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国立大学独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports  No.29  2000.11.7 Ver 1.01

独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports No.29 2000.11.7 Ver. 1.0 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-29-00b07.html (ミラーサイト http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-29-00b07.html) 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html ===============================目次=================================== [Weekly Reports 29] 独立行政法人化問題週報 ---------------------------------------------------------------------- 独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports No.29 2000.11.7 Ver. 1.0 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-29-00b07.html (ミラーサイト http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-29-00b07.html) 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html ===============================目次=================================== [29-1]調査検討会議「目標評価委員会(第2回2000.9.14)」議事要旨より [29-2]北大職組と丹保学長との会見(2000年10月24日) [29-3]国立大学協会への共同署名運動 [29-4]渡辺 治氏「新自由主義戦略としての司法改革・大学改革」 [29-5]戒能通厚氏「現代日本社会と大学・司法改革の展望−−問題の提起」 [29-6]新潟からのアピール「国立大独立行政法人化で教員養成が危ない」 [29-7][he-forum 1381] 溝口 和子氏「教育学部の縮小・ 再編統合について」 [29-8][reform:03222]渡辺勇一氏による文部科学省組織規則の紹介 [29-9][reform:03202]渡辺勇一氏「国旗と学長の権力」 [29-10]豊島耕一氏「スーパー大管法としての「独立」行政法人化」 [29-11]田中宇の国際ニュース解説2000.11.6「グローバリゼーションと日本」 ==========================内容紹介================================= [29-1]調査検討会議「目標評価委員会(第2回2000.9.14)」議事要旨より <わがままは許されず、社会的及び通則法上許される範囲内で>という発言 もある。 [29-2]北大職組と丹保学長との会見(2000年10月24日) 「文部省自身、国立大学をどうしたらいいかわからないのではないか?」 [29-3]国立大学協会への共同署名運動 調査検討会議参加取り消しを11月15日の総会の議題とすること、 7月27日の360名の要望書の処理の開示を求める。 [29-4]渡辺 治氏「新自由主義戦略としての司法改革・大学改革」 独立行政法人化・ロースクール問題が置かれている文脈の明晰な解説 [29-5]戒能通厚氏「現代日本社会と大学・司法改革の展望−−問題の提起」 司法改革の諸問題点を指摘 [29-6]新潟からのアピール「国立大独立行政法人化で教員養成が危ない」 日本科学者会議主宰のシンポジウムで採択された声明 [29-7][he-forum 1381] 溝口 和子氏「教育学部の縮小・ 再編統合について」 「大学では大学でしかできないことを学んでほしい」 [29-8][reform:03222]渡辺勇一氏による文部科学省組織規則の紹介 文部科学省には<大学評価専門官>が1名。 [29-9][reform:03202]渡辺勇一氏「国旗と学長の権力」 新潟大学の現状 [29-10]豊島耕一氏「スーパー大管法としての「独立」行政法人化」」 大学紛争のときの時限立法「大学の運営に関する臨時措置法」と独立行政法人 通則法の比較 [29-11]田中宇の国際ニュース解説2000.11.6「グローバリゼーションと日本」 歴史上、日本はグローバリゼーションにいつも上手く対処していた。