[amp 2010-08-30] BKC月曜会9/7, 元総長・理事長室室長の新キャンパス構想批判他
立命館大学教員の皆様
Cc:学園のみなさま
─目次────────────────────────────────
【1】 京都新聞
(2010-08-27) 立命大が大阪進出構想、茨木・工場跡地に一部学部を移転
(2010-08-28) 立命大の新キャンパス構想で茨木市「魅力的だ」
【2】「月曜会」・「教育の未来を考える会」9/7,9/13
【3】2010-08-20 元総長・理事長室室長から理事への書簡:茨木キャンパス案について
【4】「1000億円の使途ーー提案・賛同投票・意見表明」サイト
───────────────────────────────────
新キャンパス構想について京都新聞で報道されました【1】。茨木キャ
ンパス購入が既定事実であると誤解される方もおられるかも知れま
せんが、教学的な問題が大きく教育研究部門での合意形成にはほど
遠い状況であり、9月になって学園内での議論は本格化します。多
くの学部で夏休みを返上して7月末に提示された「新キャンパス構
想」の吟味を進めているようですが、多くの学部で、吟味すればす
るほど問題が多いことが認識されてきています。学部長が個人的に
賛成意見を表明していても、学部世論は構想に根本的に批判的、と
いうところもあるようです。9/7,13のBKC月曜会【2】で、この
問題についても意見・情報交換が行われる予定です。
新キャンパス展開は学内留保の1000億円余の資金の半分以上が
使われると試算されています。さらに3キャンパス体制になった場
合、経常的経費も30億円程度増える予想もあります【3】。新キャ
ンパス構想が採択された場合には断念しなければならない多くの選
択肢があります。そういう選択肢の提案・賛同表明・意見表明等を
する学内限定サイト【4】を試作しました。提案等をお寄せください。
ところで、新キャンパス構想は経営部門の生き残りをかけた勝負手
だという印象を受けていますが、経営部門からみて新キャンパス構
想に問題はないのでしょうか。2009年3月まで総長・理事長室
の室長として経営部門中枢に長年おられた鈴木元氏(2010年3
月に学園を退職)が一般理事を含む立命館幹部に8月20日付けで
新キャンパス構想を危惧して送付した書簡【3】、という形の文書
が、ある方からメール転送されてきました。学園内で共有すべき情
報が多数含まれており、鈴木氏自身による文書であることが確認で
きましたので、転載いたします。9月の各学部で行われる検討の際
の参考資料としても、ご一読ください。
【3】にある立命財政についての知見や「常識」はとても参考にな
ります。ただ、6.3%のベースアップのために毎年の積立額が大
きく減ったという主張は間違いと思います。一時金カットはそのま
まにしてベースアップで2005年時点の給与水準に戻しただけで
すし、そもそも、専任教職員給与の6.3% は数億円程度であり、百数
十億の積立額が数十億に(といっても減価償却費70億円は別とし
て、ということですが)減る主因になりえないことは自明です。さ
らに言えば、積立額が多すぎることが立命館の質的発展を阻んでい
る元凶なので、減ったとしても減価償却費を含めれば150億円で
すから、まだ多すぎるというべきですが、それは経営部門の視点に
はなりえないということです。他の諸点について真偽を発行人自身
は吟味できませんが、鈴木氏が社会的名誉をかけて発言しておられ
るので間違いがあっても思い違いをされているにすぎないと判断し
転載しました。間違い等があれば、確認の上、訂正しますので、お
知らせください。
【3】は、本学園でいつ頃からか始まった密室的意思決定の悪癖が
学園中枢部内部にも及んでいることを示唆するもので、この悪癖か
ら立命館が脱却する契機の一つになると思われます。この役割を
【3】が果たす際に個人名や具体的役職名は不要と判断し、伏せ字
とさせていただきました。
┌1───────
│京都新聞
(2010-08-27) 立命大が大阪進出構想、茨木・工場跡地に一部学部を移転
http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20100827000086
(2010-08-28) 立命大の新キャンパス構想で茨木市「魅力的だ」
http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20100828000020
8.28の新聞記事には以下が続いているそうです
┌───
│立命館の新キャンパス構想は、関西の他の有力私立大学がキャンパスや学部増
│設などの拡大路線を打ち出すなかでの「乾坤一擲(けんこんいってき)」の策
│だ。
│
│同志社大学は文系学部の今出川キャンパスの一本化に合わせ、周辺で積極的に
│用地を取得し、発祥の地での「同志社ブランド」の強化を図る。関西大は大阪
│府高槻市や堺市に新キャンパスを設ける拡大路線を進め、関西学院大学も聖和
│大との法人合併で教育学部を新設する。
│
│ライバル校の動きは目まぐるしく、全国の受験生の東京志向もあって、立命大
│も「関関同立」に安住できる状況にはない。
│
│大阪進出には「京都の大学」のイメージが薄らぐ懸念もあるが、茨木市を最有
│力候補地とする新キャンパスには実学系の学部を想定し、人文系の衣笠キャン
│パス(京都市北区)、理工医薬系のびわこくさつキャンパス(草津市)と役割分担
│を明確にする。しかし、京都、滋賀、大阪の3拠点に分かれることで、学生の行
│き来が難しくなり、大学としての統一性が課題となる。
│
│学校法人立命館は、既に立命館中高の長岡京市への移転を決めている。大学の
│新キャンパス構想と合わせると、莫大な資金が必要で、学内には慎重論もある。
└───
┌2───────
│転送:[ml-cm-bkcmf 1045] 「月曜会」・「教育の未来を考える会」
From: "masayuki miura"
Date: Sat, 28 Aug 2010 16:04:35 +0900 (JST)
┌───
│ 会員の皆様
│
│ 酷暑お見舞い申し上げます。
│
│ さて、夏休み前に連続して開催しました「月曜会」・「教育の未来
│ を考える会」を再開したいと思います。
│
│ 昨今の『新聞記事』にみられるように、学園の将来計画が十分に吟
│ 味もされず、議論もされない状況のもとで、「新キャンパス展開」
