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メッセージ48:
野路便り Letter from Noji (06-06-01 Thur)
立命館学園で働く方々へ
Dear colleagues,


  今年の1から3月の労働力調査の詳細結果が昨日総務省統計
  局により公表されました(*)。「役員を除く雇用者は50
  02万人で、正規の職員・従業員は3340万人(68%),
  非正規の職員・従業員は1663万人(32%)です。昨年
  同期より全体で79万人の増加で、正規の職員・従業員数は
  5年振りの増加(7万人増)だそうです。(なお、役員数は
  391万人で昨年同期より10万人減)。立命館では過半数
  が非正規雇用であるというのは日本社会の雇用状況で突出し
  ているようです。
 (* http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/)

  非正規雇用問題について専任教職員の関心は余りなく、立命
  館の雇用状況についての共通認識があまりないようです。ネッ
  トで公開されている資料(5/27「職場の人権」研究会)に、
  立命館の非正規雇用システムの形成過程と現状について簡潔
  にまとめられていましたので抜粋を紹介します。

  立命館教職員の過半数が短期間に入れかわってしまうことが
  学園の基本的教学機能に相当なダメージを与えているであろ
  うことは推測でき、多くの人が日常的に感じていることも、
  この推測を裏書しています。非正規雇用システムを維持し拡
  大する主たる理由は、いろいろな人に聞いても、財政的理由
  というよりは、「正当な理由」なしには解雇できなくなるこ
  とを避けるためのようです。「平和と民主主義」を学是とす
  ることは、一人一人の尊厳を重視し、そのために最低限、戦
  争や独裁者により人の基本的権利が奪われることは許さない、
  という意思の表明と思います。この意思と、「正当な理由な
  しに解雇できる権利」を堅持する意思とを調和させることは
  可能でしょうか。

----

  以下 http://gurits.exblog.jp/3664948/ より抜粋
  PDF: http://www.generalunion.org/rits/060527shokubano.pdf
       
       職場の人権 研究会 2006・5・27 レジメ 

       ある私立大学の雇用差別と労働強化
         -使い捨てられる大学教職員-

          ゼネラルユニオン 遠藤礼子


1. 立命館での「多様な雇用形態」= 労働者の使い捨てと分断

  学校法人立命館には,期限のない「正規」「終身雇用」の教
  員と職員は,あわせて約2000人いる.一方,非正規の教職員
  は「非常勤講師」が約1000人,「常勤講師」と「嘱託講師」
  をあわせて約300人,「契約職員」約300人,「アルバイト職
  員」約100人,その他もろもろあわせて約2000人と,非正規と
  正規はほぼ同数である.


【専任教員・専任職員】

  正社員に相当する部分.専任教員・専任職員を組織する教職
  員組合は05年のボーナス1ヶ月カット問題で,授業時間に10分
  間くいこむストライキを貫徹した.だがボーナスカットは押
  し切られたまま.


【任期制教員】

  通常5年契約で,更新ありのものとなしのものがある.任期制
  教授,任期制助教授,任期制講師.


【常勤講師】

  週10コマ担当でフルタイムの3年契約.ただし契約書は1年契
  約の2回更新という形式で,そのあとに,オマケでもう1年と
  いうのが慣習化していて,実質は4年契約.年収約650万円
  (諸手当込み).ほぼ全員が外国人の語学教員.4年たてば自動
  的にクビ.2005年に制度廃止が決定.

  *同じ「常」でも「常用」なら期限の定めのない,という意味
  だが,「常勤」はフルタイムの意味.


【常勤講師制度の歴史】

  1988年「1年契約 更新可」 として開始.協定校からの派遣.
    常勤講師5名.

  1991年「3年契約」に変更.応募対象を日本在住者にも拡大.
    3年契約は少なくとも1999年までは行われ,その後,「任用
    期間3年 (ただし,契約は日本国の労働基準法に基づき毎年
    締結する)」という形になった.

  1997年常勤講師27名体制に.

  2002年常勤講師47名体制に.嘱託講師制度開始.

  2003年常勤講師33名体制に.

  2005年常勤講師制度廃止決定.2005年度採用の常勤講師が4年
    目を迎える2008年度末にすべての常勤講師がいなくなる,
    というのが当局の目論見.


【嘱託講師】

  週10コマ担当でフルタイムの5年契約.2002年開始.ただし契
  約書は1年契約の4回更新という形式.年収420万円.外国人が
  大半だが日本人も多い.この手の制度を日本人講師に本格的
  に適用する例は珍しい.語学教員.5年たてば自動的にクビ.


【非常勤講師】

  コマ単位の1年契約で,通常一校で2~5コマ程度担当.あちこ
  ち掛け持ちして週10コマ担当しても,年収300万円.私学共済
  などへの加入を多くの大学が拒否しているため,その中から
  国民健康保険と国民年金を捻出.年数の上限はないので「う
  まくいけば」何年でも働けるが,毎年コマ減や雇い止めの不
  安がある.


