[amp 2010-09-13] 月曜会9/7報告と9/13予告, ST比改善シミュレーション,他 

─目次────────────────────────────────
【1】転載: 月曜会, 教育の未来を考える会 第2回(9/13月) 案内
【2】転載: 月曜会, 教育の未来を考える会 第1回(9/ 7火) 報告
【3】ゆにおん No 37  第2回団体交渉7/28の概要
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9月に入り教授会で新キャンパス問題を初めて審議した学部もあるようです。今迄のところ各学部長が個人的に賛否を表明してきただけですが、学部長が前向きでも、学部としては慎重意見が大勢を占めていることが判明した学部も複数あるようです。教育・研究部門の未来を直接左右する問題ですし、現在および未来の学生諸君に直接に影響のある決断ですから、一人一人の教員の責任ある判断が求められているように思います。これが契機となって経営優先の体質を克服して教育・研究優先の大学本来の姿に戻る可能性も皆無というわけではないかも知れません。若手の方の中には定年まで居るつもりはないと思っている方もおられると思いますが、新キャンパス購入がもたらす教育・研究活動への複合的ダメージは即効性があることを念頭に入れて検討されますことを願っています。


「月曜会, 教育の未来を考える会」の第二回が本日(9/13)開催されます【1】。総長選挙規定第22条「一般推薦」を活用する議論に発展することも予想され、総長推薦人の一部にも案内が送付されています。

先週9/7に開催された第1回のインフォーマルな報告【2】に、議論の一部が紹介されています。文社系と理工系の表面上の相違の底にある共通性の指摘は、教育・研究部門が文理間の距離を超えて連携する上で重要な示唆があると思います。

│理工系の専門性といっても要は専門性を備えた教養人というのが育
│成目標であり、その点では文科系と本質的に変わることはない。経
│済学であれ法学であれ理学であれある切口から世界を解釈し理解す
│る方法が存在する事を学生が追体験してもらう事が大学教育の本質。
│だから共通の教学改革目標を立てる事は可能。
また以下の2節が立命の現状と課題の的確な総括と感じました。
│これまで世間的にみても立命は確かに「改革のデパート」といわれ
│てきた。しかしそれはハコ作りにほかならず教育の中味の改革はお
│ざなりだ。一方立命のやった外回りの改革は他学にもまねられ、も
│はや立命と他学の距離はない。新キャンパス展開のようなこれまで
│の路線から一歩も出ない「改革」で金力をつかえばもう立命はおし
│まいだろう。教育の中味にかかわ方向に改革軸を転換する時がきて
│るが、教職員は疲弊しきっている。法学部長の「改革しない事が改
│革」という発言がその空気をよく伝えている。

│立命は急がしすぎて、落ち着いた教育、研究にとてもとりくめる環
│境がない。上からの提案につねにまきこまれる。こういう状況をな
│んとかしないと教育、研究いずれも中途半端な大学にしかられない。

内部留保資金1000億円は少なくないとはいえ, 長期的に冬籠もりしなければならない近未来の状況があることを考えると、最も必要なこと以外に使う余裕はないようです。今の立命に最も必要なことは「質の向上」であり、それには少子化を迎えて学生定員減は不可避であり、それと同時に教育研究活動における余裕の実現も「質の向上」には必須であり、質向上のためには半端でない経常経費増が不可欠であり、しばらくは貯金をしている余裕などなく「冬籠もり」が必要になります。内部留保資金1000億円は少なくないとはいえ、必要もないことに使うほどの余裕はなく、広大な新キャンパス用地を購入し、新キャンパス構築に膨大な資金を費やすような余裕はないように感じます。


新キャンパス購入の了承を得るためか、経営部門はST比改善の方針も組合との団体交渉で表明【3】していますが、規模は不明です。仮に人件費年10億円増で教員100名を増やすと、ST 比は現在の41より11%減って37となりますが、この程度では、リメディアル教員を増やすだけで終わってしまう懸念があります。ST比を3〜4 割下げることが「質改善」に不可欠な状況で、この程度の「ST比改善案」であれば、「質改善」もやっているというアリバイ作りのようなことになります。

ST比改善のために費やす総額を決めたとしても、学生定員減と教員増との組み合わせをどのようにするかは色々な選択肢があります。現在、学生数35942名、教員数864名、ST比41です。学生定員をs名減らし, 教員数をt名増やすとしますと、ST比は(35942-s/864+t)に変化し、毎年 t/10+s/100 億円が今より必要になります。この数字を、補助金総額に近い80億円(中期財政計画では年間貯金額とされている額)に設定して、学生定員減を0から8000まで動かすと以下のようになります。