│ と言った大掛かりな財政運用を必要とする案件が、どのような経過
│ かはしりませんが、マスコミに発表されるという事態を招いていま
│ す。このことの問題の大きさについても認識を新たにしたいと考え
│ ています。
│
│ この間、私たちは「月曜会」・「教育の未来を考える会」での意見
│ 交流を行なってきています。そこでは、学生への教育支援・生活支
│ 援のあり方を、現在地道に取り組まれている理工学部での「現場実
│ 践」に基づきながら、今そして将来的に必要な教学のあり方につい
│ て深い議論をしてきています。
│
│ 理工学部での「実践」は、理工学部にとどまるものではなく、他の
│ 学部での学生への対応においても共通する教訓をたくさん導き出し
│ てくれています。そうした問題や実態をさらに広範な学部の方々の
│ 参加のもとで、共有出来ればと考えています。時はまさに「総長選
│ 挙」の時期。「現場」での地道な教育実践、学生支援のあり方は、
│ まさしく学園の教学政策、学園運営と密接不可分のものと言えます。
│ 本当に「現場に目を向け・耳を傾け」てくれる「私たちの総長像」
│ についても、意見の交流が出来ればと考えています。
│
│ 次の日程で予定していますので、是非ご参加ください。
│
│ <記>
│
│ 日時: 一回目9月7日(火): 夕刻6:30より
│ 二回目9月13日(月): 夕刻6:30より
│
│ 会場:一回目、二回目ともエポック立命、3階会議室
│ (詳細は当日、ご確認ください。)
│
│ 2010年8月28日
│ 「月曜会」世話人
│ 経済学部・松本 朗
│ 理工学部・池田研介
│ スポーツ健康科学部・三浦正行
└───
┌3───────
│元総長・理事長室室長から理事への書簡 2010-08-20:茨木キャンパス案について
http://www.ac-net.org/rtm/campus/doc/2010-08-20-suzuki.html (id,passwd:rtm)
¶個人名や具体的役職名は転載時に**等におきかえました(発行人)。
┌───
│ 学校法人立命館の理事ならびに関係者の皆さんへ
│ 2010年8月20日 鈴木 元
│
│ 学園の将来構想の合意もないいまに、数百億円を投入して茨木市に
│ 第三キャンパスを確保し、経営学部と政策科学部を移転させるとい
│ う構想は拙速に決めるべきではない。
│
│はじめに
│
│ 私は2008年度末(2009年3月)まで、学校法人立命館の総長・理事長
│ 室室長を務めていた鈴木元です。その期間私は、理事会、常任理
│ 事会、常務会、部次長会議などの機関会議の全てに出席し、しか
│ るべき提案と意見を述べていました。
│
│ 2009年度は大阪初芝学園の副理事長の任に事実上専念し、立命館
│ へは打ち合わせに来る程度で正規の会議に一切出席していません
│ でした(2010年3月末で定年退職)。しかし学園を取りまく重要な問
│ 題についは、**氏に忌憚のない意見を申し上げていました。し
│ かし残念ながらいくつかの問題では適切に対応されず学園は不利
│ 益をこうむりました。
│
│ 例えば、最近の問題で言えば、慶祥高校の足羽氏への特別手当支
│ 払(年間九百数十万円)について、私は昨年(2009年)の年末にその
│ 存在を知り、再々に渡り**氏に「当初の主観的意図がどうで
│ あれ、私学法の趣旨からから言って間違であり、ただちに止める
│ べきです」申し上げていました。しかしながら**常務理事(以下、
│ **常務)など**部の「特に問題はありません」との意見を採用し
│ 4月以降も支払を続けてきました。ところが文部科学省から呼び出
│ しを受け「ただちに止めなさい」との強い指導を受け6月から取り
│ やめざるを得なくなり、理事会に報告し了承されました。しかし
│ その際、私が「止めるべき」と申し上げていたことも、文部科学
│ 省から「止めなさい」との強い指導を受けたことも報告せず**
│ 常務(彼の担当期間だけで、支払うべきでなかったお金約5000万円
│ が支払われていた)を含め誰一人としてこの問題の責任を取ってい
│ ません(詳細は別途報告する)。
│
│ 私の反省は、**氏に言ってもダメな場合は理事の皆さんに直接き
│ ちんと伝え、理事会として正しい判断ができるようにしなかったこ
│ とです。
│
│ 今回、夏期休暇にはいる直前の7月21日ならびに7月23日の常任理事
│ 会において、突然、大阪府茨木市にあるサッポロビール茨木工場跡
│ 地(衣笠キャンパスとほぼ同じ面積の12ヘクタール)を購入し、政策
│ 科学部と経営学部を移転させ立命館大学(以下、立命館)の第三キャ
│ ンパスを設けるとの「提案」がなされ夏季休暇中の9月に論議集約、
│ 10月に契約に持ち込みたいとされています。
│
│ 現在学内では「2010年から2020年にかけての立命館の中期計画」を
│ 設定するための議論が5つの部会に分かれ、約200名の教職員が参加
│ して議論がされてきましたが、いずれの委員会においても新キャン
│ パス確保、ましてや茨木市に数百億円をかけて経営学部と政策科学
│ 部を移転させるなどは全く議論されてこなかったことであり、関係
│ している一部の人を除けば、まさに「寝耳に水」の「提案」でした。
│
│ 私は、在職中に、この問題について多少の情報を得、**氏等に意
│ 見を申し上げていた関係者の一人として、理事をはじめとする皆さ
│ んに情報と意見を申し上げる責任を感じ文章をまとめ届けさせてい
│ ただくことにしました。
│
│ 詳細は、常任理事会の皆さんに提起しました諸点を読んでいただけ
│ れば良いことですが。中心的ポイントは以下の五点です。
│
│
│ 1. 衣笠キャンパスが狭隘でかつ清心館や存心館が老朽化してお
│ り、建て替えのためのリザーブペースを含めて、問題を解決で
│ きる校地となるしかるべき土地があれば購入するという点では
│ 学内関係者の意見はほぼ一致している。
│
│ 2. しかし、そのことと茨木市に衣笠とほぼ均しい面積である12
│ ヘクタールの土地を購入し、立命館大学を衣笠、BKC、茨木の3
│ キャンパス体制(各12000名体制)にするというのは別次元のこと
│ である。衣笠とBKCの二拠点でも様々な問題に直面しており3拠
│ 点にするなどは教学、課外活動、財政、管理運営など多面的に
│ 検討する必要があり「9月論議集約、10月契約」というのはあま
