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メッセージ86:
野路便り Letter from Noji (06-07-12 Wed)

APU常勤講師を支援する立命館教員ネットワークの呼びかけ

立命館学園で働く方々へ
Dear colleagues,

  APU常勤講師雇止め事件が正しく解決されるかどうかは、今後の
  立命館学園の健全な発展を左右する鍵の一つであると考える立命館
  教員有志19名が、地位保全仮処分申立をしたAPU常勤講師を物
  心両面から支援することを、立命館学園の全教員に呼びかけていま
  す。

  立命館学園でも、教員には言論の自由が、ある程度、保証されてい
  ますが、保証されているその自由には当然ながら重い責務が伴って
  いるように思います。こういった問題について、各教員が独自に判
  断して必要と考える行動を取ることは、そういった責務の一つでは
  ないでしょうか。少し長いですが、呼びかけをぜひお読みいただけ
  れば、と願っております。

  理事の方々が早期和解に向けて真摯に努力されることを心から願っ
  ています。


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APU常勤講師を支援する立命館教員ネットワークの呼びかけ
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                      2006年7月12日

立命館学園教員の皆様

              APU常勤講師を支援する立命館教員ネットワーク
       	   参加者19名一同

		 法学部 専任教員(1名)
		 産業社会学部 専任教員(1名)
		 国際関係学部 専任教員(1名)
		 政策科学部 専任教員(1名)
		 文学部 非常勤講師(2名)
		 文学部 後期課程院生(1名)
		 言語教育センター 嘱託講師(1名)
		 経済学部 専任教員(4名)
		 経営学部 専任教員(2名)
		 理工学部 専任教員(3名)
		 立命館アジア太平洋大学 常勤講師(1名)
		 立命館アジア太平洋大学 非常勤講師(1名)


  3月末に失職させられたAPU常勤講師の方が5月18日に地位保全仮処分
  を大分地裁に申立てられました。(報道:http://ac-net.org/rtm/No/46)

 わたくしたちは、以下の支援をみなさまに呼びかけたいと思います。

 (1)大分地裁への要望書への賛同署名:http://university.sub.jp/apu/saiban/

 (2)裁判活動を支援するカンパ:
       郵便振替口座:01750ー5ー75138
                   加入者名:大分地域労働組合 APU分会  
                                                 ( 詳細は以下を参照 )

  APU開学直前の1999年秋に、日本語教員就任予定者18人(含常勤講
  師14人)への説明会が衣笠のアカデメイアでありました。出席した常勤講
  師就任予定者全員が、大過なければ形式的任期4年を越えて雇用は継続され
  るという心証を得てAPUへの赴任を決意されました。説明会で「4年後も
  契約を継続できるが条件・待遇は変らない」「どうぞ定年までいてください」
  という口頭説明があったとする文書に、出席者18人の内、日本語常勤講師
  14名全員と、専任の教授・助教授各1名が、同様の趣旨の説明を聞いたこ
  とを記憶しているとして、署名しています。

  しかし、法人側は雇用継続の約束などありえない、と主張し、昨年7月には、
  常勤講師制度そのものを廃止し、形式的任期が切れる常勤講師を順次雇止め
  とすることを通告し、今年の3月に最初の雇止めを実施しました。なお、今
  回雇止めとなった常勤講師は採用から3年半待たされ2002年4月に就任
  しています。開学直前の2000年3月、および2001年4月に就任した常
  勤講師は全員1期雇用継続されましたが、次に任期が切れる時に雇止めとす
  ることを通告されています。
 
  常勤講師とAPUの主張を、当ネット参加者が整理した文書を最後に添付し
  ます(添付文書1)。なお、当ネットに参加している金丸裕一教授は、APU
  設置準備委員会の委員として指示を受けたリクルート方針から推して、常勤
  講師側の主張は正しいと判断しています(添付文書2)。

  たとえ法人の主張が正しかったとしても、参加者のほぼ全員(当事者である
  常勤講師就任予定者全員)が「誤解」する説明をしたことにより法人として
  重い責任が発生しています。その最低限の責任すら認めようとしない法人の
  姿勢は、良識とモラルを期待し学校法人に種々の便宜を与えている社会の善
  意と信頼を裏切るものです。

  バイリンガルな卒業生を輩出するという困難な事業をAPUの完成年度と同
  時に達成し、日本語を全く知らなかった第一期生の留学生が日本で不自由な
  く生活するだけでなく日本人と互格に働くことができるまでになったことは、
  初期APU教職員全員の奮闘の成果であり、また、大分県民・別府市民の支
  援に支えられたことは言うまでもありませんが、中でも、日本語教育の中核
  を担った日本語常勤講師の方々が、決められた職務を越え、全身全霊を挙げ
  て日夜、日本語教育の方法の開発に取り組んだからこそ実現したことであり、
  これは理事会も認めていることです。特別な配慮があってもおかしくない尋
  常ならぬ功績に対する「雇止め」という評価は、立命館学園で働く者の善意
  と誠意と献身に対する冒涜であり、深い憤りの念を抑えることは容易ではあ
  りません。