日本らし さを失わなければ焦らなくてよい、という指摘。 ====================================================================== [29-1]調査検討会議「目標評価委員会(第2回2000.9.14)」議事要旨より http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000470/ 「○印は委員及び関係者の発言、◇は事務局の発言 ○... また、このような研究は、目標から外れたところで意外な成果が出てくる場 合が多く、これを形式的に評価したのでは、達成度がゼロになる可能性が非常 に高い。したがって、分野によっては、実績や業績の積み重ねや、あるいは、 その研究者が持っている夢のようなものまで考慮して評価するような組織やシ ステムを作らない限り、日本おける独創的な研究というのは存在し得ないと考 える。 大学における教育研究の評価は必要だが、中期目標・中期計画に沿った評価 はあくまでプロジェクト研究的なものに限るべきである。 ... ○ 先ほども指摘があったように、一人一人の研究者まで評価の対象としてし まうと、独創的な研究を衰退させる恐れがあるなどの問題もあるため、検討課 題の1つとして、評価の対象、単位を加えるべきである。 ... ○ 文部省の考え方は伺うが、やはり国立大学の独立行政法人化に関する問題 は、我々自身が考えて、文部省に対し示していく必要がある。   ◇...評価の内容については、まさに本委員会における検討課題であるが、 その直接の対象を個々の研究者にすることは、実質的に不可能であり、また、 国費である運営費交付金は、個々の研究者ではなく槙Y法人である大学に交付 されるものであることからも、目標、計画、評価については、基本的には、大 学全体が対象になると考えられる。 ... ○ 独立行政法人化が国立大学にはなじまないということは、関係者の間では 一定の理解があると思うが、経済、政治関係者からは、現在の行政改革、規制 緩和、市場原理、競争原理という時代にあって、現行の国立大学の在り方とい うのは到底もたないのではないかという意見が多く、また、我々は、国立大学 の在り方という国家存亡に関わる一大事を検討しているつもりでも、社会には そのように受け取られてない。  したがって、本会議での議論は、関係者としては常識的であるものでも、丁 寧に説明をし社会に対し理解を得るという姿勢が重要である。   ○ 本委員会は、国立大学の独立行政法人化に関する目標、評価を検討するた め発足したものであり、国立大学にとって不利益にならず、教育研究が活性化 され、しかも自主性、自律性が確保されるにはどうしたら良いのか主張すべき である。ただし、わがままは許されず、社会的及び通則法上許される範囲内で、 国立大学がより良くなるための観点から、大いに主張すべきである。 ... ○なお、1点伺いたいが、運営交付金は、人件費と物件費に分けられるのか。 仮に、人件費として枠があるならば、給与面で配慮して優秀な人材を集めるな どということは不可能ではないか。 ...   ◇...運営費交付金の中で、人件費と物件費がどのような扱いになるかにつ いては、先行法人の例をもう少し見てみる必要がある。」 ... ○ 独立行政法人化にともなって、協約締結権が認められることになると、非 常に組合活動が活発な大学の場合には人件費が増額されていく可能性が高く、 そうなると、教育研究費が削減されていくことになる。そのような可能性を極 力抑制するためにも、運営費交付金は、いわば「渡しきりの交付金」で使途の 内訳は特定しないとされているが、少なくとも人件費と物件費程度の大枠だけ は分けて示されるべきである。 ◇..先ほど指摘のあったように、労働協約締結権に基づく組合との交渉に関 しては、法人のしっかりとした運営システムが必要である。今までの国立大学 にはなかった重要な課題でもあり、各委員の知恵をいただきながら検討を進め ていきたいと考えている。 ====================================================================== [29-2]北大職組と丹保学長との会見(2000年10月24日) http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kumiai/htm/2000/gakuchou.html 「○印は委員及び関係者の発言、◇は事務局の発言 ○... また、このような研究は、目標から外れたところで意外な成果が出てくる場 合が多く、これを形式的に評価したのでは、達成度がゼロになる可能性が非常 に高い。