立命館学園で働く方々へ Dear colleagues, 今年の1から3月の労働力調査の詳細結果が昨日総務省統計 局により公表されました(*)。「役員を除く雇用者は50 02万人で、正規の職員・従業員は3340万人(68%), 非正規の職員・従業員は1663万人(32%)です。昨年 同期より全体で79万人の増加で、正規の職員・従業員数は 5年振りの増加(7万人増)だそうです。(なお、役員数は 391万人で昨年同期より10万人減)。立命館では過半数 が非正規雇用であるというのは日本社会の雇用状況で突出し ているようです。 (* http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/) 非正規雇用問題について専任教職員の関心は余りなく、立命 館の雇用状況についての共通認識があまりないようです。ネッ トで公開されている資料(5/27「職場の人権」研究会)に、 立命館の非正規雇用システムの形成過程と現状について簡潔 にまとめられていましたので抜粋を紹介します。 立命館教職員の過半数が短期間に入れかわってしまうことが 学園の基本的教学機能に相当なダメージを与えているであろ うことは推測でき、多くの人が日常的に感じていることも、 この推測を裏書しています。非正規雇用システムを維持し拡 大する主たる理由は、いろいろな人に聞いても、財政的理由 というよりは、「正当な理由」なしには解雇できなくなるこ とを避けるためのようです。「平和と民主主義」を学是とす ることは、一人一人の尊厳を重視し、そのために最低限、戦 争や独裁者により人の基本的権利が奪われることは許さない、 という意思の表明と思います。この意思と、「正当な理由な しに解雇できる権利」を堅持する意思とを調和させることは 可能でしょうか。 ---- 以下 http://gurits.exblog.jp/3664948/ より抜粋 PDF: http://www.generalunion.org/rits/060527shokubano.pdf 職場の人権 研究会 2006・5・27 レジメ ある私立大学の雇用差別と労働強化 -使い捨てられる大学教職員- ゼネラルユニオン 遠藤礼子 1. 立命館での「多様な雇用形態」= 労働者の使い捨てと分断 学校法人立命館には,期限のない「正規」「終身雇用」の教 員と職員は,あわせて約2000人いる.一方,非正規の教職員 は「非常勤講師」が約1000人,「常勤講師」と「嘱託講師」 をあわせて約300人,「契約職員」約300人,「アルバイト職 員」約100人,その他もろもろあわせて約2000人と,非正規と 正規はほぼ同数である. 【専任教員・専任職員】 正社員に相当する部分.専任教員・専任職員を組織する教職 員組合は05年のボーナス1ヶ月カット問題で,授業時間に10分 間くいこむストライキを貫徹した.だがボーナスカットは押 し切られたまま. 【任期制教員】 通常5年契約で,更新ありのものとなしのものがある.任期制 教授,任期制助教授,任期制講師. 【常勤講師】 週10コマ担当でフルタイムの3年契約.ただし契約書は1年契 約の2回更新という形式で,そのあとに,オマケでもう1年と いうのが慣習化していて,実質は4年契約.年収約650万円 (諸手当込み).ほぼ全員が外国人の語学教員.4年たてば自動 的にクビ.2005年に制度廃止が決定. *同じ「常」でも「常用」なら期限の定めのない,という意味 だが,「常勤」はフルタイムの意味. 【常勤講師制度の歴史】 1988年「1年契約 更新可」 として開始.協定校からの派遣. 常勤講師5名. 1991年「3年契約」に変更.応募対象を日本在住者にも拡大. 3年契約は少なくとも1999年までは行われ,その後,「任用 期間3年 (ただし,契約は日本国の労働基準法に基づき毎年 締結する)」という形になった. 1997年常勤講師27名体制に. 2002年常勤講師47名体制に.嘱託講師制度開始. 2003年常勤講師33名体制に. 2005年常勤講師制度廃止決定.2005年度採用の常勤講師が4年 目を迎える2008年度末にすべての常勤講師がいなくなる, というのが当局の目論見. 【嘱託講師】 週10コマ担当でフルタイムの5年契約.2002年開始.ただし契 約書は1年契約の4回更新という形式.年収420万円.外国人が 大半だが日本人も多い.この手の制度を日本人講師に本格的 に適用する例は珍しい.語学教員.5年たてば自動的にクビ. 【非常勤講師】 コマ単位の1年契約で,通常一校で2~5コマ程度担当.あちこ ち掛け持ちして週10コマ担当しても,年収300万円.私学共済 などへの加入を多くの大学が拒否しているため,その中から 国民健康保険と国民年金を捻出.