[amp 2010-01-26] 「総長選挙規程」案、ほか
立命館大学教職員の皆様へ
新しい総長選挙制度を作る動きが大詰めを迎えているようですが、
大きな慣性を持ってしまっている経営優先の「校風」を変える契機
になるような制度ができるどうかは心もとないです【1】。素朴に考
えれば、立命館大学が学長を選び、立命館大学長が立命館学園総長
を兼任することが立命館学園における立命館大学の役割からすれば
自然ですし、さらに(立命館でも以前はそうであったそうですが)
総長が理事長を実質的に指名するというのが好ましいように思いま
す。あるいは、国立大学法人や慶應・早稲田等の若干の大手私大が
そうであるように、総長が理事長を兼任することが学園運営におい
て経営的視点が当然のように優先してしまう風潮を抑制するのに有
効となるように感じます。しかし、こういったことは、かなり先の
ことなのかもしれません。
ーーーー
「事業仕分」の判定に対する諸関係者から抗議の大合唱(文科省の
意見募集に対し15.3万件の意見があった由*)が功を奏したのか、来
年度の文科省関連予算はほぼ概算要求通りになったようです。その
ため昨年の動きが一過的なものとなる気配があり、前号で紹介した
「研究者ネットワーク(仮)」設立を呼びかけているNPOサイコムジャ
パンの榎木氏が、動きがこのまま終熄することを懸念しておられま
す**。【2】では「研究者ネットワーク」という名称が適切かと問う
ておられますが、「アフリカにょろり旅」からの引用は印象的でした。
* http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h22/1288550.htm
** http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100111
─目次───────────────────────────
1─ 学園の民主的運営に関する全学検証・検討フォーラム 2010.2.12
1a─ 全構成員自治の原則をふまえた総長選挙を
総長公選制を実現し学園民主主義を創造する会ニュース 26
2─ (転載)榎木英介「科学、学術、研究 〜 我々は何者なのか」
Science Communication News No.330 2010年1月25日号巻頭言
──────────
┌1───
│学園の民主的運営に関する全学検証・検討フォーラム 2010.2.12
〜「総長選挙規程」(案)を検証する〜
日時:2010年2月12日(金)午後6時半から
場所:衣笠至徳館102会議室(調整中)/BKCコアステーション大会議室
主催:総長公選制を実現し、学園民主主義を創造する会/立命館大学教職員組合
─1a──
全構成員自治の原則をふまえた総長選挙を
総長公選制を実現し学園民主主義を創造する会ニュース No26 (2010.1.25)
http://ac-net.org/rtm/f10/jitsugen-news-26.pdf
抜粋
┌───(p1)
│常任理事会は、1 月 20 日、その下に設置された「総長選任制度検
│証・検討委員会」の策定にかかる「総長選任制度の改正について(答
│申)」を、全学の論議に付すことを決定した。しかし「総長選任制度
│検証・検討委員会」は、それが「検証・検討」の対象であるはずの
│現行「総長選任規程」の立案・策定に主導的に関与した利害関係理
│事やこの間の一連の強権的・非民主的な学園運営の中枢に位置して
│いた複数の理事を当該委員会の重要な地位に据えていることもあっ
