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メッセージ67:
野路便り Letter from Noji (06-06-28 Wed) ver 1.11
立命館学園で働く方々へ
Dear colleagues,

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  【1】感想: UNITAS HOT NEWS No 10.(6/26) 
       産学連携活動調査で立命館大学が2年連続第1位に!

  【2】感想(ver 1.11): UNITAS HOT NEWS No 11.(6/27) 
      「21世紀の立命館学園における新財政政策―戦略と目標―」
       概要~財務担当常務理事懇談会(6/23)から~

  【3】感想: UNITAS HOT NEWS No 12.(6/27) 
     「APUの到達点と課題」懇談会(6/23) 概要

  【4】転載:新学部構想と「憲章」第二次案について (ver 1.1)
       [ml-cm-bkcmf 330]  月曜会MLより許可を得て転載
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  たて続けに配信された常任理事会の UNITAS HOT NEWS について
  の編集人の感想(【1】【2】【3】)。【2】は新財政政策文書
  にある「赤字演出」のトリックについて。

  憲章についての大局的見地からの批判が月曜会のメーリングリ
  ストに掲載されていましたので、許可を得て転載します【4】。
  「スクラップアンドビルド」は「創造的組織再編」と改名され
  たそうですが、品が良くなった分だけ問題点が隠蔽される懸念
  もあります。

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【1】感想: UNITAS HOT NEWS No 10.(6/26) 
     産学連携活動調査(経済産業省)で立命館大学が2年連続第1位に!
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 旧通産省産業政策局産業技術課大学等連携推進室のホームペー
  ジ(*)で紹介された日米技術系大学の比較・評価(1996)の印象的
  結果を思いだしました。
  (*http://ac-net.org/dgh/01/714-sangaku.html) 順位は

      2.9 マサチューセッツ工科大 
    2.8 スタンフォード大 
    2.7 カリフォルニア大バークレー校 
    2.6 イリノイ大学、カーネギー・メロン大 
    2.5 カリフォルニア工科大 
    2.1 立命館大 
    1.9 東海大 
    1.8 筑波大 
    1.6 東北大、慶大、早大 
    1.4 京大

  となっていましたが、上の指標の説明のなかに、以下の記述があ
  りました:

    「本調査は、A(産学連携の成果)=B(科学技術的潜在能
      力)×C(それを引き出し、社会経済的価値に転換する能
      力)と定義した上で、Cのみを対象としている。従って、
      組織的な対応は全くないが、個々の教員の「科学技術的能
      力」によって、結果としてたまたま「産学連携」が実現さ
      れていたという状態は、評価されない。また、個々の教員
      の「科学技術的潜在能力」を測定し、大学としてその総和
      を求めるようなことは、できるはずもない。これに代わる
      ものとして、論文の数に被引用回数を乗じたものを用いる
      試みもあるが、論文偏重主義を助長する等のおそれがあ
      る。」

  立命館が苦労して開拓したCのノウハウを他の大学が利用しつ
  つありますが、10年を経過したいまでも順位がかわらないのは、
  このノウハウは、それほど簡単に習得できる性格のものではな
  いということかもしれません。

  とは言え、Cのノウハウが当たり前になるのは時間の問題です
  から、他を先駆けてCを実現して得たものを、どういう形で活
  かすか、という岐路に立命館はあると思います。拡大路線を突
  進し全国いや全世界に展開して空洞化が完成し殻だけとなって
  崩壊するか、先見の明によりタブーにとらわれず全大学に先駆
  けて得た種々の有形無形の「蓄え」を基盤として、空洞化しつ
  つある内側を充実する地味で時間のかかる本来の事業に手を戻
  し、品格ある大学に脱皮するのか、そういう歴史的岐路にある
  と思います。今度の総長選任の争点は、いずれの道を立命館学
  園が選ぶのか、ということであり、その結果は立命館の将来の
  明暗をかなり決するように思います--総長選任の新制度で、
  構成員が実質的に総長を選択できる可能性があると仮定しての
  ことですが。

