[amp 2010-07-30] 理工教員会議7/27での発言集, 立命館未来フォーラム7/30

目次 趣旨

立命館大学の教員のみなさま
Cc: 立命館学園のみなさま

   この数年間、立命館大学は岐路に留まっています。学園拡大時期
   に培った経営力を活かして「株式会社立命館」の道をとことん究
   めるか、あるいは、立命館の受験者の大半が立命館を第一志望と
   するような大学に進化していくための「教学」重視の地味な歩み
   を開始するか、その岐路です。この数年間、「経営の道」に学園
   が邁進しようとすると何かしらブレーキがかかる、ということが
   繰り返されてきて、いまなお、「教学の道」を歩み始める選択肢
   がわずかながら残されており、総長選の結果によっては「経営の
   道」と訣別し「教学の道」を歩み始めることが真剣に検討される
   可能性もあります。

   この可能性について、立命館学園の経営部門は非常な危機感を持っ
   ているようです。目に見えないゆったりとした教学の進展が見え
   る非凡な経営者は稀ですから、華々しい皮相的活動を控え「教学
   の道」を地味に歩んでいくことは学園の衰退のように見えるので
   はないでしょうか。また、「教学の道」を歩めば経営部門は大学
   が普通必要とする程度の正常な規模に縮小していきます。この見
   通しが肥大した経営部門に危機感を与えるのは当然かも知れませ
   ん。

   そこで、まず、経営部門はオープンな総長立候補制の導入を何と
   か阻止しようとしていたようですが、それはうまくいきませんで
   した。そこで、2020中期計画を総長選前に決めて、誰が総長になっ
   ても大丈夫となるようにしようと試みたわけですが、この方法も
   全学の批判を受けてうまくいきませんでした。しかし、ついに、
   誰が総長になろうとも、地味な「教学の道」など絶対に歩めない
   ようにする決定的アイディアを得たようです。それは、総長選が
   終わる前に、新キャンパスを買うという取り返しがつかないこと
   をしてしまう、というアイディアです。

   立命館の持っている資金の大きな部分を投じて新キャンパス用地
   を買ってしまえば、そこにキャンパスを開設し展開していくプロ
   セスは既定のものとなり、それにともなう喫緊の経営的性格の諸
   問題に学園全体は10数年にわたり忙殺され、経営部門の学園内
   での発言力は圧倒的なものとなります。その間、重要な教学問題
   は「当分棚上げ」という状態が続くでしょう。また、財政的余裕
   を失うだけでなく新キャンパス展開に新たな人的資源を夥しく投
   入す必要が生じますから、立命館の大学としての進化に不可欠な
   ST比*の飛躍的改善や各部門で起こりつつある教育改革の真剣
   な試みへの人的支援などは問題外となるでしょう。そして「教学
   の道」を歩む選択肢は消滅します。

   *教員一人あたりの学生数。立命では文社系で60。
    理工系に限れば立命40、同志社31、早稲田・慶應は21。

   3ヶ月後に新キャンパス用地を購入することは、「経営の道」を
   一気に疾走し後には戻れないところまで行ってしまうということ
   です。経営部門が生き残りをかけて最後に打った博打のような印
   象を受けますが、こういった威勢のいい提案への抵抗力が乏しい
   のが「立命社会」の弱みかも知れません。

   未来を思い未来に生きる立命館気質には、新キャンパス購入とそ
   の後に学園全体に満ちる活気は魅力的に映るかも知れません。こ
   の誘惑に勝つのは容易ではなさそうです。G30の誘惑にも負け
   てしまいました。地道な教学改革へのG30の障害は立命館の財
   政規模を考えればマイナーなものとも言えますが、今回の狡猾な
   誘惑に負けた場合の教学的ダメージは致命的なものです。立命館
   気質を克服して今回の誘惑に抗することができるかどうか、それ
   が今後の立命館のありかたを決めてしまうように思います。新し
   い人たちが沢山います。未来を思いつつも現在を丁寧に生きる新
   しい立命館気質が形成されつつあることを感じます。

   経営部門が存亡をかけて打ったこの容易ならぬ勝負手に対し、教
   学部門も存亡をかけて熟慮し信頼しあって責任ある全学的な判断
   がなされますように。

─目次───────────────────────────
 1─ 理工教員会議7/27での発言集
 2─ 「フォーラム―教学の質の高度化と学園の未来像―」
──────────────────────────────────