│ りにも拙速すぎであり「なぜそこまで急ぐのか」との疑問の声
│ が上がっている。
│
│ 3. いま立命館が直面している焦点は教育・研究の質的向上であ
│ り、その現状分析をきちんと行い、それに基づき必要なキャン
│ パス整備を行うべきである。ところがそうした教学論議をして
│ いる最中に、まず「茨木を購入する、3キャンパス体制に移行す
│ る」ということを突然提起し、結論を急いで迫るやり方は、学
│ 内に無用な混乱、新たな不団結を持ち込むだけである。
│
│ 4. 関西の私学で最も広いキャンパスに相対的に最新の設備の
│ BKCにある経営学部を、何百億円かけて茨木に移転することが、
│ 立命館が今、急いで重点投資すべきことなのか。立命館中高等
│ 学校の移転経費を含め、積み立ててきた基本金(ストック)を使
│ い果たす危険がある。なにを重点とし、次の世代にどれだけ残
│ して置くのかきちんと論議する必要がある。さらに近年、立命
│ 館の財政は硬直化しつつあるが3拠点にすれば、それだけで、日
│ 常の経常経費が20-30億円余分にかかり、財産の食いつぶしだけ
│ ではなく、経常経費の硬直化を一層深めることになる。
│
│ 5. 同志社大学(以下、同志社)は、文系の学部をすべて田辺から
│ 衣笠より狭い今出川キャンパスを中心とした京都市内に移転さ
│ せる構想を打ち出している。その時、立命館は茨木市に移転す
│ ることを行うのか。立命館は京都の地にあって同志社と切磋琢
│ 磨し共存共栄するのか、北摂の地で関西大学との競争に力点に
│ 置くのか、学園の戦略目標の明確化が求められている。
│
│ いずれにしてもあまりにも唐突でかつ拙速な提起であり、「まず土
│ 地ありき」の感が拭えないが、学園の将来を既定する問題となるの
│ で多面的な検討の上に慎重な審議する必要がある。
│
│ ここに理事ならびに関係者の皆さんに、私が掌握している情報と率
│ 直な疑問を報告し、皆さんの正確な判断をお願いする次第です。
│
│ なお立命館では一時期「学内優先の原則」ということが言われまし
│ たが、私は、これは学校法人の理事会の運営原則から言って正確な
│ 表現ではないと思っています。「学外理事」も「学内理事」も理事
│ 会構成員として、その決定と執行にかかわっては同じ責任を負って
│ います。
│
│ あえて言えば常駐している「学内理事は提案と執行にあたってより
│ 責任を持って臨むべきであるという自らへの戒めであり、また教学
│ の実情について良く掌握していない「学外理事」は個々の教学改革
│ などについて意見を述べることについては慎重にしておこうという
│ ことだと思います。
│
│ しかし今回のような数百億円を投入して立命館の将来構想を決める
│ ことになる第三キャンパス構想に関しては、自治体や企業の運営に
│ 関して責任をもって当たってこられた学外理事の皆さんも、大所
│ 高所から意見を述べられ、理事会がより正確な判断下す責任がある
│ と思っています。
│
│ 私・鈴木元は、現在、日本ペンクラブならびに日本ジャーナリスト
│ 会議の会員のノンフィクションライターであり、中国(上海)の同済
│ 大学アジア太平洋研究センターの顧問教授を務め、超党派の国会議
│ 員約70名が参加した日本モンゴル経済懇話会の理事の任にある社会
│ 的責任を持った人間です。
│
│ 私は、母校を愛する校友でもあるジャーナリストとして、憶測や推
│ 測また匿名で文章を書いたりしません。母校の発展ために必要であ
│ ると思うことについて、理事の皆さん方に事実に基き、忌憚のない
│ 意見を署名入りの責任を持った文章で報告・提案するものです。
│
│ なお今回の文書で記載していることは、多少の表現の違いはありま
│ すが7月27日付で学内の常任理事会の構成員の皆さんには提出してい
│ ます。しかしその後の学内論議を通じてより鮮明となった問題もあ
│ り、多小の変更をしていますので、この文書についても再度、常任
│ 理事会構成員の皆さんにも送付することにしています。
│
│ 以下の詳細については7月27日付の常任理事会の皆様に提出した文書
│ を多少補正したものです。
│────────────────────────────────
│(1) 学園の将来構想の戦略的合意もないままに、莫大な資金を投入
│ しての茨木での第3キャンパス展開は慎重にすべきである。
│
│ 立命館は1970年代に衣笠と広小路に分かれていたキャンパスを衣笠
│ に一拠点化しました。1990年代には科学技術の進行に追いつく理工
│ 系の拡充のために、滋賀県と草津市の協力で土地と整備費を補助さ
│ れてBKC展開を行った。つづいて21世紀を展望し、大分県と別府市の
│ 協力の下、校地のみならず校舎の提供も受けてAPU を創設しました。
│ また附属校高の新展開のために滋賀県守山市から市立守山女子高等
│ 学校を無償で移管され立命館守山高校として開設しました。
│
│ これらの実施にあたっては全学にわたる論議での戦略的合意に基づ
│ いて実施されてきました。
│
│ 大学は学部横断型の教養教育・外国語教育などの全学的な教学体制
│ の確立、多様な学生の存在による切磋琢磨、そして効率的な管理・
│ 財政運営等から一拠点の方が、二拠点より良いことは明瞭です。し
│ かし理工系のように現代科学技術の進歩に合わせるためには広大な
│ キャンパスが必要でしたが、当時は国土法の関係もあって市街地に
│ ある大学は拡充が困難で郊外に出ていかざるを得ませんでした。し
│ かしそれを独力で行うにはあまりにも財政的負担が大きすぎますが、
│ 幸いにも滋賀県と草津市の校地提供でBKC展開ができました。それで
│ も日常的な教学運営、学園の一体感、課外活動の取組み、そしてキャ
│ ンパス管理、コスト等から非効率でさまざまな問題を生んでいるこ
│ とは明瞭です。
│
│ そうした時、将来への戦略的展望の合意もないままに、さしあたっ
│ て土地の購入を含めて最小でも数百億円かけて茨木市に立命館の三
│ キャンパス体制(各12000名規模)を確立するという構想の実施は、全
│ 学的な多面的な議論による合意形成に基づいて慎重にすべきです。
│
│ この構想は朱雀キャンパスのような部分的なものではなく、立命館
│ の教育体制、学生の課外活動、事務体制、管理運営体制、などを含
│ めて中期計画はもとより提案者の言うところでは「50年先の将来の