したがって、分野によっては、実績や業績の積み重ねや、あるいは、 その研究者が持っている夢のようなものまで考慮して評価するような組織やシ ステムを作らない限り、日本おける独創的な研究というのは存在し得ないと考 える。 大学における教育研究の評価は必要だが、中期目標・中期計画に沿った評価 はあくまでプロジェクト研究的なものに限るべきである。 ... ○ 先ほども指摘があったように、一人一人の研究者まで評価の対象としてし まうと、独創的な研究を衰退させる恐れがあるなどの問題もあるため、検討課 題の1つとして、評価の対象、単位を加えるべきである。 ... ○ 文部省の考え方は伺うが、やはり国立大学の独立行政法人化に関する問題 は、我々自身が考えて、文部省に対し示していく必要がある。   ◇...評価の内容については、まさに本委員会における検討課題であるが、 その直接の対象を個々の研究者にすることは、実質的に不可能であり、また、 国費である運営費交付金は、個々の研究者ではなく槙Y法人である大学に交付 されるものであることからも、目標、計画、評価については、基本的には、大 学全体が対象になると考えられる。 ... ○ 独立行政法人化が国立大学にはなじまないということは、関係者の間では 一定の理解があると思うが、経済、政治関係者からは、現在の行政改革、規制 緩和、市場原理、競争原理という時代にあって、現行の国立大学の在り方とい うのは到底もたないのではないかという意見が多く、また、我々は、国立大学 の在り方という国家存亡に関わる一大事を検討しているつもりでも、社会には そのように受け取られてない。  したがって、本会議での議論は、関係者としては常識的であるものでも、丁 寧に説明をし社会に対し理解を得るという姿勢が重要である。   ○ 本委員会は、国立大学の独立行政法人化に関する目標、評価を検討するた め発足したものであり、国立大学にとって不利益にならず、教育研究が活性化 され、しかも自主性、自律性が確保されるにはどうしたら良いのか主張すべき である。ただし、わがままは許されず、社会的及び通則法上許される範囲内で、 国立大学がより良くなるための観点から、大いに主張すべきである。 ... ○なお、1点伺いたいが、運営交付金は、人件費と物件費に分けられるのか。 仮に、人件費として枠があるならば、給与面で配慮して優秀な人材を集めるな どということは不可能ではないか。 ...   ◇...運営費交付金の中で、人件費と物件費がどのような扱いになるかにつ いては、先行法人の例をもう少し見てみる必要がある。」 ... ○ 独立行政法人化にともなって、協約締結権が認められることになると、非 常に組合活動が活発な大学の場合には人件費が増額されていく可能性が高く、 そうなると、教育研究費が削減されていくことになる。そのような可能性を極 力抑制するためにも、運営費交付金は、いわば「渡しきりの交付金」で使途の 内訳は特定しないとされているが、少なくとも人件費と物件費程度の大枠だけ は分けて示されるべきである。 ◇..先ほど指摘のあったように、労働協約締結権に基づく組合との交渉に関 しては、法人のしっかりとした運営システムが必要である。今までの国立大学 にはなかった重要な課題でもあり、各委員の知恵をいただきながら検討を進め ていきたいと考えている。 ====================================================================== [29-2]北大職組と丹保学長との会見(2000年10月24日) http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kumiai/htm/2000/gakuchou.html 「... (組合)学長の考えと現状認識を伺いたい。 (学長)大学の独法化はごめんこうむる。法人化するとして話を展開した場合、 超特急でことが進んでもその実現は平成15年度は無理で、早くても16年度から だろう。現在は、文部省も行政管理庁も基本議論のレベルだ。文部省自身、国 立大学をどうしたらいいかわからないのではないか?大学が一般の財団、銀行、 法人と同じ会計処理やれるはずがない。行革関係の最高レベルの官僚とも話し たが、彼らは大学の実情をよく知っており、通則法の適用ではいけないことを 知っている。大学は、国からの金でしか成り立たないのだから、自身の長期計 画をきちんと持ち、予算使用の根拠を示さなければならない。大学からの案が 出ないと誰かが書いたシナリオでいってしまうのが恐い。」 ====================================================================== [29-3]国立大学協会への共同署名運動 ---------------------------------------------------------------------- [29-3-1]署名への呼びかけ2000.11.2 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00b/02-kdd-yobikake.html                         2000年11月2日 国立大学教職員各位 国立大学協会が6月総会で文部省に譲歩した直後から、文部省は初等中等高等 教育全域で懸案の自称「改革案」を次々と展開し始めました。