼感
を失った教学現場において、このような変更は認められるはずがない。

具体的には以下の点を指摘したい。

【1】就業規則の大幅な変更の根拠が希薄である。理由に掲げられた個々の事項
に応じて必要な最小限の修正にとどめるべきである。「多様な雇用形態」により
「体系の一貫性がなくなっている」としても、それは当然なことで、個々の雇用
形態毎に就業規則を作ればよいだけである。

【2】第25条に、教員の勤務形態を裁量労働制とするとあるが、今まで通りで
は何か支障があるのか。今までの就業規則の教員についての部分は理事会側にとっ
て支障となる点があるのであればそれを具体的に明確に述べていただきたい。

    なお、裁量労働制は、研究を自分の自由な時間や場所でできる制度、と勘違
    いしている教員が多いが、「勤務時間」は大学での勤務時間しかカウントし
    ない以上、家でいつも研究しているとしても、大学での滞在時間がかりに週
    20時間であるとすれば、20時間で「40時間」相当の労働をしているこ
    とを証明するために、当然のことながら、評価の問題が発生してくる。「評
    価」というと数値評価になる現状を考えると、これは、立命館を 独立行政法
    人研究所の理研や産総研と同じようなところにしてしまうことになろう。

【3】教員の懲戒・解雇はあくまで教授会、あるいは、大学協議会の権限で行う
ことであって、この点を実質的に変えることは不適切である。

解雇についての18条では、「法人は、教職員が、次の各号のいずれかに該当す
るときは、解雇することができる」と書いてあって、そのプロセスに触れていな
い。特に、解雇の事由としてかかげている次の二項は「該当する」かどうかの判
断は容易ではないので、判断のプロセスが明記されていなければ危険である。


 (6)勤務状況または勤務成績が、著しく不良で改善の見込みがないと認めら
れたとき

 (7)職務遂行能力または能率が、著しく劣り改善の見込みが認められないと
き

また、教員については、当然ながら、教授会および大学協議会での審議に基づか
なければならない。 

(以上)


物理科学科の意見集約

(1) 就業規則第50条:

  <審査委員会>:「委員の過半数を理事長が選任する」ことになっているのは
問題。理事長の独断専行とその批判者を排除することの正当性が保障されており、
大学の民主的運営を危険にさらるものである。

(2)教授会規定は、どのように定めるのか明らかにして欲しい。

   それには、教授会の了承が保障されているのか?

(3)理事会に対する教職員組合の組織率の悪い立命館大において、過半数代表
はどのように組織されるのか?

*懲戒手続き規程第3条4項には、

 <審査委員会>:委員の過半数を理事長が選任することになっており、理事長は、
懲戒手続き案第二条が保証する懲戒権を活用し、理事長を批判するような「問題
教員」を威嚇し沈黙させ、時には懲戒手続きを発動させ、独断専行が可能となる。

  教員組織と理事会の間には緊張感あるバランスがなければ健全な大学運営は あ
  り得ない。上記規程はこのバランスを根底から崩す提案であり、のびやか な教
  育研究の発展に大学の最大の価値を見出す教員の立場からは到底うけいれ難い。

  教員組織の成員の懲戒手続きは、教員人事に責任を持つ教員組織に委ねる事が
  理にかなっており健全である。現行のように、教員懲戒は教員組織に委ねるこ
  とを核とし、さらに恣意的な懲戒事由を排除し、教職員を萎縮させることのな
  いような健全な懲戒規程案を練り直すべきであり、その作業に手間を惜しんで
  はならない。極端なことを言えば現行の懲戒規程を改定する必要性はない とさ
  えいえる。

 なお、東大、京大、阪大等の多くの社会的評価の高い大学では教員の懲戒手 続
きは(立命の大学協議会に相当する)「評議会」に委ねられており、総長が教員
懲戒の実質的権限をもつような大学は見当たらない。

  理事長が実質的な教員懲戒権をもつような大学には、社会的にも問題を起こす
  大学が多いことに留意すべきである。

以上です。



応用化学系の意見

1) 教員と職員は同じ規定でくくれるものではない。分けた方が明確になる。

2) 懲戒処分に関して審査委員会に理事長が含まれるのは問題あり。

3) 第18条(解雇)は読んでいて恐ろしい。

(1) わずかの期間健康障害になったときも即解雇か。

(2) 「経営上」を入れるのはどういう意味か。

(5) なぜ15日なのか。

(6)、(7) 著しく不良、著しく劣り、はどの程度でそう判断するのか不明。

4)今回の文書はどういう経緯で出てきたか。従来の教授会自治を無視している。

5)第59条 これでいいのか。第2条によると理事は教職員ではない。そういう人
たち(理事会)が規則の改廃を勝手にできるのか。

6)こういう規則は、組合との合意のもと進められるべきである。

7)第54条 健康診断を拒むと解雇されるのか。

8)裁量労働制になると超過勤務手当はどうなるのか。

以上

電子システム系の意見

1.(意見)「教職員懲戒手続き規程」では、懲戒に対して理事会決定が権限を
もつことに反対します。教授会で審議をして、懲戒の可否を判断すべきであり、
現場の教授会の意見を反映させるように要求します。

