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メッセージ47:
野路便り Letter from Noji (06-05-30 Tue)
Date: Tue, 30 May 2006 00:42:48 +0900

立命館学園で働く方々へ
Dear colleagues,


昨年来の「新しい民主主義」に憤っているかたが作った小噺で
す。許可を得て転載します。


  ******                          ******
  ******   『中期計画』長屋問答   ******
  ******                          ******

             改訂版 2006.5.29

  ****  第1幕 *****

  熊「『中期計画』ってのが出てきたんだってなぁ」

  八「あたぼうよ。」

  熊「何で今頃、このど忙しいのに。」

  八「お上のお約束じゃねぇか。『ガバナンス文書』てぇのを
      覚えてるだろうが。そこに『21世紀立命館学園におけ
      る責務と役割』にもとつづいて作るって書いているじゃ
      ねぇか。」

  熊「で、その『21世紀立命館学園における責務と役割』てぇ
      奴はどこにあるでぇ。」

  八「そいっつあ、『立命館憲章』て名前を変えて今議論中じゃ
      ねぇか。」

  熊「じゃぁ何かい。まで決まってもいねぇもんにもとつづい
      てるてのかい。」

  八「そう、もとづいていらっしゃるんだよ。」

  ご隠居「八もそそっかしねぇ。『立命館憲章』と名前を変え
      たのは、『立命館学園の責務と役割』だよ。」

  八「同じもんじゃねぇんですかい。」

  ご隠居「どこにそんなことを書いてある。勝手に思いこんじゃ
      いけないよ。 文章というものは一文一句丁寧に読まね
      ばいけないよ。」

  熊「で、そのお約束を書いてある『ガバナンス文書』てのは、
      もう決まったんですかい。」

  ご隠居「いや、『第二次ガバナンス文書』では、"今後の提起
      を踏まえて総合的に議論していく" ということだから、
      店晒しのまんまだな。 ただなぁ、その文書では、全学
      討議を "『21世紀立命館学園の責務と役割』・『中期
      計画』を機軸にした学園運営(とあと2つ)が、共通認識
      となった。" とまとめているんだよ。」

  八「どこの教授会も "そんなこと共通認識にした覚えはない
      " てぇんで、むくれてしまったってぇ奴ですね。」

  熊「ごちゃごちゃしてよう分わからん。こういうことですか
      い。お上は "こうやりてぇ" てのを『ガバナンス文書』
      てぇのに書いて下々に示した。だけど、下々がごちゃご
      ちゃ言うので、その文書ってぇのはまだ宙ぶらりんのま
      まだ。 だけど、お上は、下々がごちゃごちゃ言ってる
      のは別のことであり、"『21世紀立命館学園の責務と役
      割』・『中期計画』を機軸にした学園運営" というやり
      方は、下々も分かった" と思って...」

  八「勝手に思うなってんだ。」

  熊「俺が思ってんじゃねえよ。そう思ったお上は、まだ影も
      形もない『21世紀立命館学園の責務と役割』にもとづ
      いて『中期計画』をお示し遊ばしたってとこか。ご隠居
      さん、ちょっとその文書貸してくんなせえ。あれ、『2
      1世紀立命館学園の責務と役割』となってるよ。まだ影
      も形もないてぇのは間違いで、『立命館憲章』として、
      今わいわいがやがやのさ中だよな。今議論中でしかない
      ものにもとづいちゃうのかい。おっとと、2つの文書の
      間は、中黒だよ。それじゃ、もとづかなくて同時並行で
      もいいってことか。成る程ねぇ。」

  ご隠居「熊も文章を読む力が少しは身に付いたようだな。」

  熊「どうだ八、分かったか。」

  八「分かるはずねぇだろう。」


  ****  第2幕 *****

  熊「八っぁん。ケイパビリティって何だ。」

  八「競馬のビリケツがどうしたって。」

  熊「そうじゃねえゃ。ケイパビリティって何だってきいてん
      だよ。」

  八「俺が知ってるはずなかろう。ご隠居さんにでもきけ。」

  熊「ご隠居。ケイパビリティって何ですかい。」

  ご隠居「さぁ何んだろなぁ。ちょっとそこに英語の辞書があ
      るから取っておくれよ。c-a-p-a-b-i-l-i-t-y と。能力
      とか手腕ということらしいな。」