また、教育改革 <国民会議>の思いつきの中から手ごろなものを選んで早速実行しようという 動きが文部省で強まっています。国立大学協会6月総会の没理的合意の影響が これほど早く現われるとは誰も予想しなかったのではないかと思います。文部 省が無視できない存在として、国立大学協会の担う使命と責任の大きさを改め て認識させられました。 文部省の独立行政法人化調査検討会議は3ヶ月の雑談期間を終え、間もなく独 立行政法人化のための具体的作業に入ります。11月15日の国立大学協会総 会は、会議への参加合意を撤回できる最後の機会になると思います。国立大学 に在職する者としての責任を果たすべく、国立大学協会会則28条(文末に添 付)に従い、参加合意の撤回を議題とすることを求める要望書を提出します。 同時に、対案の検討開始と世界に向けたアピール採択を議題とすること、11 月総会の公開、そして、7月の国立大学教職員360名の要望書の回付先の委 員会名と審議内容の公開を求めます。 以下の要望書に賛同し署名される方は、11月6日(月)午後8時までに ... としてお知らせください。国立大学協会へ提出する時以外は匿名とすることを 希望される方は、その旨を同時にお知らせください。 辻下 徹」 ---------------------------------------------------------------------- [29-3-2]報告とお願い2000.11.7 「以下の26大学73名共同要望書を今朝国立大学協会事務局に提出しました。 この要望書は7月末に国立大学協会に提出した共同要望書への国立大学協会の 対処の開示も求めました。後者の要望書へは10月末までに64大学646名 の方の賛同が集まっております: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/008/25-shomei.html 文部省は、独立行政法人化の是非を考える前に大学毎の個別の検討も行なって 独立行政法人化の具体案をまず作り上げることを主張しています。その方針で 会議が進行すれば、各大学対文部省の交渉に舞台が移り、国立大学協会にとり 独立行政法人化プロセスは制御不能となることは自明なことです。それは、小 利に惑わされず大局を見れば、全大学にとって最悪な展開であることは明らか です。調査検討会議から一旦引き上げ、大学共同体の主導で事を運ぶよう、体 制を整えることが戦略的見地からすれば最優先されることです。そして、今度 の総会は、その最後の機会だと思います。  調査検討会議の参加を取り消し、国立大学協会自身が日本社会に向かって語 りかけ独自の改革案を呈示することを求める共同要望書の趣旨に賛同されるか たは、ぜひ署名をお願いします。11月10日金曜日まで署名を受け付け、1 5日の国立大学協会総会で要請行動を行い16日に文部省記者クラブで報道発 表する予定です。       集約先  岡山大学環境理工学部 野田 隆三郎          TEL・FAX 086-251-8472    e-mail noda@math.ems.okayama-u.ac.jp 辻下 徹 (・・・・ は、国大協提出時以外匿名希望) ------------------------------------------------------------------------                          2000年11月7日 国立大学協会会長 蓮實 重彦 樣  国立大学協会は6月14日の総会で、 文部省が国立大学独立行政法人化の 具体的作業遂行を目的とした調査検討会議へ積極的に参加することを全会一致 で決めました。昨年来、大学関係者の間で独立行政法人化への強い疑義の声が 途切れることなく広汎に上がっている中で、文部省が独立行政法人化の方針を 明言した直後に、このような合意に至った経緯は、大学関係者だけでなく国民 全体にとっても未だに不可解なままです。さらに、6月総会合意事項は、人を 煙に巻くものであり、日本社会から大きな負託を受けている国立大学の指導者 集団が備えるべき誠実性の不足を証明しています。  7月28日に私たち国立大学教職員有志360名(現在64大学646名) は、会議への参加を撤回し、日本社会に向けて国立大学協会自身が語りかける ことを求める要望書(添付書類)を国立大学協会に提出しました。しかし、未 だ回答はなく、また、設置形態特別委員会等の関連する場で議論されたという 情報も得ていません。  