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│学生定員減   0名  教員増800名  ST比21.6  ST比変化率0.53
│学生定員減 500名  教員増750名  ST比22.0  ST比変化率0.54
│学生定員減1000名  教員増700名  ST比22.3  ST比変化率0.54
│学生定員減1500名  教員増650名  ST比22.7  ST比変化率0.55
│学生定員減2000名  教員増600名  ST比23.2  ST比変化率0.57
│学生定員減2500名  教員増550名  ST比23.7  ST比変化率0.58
│学生定員減3000名  教員増500名  ST比24.2  ST比変化率0.59
│学生定員減3500名  教員増450名  ST比24.7  ST比変化率0.60
│学生定員減4000名  教員増400名  ST比25.3  ST比変化率0.62
│学生定員減4500名  教員増350名  ST比25.9  ST比変化率0.63
│学生定員減5000名  教員増300名  ST比26.6  ST比変化率0.65
│学生定員減5500名  教員増250名  ST比27.3  ST比変化率0.67
│学生定員減6000名  教員増200名  ST比28.1  ST比変化率0.69
│学生定員減6500名  教員増150名  ST比29.0  ST比変化率0.71
│学生定員減7000名  教員増100名  ST比30.0  ST比変化率0.73
│学生定員減7500名  教員増 50名  ST比31.1  ST比変化率0.76
│学生定員減8000名  教員増  0名  ST比32.3  ST比変化率0.79
└───
数字上では教員増に費やすのが最もST比改善に効果があるわけですが、少子化の中で学生の質を保つには学生定員を減らすことは不可避であり、それを避けてはリメディアル的教育活動に大学本来の教育研究活動が圧迫され、ST比の改善の中身はリメディアル教員増に過ぎない、ということにも成りかねません。

その意味で、学生定員減4000 名・教員増400名によりST比を25.3(現在の62%)にする、という辺りが妥当な線かも知れません。教員400名増による事務負担の増大への対応は、4千名の学生減があるので、職員100名増である程度対応できるのではないかと思います。そうすると、全体では毎年90億円が今より必要になりますが、3キャンパス体制では経常経費が30億円増と見積もられていますし、先ほど言及しましたように中期財政計画では80億の貯金が予定されていますから、毎年90億円で低ST比を実現することは財政的には十分可能な選択肢になっています。個人研究室400室の建設費が最初に必要になりますが、新キャンパス構築費とは違い、財政を圧迫するような規模のものではないですし「明らかに必要」な支出であることには違いがありません。

「質の改善」のために、こういった踏み込んだ財政改革を実施する気があるかどうかは、学園幹部が二言目には口にするようになった「質の改善」を本気で考えているかどうかのリトマス紙のようなものになると感じます。

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│ 転載 [ml-cm-bkcmf 1062] 月曜会, 教育の未来を考える会
   From: IKEDA Kensuke
   Date: Sun, 12 Sep 2010

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│           「月曜会, 教育の未来を考える会」
│   ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
│
│ ニ回目   9月13日(月): 夕刻6:30よりエポック立命 306号室
│
│                  夕食、もちこみ可
│
│
│     既にお知らせしたように第一回目集会では、我々がの
│     ぞむ総長像を「大学教育とは何をやることか」という
│     かなり原理的な立場を踏まえつつ議論しました。文科
│     理科を問わず、あるべき大学教育と、それを実現でき
│     る人物像にかんする一般的な議論はそれなりに深めら
│     れたと思います。
│
│     今回は具体的に、どういう人物が学部の壁を越えてこ
│     の立命全体の教育現場を再生できるのか。候補となり
│     そうな人物をあげて彼/彼女が立命の教育現場が渇望
│     する資質をそなえているのか? かなり具体的な議論に
│     なる事を予感します。
│
│     立命館の興亡はこの一選挙にかかっていると思います
│     奮ってご参加ください。
│
│    *************************************************
│    総長推薦人の方々にも是非本会に参加いただき、真剣な議論を
│    聞いていただきたいと思い、本メールを送らせていただいております。
│    **************************************************
│
│                      月曜会世話人一同
│                              理工学部・池田研介
│                              経済学部・松本 朗
│                              スポーツ健康科学部・三浦正行
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│転載 [ml-cm-bkcmf 1058] 月曜会報告
  From: IKEDA Kensuke
  Date: Thu, 9 Sep 2010