  ところで、気になったのは、UNITAS HOT NEWS で紹介されてい
  た経済産業省の「技術移転を巡る現状と今後の取り組みについ
  て」という文書の最後の方で、最近の技術移転をめぐる全般的
  傾向として、「成果の帰属が原則大学となる委託研究が減少し
  ている」と指摘していることです。企業にとって使い勝手が良
  い大学ランキングのトップであることは、たしかに企業や政府
  から資金を得やすいメリットはありますが、その資金による研
  究成果の大半が企業のものとなるとすれば、大学は企業の研究
  所として利用されただけであり、諸活動の公共性を人々から期
  待される大学として、単純に喜ぶべきことかどうか判断が難し
  ところがあります。


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【2】感想: UNITAS HOT NEWS No 11.(6/27) 
    「21世紀の立命館学園における新財政政策―戦略と目標―」
     概要~財務担当常務理事懇談会(6/23)から~
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  No 11 の新財政政策にある「赤字演出」の種々のトリックにつ
  いては、組合や専門家からの体系的な反論を期待しています。
  単純なトリックだけ指摘しておきます。

  > 繰越消費収支差額は2010年度末には200億円の支出超過に達
    すると推計されます。

  とありますが、消費支出には「減価償却費」という項目があり、
  これが、1990年代初頭では10億円であったのが最近では、この
  10年の設備投資の「成果」で、約60億円にまで脹れ上っていま
  す。これが「赤字演出」のトリックの中で最も初歩的なものと
  なっているようです。学校法人会計では、減価償却費は定額法
  で計算されますから、この額は相当の期間、減ることはなく、
  2006 年~2010年で、約300億円の自由な資金が「減価償却費」
  として別に取っておかれることになります。他の大学では「減
  価償却費積立金」として明示的に資産の中に組み込んでいると
  ころが多いですが、立命では減価償却費という資金がどのよう
  に流れているのか、会計文書では明記されていないようで、
  「学園将来構想推進準備資金引当特定資産」の一部となってい
  るのかもしれませんし、一部はすぐに設備投資に使われている
  可能性もあり、後者は、さらに減価償却費を脹れあがらせ、
  「赤字」を更に大きく演出できると同時に「自由な資金」がさ
  ら増えるという、経営者としては笑いが止まらないような状況
  です。この減価償却費という消費支出300億円を考慮すれば
  2010年までに、「200 億円の支出超過」ではなく、実質的に
  「100億円の収入超過」ということになります。

  ほかにも「赤字演出」の高度なトリックはいろいろあると聞
  いていますので、専門家の方の批判を期待したいと思います。

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【3】感想: UNITAS HOT NEWS No 12.(6/27) 
   「APUの到達点と課題」懇談会(6/23) 概要
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  APUについて輝かしい側面をいくら言っても、地位保全仮処分申
  立の判定で解雇権濫用で解雇無効と宣告されるような粗雑な専
  任教員解雇が行われたり(*)、新たな地位保全仮処分申立が行わ
  れるなど、教員人事の粗雑さが表面化してきています。教学の
  独立性の最も基本となる、教学セクタの教員人事権を確立する
  ことが、APUとRUとの教学上の「連携」を検討するに先決する
  「課題」です。(*)
  http://university.main.jp/blog3/archives/2006/06/apu_12.html


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【4】新学部構想と「憲章」第二次案について
     [ml-cm-bkcmf 330]  月曜会MLより許可を得て転載
     Date: Fri, 23 Jun 2006 19:03:50 +0900
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 I. ライフサイエンス系学部構想について

   財政的裏付けがなされていない点や何の説明もなく既成事実
   かの如く一人歩きしている学術院構想の不明朗さという、多
   くの人が指摘している点に加えて、次の点を指摘したいと思
   います。
 
   本構想が理工学部応用化学系の新展開という内発的意図の下
   に練られたものであるとはいえ、今やそれをそのようなもの
   として素直に議論できる状況にはない。理事会が「中期計画」
   の中で、スクラップ・アンド・ビルドを「原則」として掲げ
   ている以上、「ビルド」提案は「スクラップ」提案と表裏一
   体のものであり、「ビルド」提案を受け入れることは、同時
   に「スクラップ」提案をも一般論としては受け入れることを
   意味し、残されるのはどこを「スクラップ」するかという各
   論部分だけということになるであろう。
 