  同僚の誠意と献身を冒涜する粗暴な経営行為を看過せず、心が通う、筋の通っ
  た解決がされることを願い可能な行動をとることは、学生の人格形成に従事
  するわたしたち教員の責務の一つであるだけでなく、立命館学園の標語であ
  る「平和と民主主義」の核心をなす人間尊重の理念を受肉させることでもあ
  ると考えます。

  若い常勤講師の方が地位保全仮処分申立という重い行為に踏み切られたこと
  は、立命館の不義が立命館を荒廃させつつあることに深く心を痛めてのこと
  であり、勇気ある犠牲的とすらいえる行為に対し、わたしたち教員有志は深
  い尊敬と感謝の念を抱きつつ、以下の支援を強く呼びかけたいと思います。

 (1)ネット署名: http://university.sub.jp/apu/saiban/
      担当する大分地裁民事第二部神野泰一裁判官へ提出する要望書
      http://university.sub.jp/apu/saiban/shomei/apu_tiihozenshienyousei.pdf
      への賛同署名を呼びかけます。メッセージも是非お願いします。

      なお、紙媒体による署名も行われています:
      http://university.sub.jp/apu/saiban/index.php?job=shienyousei

 (2)支援カンパ:

       郵便振替 口座記号番号:01750ー5ー75138
               加入者名:大分地域労働組合 APU分会  

       裁判費用・弁護士費用等に用いられるとのことです。

       少額でも多数の立命館教員がカンパすることは、常勤講師の方の裁判活
       動を物心両面で支えるはずです。

       なお、失職させられている常勤講師の方の生活支援カンパ用に、立命館
       教員ネットの口座を準備しています。準備でき次第ご案内します。

  (3)今後、理事会に対する直接的な交渉の窓口を持つ立命館学園教職員組
    合連合に対し、この問題について独自に調査し、早期和解を理事会に働き
    かけるよう要請すると共に、ネットワーク自身も理事会へ早期和解を要請
    する予定です。その際にはネット署名の形式で賛同署名を募る予定ですの
    で、ご協力ください。


 なお、立命館学園が、この事件に象徴されるようなモラルハザードに広汎に
  陥っていると推測されることは、立命館の健全な発展にとって憂慮すべき事
  態です。教員は、言論の自由をかなり担保されていますが、その自由に伴う
  責任を果すべく、特定の重大問題毎に、信念や利害や価値観やキャンパスの
  違いを越えて、動ける状況にある教員が機動的にネットワークを形成し、問
  題の解決に努めようとすることは、種々のモラルハザードの進行に対して、
  たとえわずかな効果しかないとしても、歯止めの一つとなる可能性はあると
  思います。APU常勤講師の方を支援する立命館教員ネットワークは、その
  ようなものの先例の一つとなれば、と願っています。趣旨に賛同される方は、
  http://ac-net.org/rtm-net/ からご参加ください。

  ネットワークへの参加者に負荷が余りかからないようにするとともに、機動
  性を高めるため、インターネットによる活動を主とします。「参加」の意味
  は、「立命館教員ネットワーク」のメーリングリストrtm-net に加わってい
  ただくこと、ネットで意見表明をしていただくこと、そして、上記のような
  種々の呼びかけに、賛同できる場合は、加わっていただくことなどです。

  なお、気軽に参加できるよう匿名での参加をデフォルトとし、サイトには、
  参加者の所属と職種、および、統計(参加者総数,学部・年齢・職種分布)
  のみを掲載予定です。

  以上

ーーーーーーーーー
(資料1 ) 

    APUの常勤講師(日本語)の「雇止め」問題の概要
        http://ac-net.org/rtm-net/index.php?job=apushousai

    以下、大分県労連の大分地域労組APU分会(約50人のうち14名を占
    める分会)のHPの5回の団交議事録(*1)、およびAPUの公式見解
    (*2)から浮き上がってきた問題の経緯と論点はつぎのとおり.なお、
    2月28日に分会関係者と懇談をしたうえで補筆.また3月23日の大分
    地労委の斡旋結果を追加.
    (*1)http://www.geocities.jp/apuunion/page-06.html
      http://www.geocities.jp/apuunion/page-22.html
    (*2)http://www.apu.ac.jp/home/modules/news/article.php?storyid=278&sel_lang=japanese

                                     2006/07/11 ネットワーク参加者作成


  1)4年後の再任用を約束することで、日本語教員をAPUにリクルートし
    ようとしたのかどうか、発端の事実。 

    APUの立ち上げ直前の1999年10月24日に日本語教員就任予定者
    18人(含常勤講師14人)への説明会が衣笠のアカデメイアであった。

    ○分会の主張 「APUに来てもらえると住宅手当もはずむ、4年終了後
    も雇用は継続・更新可能だ、定年の60歳まで働ける」という説明があっ
    たと分会側は主張。