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│月曜会報告
│
│月曜会では、これまでBKCにおける教育現場における地道な教育改革
│の取組みを紹介し、少子化や社会の劇的変化が学生に大きな影響を
│およぼしつつあるある今、あるべき大学教育がなになのかという議
│論を行ってきました。その活動をふまえて、今もっとも必要と考え
│られるのは、教育現場をすべてに優先する学園運営であると考えて
│います。
│
│7日の会では夏休み最中にもかかわらず10人程度の教員が集り、ある
│べき大学教育の姿を議論しつつ我々現場の教員が強くのぞむ総長像
│を描いてみました。少なくとも一致した事は、上記のように教育現
│場をすべてに優先する学園運営を実現できる総長が選任されねばな
│らないという点です。経営優先ではなく、現場に根をもった、現場
│の声をききとれる総長でなければなりません。
│
│来週の会合では更にこの総長像をより具体的にしてゆきたいと考え
│ます。みなさん奮って参加くださるようお願いします。来週は
│
│
│      ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
│       来週は 9月13日(月) 6時30分  エポック立命 305号室
│      ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
│
│です。
│
│
│*************************************************
│独断と偏見を交えて議論された話題(の一部)を記せば:
│*************************************************
│
│7月の未来フォーラムでは5人の学部長が学部教育のありかた、特に
│ST比の問題、定員数の削減等が語られ、特に坂根理工学部長による
│教育改革の総合的とりくみのプレゼンは非常に迫力と説得力があっ
│た。
│
│立命がここまで肥大する以前は生きた学生像を捉える調査活動もあっ
│たが最近そういう努力は形式的な調査以外に行われていない。その
│意味で理工学部の学生面談等の取組みはモデルになる。
│
│文系、理系で教育改革へのとりくみ、とりくむ方法に差があるのは、
│仕方がない。専門性を標榜する理系とゼネラリスト養成を目標とす
│る文系とでは育成目標がことなりST比にもそれが反映される。理系
│でやってる学生ケアは文系のモデルにはなりにくいのでは?
│
│理工系の専門性といっても要は専門性を備えた教養人というのが育
│成目標であり、その点では文科系と本質的に変わることはない。経
│済学であれ法学であれ理学であれある切口から世界を解釈し理解す
│る方法が存在する事を学生が追体験してもらう事が大学教育の本質。
│だから共通の教学改革目標を立てる事は可能。ST比の改善はもちろ
│ん、現場に学部に応じた多様な教育改革の試みが育つような機運を
│もたらし、サポートできる総長でなければならない。
│
│これまで世間的にみても立命は確かに「改革のデパート」といわれ
│てきた。しかしそれはハコ作りにほかならず教育の中味の改革はお
│ざなりだ。一方立命のやった外回りの改革は他学にもまねられ、も
│はや立命と他学の距離はない。新キャンパス展開のようなこれまで
│の路線から一歩も出ない「改革」で金力をつかえばもう立命はおし
│まいだろう。教育の中味にかかわ方向に改革軸を転換する時がきて
│るが、教職員は疲弊しきっている。法学部長の「改革しない事が改
│革」という発言がその空気をよく伝えている。
│
│立命は急がしすぎて、落ち着いた教育、研究にとてもとりくめる環
│境がない。上からの提案につねにまきこまれる。こういう状況をな
│んとかしないと教育、研究いずれも中途半端な大学にしかられない。
│
│その通り。唯一研究に集中できる貴重な期間の夏休みさえ、「新キャ
│ンパス展開」によって妨害された。研究という教員にとって教育と
│同等の重みを持つ業務を妨害している。
│
│経営優先というが、新キャンパス展開は経営優先でさえない。新キャ
│ンパス展開が行われれば経営的にも立命は破綻するだろう。
│
│我々現場の教職員の声を聞いて政策化できる総長とはどういう人物
│なのかもうぼつぼつ具体的に名前もあげて議論すべきだ。その観点
│から現総長の業績をどう評価するかもちゃんとやるべきだ。
│
│その他いろいろなご発言があったと思います。
│
│大学教育の本質をどこにおくべきか??、文系理系がその境界を越え
│て協力しあうには?? そういった根源的な議論をおこないつつ結構生
│臭げな話題もとびだすスリリングな2時間でした。
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┌3───────
│ゆにおん No 37  第2回団体交渉7/28の概要

http://ac-net.org/rtm/f10/2010-union-37.pdf

  ¶新キャンパス課題については、副総長の発言「いついつまでに
  最終的な結論が出なかったら、勝手に決めるということは言って
  いません」という説明があったことが記載されている。

 ¶ST比については、教員組織再整備計画を前倒ししS/T比率を後半
  期(2011年度後半期?)より実施し2012年度から新S/T
  比が実現できるようにする方針が表明されている。ただし、その
  際に「新指標」導入の方針も表明されていて、例として「卒論の
  必修や初年次教育の取り組み等」が言及されている。

¶は発信者註

ログ・趣旨:http://ac-net.org/rtm/amp/