[amp 09-04-29] グローバル30という岐路

Date: Wed, 29 Apr 2009 12:44:39 +0900

立命館大学教員の皆様へ

通称「グローバル30」へ応募をするかどうか、本日の常任理事会で審議する
そうです。5年間に40億円(内自己資金20億円)で、10年後までに留学
生を非正規生を含め最低10%を受け入れる体制(*)を作るという事業計画を出
すというものです。日本語を知らなくても英語だけで卒業できるコースを学部
と大学院に1つずつ設置することも義務つけられています。

  (*) [1]の試算では、現在の立命館の留学生比率2.7% を6%にし、残りは短期
   留学生等の非正規生で10%を達成できる、となっています。)

応募要領は、応募資格として科研費採択数130以上等々の詳細な基準を記載
していて、「トップクラス」の少数の大学を指名するような趣きがあり、立命
館も文科省から指名されたと言えなくもないようです。初回の募集に「指名さ
れた大学」として応募することは、文科省の期待に応えることになり種々の副
次的メリットが期待されているようですが、そのメリットが過大視され学園幹
部層で冷静さが失われ、学園の大きな岐路における決断に不可欠な沈着さが失
われているところが心配です。現在、強い危惧を表明しているのは産業社会学
部と理工学部だけだと聞いています。あまりに急なことで仕方がないことです
が、多くの学部が静観したままであるように見えることも気になるところです。

学園幹部が応募への強い意欲を示しているのは、グローバル30事業の中身よ
り、応募への報酬として文科省からの広汎な厚遇を得ることへの期待や、採択
されることが「大学評価の指標として機能する」という思惑の方が大きいよう
です[1]。しかし、政治的文脈で文科省に課せられた意義不明な「留学生30万
人計画」をクリアするための文科省の苦肉の策である事業に、財政の9割が学
費で支えられている私学である立命館が協力する必要性は全くなく、そのよう
な事業に応募して採択されることのデメリットははかりしれないものがあり
ます。組合ニュース[2]に詳しい分析がなされています。

立命館大学の進化を阻んでいるのは教学軽視の財務構造ですが、その改善の可
能性が、こういう数合わせの皮相的事業に多大なコストをかけることにより失
われるデメリットは本当に深刻なものです。日本の学生のために費やす有形無
形の資源がさらに減少することは不可避ですから、学生に対する説明責任は果
たせそうもありません。国際的教学環境を高めることは君達にとって意義があ
る、というようなことでは、コストの巨大さからいって学生は納得しないでしょ
う。

常任理事会文書[1]には「これまで取り組んできた全学の「信頼関係回復」の途
上にあることも踏まえ、基本線において大方の賛意を得ることができないと判
断されれば、無理な申請をすることはない。」とあります。今年度の申請を強
行するならば、遅々として進んでいない「信頼関係回復」の作業を明確にご破
算にしたことになります。

文科省と各大学はある意味で(対等とはいえないですが)協力関係にあります
が、文科省としても内心忸怩としたところあるはずの今回のような事業に、国
から独立した財政基盤をしっかり持っている立命館が進んで協力することは、
独立した存在同志の協力関係がもつ力強さを弱めるもので、長期的には、双方
にとってマイナスになることも予想されます。今回の募集は立命館を誘惑する
ものですが、それに負けないことが大学としての品位をさらに高める契機にな
りそうです。


 ┌1───
 │   国際性豊かな立命館大学をめざして
   ーー「国際化拠点整備事業」への申請の意義についてーー

                          2009.4.20 常務会
                        2009.4.22 常任理事会
                        2009.4.24 拡大学部長会議
                        2009.4.27 常務会
                          (起案:国際部)
                        (予定)2009.4.29 常任理事会

(p12より)
  「これまで取り組んできた全学の「信頼関係回復」の途上にあることも踏ま
  え、基本線において大方の賛意を得ることができないと判断されれば、無理
  な申請をすることはない。」

  「ただし、少なくない学部において、現在各学部・研究科が取り組んでいる
  国際教育の教科の支援のためにも、是非、積極的に対応すべきであるという
  意見があることを再度指摘しておきたい。」

  「表明されている批判や疑問の中心が、今次申請の基本的な方向性にかかわっ
  てではなく、手続き的な面についてであるという点を踏まえ、本文所は(中
  略)その疑問に答えることをめざした。教職員各位が本文書の意のあるとこ
  ろを了解され、立命館教学における国際教育を推しするめるための取り組み
  につき、広い範囲の積極的な合意が築かれることを期待したい。」


 ┌2───
 │ゆにおん No 06  2009.4.24
   =立命館大学教職員組合緊急アピール=
 「グローバル30」に関する全学的議論を行うことを理事会に強く求めます!!

(抜粋)

 「第1点目の問題点は、留学生の確保と対応に関する困難性です。(中略)
  相応のレベルを保った留学生を確保できるのか慎重な検討を要する問題です。」

 「第2点目の問題点は、財政負担の問題です。(中略)」

 「第3点目の問題点は、留学生対応の問題です。留学生対応は現状でも様々に
    困難な課題がありますが、国際部や事務室、学生オフィス、キャリアオフィ
    ス等での対応など、業務のありよう、働き方を大きくかえることとなりま
    す。現在かかえている困難をさらに増幅することも予想されるだけではな
    く、留学生以外の学生への対応にしわ寄せを来すことも危惧されます

 「第4点目の問題点は、本事業に採択されるということは、優れて立命館大学
      の教学や研究に影響を与える問題であるということです。(中略)」

   「そして最大の問題点は、全学的な議論、とくに教学機関や教授会、各職場
    での丁寧な議論がほとんどなされておらず、何らの合意のないままに、5
    月18日(月)という申請期日に拘束された拙速な決定がされようとして
    いることです。(中略)しかし、今回の進め方は、こうした全学合意に基
    づく長中期計画の作成という基本方針をかなぐりすてて、教学軽視の全学
    合意なきトップ・ダウンで決定しようとするものです。このような拙速で
    ずさんな計画を十分な議論もなく決定してしまうことは、信頼回復の歩み
    逆行するものであり、表明された信頼回復の意思が本物であるかについて
    深い疑念を抱かざるを得ません。」

   「常任理事会トップは、次回の29日の臨時常任理事会でグローバル30へ
     の申請を決定する意向であるとのことですが、多くの教職員はグローバル
     30についてもその問題点についてもまた申請内容についても、ほとんど
     知らされていません。常任理事会は、直ちにグローバル30の内容、今次
     申請を検討している計画等について全学に明らかにし、きちんとした手続
     きを踏み正確な理解に基づいて全学の議論を行うようにすべきです。議論
     にあたっては、何が何でも申請ありきの姿勢ではなく、丁寧な議論を行う
     ことを要求します。又、議論の結果、問題点について克服の見通しが立た
     ず、合意が得られなければ今回の申請は取りやめるよう要求します。」

┌───────
│¶以下は発信人の註.
  ログ目次:http://ac-net.org/rtm/amp/