│ 立命館大学の在り方の基本が既定されるのである。
│
│ そのような重大なことを突然、学園の将来の全体像の戦略的議論も
│ 行わない中で、かつ実際にはそれを拘束してしまう契約を急いでし
│ なければならない理由は何なのか。このようなやり方に対して多く
│ の教職員から「中期計画」作成の内容・運営の両面から疑問が出て
│ いるのは当然である。
│────────────────────────────────
│(2)入試戦略とかかわって
│
│ 言われている重要な論点の一つが入試の問題である。近年立命館大
│ の入試志願者が減少しているが、その主たる原因が「立地の不便と
│ 建物の老朽化であり、より大阪に近い茨木の地に新キャンパスを確
│ 保しなければ命取りになる」というものです。
│
│ 校舎が全て古く狭隘なわけではないことは明瞭である。問題はこの
│ 20年間発展してくる中で、新しい学部、移転した学部は他大学と遜
│ 色ないか上回るものであるのに対して、衣笠の清心館や存心館など
│ が明らかに狭く旧態依然としていることは事実である。したがって
│ 体育館の建て替えを含めてリザーブペースが確保できた時点で、第
│ 一優先的に清心館や存心館の建て替えなどの工事をやるべきであろ
│ う。そのための新たな校地の確保には誰も反対していない。しかし
│ そのことと大阪に大規模な第三キャンパスを確保することとは別の
│ ことである。
│
│ そこで焦点となっているのが入試動向とのかかわりである。
│
│ たしかに大阪から、とりわけ大阪南部から受験生を確保する点で関
│ 西大学(以下、関大)や関西学院大学(以下、関学)に対して不利なこ
│ とは事実である。しかしそれは同志社も同じである。この点につい
│ ては冷静かつ詳細に検討する必要があり、今後の課題とするが、と
│ りあえず明確なことだけを述べておく。
│
│ (i) まず立命館の受験構造は半分が関西、半分が関西以外である。関
│ 西以外の人々にとっては京都か大阪かと言えば京都の方が良いこと
│ は明瞭である。ただし(ii)で述べる理由から大阪へ移転したからと
│ 言って大幅に減るとは思われない。
│
│ (ii) 関西ではどうかaまず世間で言われている「勝ち負け表」(二つ
│ の大学に合格した場合、どちらの大学に入学するかという対象表)で
│ あるが、同じ京都にある同志社と立命館では残念ながら依然として
│ 同志社に流れている。大阪にある関大と京都・滋賀にある立命館で
│ は立命館に、関学と同志社では同志社に進学している。したがって
│ 実際に入学している学生は必ずしも地の利だけで選んでいるのでは
│ なく、基本的にはその大学の社会的スティタスを重視している。
│
│ いわゆる偏差値では、明らかに近年では立命館と関大では異なる層
│ が受験し始めており関大は産、近、甲、龍との併願を含め、4校の中
│ では一番広い受験層をターゲットにしている。b経営学部と政策学部
│ が移転対象学部となっているが、おそらく2つの学部は移転当初の受
│ 験生は増えるかもしれないが偏差値が上がるとは限らない。それは
│ 別のことである。
│
│ (iii) 移転するのは2学部であり、他の学部は従来通り衣笠とBKCに
│ 居るのだから第3 キャンパスを確保したからと言って、それが理由
│ で他の学部の志願者も増えるとは考えられない。それどころかBKCに
│ ある経済学部から経営学部への受験・入学の切り替えが起こる可能
│ 性もある。
│
│ 衣笠の学部である政策科学部を衣笠から出すのはキャンパス狭隘克
│ 服のためという理由はつく。しかし経営学部をBKCから茨木市へ移転
│ させる理由は何なのか、もしも「交通不便のためと言うなら経済学
│ 部も移転させなければならないし、キャンパスの狭隘克服のために
│ 衣笠のいずれかの学部をBKCへの移転させることも、新しく構想され
│ ている「人間系学部」をBKCで開設することもできないことになる。
│
│ (iv) ところで近年の志願者減の中心的理由は交通不便のためなのだ
│ ろうか
│
│ 衣笠キャンパス一拠点化がされてから既に30年が経つ。BKC展開が行
│ われてからでも20年が経っている。しかし受験生が急激に年々減り
│ 始めたのはここ5年ほどのことである。a少子化が主要な原因ではな
│ いことは同志社、関学、関大との比較で明瞭である。b京都であるこ
│ とが理由なら同志社も同じであるが、そのようなことは起こってい
│ ない。cまた立命館の受験者数の減少は言われている「交通の便で不
│ 利」な大阪を中心とした関西だけで起こっているのではない、北海
│ 道を含めて全国的に減少している。
│
│ 受験者数の減少に対しては「立命館の教学実態」についての謙虚で
│ リアルな総括・検討が必要であると思われるが、今ひとつ重要な要
│ 素として社会的に見て「立命館はもめている」というイメージが生
│ まれつつあると推察される。
│
│ どこの世界でも特定の人とのもめ事はありうる。しかし学校のよう
│ なところましてや教員の半数近く、職員に至っては90%を超える人々
│ が加入している労働組合と5年にもわたって公然ともめ続けているこ
│ とは正常ではなく、大学の社会的イメージを著しく後退さているこ
│ とは残念ながら事実である。
│
│ もめている原因は一時金の一ケ月カットと慰労金増額などの労使問
│ 題、ガバナンス文書や評議員選挙などの学園の民主的運営にかかわ
│ る問題である。
│
│ 私は必ずしも組合の主張に全面的に同意したり支持したりはしてい
│ ない(これらについては別の機会に述べることにする)。しかし世間
│ 的に言って労働組合と公然と5年にも渡ってもめ続けているというこ
│ とは、学園のイメージを損ね経営者としてはその責任を問われても
│ 仕方がない問題である。
│
│ したがって入試志願者数の改善ためには教学改革と併せて、積年の
│ 課題となっている不正常な組合との紛争状態に終止符を打つことで
│ ある。そのことを抜きに莫大な費用をかけて新キャンパスを確保し
│ ても新たな矛盾を生むだけである。
│
│ なお新キャンパス確保は教学改革の必要から出てくるものであり、
│ 「賛成」「反対」などで学内がもめるような事であってはならない。
│ 私を含めて今日まで意見を述べている誰ひとりとして「反対」の論
│ 陣をはってはいない。にもかかわらず提案者は十分な検討期間も保
│ 障せず、審議に値する資料も提出せずに、強引に「9月論議集約」