│て、その答申の内容は、学部教授会での真摯な議論を誠実に当該委
│員会に反映させるべく尽力してきた学部長理事の奮闘にもかかわら
│ず、かならずしも全構成員自治の原則をふまえた民主的な「総長選
│挙規程」とはなっていない、というよりもむしろ、現行「総長選任
│規程」の非民主的な性格を色濃く残し、総長の選出プロセス全体を
│理事会のコントロール下におくものとなっている点で、つぎのよう
│な 重大な問題点を含むものとなっている。
│
│第 1 に、現総長の民主的正統性について重大な疑念を醸し出すこと
│になった現行「総長選任規程」の非民主 的な内容・性格、その規程
│の制定プロセスおよび2006年の総長選任の実施プロセスについての
│真摯な検証・ 検討が行われないまま、「現行総長選任規程は、正規
│の手続に則って制定され、この点において瑕疵がなく、また現総長
│の選出も正規に行われたものである」と強弁していること。
│
│第 2 に、「総長選任を総長選挙として位置付け直し、規程名称も
│『学校法人立命館総長選挙規程』に改め、 制度としても『総長選挙
│制度』と呼称する」というのであれば、それが総長選出制度の根本
│的な性格変更を意味する点で本来的に新しい「総長選挙規程」の創
│出・制定とされるべきところ、現行「選任規程」の「改正」 という
│立場に固執していること。
│
│第 3 に、選挙管理委員会の独立性・中立性の保障と、そのようなも
│のとしての選挙管理委員会が総長の選出プロセス全体を統括する構
│造となっていないところから、現学園執行部の意向を総長選出過程
│に反映させやすい仕組みを残していること。
│
│第 4 に、学問の自由と大学の自治の保障、その立命館バージョンで
│ある「全構成員自治」の基盤をなす各学 部教授会・各付属校の教職
│員会議・各職員職場などを基礎単位として制度設計がなされるので
│はなく、理事会・評議員会・大学協議会などの管理部門の役割を著
│しく肥大化させていること。
│
│第 5 に、推薦委員会の委員構成や選考委員の構成において、理事の
│比率が異様なまでに大きいこと。また、推薦委員や選考委員の選出
│は、これを「選挙」ではなく、あくまでも「選任」と位置づけるこ
│とによって、現学園執行部の意向の下に服せしめる余地を残してい
│ること。
│
│第 6 に、選挙活動にかんし、一方では、禁止の範囲が不当に広すぎ
│て自由な選挙活動を萎縮させるおそれがあるとともに、他方では、
│禁止対象に当然含められるべき事柄(¶p7 で理事長や理事の選挙活
│動、直属の上司が部下に働きかけること、などが挙げられている)
│が含めていないこと。
│
│そこで、「総長公選制を実現し、学園民主主義を創造する会」運営
│委員会は、常任理事会の提案にかかる「総長選任制度の改正につい
│て(答申)」の問題点につき、以下、第1部において、現行「総長選
│任規程」の非民主的な内容・性格、その規程の制定プロセスならび
│に2006 年の総長選任の実施プロセスの問題点、さらには、これらと
│この間の一連の強権的・非民主的な学園運営との関係について検討
│し、第2部において、理事会のコントロール下の総長選任ではなく、
│全構成員自治の原則に基づく民主的な選挙規程の創出を求めるとい
│う立場から、常任理事会の提案にかかる「総長選任制度の改正につ
│いて(答申)」の問題点を検討・批判することにしたい。
└───
┌───(p3)
│4 現行「総長選任規程」以降、どのようなことが起こったのか?