┌1───────
│理工教員会議7/27での発言集

    理工学部教員会議でキャンパス移転について、学部長からの説
    明のあと、1時間近く意見交換がありました。

    なぜ長期計画に相当する重大なことをわずか3ヶ月で決断しな
    ければならないかという質問が最初のほうにありましたが、理
    由は単純で、この物件の交渉相手である企業が10月までしか
    待ってくれないから、ということでした。しかし、真の理由は、
    誰が総長になろうとも現在の経営優先体制が微動もしないよう
    「取り返しがつかない」決断をしてしまえ、ということだ、と
    いうのは明白のように思います。

    十数名のかたが発言され、全発言がこの新キャンパス案に批判
    的でしたが、その中から今までに転載の許可が得られた発言を紹
    介したいと思います。

    ┌─(a)─
    │一昨年に立命館はコンプライアンスにもとることをして社会的
    │に大きな批判を受けた。それで理事会は反省したのではなかっ
    │たか。その後も新しい学部ができ、それもあってキャンパスが
    │狭隘化した。その新学部を作らずにキャンパス狭隘化の議論を
    │始めていれば、まだやりようがあったと思う。
    │
    │大学として、学生さんの教育の方を向いて仕事するというよう
    │に方向転換するはずだったのに、理事会の中でこのような(大学
    │規模を拡大させる方向の)話がまたもや出てきて、それが、一定
    │の議論の机の上に乗っていること自体が、大学として危険な状
    │態にあると思う。理事会の中で、こういう話をしている場合で
    │はなく、当面(十年とか二十年とかの間)は大学として社会的に
    │も立て直していかなければいけない時期だ、という雰囲気がな
    │いのは不思議だ。
    └───

    ┌─(b)──
    │600億円を使って、今のままで質を上げていく、ということ
    │の検討はされていないそうだが、大学はどうあるべきかという
    │ことをきちっと考えていないように思う。衣笠からBKCに移っ
    │たときは、理工学部という大きいものがあって、それが手狭に
    │なっていることがあって、それを移した結果成功したと思って
    │いるし我々もそう思っているが、近未来の受験者動向、経済状
    │況、および、今回は、公私協力無しといった厳しい諸条件にも
    │かかわらず、同じようなことをもう一回というように甘く考え
    │ているとしか思えない。
    │
    │大切なのは、今ある力で、規模を拡大するのではなく、質の向
    │上を図って実質的なものをよくしていくことによって大学の地
    │位の向上を図ることで、そのほうが長期的には立命館にいいと
    │思う。そういった方向が全然検討されないままに意見を求める
    │こと自体がおかしいのであって、そこは、あ、そうですかとは
    │聞き流せない。
    └───

    ┌─(c)──
    │最初の説明によると、BKC移転時と同規模の600億円の原
    │資がある。それだけ余裕あるということは埋蔵金といわれても
    │仕方がないところがあるが、それはさておき、手元にある60
    │0億円の本来の使い方について全学的な議論が十分にされてい
    │ない。この文書は学園中枢部が「やりたい」という立場から、
    │それを正当化する調査結果や検討結果等が書いてあるだけで、
    │それ以外の選択肢は、否定的なコメントしか書いていない。
    │「やりたい、やりたい、やらしてくれ」という文書になってい
    │る。
    │
    │立命館大学のみんなの意見を持ち寄って、これから10年20
    │年30年かけていい大学にしていくためには、どういう形でこ
    │の600億円を使うべきか、いままでにないようなレベルでの
    │全学議論をやってみてはどうか。その結果の新キャンパス案で
    │あれば問題はない。そういうことをせずに、やりたいやりたい
    │という文書をこってりつくって、そういう方向の議論だけをし
    │てくれという姿勢は余りにも不合理、しかも、すぐに結論を出
    │さざるをえないというスケジューリングはあってはならないも
    │のであり非常によくない。
    │
    │600億円があれば、衣笠にある学部や新学部を1つか2つを
    │BKCに持ってくるということを当然考えてもよい。こちらは
    │広さが5倍はある。学生数は半半なことを考えると明らかにア
    │ンバランスである。まず新キャンパスを展開するのではなく、
    │例えば、現有キャンパス(衣笠・BKC・朱雀)の中で、全学
    │部の教育・研究の中身を全国で最も立派な学部にするためには、
    │600億円の使い方はどうあるべきか、という観点から全学部・
    │全職場で議論してみる価値は多いにある。
    │
    │その結果として新キャンパス展開がよいとなれば、反対してい
    │た人もやろうという気になる。そういうプロセス抜きにして、
    │この文書にしたがって10月までに決めるということになれば、
    │いくら議論しても意味がないから放っておこうという気になる。
    │日常的な業務だけやり、学園の将来のことを考えても意味がな
    │い、ということになりかねない。本学園としては、これが一番
    │危ないことであり、この10年、その危機感を感じている。み
    │んな物言わぬ仕事師になってしまうのか、あるいは本学構成員
    │が信頼と一体感をもって日常的に本学発展のために創意工夫を
    │積み上げるような学園になるのか、この観点から本学の将来を
    │決する瀬戸際の大プロジェクトと思う。
    │
    │最後に、本学の真の発展のために、600億円の最も有効な使
    │途について、各学部・各職場で十分な議論を重ねた上で、本件
    │の結論を出すべきである。
    └───