│ 「10月契約」と進めることは、またもや学内に無用な混乱と、新た
│ な紛争事をつくり立命館の社会的信用を傷つけるだけである。今の
│ 立命館に必要なことは、どのように学内の団結を取り戻すかが一番
│ 大切なのである。提案者はそれを肝に銘ずるべきである。
│
│ (v) 同志社は文系については、田辺キャンパスから立命館の衣笠キャ
│ ンパスより狭い今出川キャンパスに移転してくる。これは同志社が
│ 教養は田辺、学部は今出川としていたことが教学的に不適切であっ
│ たことと、学生たちは郊外にある田辺よりも歴史と文化のある京都
│ 市内を望んでいたからであり、大阪からの交通の便だけで考えては
│ ならない一つの例である。なお同志社の京都市内のキャンパスは今
│ 出川キャンパスだけではなく新町校舎や京都市の衛生研究所跡地な
│ どを含めた都市内分散型キャンパスとなる。
│
│ 衣笠キャンパスを補完するキャンパス確保を非公式に検討しはじめ
│ たのは、なによりも衣笠キャンパスの狭隘解消であるが、同時に同
│ 志社の文系学部が京都市内へ移動してくることに対する危機意識で
│ もあった。つまり現時点では衣笠にある立命館の文系学部より偏差
│ 値の高い同志社の文系学部が田辺から京都市内へ移動してくれば、
│ 立命館の文系学部が大きな打撃を受けるのではないかという問題意
│ 識であった。そこでせめて大阪からの通学時間が今出川とほぼ同一
│ となる京都市内の色々の候補地について調査していたが、昨年の秋、
│ **常務等から「茨木市のサッポロビール工場跡地が良い」と**
│ 氏に進言があった。
│
│ しかし私は「対抗する同志社が移動してくる京都市内とは別の場所
│ であり、大阪進出を考えるなら北ヤードとか移動予定の府庁跡を考
│ えるなら、まだ分かるが、茨木では中途半端だ。そしてなによりも
│ 近年の立命館は公私協力による無償譲渡でキャンパスを手に入れて
│ きたのに対して、今回の茨木案は自分で数百億円もの巨額資金を出
│ して購入するものであり、慎重にすべきであると進言した。
│────────────────────────────────
│(3) 財政見通しとかかわって
│
│ 1) ところが、今回の提案の不思議なことは、財政政策すなわち財
│ 政見通しが提案されていないことである。「交渉相手があることで
│ 不確定要素があり、現時点ではまだ無理であるが近々に出す」と説
│ 明されている。
│
│ しかしキャンパス購入費としては、12ヘクタールで約160億円と想定
│ されている。この値段が多少上下することはあっても極端に変動は
│ しないだろう。あと2 学部が移転するのであるから、設置基準とも
│ かかわって学生数に応じた基本棟の面積のおおよその予測はできる。
│ それに独立キャンパスなので体育館、図書館、食堂などの付帯施設
│ が学生数に比例して確保しなければならないので最低200億から300
│ 億円程度はかかると推定される。したがって校地と校舎で約400億円
│ から500億円程度は見込んでおく必要がある。
│
│ 政策を判断する時の重要な視点は、それが「相対的に良いことか」
│ どうかだけではない。(i)「財源はどこから」(ii)「投資に見合う効
│ 果がるのか」そして(iii)「限られた資源をなにに重点的に使うのか
│ が重要である。
│
│ 立命館は国立大学ではない、政府が決定しお金を出すわけではない。
│ 全学の貴重な財産を使うのである。収入増につながらない既存の学
│ 部である政策科学部と経営学部を茨木に移転するため400億円から
│ 500億円使う必要があるのか、それに見合うだけの学生確保につなが
│ るのかも冷静に見る必要がある。
│────────────────
│ 2) その上に現在計画されている立命館中高等学校の長岡移転で80億
│ 円から90 億円(この問題は後記する)。そしてどうしても最優先的に
│ 行わなければならない衣笠再整備計画として体育館、存心館、清心
│ 館の建て替えと、人間系学部の設置経費、衣笠、BKCの研究施設の拡
│ 充とG30ともかかわっての国際寮の建設がある。これらすべて行えば
│ 現在言われている「1200億円のストック」を使い果たす危険がある。
│
│ 学園の財産は先輩から引き継ぎ、後輩に引き継いでいかなければな
│ らない、現在の執行部で使い果たすことは許されない。ストックの
│ うち当面の建設にいくら使うのか、なにを重点とするのかをきちん
│ とする必要がある。
│────────────────
│ 3) 立命館が相対的に不利な大阪南部(大和側以南)から学生を安定
│ 的に確保する一つの実験的取組として大阪初芝学園との提携を行っ
│ た。しかし「債務保証を含めていかなる財政支援を行わない」とし
│ てきた。立命館としては一円の出費も行わず不利な大阪南部から一
│ 定の質を担保した学生確保するための努力をしているのである。そ
│ れに対して今回の構想は経営学部と政策科学部の「大阪での受験生
│ 確保のために400億円から500億円使うというのである。投資効果と
│ いう点で甚だ疑問である。
│
│ 限られた資源の相対的重点化という点で、広いキャンパスに相対的
│ に新しい立派な校舎を持っている経営学部を茨木に移転することが、
│ 衣笠の存心館や清心館の建て替えよりも先に急がなければならない
│ ことなのか、違うのではないか。「衣笠キャンパスの狭隘の解消」
│ という形で動きだしものが「茨木にいい土地がある」と言うことで
│ 土地取得が先行し、それを合理化するために「第3キャンパス論」を
│ 突然言い出し、さしませまって移転が問題にもなっていなかった
│ 「経営学部移転論」が降ってわいたように登場した。これでは「土
│ 地ありきからの提案ではないか」と言われも仕方がない。いずれに
│ しても財政を含めた学園運営の展望にどう責任をとるのか明確にす
│ る必要がある。
│────────────────
│ 4) 今後の学園財政を展望すると、(i)学生数は少子化の下、多少の
│ 増員はあり得ても基本的には大幅増はない。それどころか2020年か
│ ら本格化する第二次少子化を考慮すると将来、学生数の減と言うこ
│ ともありうる。(ii)一方、日本経済の状況などから、学費の抑制は
│ あっても大幅値上げは難しいだろう(すでに全学協議会で通告した
│ 年度ごとの学費値上げについては2011年度については凍結すること