年数の上限はないので「う まくいけば」何年でも働けるが,毎年コマ減や雇い止めの不 安がある. 【契約職員】 フルタイムの3年契約.ただし契約書は1年契約の2回更新とい う形式.事務職員の多くがこの契約職員で,1年目は仕事がわ からない,2年目に慣れてきても,3年目は「どうせ来年はこ こにはいない」.年収約230万円.3年たてば自動的にクビ. この制度は多くの大学 (私立も国立も) が導入しており,3年 ごとに大学を転々とする職員も多いという. 【アルバイト職員】 フルタイム (35時間) の十一ヶ月契約.八月は仕事も給料も ない.更に2回更新までという年数制限さえついている.時給 800円.フルタイムなのに社会保険なし=健康保険法,厚生年 金保険法違反. 実際は,これ以外にもまだまだたくさんある. 2. 非常勤講師問題の「改善」としての常勤講師・嘱託講師制度 全国の多くの大学の教育は,非常勤講師に依存している.授 業の50%近くを非常勤講師が担当している場合も少なくない. 特に語学教育 (少人数クラスが必須) では,8~9割を非常勤 講師が担当というのも珍しくはない. 非常勤講師の待遇が劣悪で,雇用が不安定であることは,今 や社会問題となっている.最近になって,その改善のために, ようやく一部の大学では,賃上げや有給休暇の制度化などの 労働条件の改善や,合理的な理由のない減ゴマ雇い止めの防 止のための方策をとりはじめている. 一方,立命館大学では,2001年にコマあたり月給で100円の賃 上げ(一部のランクのみ) をしたのを最後に,2004年に文科省 の補助金の非常勤講師給の単価が1.5倍化されて,各大学が, 大小の賃上げをしているにもかかわらず,1円の賃上げも行っ ていない.また,「より専門適合性がある人がいた」 という ことが,減ゴマや雇い止めの合理的理由となるという新しい ルールまで作って,雇用の不安定化を促進している. このように,劣悪で不安定な非常勤講師の労働環境を一切改 善することなく,「非常勤問題の改善」として打ち出したの が,常勤講師や嘱託講師の制度なのである. さらに,2006年4月4日京都新聞掲載のインタビューの中で立 命館の長田総長はゼネラルユニオンのストライキについてこ うコメントしている. 「非常勤講師の雇用問題に対しては、語学教育の再編を 考えている。専門の語学講師を派遣する会社を数年内 にもつくりたい。教育の質が良くなるし、非常勤に頼 るいびつな形も解消することができる。」 3. 3~5年ルール このように,非常勤講師問題を解決するものとして,導入・ 拡大された,フルタイムの有期雇用講師の制度だが,問題は, そのすべてに,3~5年の雇用年数の上限を定めていることで ある. 1年契約×3 = 3年でクビ契約職員 約300名 11ヶ月契約×3= 3年でクビアルバイト職員 約100名* 1年契約×4 = 4年でクビ常勤講師 1年契約×5 = 5年でクビ嘱託講師 計約300名 * これは,大学がゼネラルユニオンとの団交の席で説明した 数字だが,研究会の後に,立命館の関係者より,アルバイ ト職員は100人ということはありえない (ずっと多い) とい う指摘があった. 大学の外でも,有期雇用は急激に拡大しているが,有期雇用 の更新回数に上限を定めているものは少ない.しかし,大学・ 高校では,なぜかそれが「常識」となっており,大学・高校 での,有期雇用のポストのほとんどに,更新回数の上限があ る.立命館は,このような雇用形態を全国にさきがけて導入 した学校で,教職員あわせて約1000名という規模の大きさで も群を抜いている. 驚くべきことだが,「3~5年の雇用年数の上限」がどんなに 残酷なものか,常用で働いている人には,理解できないこと が多い.もしあなたが 「この不景気の中で3~5年間でも保障 されているならそれだけでもありがたいと思えないの?」 と 思ったなら,もういちど当事者の身になって考えてみてほし い. 3年ごとに職を失うというのは,3年ごとに求職活動をしなけ ればならないということだ.求職活動は,最も楽に決まった 場合でも,非常にストレスの多いものである.3年ごとに職を 失い,学校を転々としなければならないのは,自分が好きで 転職するのとは全く話が違う.よく,契約書にサインしたか ら自己責任などと冷たく言う人もいるが,好きでこのような 雇用年数上限のあるポストを選んでいる者はひとりもいない. そして,言うまでもなく,大量のスタッフが次々と入れ替わ ることが仕事や教育の効率を悪くすることはあっても良くす ることはない. このような首切り使いすて制度が,言葉を変えるとこのよう な話になるという例を紹介する. 「あなたが配ったビラの和文には、大学は先生方を「解 雇」していると書かれています.