│
│現行「総長選任規程」の制定以降、どのような非民主的かつ強権的
│な管理運営がおこなわれたかにつき、民主的正当性の観点から見て
│重大だと思われる典型事例とそこに含まれる問題点を簡潔に列挙す
│れば、次のようである。
│
│(1) いわゆる「 ガヴァナンス文書」(05 年)で常務理事会(常務
│会)が常任理事会の議決・承認を欠いたまま設置された。常務理事
│会(常務会)は、非民主的かつ強権的な学園運営の司令塔として、
│法的根拠の裏づけのないままインナー・キャビネットないし重臣会
│議として運用されてきている。
│
│(2) 05 年度の一時金(ベア5.5%相当)1 ヶ月カットの強行――教職
│員組合との民主的な合意形成のルールを破棄。京都地裁に提訴され、
│訴訟は現在も継続中。
│
│(3) 「立命館学園中期計画」の策定(06 年09 月)――常務理事会
│に諮っただけで、常任理事会で議決・承認されないまま執行された
│という。したがって、現行「中期計画」には合法性と民主的正当性
│が欠如。
│
│(4) 非民主的な総長選任(06 年10 月)――総長選任プロセスにお
│ける数々の不透明性。総長の民主的正当性に対する疑義を醸成。
│
│(5) 退任慰労金大幅増額支給決定(川本理事長〔当時〕=1 億
│2,000 万円、長田総長〔当時〕=4,000 万円)
│(07 年3 月)――常任理事会に諮られることなく、唐突に一般理事
│会で総務担当常務理事が提案・可決。しかも、遡及的運用。イン
│ナー・キャビネットとしての設置したはずの常務理事会(常務会)
│にすら提起されていない。学部長理事制に対する究極の破壊行為。
│
│(6) 超勤手当未払いの長年にわたる放置と労働基監督署の査察・指
│導――長年にわたっての違法状態の放置。組合要求もあって、2 年
│遡って支給決定(08 年3 月)。しかし、長年にわたる超過勤務状態
│は、総長によれば、「日本の文化」とされる。
│
│(7) 生命科学部特別転籍措置と補助金25%カット処分(08 年5月)
│――文科省から管理運営不適切の指摘をうける。
│
│(8) 評議員選挙における職員区での不正行為(08 年7 月)――現在
│に至るも問題発生の原因究明とその防止策についての検討なし。
│
│(9) 理事会側が学友会代理徴収の廃止方針を学生に対して正式表明
│(08 年7 月)――全構成員自治の重要なパートナーである学生の自
│治活動に対する破壊行為。この方針は、その後批判を受けて撤回。
│09 年度の学友会費代理徴収は執行。
│
│(10) 全学協議会(全学協)に対する破壊行為(07 年~)――退任
│慰労金大幅増額支給決定の問題を議題として取り扱うことを忌避し、
│団扇やプラカードなどの持ち込みを制限。全学協「閉会」問題につ
│いては、全学協確認文書起草委員会で議論を重ね、最終的に全学協
│構成パート(理事会・学友会・院協・組合)で経過を記録すること
│になった。
│
│(11) G30 をめぐる問題(09 年6 月)――教授会との関係で、当初
│の総長の取り扱いは報告事項。批判を受け、「常軌を逸した提起で
│あった」ことを認めて(教学対策会議での上田副総長)審議事項化。
└───
┌───(p8)
│むすび
│
│以上、その他にも、詳細な検討を要する部分はあるが、これまでの
│検討からも常任理事会の提案にかかる「総長選任制度の改正につい
│て(答申)」の意図とその問題点を浮き彫りにすることができた。
│それは、一言でいえば、常務理事会(常務会)を中核とする学園執
│行部による非民主的・強権的な管理運営方式の温存を企図するもの
│である。(以下略)
└───
┌2───
│(転載)Science Communication News No.330 1月25日号 巻頭言
榎木英介「科学、学術、研究〜我々は何者なのか」
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100125/p1
┌───
│岩波書店「科学」が開設したページ、科学技術政策議論の広場
│http://www.iwanami.co.jp/kagaku/hiroba.html
│に、私の書いた「お任せ科学・技術政策を超えて」 という文章が掲
│載された。http://www.iwanami.co.jp/kagaku/E_Enoki20100120.pdf
│
│その中で私は、科学技術政策を政府任せにする時代は政権交代で終
│わった、科学コミュニティや市民が、主体的に意見を言う必要があ
│ると述べた。
│
│そして、その手段として、「研究者ネットワーク(仮)」の設立の
│必要性を説いた。
│
│私は、サイコムジャパンのメンバーを中心に、科学技術政策を考え