│ を決めている)。(iii)そこへ基本給の6,3%値上げをしたことや、G30
│ など従来より支出のかかる教育プログラムが目白押しとなっており、
│ 立命館の財政は極めて硬直したものになりつつある。
│
│ いずれにしても第三期長期計画から第五期長期計画にいたる時期と
│ は社会的状況も学園の主体的状況も明確に変化しているのである。
│ それにふさわしい新しい戦略的展望の検討が必要な時にきているの
│ である。そうした時に戦略的展望についての明確な合意もないまま
│ に、やみくもに突然第3キャンパス論を打ち上げ、今日まで特段問題
│ にもなっていなかった経営学部までを数百億円使って移転させると
│ いう提案はあまりにも不自然である。これは当事者の経営学部が賛
│ 成しているかどうかの問題ではない。
│
│ なお、学生が「学費凍結」を要求するのは当たり前である。おな
│ じく教職員が「給与の引き上げ」を求めるのも自然なことである。
│ しかし教学と経営に責任を負っている理事会は、将来の学園運営を
│ 考慮して厳しい判断を下さなければならないが、すでに両方共に応
│ じてしまっている。
│
│ 立命館中学高等学校の長岡京市への移転についてもひとこと述べる。
│ 小学校教育との接続とかかわって従来の6:3:3の教育体制にたいして
│ 4:4:4の方がいいのではないかという意見がある。私も個人的にはそ
│ う考えている。また同じ京阪沿線に立命館高校と宇治高校があり、
│ できれば異なる沿線に配置したほうが良いと考えられる。そうした
│ 中で長岡京市への移転案が登場した。私も一般論としてはその方が
│ いいだろうと思っている。
│
│ 問題は財政展望である。校地取得費用は立命館中高等学校が積み立
│ ててきた費用と売却費用で賄える。問題は新校舎建築に要する80-
│ 90億円をどこから捻出するかである。私は**氏ならびこの問題の
│ 推進者であった**常務に「建設費用をどうするのですか」質問し
│ たところ「法人が出さざるを得ない」との答えが返ってきた。
│ 「それなら従来の財政方針を変更することになるので、きちんと説
│ 明し合意を取っておかないと。後になって、そんな話は聞いていな
│ い」ともめてはまずいですよと言ったが、まともな返事もないまま
│ に、現在にいたっている。
│
│ 従来、立命館では新しい附属や新しい校舎を建設する時「部門間融
│ 資」的考えで、その費用は20,年間などで償還する方式を採用し、そ
│ のために学費は県下で一番高いものになってきた。今回の長岡移転
│ にともなってそのようなやり方をすれば、学費の大幅値上げをしな
│ ければならない。それは今日の社会状況から言って極めて厳しいも
│ のになる。だからと言ってO理事長が言うように「法人が持つ」と
│ いうことをすれば、宇治や守山そして慶祥をどうするのかと言う問
│ 題が生じる。それらも県下一の高い学費で苦労しているのである。
│ それでは他の附属の初期投資も法人が面倒を見、学費の値下げに踏
│ み切るのか。それでは200億円を超える新たな出費となる。附属校の
│ ためにそこまで新たな負担をするのか。私は、いずれの結論であっ
│ ても良いと思っている。問題はそうした私学としての本質的議論を
│ あいまいにしたまま「政策的必要性」からだけ決め、つけを後に回
│ すやり方は正しくないと言わざるを得ないのである。
│
│────────────────
│
│ 5) つい最近まで年間百数十億円を基本金に積み立てることができた
│ 立命館は、基本給の6,3%,値上げなどにより、最近では年間数十億円
│ しか基本金組み入れができなくなりつつある。これでは差し迫って
│ いる存心館や清心館の建て替えだけではなく、学内の既存施設の計
│ 画的な営繕の資金が足りなくなる恐れも出ている。
│
│ なお茨木キャンパスの確保で衣笠キャンパスにゆとりができ、積年
│ の存心館や清心館の建て替えが行えると期待をしている人々がいる
│ が、茨木キャンパスに何百億円を使うという提案は出ていても、い
│ まのところ存心館や清心館の具体的な建て替え計画も予算見積もり
│ も出ていないことを直視すべきである。
│
│ また三キャンパス化に伴う非効率のためにランニングコストは年間
│ で20-30億円単位で増大すると推察される。
│
│ 「財産の食いつぶし」だけではなく「経常経費」での困難に直面す
│ ると予測される。それらを含めた財政見通しを出して全学で共有し
│ て議論・検討し、なにを重点にするのか、どのような順序でことを
│ 運ぶのかを明確にしなければならない。そのようなことを「9月に
│ 論議集約、「10月に契約などできるわけがないし、論議に耐える資
│ 料も提出されていない。
│────────────────────────────────
│(4)地方自治体の関与とかかわって
│
│ 口頭説明によると茨木市が3つの財政支援策(131億円)ブラスもう一
│ つの検討を進めていると報告されている。しかし自治体問題に少し
│ でも知識があれば分かるように、窓口担当者の一存でそんなことが
│ できるわけがない。最終的には国や府の承認、議会の同意がなけれ
│ ばできないことである。
│
│────────────────
│ 1) 茨木市からの支援の有無にかかわらず、購入するのか。
│
│ 今回の土地購入は、今まで立命館が進めてきた大型公私間協力によ
│ る無償譲渡ではなく、あくまでも立命館がサッポロビールから購入
│ する民間同士の売買である。
│
│ まず明確にしておかなければならないことは、茨木市からの支援が
│ 有る無しにかかわらず購入し移転するのか、支援がなければやらな
│ いのかをはっきりさせておく必要がある。
│
│ そうでないとあたかも支援があるかのような話をして、サッポロビー
│ ルとの土地売買契約議決を行った後になって「残念ながら議会の同
│ 意が得られませんでしたので、立命館が負担しなければならなくな
│ りました」と言って追加支出を求めるぐらいなら、はじめから支援
│ が無い場合でも実施するのかどうかを明確にしておく必要がある。
│ 「支援額の話が大きければ大きいほど、出来なかった場合の立命館
│ の持ち出し額が大きくなるからである。
│────────────────
│ 2) 自治体との関係はオープンに
│
│ 立命館はこの分野では、BKCのキャンパスを整備付きで無償譲渡を受