私達は円満に「契約 が終了」していると考えているし、契約書には契約期 間が示されています.何か誤解していませんか.解雇 という言葉は本当の事実と異なる訳し方で稚拙ですが, あなたが配布したものはそういう意味で世間に出てい るのです.もし、あなたの意思や本当の思いと違った 状態であるなら、あなたにとってそれは良くないこと でしょう. さらに言えば、あなたも前任の方の契約終了があっ て任用され,そしてまた次の方が任用される.こうし て日本での○○語教育に携わる方皆さんの教育経験が 広がっています.」(不当労働行為の審査のために大 学が労働委員会へ提出した,立命館大学専任教員の陳 述書より) これは,立命館大学の専任教員が,ビラ撒きをしたゼネラル ユニオンの組合員に,電話で話した内容のうち,大学当局公 認の部分である.実際は後述の通りもっとすごいことを言っ たようだが,この大学公認の部分ですら,当該や当該の立場 に立って考える者にとっては,ナンセンス極まりない. しかしこれが,多くの専任教職員の認識であり,また,大学 当局の認識である.残酷きわまりない首切りシステムを教育 経験が広がってよろしい,と解説して平然としていられる人 権感覚は,決してこの専任教員ひとりのものではない.この 発言者には実際全く悪意はないのである. こんな意味のない3-5年ルールが何故あるか.(「教育経験が 広がってよろしい」的な理由を除けば) 唯一の理由は,3年以 上雇うと,期限の定めのない雇用とみなされて,そのあと合 理的理由なく解雇できなくなると困るから,というものであ る. 4. 雇用形態が変われば継続雇用は可能? (・・略・・) 5. クレオテック (・・略・・) 6. 立命館の拡張主義 (・・略・・) 7. ゼネラルユニオン立命館大学支部の活動 支部設立は2002年 2005年~の活動 (・・略・・) 2006/5/11構内でのビラまき 2006/6/13団交 (予定) 今までの団交の回答はすべてNO. その中で唯一の良い回答は,2005年6月14日の窓口折衝で,今 年から嘱託講師に現職の常勤講師も応募できるようになった と知らされたものだった.(前年までは常勤講師は応募できな いと明記されていた) しかし,同時に,4年目の常勤講師には,来年は非常勤のポス トすら提供しない,という方針があるという根強い噂や,専 任教職員からの説明があった.そしてこの噂や説明は団交で は常に否定されてきた. 最終的に,2005年度に常勤講師の4年目だった者は,全員が, 立命館のいかなる職からも排除された. 8. 止まるところを知らない不当労働行為 2005年6月24日,初めての門前でのビラまきに対する過剰な反応 X教授からA組合員への電話の内容 (・・略・・) 同X教授からB組合員への電話の内容 (・・略・・) Y教授からC組合員へのメールの内容 (・・略・・) 2005年12月9日のストライキに対する過剰な反応(・・略・・) その他にも,不当労働行為は数知れずあるが,それは現在, 大阪府労働委員会で審査中である.次回の審問は大学側証人 を組合が反対尋問するという最も注目すべきもの: 6月5日 (月) 1:00~3:00 * 不当労働行為については,2006年6月のビラも参照されたい. 9. 立命館争議の普遍性と特殊性 普遍性 ・ 新自由主義 ・ 雇用の不安定化=有期雇用の拡大 ・ アウトソーシングによる「効率化」 ・ 労働組合の本工主義 ・ 職場に男性・日本人中心の差別構造があること ・ 不安定雇用のもとでの労働運動の困難さ といった特徴は,何も立命館や大学の専売ではない. 特殊性 ? ネガティブな面 ・ 学部自治/全構成員自治の幻想と弊害 労働者ポイ捨てシステムも,学部自治/全構成員自治の民主主 義の体制が作ったものであること.この民主主義から,非正規 労働者は完全に排除されている. ・ アカデミズムの偽善 「進歩的」といわれる教職員が,率先して (いささかの悪気も なく) 「先進的な」雇用形態であるとして,労働者ポイ捨てシ ステムを推進し,これこそが「進歩的」と信じていること. 特殊性 ? ポジティブな面 ・ しがらみが比較的少ない外国人が多いこと,その中に母国 で「まともな」労働運動の経験のある者が含まれること. ・ 非正規といっても,大学での労働条件が比較的良く,比較 的余裕があること. ・ 本工主義やセクト主義,偽善的アカデミズムを超えて連帯 できる本当に進歩的な教職員も少なからずいること. 10. 今後の展望 ============================== 編集発行人:辻下 徹 Toru Tsujishita ( BKC 教員 ) 連絡先:tjst@rtm.ac-net.org 意見交換ページ: http://ac-net.org/rtm