  熊「じゃ、"ヒューマン・ケイパビリティの向上" てぇのは、
      人間の能力の向上てぇことで、教育てぇのはそういうこ
      とだから、今更何で APU だけがわざわざそれを目指さにゃ
      何ねぇんです。」

  八「APU にゃそれが欠けてたってことじゃないのかい。」

  熊「横から茶々をいれるんじゃねぇや。それにしても、ご隠
      居が辞書を引かにゃならんのを、立命の先生や職員さん
      はすらすら分かるんですかい。」

  ご隠居「そりゃ、国際化だもんなぁ。」

  八「でもさぁ、『ガバナンス文書』のときにゃ、理工学部の
      教授会じゃぁ、"ステークホルダー" ってなんだか分かり
      ません言うてたで。」

  ご隠居「理工学部は一番国際化が遅れてんだろう。多分。」

  八「ついでにご隠居、スクラップ・アンド・ビルドてぇのは
      何なんです。」

  ご隠居「今あるものをぶっつぶして、新しいものを作ろうっ
      てことだよ。」

  熊「もったいねぇ。そんなに廃棄物を作っちゃ地球温暖化に
      も悪いんじゃありませんかい。」

  ご隠居「学部や学科をつぶそうというのであった、建物まで
      つぶすわけではないから、地球温暖化にゃ関係ないよ。
      受験生が集まらない学部や学科はすぐに定員を減らした
      り、廃止しましょう、てことだよ。」

  八「そんなことできるんですかねぇ。」

  ご隠居「もうやってるな。映像学部を作るのに、産業社会学
      部や理工学部・電子情報光工学科、情報理工学部から定
      員を持っていってるんだ。数理科学科もあわや定員減と
      いうところだったんだから。」

  八「そりゃ大変だ。受験生の少ない学科の先生はみんなで手
      分けしたて、受験生集めに必死に走り回らなならんです
      ね。」

  ご隠居「どうして。」

  八「何でって言われても。当然だよなぁ、熊。」

  ご隠居「そこはよくしたもので、先生達には、"あなたの首は
      切りません。誰かが辞めたとき、補充しないだけです。
      " と囁いているので、先生達の身は安泰なんだから。」

  熊「そんなことしたら先生がだぶついてしまうじゃねぇのか
      い。」

  ご隠居「若くて優秀な先生は他大学から引き抜かれるだろう
      し。もう一つ奥の手があってな、先生達にゃ、これから
      業績評価というものを作っていって、それを突きつけて
      肩をチョンチョンと叩けばいいのさ。」

  八「じゃ、無能な先生は首を切られ、優秀な先生は引き抜か
      れ、中途半端な先生だけが残るという寸法ですか。ほん
      まかねぇ。そんなことしていて日本の学問はどうなるん
      ですかねぇ。」

  熊「八、お前変なこと言うじゃないか。何で一私学の立命館
      が日本の学問の心配をしなきゃなんねんだよ。」

  八「だって、研究力強化って言ってんだぞ。」

  ご隠居「だから、COE のとれる研究分野に "集中" しようと
      してるんだ。」

  八「そんで、一旦縮小した学科にまた日が当たってきても、
      もうそれを担える先生はいねーよな。」

  熊「しんぺーいらねーよ。日本にゃ、おまんまにありつけねぇ
      博士様がゴロゴロいなさるんだから。」


  ****  第3幕 *****

  八「ご隠居、一寸小耳に挟んだんですけど、昔の第三次長期
      計画ってぇのは、2年もかけて、教授会と何度も往復し
      て作られたんですってね。」

  熊「てやんでぇ。日進月歩のご時世だい。そんなのんびりし
      たこたやってられるかい。明治は遠くなったんだい。」

  ご隠居「明治じゃないよ、昭和の終わり頃だよ。」

  八「なんぼ、日進月歩のご時世でも、こんなに急いで作って
      実効性があるんですかねぇ。」

  熊「またまた、八は変なことを言う。実効性って何んだ。」

  八「みんなが "よし、これでやろう" という気になるかどう
      かということだ。」

  熊「誰のやる気だい。そんなのいらねえよ。」

  八、ご隠居「!?」

  熊「あっしもね、小耳に挟んだんですけどね、第三次長期計
      画ってぇのにはお足の話がきっちり書いてあったって言
      うじゃないですか。今度のには "お金は外から取ってき
      ましょう" としか書いてありませんよ。まあ、"エベレス
      トに登りたい" というお上の夢は書いてありますがね、
      登頂する人にはどんなトレーニングが必要なのか、裏方
      の兵站基地はどこに作るのか、それにはどれだけのお金
      がいるのか、何も書いてませんよ。夢のお話。だから、
      誰のやる気も要らないの。」