【契約職員】

  フルタイムの3年契約.ただし契約書は1年契約の2回更新とい
  う形式.事務職員の多くがこの契約職員で,1年目は仕事がわ
  からない,2年目に慣れてきても,3年目は「どうせ来年はこ
  こにはいない」.年収約230万円.3年たてば自動的にクビ.
  この制度は多くの大学 (私立も国立も) が導入しており,3年
  ごとに大学を転々とする職員も多いという.


【アルバイト職員】

  フルタイム (35時間) の十一ヶ月契約.八月は仕事も給料も
  ない.更に2回更新までという年数制限さえついている.時給
  800円.フルタイムなのに社会保険なし=健康保険法,厚生年
  金保険法違反.

  実際は,これ以外にもまだまだたくさんある. 



2. 非常勤講師問題の「改善」としての常勤講師・嘱託講師制度

  全国の多くの大学の教育は,非常勤講師に依存している.授
  業の50%近くを非常勤講師が担当している場合も少なくない.
  特に語学教育 (少人数クラスが必須) では,8~9割を非常勤
  講師が担当というのも珍しくはない.

  非常勤講師の待遇が劣悪で,雇用が不安定であることは,今
  や社会問題となっている.最近になって,その改善のために,
  ようやく一部の大学では,賃上げや有給休暇の制度化などの
  労働条件の改善や,合理的な理由のない減ゴマ雇い止めの防
  止のための方策をとりはじめている.

  一方,立命館大学では,2001年にコマあたり月給で100円の賃
  上げ(一部のランクのみ) をしたのを最後に,2004年に文科省
  の補助金の非常勤講師給の単価が1.5倍化されて,各大学が,
  大小の賃上げをしているにもかかわらず,1円の賃上げも行っ
  ていない.また,「より専門適合性がある人がいた」 という
  ことが,減ゴマや雇い止めの合理的理由となるという新しい
  ルールまで作って,雇用の不安定化を促進している.

  このように,劣悪で不安定な非常勤講師の労働環境を一切改
  善することなく,「非常勤問題の改善」として打ち出したの
  が,常勤講師や嘱託講師の制度なのである.

  さらに,2006年4月4日京都新聞掲載のインタビューの中で立
  命館の長田総長はゼネラルユニオンのストライキについてこ
  うコメントしている.

    「非常勤講師の雇用問題に対しては、語学教育の再編を
      考えている。専門の語学講師を派遣する会社を数年内
      にもつくりたい。教育の質が良くなるし、非常勤に頼
      るいびつな形も解消することができる。」


3. 3~5年ルール

  このように,非常勤講師問題を解決するものとして,導入・
  拡大された,フルタイムの有期雇用講師の制度だが,問題は,
  そのすべてに,3~5年の雇用年数の上限を定めていることで
  ある.

    1年契約×3 = 3年でクビ契約職員 約300名

    11ヶ月契約×3= 3年でクビアルバイト職員 約100名*

    1年契約×4 = 4年でクビ常勤講師

    1年契約×5 = 5年でクビ嘱託講師 計約300名

  * これは,大学がゼネラルユニオンとの団交の席で説明した
    数字だが,研究会の後に,立命館の関係者より,アルバイ
    ト職員は100人ということはありえない (ずっと多い) とい
    う指摘があった.

  大学の外でも,有期雇用は急激に拡大しているが,有期雇用
  の更新回数に上限を定めているものは少ない.しかし,大学・
  高校では,なぜかそれが「常識」となっており,大学・高校
  での,有期雇用のポストのほとんどに,更新回数の上限があ
  る.立命館は,このような雇用形態を全国にさきがけて導入
  した学校で,教職員あわせて約1000名という規模の大きさで
  も群を抜いている.

  驚くべきことだが,「3~5年の雇用年数の上限」がどんなに
  残酷なものか,常用で働いている人には,理解できないこと
  が多い.もしあなたが 「この不景気の中で3~5年間でも保障
  されているならそれだけでもありがたいと思えないの?」 と
  思ったなら,もういちど当事者の身になって考えてみてほし
  い.

  3年ごとに職を失うというのは,3年ごとに求職活動をしなけ
  ればならないということだ.求職活動は,最も楽に決まった
  場合でも,非常にストレスの多いものである.3年ごとに職を
  失い,学校を転々としなければならないのは,自分が好きで
  転職するのとは全く話が違う.よく,契約書にサインしたか
  ら自己責任などと冷たく言う人もいるが,好きでこのような
  雇用年数上限のあるポストを選んでいる者はひとりもいない.

  そして,言うまでもなく,大量のスタッフが次々と入れ替わ
  ることが仕事や教育の効率を悪くすることはあっても良くす
  ることはない.

  このような首切り使いすて制度が,言葉を変えるとこのよう
  な話になるという例を紹介する.