│る新団体を設立することが決まっていた中、行政刷新会議「事業仕
│分け」があり、科学コミュニティ内にAAAS(全米科学振興協会)の
│ような、ボトムアップの草の根研究者組織が必要だという意見が高
│まり、この「研究者ネットワーク(仮)」を必要しなければならな
│いという認識に至った。
│
│12月6日に開催された「ノーベル賞受賞者じゃない研究者の緊急討論
│会」で感じた、多くの人達の思いを、持続的な活動につなげていき
│たいという思いで新団体「サイエンス・サポート・アソシエーショ
│ン(SSA)」を立ち上げた。http://sci-support.org/
│
│活動をする中で、大きな悩みを感じている。
│
│これは、実は以前から感じていたことでもあるのだが、私達の活動
│をいったいどういう言葉で表せばよいか、ということだ。
│
│AAASも私達も、研究者だけをメンバーにしたいとは考えていない。
│
│非営利組織である、という点を生かし、市民、マスメディア、行政、
│その他様々な立場の方々が集う場としたい。日本学術会議が「科学
│者の国会」であり、市民などがかかわれないことと決定的に異なる。
│欧米のように科学アカデミーと非営利組織の共存により、より多様
│な意見を科学政策に反映したいと思っている。
│
│とすると、「研究者ネットワーク」は、その意図を表わしていない
│ことになる。
│
│ブロガー発声練習氏は、この点にふれており、
│http://d.hatena.ne.jp/next49/20100118/p2
│「科学愛好家ネットワーク」というご提案をしてくださっている。
│
│ただ、科学という言葉が入ると、人文科学、社会科学系の方々が違
│和感を感じるという。自然科学の研究者も、人文科学、社会科学が
│「科学の作法」で研究を行っていない、という意識を持っていると
│いう。
│
│科学技術も同様に人文、社会科学を排除してしまう。
│
│では、学術はどうだろう。日本学術会議というではないか…
│
│やはりしっくりこない。学問、学者、知的労働者、専門家…それも
│しっくりこない。
│
│ガリレオの時代、いまでいう科学はnatural philosophyであり、科
│学者はnatural philosopherと呼ばれていたという。今でもアメリカ
│の博士号はDoctor of philosophy (PhD)であり、philosophyがいち
│ばんしっくりする言葉かもしれない。
│
│しかし、natural philosophyはかつて窮理(きゅうり)学と訳され、
│いまは自然哲学とも呼ばれるが、その言葉もイメージが掴めない。
│
│私達が何者であるか、ということを表すよい言葉がないということ
│を痛感する。これが、医師や弁護士などと異なるところだ。
│
│悩みはつきない。アイディア、ご意見があれば、お教えいただける
│と幸いだ。
│
│ただ、何かを知ろうとする営みは、どんな人にもある、人が人たる
│所以の行為だ。それを大切にしたい。
│
│ 「アフリカにょろり旅」(青山潤著 講談社文庫)
│ http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062762390?tag=nposciencec0d-22
│
│から一節を引用したい。
│
│ 「研究者なんて糞だと思います。何もできないくせに口ばっかり
│ で!」
│
│と教授にくってかかり、研究に疑問を持った青山氏が出会った以下
│の場面。
│
│┌───
││しばらくたって、市民講座で先生の講演を聴いた。私にとっては目
││新しくもない「いつものウナギの話」だった。しかし、講演の後、
││決して豊かとは言えない身なりをした老人と、孫なのだろう、連れ
││て来た子供が目をキラキラ輝かせ、話す声が耳に残った。
││
││「面白かったね。ウナギはすごい所まで泳いで行くんだね。不思議
││だね」
││
││その時私は、初めて生態学研究が何も作り出さないのではなく、自
││分自身が作り出したものを料理できないだけだったことに気がつい
││た。
││
││(そうか、俺が未熟なだけだったんだ)
││
││一見なんの役にも立たないようだが、研究活動は立派に人々の心の
││糧を作り出していたのである。
││
││思えば、アンデスの友人たちも夜空を見上げて、星の不思議につい
││て語り合っていた。たとえ貧しくとも、人が人である限り、知的好
││奇心は心の栄養になっていることを知った。そして私は、博士課程
││への進学を決意したのだった。
│└───
└───
┌───────
│ログ・趣旨:http://ac-net.org/rtm/amp/
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