│ けた。APUの創設に当たっては土地、建物ならびに進入道路整備を無
│ 償で受けた。また市立守山女子高の移管も無償移管で行った。この
│ 中で首長などの行政当局と議会、議会と住民、裁判などいろいろな
│ 経験を積んで来た。**氏は「はじめての極めて難しい交渉」と言
│ っているそうであるが、彼にとっては初めてであっても、立命館は
│ APU創設事業を含めてもっと大きく根本的な支援を実現させてきた
│ 経験を持っている。
│
│ これらの地方自治体との契約・履行は基本的にすべて公開の下で行
│ われ、議会の承認を要することである。
│
│ 上記の今までの取り組みでは、そのつど文書で常任理事会に報告さ
│ れ審議され情報の共有化が図られてきた。しかし今回は全く公開さ
│ れてこなかったし、はじめて公式に報告された7月21日ならびに7月
│ 23日の常任理事会でも茨木市との関係は一遍の文書もなく、口頭報
│ 告のみであった。これを改め今後はオープンにして審議されるべき
│ である。
│────────────────
│ 3) その上で**常務が口頭報告した「131億円に及ぶ市の協力」に
│ ついては、理解を共通にするために正確にしておく必要がある。
│
│ (i)進入路建設への補助。
│
│ 12ヘクタールに及ぶ大規模な土地の開発であり、駅前の道の状況を
│ 見れば、立命館であろうと民間のディベロッハーが住宅開発を行お
│ うと、市としては駅からの道の拡幅整備、駅前の駐輪場の整備は行
│ わざるを得ない。現に都市計画として10 年前から開始し道路拡幅予
│ 定地の大半の買収も終わっている。これは個別立命館に対する特別
│ の支援策ではなく、大規模開発に伴う行政として当然のことをやっ
│ ているのである。
│
│ (ii)キャンパス内の道と「公園」などの整備費用の市負担。
│
│ 大規模な施設の開発に当たっては、そこが私有地の場合でも近隣地
│ 域への電気、ガス、上下水道の整備が、その開発地域の中を通さざ
│ るを得ない場合は、国からの補助金によって施工できるやり方があ
│ る。同じ性格の問題として、駅前から予定地へは密集した住宅街で
│ あり、予定地の南側はマンション団地である。したがって立命館が
│ キャンパス開発を行えば、広域避難場としての指定を受けるであろ
│ う。そうするとキャンパス内に一定の公開された空地と、そこに至
│ る進入路を整備する必要がある。そのために土地は立命が購入し、
│ 市に「無償で貸し付け」し市が舗装と芝生化などを行うなどの公私
│ 協力の工夫が必要である。それを国の制度も使って行うもので、こ
│ れも相手が立命でなくても行政的に必要なことである。
│
│ (iii)立命館の体育館や図書館を広く市民に公開する場合に、国の制
│ 度も活用して一定の補助を行うものである。
│
│ これは関大の高槻キャンパス開設にあたって高槻市と関大の間でも
│ 実施されている。立命館と茨木市、茨木市と国の間での交渉と調整
│ が必要であり、努力をすべきであろう。
│
│ 以上のように(i)(ii)(iii)は性格を異にする問題である。またAPUを
│ 含めて実現してきたものであり**氏が言うような特段のことでは
│ ない。
│
│ (iv) それに**常務からの口頭報告として「公示価格と買収価格に差
│ が出た場合、「市が差額について補填することも検討している」と
│ 言ったとされている。これは言ってはならないことである。そんな
│ 情報が漏れれば所有者であるサッポロビールと「競争相手と言われ
│ ている企業が値段を釣り上げることになる。しかしこれを秘密で行
│ い市の補助金を使うことになれば、市の担当者は背任行為(立命館は
│ 共犯者)となる。また実施に当たっては予算の議決が必要であり、こ
│ れは議会での理解を得ることは難しい可能性がある。いずれにして
│ も「どのような制度を活用しようとしているのか」「実行に当たっ
│ ての障害はなになのかをきちんと説明し共有して判断できるように
│ する必要がある。
│
│────────────────
│ 4) 滋賀県ならびに草津市との関係をどうするのか。
│
│ BKCは滋賀県並びに草津市から65ヘクタールもの土地を無償譲渡され
│ 移転したのである。いまになって「交通不便」という理由で経営学
│ 部だけでも4000名近い学生がいなくなるのである。そのような理由
│ であれば「経済学部もか」と思われて当然である。どのように合意
│ し理解を得るつもりなのか全くの説明もされていない。これは開発
│ された民間アパートも同じ問題である。経済学部も移転するとなる
│ とさらに多額の資金がいる。またあとになって移転となると最初に
│ 作られた体育館や食堂、図書館の増設か問題なる。あまりにもずさ
│ んとしか言いようがない。現在の立命館はBKCにある経営学部や経済
│ 学部を茨木に移転することが緊急に実行しなければならない重点課
│ 題なのか根本的な議論が必要である。
│────────────────
│ 5)京都市との関係はどうするのか
│
│ 京都市は観光都市であると同時に「学問の町、大学の町」を街づく
│ りの中心の一つとしてきた。しかし国土法や文部省の「抑制事項の
│ ために京都市内での拡張に制限があったために同志社、龍谷、立命
│ 館の理工系が市外に移転せざるを得なかった。京都大学の工学部も
│ 同じ問題を抱えた。そこで京都市は桂坂への移転の便宜を図った。
│ また大学コンソーシアムへの支援も行ってきた。同志社大学の文系
│ が田辺から市内に戻ってくるにあたって、京都市は衛生研究所の跡
│ 地を売却している。同志社が京都市内に戻ってくる時に、立命館は
│ 市外に出ていくのか。
│
│ 立命館は京都市内に残る代わりに衣笠の高さ制限の緩和であるとか、
│ 今日まで当たってきた衣笠周辺にこだわらずとも、京都市が所有す
│ る他の土地を売却してもらうなどの交渉の余地はまったくないのか。
│ 厳密なつめを行う必要がある。そのためにも9月論議集約、10月契約
│ というのはあまりにも拙速である。
│────────────────────────────────
│(5)第三のキャンパスそのものの是非について慎重に検討する必要がある。
│
│ 冒頭に述べたように衣笠キャンパスの狭隘さは誰の目にも明らかで
│ あり、しかるべき追加的土地の購入は必要である。しかし現在の2キャ