    ◇ある教授の証言:当時、日本語教育のしっかりとした教員組織をつくる
    のが、戦略的に重要かつ困難な課題だった。これをやりきるために、日本
    語教員のリクルートのために特別な体制を作って運動した。日本語教員の
    リクルートには、アメが必要であり、「大過なければ再任する」と宣伝し
    た。友人は、「普通にはない安定したポストのようですね」と言って、応
    募してくれた。 

    ◇関係者の証言:「4年の任期を何回でも更新できる」という説明があっ
    た。採用後3年半待たされて、2002年にやっと着任できた。

    ◇別の関係者の証言「任期切れ後も継続できる。定年の60歳までどうぞ
    いてください」といわれた。

    ●理事会側の主張

    説明会の担当者から聞き取りを行ったが、「任期が切れた後に再応募はで
    きる」とはいったが、「再任用の約束はしていない」と言っている。ただ
    しこの時点をふくめ2002年までは、4年後どうするかについて、理事会には
    明確な方針がなかったことは認めざるをえない。

    ○分会側:任用継続可能とする説明があったと主張する文書が、居合わせ
    た16人(常勤講師14名・教授1名・助教授1名)の連署で提出されている。
    また裁判等になった場合、この日に参加者が筆記した「メモ」を提出する
    用意もある。

    理事会側は4年後の任期終了とともに雇用関係が消滅するということを契
    約時に明確にせず、「雇用の継続・更新が可能」という期待をいだかせ、
    遠隔のAPUで働こうという決断を参加者にさせたことは、理事会の責任
    である。

  2)2006年4月からAPUでは、常勤講師制度を廃止し、上級講師・嘱
    託講師制度に移行すると、当局が言明したことについて2005年7月2
    0日に常勤講師全員が呼び集められ、「2006年の3月末に常勤講師制
    度自体がなくなる、現在APUにいる常勤講師は任期満了と同時に漸次雇
    い止めしていく」と通告された。

    4人の日本語・英語の常勤講師(分会員)は、常勤講師としての再任用を
    求めていたが、常勤講師制度がなくなるというので、やむなく2005年
    9月に常勤講師とほぼ同じランクとされる上級講師ポスト(ただし研究室
    や研究費がなくなる、研究者性の否定、任期1年、最長3年の継続可、そ
    の後は確実にやめてもらうという制度)に応募した。その結果、4人のう
    ち1人は上級講師に。残る3人は2006年3月に雇止めとなった。うち、
    2人(英語教員、日本語教員)は他の道を確保した。

  3)本年1月24日の第5回団交で分会側から妥協案を提示(非公式には1
    2月の折衝から)

    ○分会の主張

    2006年度から学生数が50%増加し、4年後には学生数は4000名
    から6000名となる。2言語教育の充実のために貢献してきた日本語常
    勤講師の実績を評価し、学生が大幅に増え続けるこの4年の間、雇用を継
    続せよ。60歳定年になるまでの継続雇用の要求はとりさげる。(4年間
    の雇用継続要求の対象は、2002年4月以前に着任したすべての日本語
    常勤講師。例えば2001年に着任した教員の場合、2008年3月まで
    はすでに確保されているので、+2年となる。)

    ●理事会の回答 分会の提案を拒否する。


  4)2006年3月23日に行われた大分地労委による斡旋で、APUが斡
    旋案を拒否。
    詳細:http://ac-net.org/rtm-net/index.php?job=showdata&no=101

    地労委が示した斡旋案は「今回は、緊急性のある1名に限定して雇用を確
    保するために歩み寄れるところを探り、他メンバーについてはしかるべき
    場で改めて話し合いをもつ」というものだった。分会は受けいれたが、A
    PUは「99年の説明会の責任者は継続雇用を約束していないと言ってい
    るし、人事の根幹に関わることだから歩み寄れるところは何もない」とし
    て拒否。斡旋不成立。

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(資料2)

   立命館アジア太平洋大学時代の同僚が年度末に解雇され、目下法廷闘争以外
   の術をなくしました。立命館アジア太平洋大学設置準備委員会委員として、
   さらに同大学に四年間出向した時の知見から、小生は解雇された側の主張に
   道理があると判断し、支援しています。このまま行くと、語学の講師は全員
   解雇されてしまい、年収3百万の嘱託講師、あるいは語学学校からの派遣講
   師に代替されます。これは教育機関の自殺行為に等しく、人材養成という大
   学の社会的使命にも反する行為だと考え、憂慮します。

   金丸裕一
   立命館大学経済学部教授

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編集発行人:辻下 徹  Toru Tsujishita ( BKC 教員 )  
連絡先:tjst@rtm.ac-net.org
配信数 3889 [ http://ac-net.org/rtm/No/86 ]