2.(意見)「教職員懲戒手続き規程」における審査委員会について、第2条に
は「審査委員会を常任理事会の下におく」と明記されています。しかし、各学部
教授会と審査委員会の関係については何も言及されていません。「当該の学部に
審査委員会をおく」と明記するように要求します。

3.(意見)審査委員会の議決要件は過半数とされていますが、重大案件である
ことに鑑みて、より高い議決水準が必要と考えます。

4.(意見)学科長会議では、処分を決定する教員の負担が重いことが理由とし
て挙げられたとのことですが、重大案件である以上、厳密・厳格に規定せざるを
得ないと考えます。昨年度の教授会では、投票の手続きを省略しましたが、それ
は、十分に審議を尽くし教授会の大多数を説得しきった結果と解すべきであって、
4分の3以上の同意が不要であったと解すべきではないと思います。

5.(意見)教授会の懲戒手続に関しては、従来、「手続モデル(理事会申し合
わせ)」により「教授会は、構成員の4分の3以上の出席、出席者の3分の2以
上の同意により処分を決議する。ただし、懲戒解雇の場合は、出席者の4分の3
以上の同意を要する。」と具体的に規定されています。しかし、今回提案された
「懲戒手続規程(案)」では答申案について教授会の審議を経た後に(要約)と
著しく簡単な記載になっています。配布資料の「制定の必要性について」(37〜
38ページ)によれば、専任教職員の懲戒手続に関して規程を制定する理由とし
て「懲戒処分という重大案件を扱う手続きについては、公正・透明性の確保が要
求されることから明文の規程にもとづき適正に行われるべきである。(要約)」
と説明されており、それ以外の理由は記載されていません。そうであるならば、
現行の上記理事会申し合わせに即した具体的内容を盛り込むべきです。

6.(質問)有期雇用教員の懲戒については、昨年度、規程がないため、契約書
に基づく一般解雇という形式をとって処分が行われ、教授会では報告事項として
扱われました。今回の提案では、「有期雇用教員就業規則(案)」に懲戒の規程
が盛り込まれ、「教職員懲戒手続規程を準用する」(第34条)とされています。
この「準用」には教授会の審議を経ることも含まれているのでしょうか?

7.「教職員就業規則」、「教職員懲戒手続き規程」の制定に関して、内容を検
討するための時間が短すぎます。今後の立命館で働く人々に直接大きな影響を与
える内容ですから、時間をしっかりとかけて検討を行うべきです。

8.理事会がこのような強権を確保するためには、まずは諸々の点で現場の教職
員からの信頼回復をまずは図ってから提案すべきでしょう。

以 上


機械システム系の意見集約

 「学校法人立命館教職員就業規則」、「学校法人立命館有期雇用教職員就業規則」
 および「学校法人立命館有期雇用職員就業規則」の新規制定について、以下の意
 見が出された.

 [1] 学校法人立命館教職員就業規則(案)第2章人事 第4節 退職および解雇
   解雇第18条
     (2)経営上または業務上やむをえない事由によるとき
     (6)勤務状況または勤務成績が、著しく不良で改善の見込みがないと認め
           られたとき
     (7)職務遂行能力または能率が、著しく劣り改善の見込みがないと認めら
           れたとき

 以上の表現は非常に曖昧であり、やむをえない事由とは具体的には何か、誰が何
 をどう認めるのか、内容の客観的な判断が困難である.特に(2)と(7)は本人の
 怠惰によらず、法人の事情で一方的に解雇できる含みを有する可能性があり運用
 によっては危険である.(2)(7)の記載の判断は非常に慎重にするべきである.

 [2] 学校法人立命館教職員就業規則(案)第3章勤務等 第1節 勤務等 裁量労
 働制第25条大幅に教員の裁量にゆだねるとあるが、大幅とはどのような職務範囲
 なのか曖昧である.逆にこの規定に入らない職務とはどのような労働であるのか
 疑問が残る.

 [3] 学校法人立命館教職員就業規則(案)第3章勤務等 第6節 出退勤 第40条
 教職員は始業および終業時刻を厳守し、所定の出退勤記録をしなければならない
 とあるが、裁量労働制第25条に記載した教員の裁量労働と終業時刻の厳守と出退
 勤は互いに整合性が取れていない.矛盾を抱えており内容に疑問である.

 [4] 学校法人立命館教職員就業規則(案)第5章 服務規律 服務の原則 第46
 条教職員は所属長の指示命令に従い、誠実に職務に専念するとともに職場の規律
 を維持しなければならないとあるが、所属長の指示命令に盲従する義務があるよ
 うにも捉えることもできるので表現が曖昧である.

 [5] 学校法人立命館教職員就業規則(案)第6章 表彰および懲戒 第2節 懲戒
  懲戒第50条(1)職務上の指示命令もしくは義務または職場規律に違反したとき
 (2)故意または過失により、法人の社会的信用を傷つけ、または名誉を毀損し、
 もしくは損害を及ぼしたときとあるが、この2項目も曖昧さが残り、適用の範囲
 の解釈によっては危険性を伴う.

 総括:全体的に文章が曖昧で、教職員の規範を拡大解釈した法で拘束する方向に
 偏り適用を誤ると、教職員の雇用にとって非常に危険な項目や表現がある.法律
 を厳しくするのではなく、教職員の人心を掌握して統治してゆくことが最良の知
 恵であるように考える.

以 上