6月総会から5ヶ月が経過し、独立行政法人化調査検討会議が開始され3ヶ 月が経過しましたが、国立大学協会の戦略は会議に「意見を反映させる」こと にしかなく、実際、議事概要を見る限り、参加者である大学関係者が個人とし て思い思いに発言しているだけあり、国立大学協会と文部省との対等な交渉の 場にはなっていません。しかも、会議を主宰する文部省は、独立行政法人通則 法に基づく具体案をまず作成してから是非を検討する方針を明確にしています。 その方針通り、膨大な作業の末に大学の意見も枝葉末節では取り入れた具体案 ができたとき、それを非として退けることは、判断基準となる明確なもの−− 真の対案・大学憲章等−−がない限り不可能なことは明らかです。  具体案作成作業を開始する会議に、真の対案・大学憲章等の備えなしに、留 まることは戦略的配慮を著しく欠くものです。  そこで、会則28条に従い、以下の要望書を提出します。 ----------------------------------------------------------------------                 要望書 (1)次を11月15日総会の議題とすること。 (1−1)6月総会合意事項「調査検討会議への参加」の撤回。 (1−2)対案として、国立学校設置法改正による法人格取得の検討開始。 (1−3)日本社会と国際社会に向けたアピール(和文・英文)を採択。 (2)11月15日総会における独立行政法人化に関する審議に、国立大学   教員の傍聴を認めること。 (3)7月28日に会則28条に従い提出した国立大学教職員360名の 要望書(添付資料)の回付を受けた委員会名と審議内容を公開するこ   と。 =================================================================== [29-4]渡辺 治氏「新自由主義戦略としての司法改革・大学改革」 法律時報72−12号(p10-24)より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00b/05-watanabe.html ◇個性化の実現のための校長・学長への権限集中 90年代教育改革がこの種の難問を克服する手だてとして考えたのが、教育行 政に対する様々な規制を取り払い、学校の校長や大学の学長に権限を集権化す ることによって、校長、学長主導で、学校、大学の個性化、差別化を行わせよ うという構想であった。  教育の自由化と校長権限の拡大とは、一見すると矛盾するかに見えるが、実 はこの手法こそ、改革実行の決め手として文部省が編み出した手法だったので ある。こうして、98年9月の中教審答申「今後の地方教育行政のあり方につ いて」は、学校の校長の、教員人事や予算についての裁量的権限の拡大、職員 会議の諮問機関化を打ち出した。  そして、大学において、こうした手法を打ち出したのが、先述の大学審答申 「21世紀の大学像と今後の改革方策について」だったわけである。ここでも、 大学の個性化を推進するために、一方で大学の学長権限の拡大を打ち出し、他 方、大学の意思決定機問であった教授会、評議会の権限の縮小を謳ったのであ る。  しかし、この方法だけでは、大学の学長が改革に消極的な場合には、動かな い。そこで、文部省がもう一つの手法として加えたのが、大学の積算校費のう ち学生数に対応する「画一的」部分を大幅に削減して、文部省の裁量的判断部 分を拡大したうえで、この配分の基準として大学の外部評価を導入しようとい う手法であった。こうすれば、改革に消極的な大学は、評価において低くなり 大学予算が削られる反面、改革に積極的な大学には手厚い予算がつく。改革を やるかやらぬかは学長次第である。こうした手法で、大学の多様化、格差化を 促進しようとしたわけである。 ◇国立大学の独法化と文部省の思惑 ところが、ここで文部省の予期しない事態が起こり、改革の加速化の挺子となっ た。ひとつは、同じ新自由主義改革の一環としての「行政改革」方針として、 各省庁の一律一割削減方針が、さらに二五%削減が打ち出され、その決め手と して、国家行政組織の独立行政法人化が提起されたことである。そして、文部 省の場合には、国立大学の独立行政法人化なくして、この目標を達成するのは 難しいとされた。文部省は当初これに難色を示した。文部省の直轄下にある国 立大学を、いかに統制権が確保されるとはいえ、独立行政法人に移管すること がためらわれたからてあろうと推測される。 しかし99年になって文部省は独法化方針に乗った。これは、独法化により 文部省が当初懸念したような大学の自立化がなされないどころか、独立行政法 人の通則法に従えば勿論、その特例措置を講じたとしても、大学に対しては、 文部省は以前より強い管理権がえられるし、この管理権は、先に大学審答申が 描いていた改革を促進する武器とはなっても、それに障害となるようなことは 認められないとわかったからである。 ◇大学個性化の梃子としてのロースクール構想  もうひとつが、新自由主義改革の一環として急速に具体化していた「司法改 革」の文脈から出てきた、ロースクール構想の浮上であった。すでに大学審答 申において、ロースクールの検討に言及していた文部省は、こちらには当初か ら積極的に介入に動いた。文部省が積極的に乗り出した背景には、この改革の 主導権を握ることで省の権限を拡大しようという官僚機構としての拡張意欲が あることは勿論だが、それだけでなく、これが、大学の個性化の一環として、 大学法学部の競争的再編の挺子として極めて有効な手段となりうるという文部 省の判断があったことも無視できない。すでに大学は、私立大学を含めてロー スクール化を目指して走り出しており、独法化と相まって、大学改革に加速を つける展望が開けているのである。」 ====================================================================== [29-5]戒能通厚氏「現代日本社会と大学・司法改革の展望−−問題の提起」 法律時報72−12号 p4-9 序文より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00b/05-kainou.html 「... 私は、今回の改革の全体に「総合設計」の視点が全くないことを繰り返し批 判してきた。法科大学院構想はまさにその典型例である。法曹養成を重点とす る方向にシフトすることは、法学部の在り方を根本的に変えなければできるこ とではない。現在の法学部教育の体系とそれなりに対応していた教員組織もそ のままではありえないし、何よりも法学研究者の後継者づくりの在り方は大き く変更を余儀なくされるだろう。これを回避するためには、大学の側でこれま での法学部の担ってきた役割や法学系大学院が果たしてきた役割をいかに評価 し継承すべきものをいかに継承していくかの検討を早急に開始する以外にない。  法学部教育に問題があり、改革が必要であることは認めなければならず、そ のために大学の法学教員はここ数十年にわたる苦闘を続けているのであるが、 大学のみの努力ではどうにもならない問題が直接には高校までの学校教育の段 階にあることも明らかになっている。それにもかかわらず、「法曹の法曹によ る法曹のための改革」によって、大学がその自律性を剥奪され、法学部教育が これまで果たしてきた役割について基本的なレビュ−がなされないまま大学法 学部のなし崩し的解体が行われていくのは、どう考えても大学改革の正常な姿 とは思えない。  いずれにしてもおそらくはここ数年で、学界状況もがらりと変わるだろう。 本誌のような法律専門誌の在り方も大きく影響を受けることは必定である。そ して何よりも、隣接科学、とくに政治学・経済学と法律学の間のこれまでの研 究・教育体制に抜本的な再編が加えられざるをえなくなることはほぼ間違いな い。考えれば考えるほど、私には事態は深刻に思えるが、大学の側に格別の反 対の動きがないのは、大学進学人口の激減という事実を押しつけられての諦観 と、報われることがなかった長年の「改革」の疲れと徒労感によるのであろう か。大学の危機は、想像以上に深刻である。」 ====================================================================== [29-6]新潟からのアピール「国立大独立行政法人化で教員養成が危ない」 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00a/28-niigata-ed.html 「......  教員採用の減少の原因は少子化と言われていますが、直接的には教員の年齢 構成のゆがみにより定年退職する教員が極端に少ないことに加え、文部省が学 校の統廃合や定員削減政策をすすめていることが原因です。いじめ、学級崩壊 など深刻な学校の荒れを解決するのに必要な30人学級は、少子化に伴う教員 減を行わないだけでも実現できると試算されており、年齢構成のゆがみを正す ためにも、文部省はこの時期にこそ教員の増員を積極的に図るべきです。 ......  戦後の教員養成の2大原則である、「教員養成は大学で行う」という“大学 における教員養成”の原則と、「どの学部で学んだ学生も教員になることがで きる」という“開放制の原則”が実質的に崩されようとしていることも、最近 の教員養成をめぐる特徴の一つです。本年度から実施されている新教員免許法 は、教科専門科目を半分に減らし、教科教育法や教職専門科目を大幅に増やし ました。介護体験実習の義務づけとあいまって一般学部の学生が教員免許を取 得することが著しく困難になっています。一方文部省は、「教員養成系学部に 学者はいらない」という趣旨の発言を繰り返し行い、教員養成系大学・学部に おける教科内容を深める教育や研究を攻撃の的にしています。