   学問や教育という息の長い営為に対して、スクラップ・アン
   ド・ビルド原則がどのようなダメージを与えるかについて各
   教授会は真剣な議論を行うべきであろう。

    参考:「新財政政策」(2006年6月21日 常任理事会) p. 12 
   は、スクラップの指標を
    ”競争力を喪失した教学分野は縮小ないし撤退も避けられ
   ない経営環境にある。たとえば,入学志願者が入学定員の
   10倍以下,実質競争倍率が3倍以下,合格者入試偏差値
   50以下,入学(予算)定員割れの学部・学科等は,縮小
   ・撤退の検討対象になる可能性がある。”
  と、もっぱら、受験者動向のみにおいている。
 
   応用化学系の先生方の真摯な議論がそのようなものとは作用
   し得ないいびつな議論の環境を作ってしまった理事会の責任
   は重い。
 
 
   II. 「憲章」について
 
   「憲章」の第二次案は、第一次案に比べて、文言上は
 
   (i) 行動規範的文言を入れないことにしたこと
 
   (ii) 少なくとも数十年単位の文章であるとの意識が明確になっ
   たこと
   
   等、一定の前進が見られるものの、矢張り本質的な所において疑
   義を提起せざるを得ない。
 
   [A] 「立命館憲章」の位置づけについて
 
   本憲章は、その起草委員会の名称にあるとおり、「21世紀立
   命館の責務と役割 立命館憲章」として想定されたものの名
   称変更であるが、それでは、「21 世紀 立命館の責務と役割」
   とは何であろうか。それは所謂「ガバナンス文書」において、
   初めて提起され、”(ひとたび「責務と役割」と「中期計画」
   の合意を得たならば、後は)個別課題は常任理事会の判断の
   もと、該当する部署が責任を持って推進する”ものと規定さ
   れている「責務と役割」と同一文書であるようだ。(ここで
   推量形を用いたのは、この前後の表題が「21世紀 立命館の責
   務と役割」とありながら、本文中では、「21世紀 立命館にお
   ける責務と役割」を「責務と役割」と略記するとあるからで
   ある。)
 
   この「ガバナンス文書」とは、各学部教授会からの強い批判
   を受ながらも、”本部移転に係わる部分だけ”として強引に
   実行に移されたものである。従って、本憲章を了承すること
   は、「ガバナンス文書」の一部先取りを認めることであり、
   到底容認できるものではない。
 
   [B] 内容について
 
   (i) 孟子の言う「命を立つ」とは「自らの人生を切り開く」
   といった、個人の問題に収斂されるものであろうか?専門家
   の意見を聞きたい。
 
   (ii) 憲章案中には、どのような研究、どのような教育を行う
   かが何点かに渡って記されている。その文言をめぐって様々
   な意見が表明されているが、ここではそれについては論じない。
   それがどのような文言として合意されようと、それに続けて、
     ”学園の運営はこの教育と研究の目的を推進するために
     行われるべきものである”
   の一文を入れるべきである。多くの人々は「そんな当たり前
   のことをわざわざ書く必要はない」と考えるであろうが、我々
   はそれを共通の認識として共有していない理事会を戴いている
   ことに留意するべきである。
 
   「スクラップ・アンド・ビルド原則」のもと積み木崩しに狂奔
   する理事会が、これを当たり前のことと認識しているかどうか
   はいささか疑わしいところであるし、「新財政政策」(2006年6
   月21日 常任理事会)において、教育・研究と同列に国際化をあ
   げ、「教職員人件費や教育研究経費は削減が困難」と書く理事
   会がこのことを認識しているとは思われない。是非、上記一文
   を入れるさせるべきである。

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編集発行人:辻下 徹  Toru Tsujishita ( BKC 教員 )  
連絡先:tjst@rtm.ac-net.org