│ ンパス体制でも教学、課外活動、事務体制、管理、運営費のどれを
│ とっても非効率であり、この上に均等な大きさの第3キャンパス方式
│ に移行するのがいいのかは慎重に検討する必要がある。徒歩と自転
│ 車で移動できる距離であれば多少、分散していても同じ京都市の中
│ にある方が良いとも言える。その点では日本はアメリカや中国のよ
│ うに郊外に広大なキャンパス持つ大学形式よりも、ヨーロッパ型の
│ 都市の中に多少分散してある大学も一つの選択ではないか。
│
│ ましてや収入の増えない既存学部移転のために一度に400-500億円の
│ お金を使い、将来にわたって非効率な運営を強いられる第三キャン
│ パス方式については、多角的に慎重に検討する必要ある。
│
│ そんなことをしていれば「折角のチャンスが消えてしまう」という
│ 意見が返ってきそうであるが、本当にそうなのであろうか。BKCと京
│ 都の2キャンパス方式で京都市の中では多少分散型の施設があるのが、
│ 絶対に第3キャンパス方式より悪いとは言えない。先に示した同志社
│ 大学は今出川キャンパスを中心に京都市内分散型キャンパスで文系
│ 学部を展開しようとしている。すなわち「京都市にある大学を売り
│ にしようとしているのである。
│
│ また第3キャンパスを進めようとした時は「茨木以外に土地はない」
│ とするのは早計である。いずれにしても、この話は土地ありきから
│ 進めるべきではないだろう。キャンパスのあり方を含めた学園の将
│ 来構想をきちんと論議して、その戦略的合意の下に担当部門が調査
│ し提案し、戦略的方向とのかかわりで進めるべきことである。
│────────────────────────────────
│(6)該当する土地は「土壌汚染により売ろうにも売れなかった土地で
│ あった」ことを含めて情報公開の下で審議されるべきである。
│
│ 秘かに進められていた、今回の降って湧いたような茨木市のサッポ
│ ロビール工場跡地購入は常識的感覚から言ってあまりにも不自然で
│ ある。
│
│ 私は常任理事会の提案文書に以上のような疑問と意見を持って「現
│ 場に行ってみる」必要性を感じ訪れた。駅から10分もかからない地
│ に12ヘクタールというまとまった土地が広がっていた。それを見て
│ 私は「これほどの土地がなぜ今日まで売れ無かったのだろうか」と
│ 疑問を持った。そうした目で見ていると奇異な景色に気がついた。
│ 何年も使用していない土地ではあるが手入れが良かったのか草が生
│ えていない。しかしそのことよりも土の色である。通常何年も使用
│ していない広い敷地は白っぽい。ところが文字通り真新しい土色を
│ している。「これは何かある」と思い、帰宅後、この土地の履歴を
│ 調査した。すると大変な土壌汚染の土地であった。
│
│ サッポロビールは茨木工場閉鎖の後、そこを「ガンバ大阪」の根拠
│ 地とする構想を計画し、茨木市ならびに市議会の協力も得て進めよ
│ うとした。しかしヒソや鉛、六価クロムなどによる大規模土壌汚染
│ が見つかり、2年にわたって約3㎥、10トントラックで約7500台分を
│ 運び出し土地の入れ替えを行ったのである。工事は今年(2010年)の
│ 3月末に完了したばかりなのであり、従って「売ろうにも受けなかっ
│ た土地であった」のである。
│
│ この土地をめぐる問題は、毎日何十台と言うトラックが何回となく
│ 汚染土壌の運び出しを行っていたのであるから、地元人々の間では
│ 広く知られていることである。またサッポロビールのホームページ
│ にも掲載されていたことである。
│
│ 私は現時点では土壌汚染問題は解決した問題であると思っている。
│ なおこうした土地は工事が終わって1年以上たたないと工事できない
│ ことになっている。しかし**常務理事等の提案者が**氏などに
│ 「優了物件として」進言したのは3月末以前の昨年の秋のことであり、
│ まだ工事中のことであった。
│
│ このような土地をまだ工事中に「買うべき優良な土地として」提案
│ した**常務理事等、そして何時知ったかは別にして、少なくとも
│ 7月21日の常任理事会以前には**氏も知っていた。しかし今回の
│ 提案に当たっての文章のどこにもこの事実は触れられていない。
│ 常任理事会に、このような重要な情報も開示せずに、「競争相手が
│ 出てきた。今のチャンスを逃し、将来に禍根を残すわけにはいかな
│ い」などと言って、夏期休暇中に討議集約を迫るやり方は、学園の
│ 民主的運営としては認められないやり方である。
│
│ 今後の審議に当たっては、**氏以下の提案者はすべての情報をき
│ ちんと文書で開示する義務がある。そうでなければ参加者は総合的
│ に正確に判断できない。
│────────────────────────────────
│ 以上。
│
│ 追記、引き続き、皆さんの審議に参考となる新たな情報が入ればお
│ 知らせします。
│
│ 本文書に対する、ご意見、質問、また立命館に関する新たな情報提
│ 供があれば下記までお知らせください。私は情報源は秘匿しご迷惑
│ はおかけしません。なお私に連絡をする場合は業務メールではなく、
│ 個人メールお使いください。業務用メールは「業務以外に使ってい
│ ないか」どうかと、組織的に点検されています。
│
│ メール shagime@mtf.biglobe.ne.jp
└───
┌4───────
│1000億円の使途ーー提案・賛同投票・意見表明」サイト
http://www.ac-net.org/rtm/campus (id,passwd: rtm)
「茨木キャンパス用地購入の提案が7月末に唐突になされ、その可
否を9月末に常任理事会で決定することになっています。近未来
に学園資金の半分以上が費やされることが予想される取り返しの
つかない提案を、夏期休暇期間を除けばわずか1ヵ月足らずの間
に決めてしまおうという無謀な日程に、納まりかけていた学園幹
部への不信感が一気に再燃し、これまで以上に深まってしまいま
した。長年にわたる高学費・非正規雇用による人件費削減・高S
T比の激務により形成された財政的余裕を、今こそ質の改善に活
かすべきときです。1000億円余の資金で何を実現すれば良い
のか、学園幹部に委ねず、学園全体で知恵を絞る必要があります。
色々なご提案をお願いします。」
┌───────
│¶は発信者註
ログ・趣旨:http://ac-net.org/rtm/amp/