    「あなたが配ったビラの和文には、大学は先生方を「解
      雇」していると書かれています.私達は円満に「契約
      が終了」していると考えているし、契約書には契約期
      間が示されています.何か誤解していませんか.解雇
      という言葉は本当の事実と異なる訳し方で稚拙ですが,
      あなたが配布したものはそういう意味で世間に出てい
      るのです.もし、あなたの意思や本当の思いと違った
      状態であるなら、あなたにとってそれは良くないこと
      でしょう.
       さらに言えば、あなたも前任の方の契約終了があっ
      て任用され,そしてまた次の方が任用される.こうし
      て日本での○○語教育に携わる方皆さんの教育経験が
      広がっています.」(不当労働行為の審査のために大
      学が労働委員会へ提出した,立命館大学専任教員の陳
      述書より)

  これは,立命館大学の専任教員が,ビラ撒きをしたゼネラル
  ユニオンの組合員に,電話で話した内容のうち,大学当局公
  認の部分である.実際は後述の通りもっとすごいことを言っ
  たようだが,この大学公認の部分ですら,当該や当該の立場
  に立って考える者にとっては,ナンセンス極まりない.

  しかしこれが,多くの専任教職員の認識であり,また,大学
  当局の認識である.残酷きわまりない首切りシステムを教育
  経験が広がってよろしい,と解説して平然としていられる人
  権感覚は,決してこの専任教員ひとりのものではない.この
  発言者には実際全く悪意はないのである.

  こんな意味のない3-5年ルールが何故あるか.(「教育経験が
  広がってよろしい」的な理由を除けば) 唯一の理由は,3年以
  上雇うと,期限の定めのない雇用とみなされて,そのあと合
  理的理由なく解雇できなくなると困るから,というものであ
  る.


4. 雇用形態が変われば継続雇用は可能?

  (・・略・・)

5. クレオテック

  (・・略・・)

6. 立命館の拡張主義

  (・・略・・)

7. ゼネラルユニオン立命館大学支部の活動

  支部設立は2002年

  2005年~の活動
 (・・略・・)

  2006/5/11構内でのビラまき
  2006/6/13団交 (予定)


  今までの団交の回答はすべてNO.

  その中で唯一の良い回答は,2005年6月14日の窓口折衝で,今
  年から嘱託講師に現職の常勤講師も応募できるようになった
  と知らされたものだった.(前年までは常勤講師は応募できな
  いと明記されていた)

  しかし,同時に,4年目の常勤講師には,来年は非常勤のポス
  トすら提供しない,という方針があるという根強い噂や,専
  任教職員からの説明があった.そしてこの噂や説明は団交で
  は常に否定されてきた.

  最終的に,2005年度に常勤講師の4年目だった者は,全員が,
  立命館のいかなる職からも排除された.


8. 止まるところを知らない不当労働行為

  2005年6月24日,初めての門前でのビラまきに対する過剰な反応

  X教授からA組合員への電話の内容 (・・略・・)

  同X教授からB組合員への電話の内容 (・・略・・)

  Y教授からC組合員へのメールの内容 (・・略・・)

  2005年12月9日のストライキに対する過剰な反応(・・略・・)  

  その他にも,不当労働行為は数知れずあるが,それは現在,
  大阪府労働委員会で審査中である.次回の審問は大学側証人
  を組合が反対尋問するという最も注目すべきもの: 
    6月5日 (月) 1:00~3:00

  * 不当労働行為については,2006年6月のビラも参照されたい.


9. 立命館争議の普遍性と特殊性

  普遍性

  ・ 新自由主義
  ・ 雇用の不安定化=有期雇用の拡大
  ・ アウトソーシングによる「効率化」
  ・ 労働組合の本工主義
  ・ 職場に男性・日本人中心の差別構造があること
  ・ 不安定雇用のもとでの労働運動の困難さ

  といった特徴は,何も立命館や大学の専売ではない.


  特殊性 ? ネガティブな面

  ・ 学部自治/全構成員自治の幻想と弊害

     労働者ポイ捨てシステムも,学部自治/全構成員自治の民主主
     義の体制が作ったものであること.この民主主義から,非正規
     労働者は完全に排除されている.

  ・ アカデミズムの偽善

    「進歩的」といわれる教職員が,率先して (いささかの悪気も
     なく) 「先進的な」雇用形態であるとして,労働者ポイ捨てシ
     ステムを推進し,これこそが「進歩的」と信じていること.


  特殊性 ? ポジティブな面

  ・ しがらみが比較的少ない外国人が多いこと,その中に母国
   で「まともな」労働運動の経験のある者が含まれること.

  ・ 非正規といっても,大学での労働条件が比較的良く,比較
     的余裕があること.

  ・ 本工主義やセクト主義,偽善的アカデミズムを超えて連帯
     できる本当に進歩的な教職員も少なからずいること.

10. 今後の展望


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編集発行人:辻下 徹  Toru Tsujishita ( BKC 教員 )  
連絡先:tjst@rtm.ac-net.org
意見交換ページ: http://ac-net.org/rtm