  ご隠居「だけど、登頂する人には、既にトレーニングを積ん
      だ人を呼んでくるって書いてあるぞ。」

  熊「そう、あわよくば、国のお金を貰って、"立命館大学" の
      ゼッケンを付けてくれる人を雇えればいいな、というお
      話。」

  熊「まだあるぞ。やい、八、お前この計画をやって欲しいの
      か。」

  八「桑原桑原。わしゃ、大学と無縁で良かったよ。」

  熊「何言ってやがる。てめぇんとこの餓鬼ゃ立命にいってる
      んだろうが。れっきとしたステーク・ホルダー様じゃねぇ
      か。」

  八「なんだそりゃ、なんとかホルダー様ってぇのは。偉ぇん
      か。」

  熊「あたぼーよ。偉ぇの何のって、節目節目にゃ大学のおえ
      らさんがご意見伺いにやってくるんだぞ。」

  八「俺のとこにゃ来てねーよ。」

  熊「そんなあほな。『立命館憲章』作るにゃホルダー様にご
      意見伺いをするって書いてあるぞ。」

  ご隠居「ステーク・ホルダーにも松・竹・梅とあるんだろう
      なぁ。」

  熊「話元へ戻そうか。八、お前、こんな計画やって欲しくねー
      んだろ。なら、じっくり議論せよとか、実効性のあるも
      のにせよとか、何でそんなゴタクを並べるんだ。実効性
      がないから丁度いいんじゃなねぇか。」

  八「でも、スクラップはお金なしでもできるぞ。そんなのやっ
      たらどうなるんだろうねぇ。」

  熊「明日のはやり廃りなど誰が分かるか。ラッシャン・ルー
      レトみたいなもんだ。首を洗って待とれ、ってとこよ。」

  八「そして順繰りに玉に当たってみんないなくなってしまっ
      たとさ。」

  熊「どっこい、立命館は不滅さ。アンド・ビルドもやってん
      だから。」

  八「話は変わりますがね、ご隠居。『中期計画』の中期って
      のは何年間ぐらいなんですか。」

  ご隠居「07年から10年までの4年間って書いてあるな。」

  熊「ご隠居も年だねぇ。のんびりしてらぁ。激動の時代だよ。
      文学部なんざぁ、04 年にそれまでゴチャゴチャ沢山あっ
      た学科をすっきり2学科にしたかと思えば、翌年にはも
      う改革して1学科にまとめてしまったんだから(出典『中
      期計画』p.5)。世間の動きはこんなに早いんだぜ。じっ
      くり議論なんかしてた日にゃ、ご時勢に乗り遅れてしま
      うってぇもんだ。」

  八「でもさぁ。そんなんでうまくいくかねぇ。みんなが働く
      かねぇ。」

  熊「うまくいかんのは下々がたるんどるからだ。足らぬ足ら
      ぬは工夫が足りぬ。立命魂と竹槍さえあれば怖いものは
      ない、ってハッパをかけときゃいいんだよ。教職員なん
      て。」

  お後がよろしいようで。


  ***** 翌日 *******

  熊「よろしかねーや。昨日あっしが、『中期計画』の賞味期
      限は4年なんて悠長なものじゃねーて言ったのを、ご隠
      居は、八もだ、信用してくんなさらなかったね。」

  ご隠居「信用しなかったというか半信半疑というか。」

  熊「『中期計画』じゃ、医学・薬学は手前-んとこにゃねー
      んで、そこんとこはよそ様とよろしくしましょうてーの
      が、今日は、薬学部と作ろーてんですからね。これを数
      学じゃ "世の中激しく動いてんだ、お店に並んだ頃にゃー
      もう賞味期限切れよ" 定理の証明ってんですよ。」

  八「ショーもね。」


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編集発行人:辻下 徹  Toru Tsujishita ( BKC 教員 )  
連絡先:tjst@rtm.ac-net.org
意見交換ページ: http://ac-net.org/rtm

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