    ┌─(d)──
    │出ものがあるから買っておけという事と、杜撰な財政計画はリ
    │ンクしている。当初は1.2万x3=3.6万人で規模は変わ
    │らないようだが、移転に同意する学部が 1.2万に満たないのは
    │自明だから、余った土地を学部新設に使う事はほぼ間違いない。
    │今後、構造化した不況と当然の少子化で学生の私学離れは進む。
    │新設政策は失敗し、新学部増設してもキャッシュの増大はのぞ
    │めず当然これまで貯めた貴重な蓄積財源(700億?)に手をつけ使
    │いつくす事になるだろう。社会状況はこれまでの膨張政策が機
    │能した状況から質的に変わっているのにそれをまったく考慮し
    │ない従前の習慣に従う財政検討しかできない総合企画部は職務
    │怠慢であり、解体すべきである。
    │
    │今学生の基礎学力低下が深刻である。現場からは従来の教育を
    │根本的に改革する提案が次々出されており、それを実施するに
    │はST比の改善はもちろん人的サポートを増強する為の定常的財
    │源が当然必要である。現場に根ざした教育の中身を変える企画
    │に使えば本当に生きる蓄積財源が、ハコ作りに消えるのを黙視
    │するわけにゆかない。
    │
    │もし、この計画を実施すれば立命館は10年もつまい。前理事長
    │人脈の自己保存本能が背景にあることが推測される。立命館は、
    │市民の猛反対にもかかわらず市長の人脈保存のために空港建設
    │に走った「株式会社神戸市」と同じ運命をたどり、学生数だけ
    │多いが関関同立にさえ並べてもらえない、赤色巨星化した大学
    │になる。
    └───

┌2───────
│「フォーラム―教学の質の高度化と学園の未来像―」
  立命館未来フォーラム・立命館大学教職員組合 主催

   ┌─転載──
   │
   │――「未来フォーラム」初の大規模企画です!!――
   │
   │現場からの視点を常に踏まえ、「中期計画(中間まとめ)」を視野
   │に入れながらも、その枠組に捉われることなく、もっと広く学園の
   │未来像を議論していきたい、これが「未来フォーラム」の目指すも
   │のです。地に足の着いた学園政策・ヴィジョンを議論していく「場」
   │でありたいと考えています。
   │
   │この目標の実現に向けて、参加型のフォーラムを開催いたします。
   │今回は、現職の学部長にご参加いただけることになりました。「中
   │期計画(中間まとめ)」の第2〜5委員会の委員長を務めた学部長
   │に、委員会「中間まとめ」に対する思いを、そして何よりも、学部
   │規模適性化を含む教学改革の方向性について、大いに語っていただ
   │き、あるべき学園未来像を皆さんとともに考える、そういう「場」
   │にしていきたいと思います。
   │
  ├───────────────────────────────
   │    立命館未来フォーラム・立命館大学教職員組合 主催
   │
   │     「フォーラム―教学の質の高度化と学園の未来像―」
  ├───────────────────────────────
   │
   │[日  時]2010年7月30日(金) 19:00〜
   │
   │[会  場]衣 笠 以学館 3号(メイン)
   │      BKC コラーニングハウスI  C107
   │
   │[報  告]
   │   二宮 周平 氏(中期計画第5委員会委員長、法学部長)
   │   坂根 政男 氏(中期計画第4委員会委員長、理工学部長)
   │
   │[コメント]
   │   板木 雅彦 氏(中期計画第2委員会委員長、国際関係学部長)
   │   佐藤 春吉 氏(中期計画第3委員会委員長、産業社会学部長)
   │
   │[司  会]
   │   宇野木洋さん(未来フォーラム座長、文学部教授)  
   │
   │
   │定期試験中のお忙しい時期ですが、大変貴重な機会ですので奮って
   │ご参加ください。誇りを持てる学園の将来像を、現場から考えてい
   │きましょう!!
   └───

┌───────
│ログ・趣旨:http://ac-net.org/rtm/amp/
  ¶は発信者註