教員養成系大学・ 学部の教育や研究を、学校現場の問題意識や教育実践とかみあうものに変えて ゆく努力はおおいに必要であり、この点で大学の側に反省すべき点があること も事実です。しかしこの間に出された教育職員養成審議会答申が示すように、 文部省が目指している方向は、「学校現場に目を向けた教員養成」を口実とし て、皮相な「教え方」に片寄ったものに教員養成を変質させる危険をはらんで います。このような方向では子どもの学力低下に一層拍車をかけることは明ら かです。そしてその真のねらいが、教員養成系大学・学部の6割を占める教科 専門の教員を削減するリストラにある可能性も否定できないのです。  私たちは、「大学における教員養成」にふさわしい内実をもった教員養成教 育が、すべての学部に開かれて発展することを要求します。「今、どのような 教員が期待されるのか」をふまえた教員養成の在り方についての国民的な議論 をよびかけたいと思います。    2000年10月28日    シンポジウム「国立大独立行政法人化で教員養成が危ない      ー日本の教育の未来と教員養成を考えるー」   ====================================================================== [29-7][he-forum 1381] 溝口 和子氏「教育学部の縮小・ 再編統合について」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1381.html 「...私は教官ではありませんから、大学の運営には関わる余地もなく、詳 しい事情は知る由もありませんが、今、教育学部に対しては、採用試験合格率 の向上、就職率の向上、教職教養を重視するよう様々な圧力がかかっているよ うに思います。特に理科系に対しては、「ここは理学部ではないのだ。あんな ミニ理学部みたいな事して何になる。ここは教員養成課程である事を自覚しろ。」 という攻撃が強いようですが、私はその意見に反対です。自分自身が教育学部 を卒業して、強く感じたのですが、大学の教育学部でするべき事は、現場に立っ た時、即戦力となるようなHow to 式の教育よりも、専門性を深めながら充実 した卒業研究をしする方が大事だと思います。その中で、研究の手法と学び方、 理科系ならば科学的なものの見方、考え方、アプローチの仕方を身につけ、学 問・研究の面白さ、学ぶ楽しさを十分実感した人に、教師になって欲しい。子 ども達に、魅力のある教育をするには、教科・科目の教え方が上手なだけでは 不十分です。採用試験に高得点で合格しても、自分自身が、学問・研究の面白 さを体験した事がない人が、教壇に立って、いったい子ども達に、どうやって 学ぶ楽しさと意義を伝えるというのでしょう? ...  大学の教育学部は予備校教師の養成所ではないのです。現場でのHow to は、 むしろ現場に出てから学べるような制度にするべきです。教育学部を卒業して、 いきなり一人で、大事な子ども達を預かってしまうのではなく、現場に入った 最初の数年間は、副担任の形で子ども達と関わり、先輩教師から教えてもらい ながら、現場戦力を身につければよいのではないでしょうか?そして大学では、 大学でしかできない事を学んでおいて欲しい。」 ====================================================================== [29-8][reform:03222]渡辺勇一氏による文部科学省組織規則の紹介 「シンポの中で、埼玉大学中村氏は、文部科学省の組織について「組織規則」 という書類をもとに解説しました。当日は簡単な話でしたが、この文部科学省 の組織に設けられる「xxx官」の種類や権限を読むと、空恐ろしくなります。  中村氏も語っていたように、担当の少数(最低1名=例えば大学評価)の官 が企画・調査・指導・助言を行うという様に、国家(これが管理をどこまです るかに問題があるとしても)的な方策を、官職を有する個人の活動にゆだねて しまう(それで個人の自由な発想が異化生かされることも、我国の行政の中で は又あり得ない!)ことには、大きな疑問を感じます。  配布された部分を読んだの中でも以下の様な官が設定されます。  教科書に関して、数十にもはりめぐらされている官僚の網目のしつこさは大 変なものです。  大学教員は、36条に特に注意下さい。 .... 35条:高等教育局     企画官(1名)      視学官(5名) 36条:高等教育企画課     大学評価専門官(1名)       (大学における教育及び研究についての        評価に関する企画及び立案にあたる)     大学設置専門官(1名) ...」 ====================================================================== [29-9][reform:03202]渡辺勇一氏「国旗と学長の権力」 「新潟大学では、学長裁量経費の配分の多少をめぐって、ある学部では、学長 通達の言うとおり、国旗をあげないから減額されるのだという噂が教員の間で 交わされているようです。  トップダウンの強まり、学内予算の配分の変化に応じて、教員の心はどこま で荒廃してゆくのか、これで研究や教育に必須な自由な精神・発想というもの を持てるのか、見ていて大変見苦しく、情けない人達が周囲に増えてきました。  金を取るということで評価される傾向も強いものがあるようです。取った金 が予算申請の成果に達していない場合は返却を要求するという文言は、現状で は真面目なものと(単なる脅しでなく、本当に実行されるなら)思われます。  農学部の友人は、大変真面目に学問の進展を願って、学内プロジェクトの申 請を出したという事なのですが、予備審査で落ちて本選には残らなかったと嘆 いていました。   一方で相当いい加減なものが、多彩な顔ぶれというだけで通っている様に思 えます。実態はだれにも解らない。   XXのみぞ知るです。 ====================================================================== [29-10]豊島耕一氏「スーパー大管法としての「独立」行政法人化」 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/sprdaikanho.html 「今から31年前の1969年に,大学紛争収拾の名の下に「大学の運営に関する臨 時措置法」が成立したが,これをめぐっては大学の自治を侵害する「大管法」 であるとして反対運動が取り組まれた.これは5年の時限立法ですでに廃止さ れている.この法律を紛争に限定せず,無期限にかつ万能化して恒常的に大学 に適用するものが今回の「独立」行政法人化に他ならないことは,条文を対照 することによって明らかになる.すなわち独法化とは「スーパー大管法」であ る. ......  このような「歴史の繰り返し」--しかしより重篤な--であれば,当時の闘い から学ぶことも有用であろう.こんにち大学組織の中核に位置しているベビー・ ブーマー,団塊の世代たちが当時は学生の立場から問題提起をしていたはずで ある.その時の問いかけは時間軸を通じていま自分たち自身にブーメランのよ うに戻って来ている.これに耳を傾けてみてはどうだろうか.(注2) ...... 一方,「臨時措置法」の文部省の原案「管理運営の正常化法案」には,「学生 参加」の項目があった事は注目に値する.今日盛んなアンケートという江戸時 代の「目安箱」を連想させるようなやり方ではなく,正式の合議体に代表参加 を認める考えを打ち出しているのである.しかしこのような当然と思われる提 案は現在,文部省はもとより,組合など批判勢力の側からもほとんど聞かれな い.  文部省原案14条(全学連絡協議会の設置)  学生の意見を大学の運営に反映させるために,大学に全学連絡協議会を設ける.  同 15条(全学連絡協議会の組織)  全学連絡協議会は,国立大学または公立大学にあっては,評議員全員と学生を代 表する者で組織するものとし,私立大学にあっては,国立大学または公立大学の評 議員に相当する者全員と学生を代表する者で組織する. ......  国立大学が法人格を持つことが,現行国立学校設置法の「調整」では不可能 だということは未だに論証されていない.かつて「自主改革すれば独法化の対 象からはずすが,改革がなければ独法化することを法律で規定し」たなどと デマを振りまいて「大学審答申」の実施の宣伝役を務めた内田博文氏(注3) だが,彼が今度は「挙証責任」がどうのこうのと言っているのを見ると(注4), 実はこれは不可能ではないのではないかと思いたくなる.本当はどうなのだろ うか.ドイツなどでは国立(州立)大学のままで法人格を持っているのである. なぜ日本ではダメなのだろうか? (注2)1969年の当時の大学院生による文章を発掘して次に掲載しています. http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/riinkyo69.html 文体や用語はいかにも紛争時代の様式で,翻訳の必要さえあるかもしれませんし, 書き手の若さゆえの強調表現もあるでしょうか,内容としては今日に通じる重要な 事が述べられていると思います. (注3)http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Alink_niigata990528.htm (注4)[reform:03208] 国大協設置形態検討特別委員会委員の講演 内田氏は「通則法とまったく違 うスキームを提案することにすると,国立大の側が 起案し,国民各界を説得する義務を負わざるをえない」などと述べているが,「国 民各界」どころか大学関係者をも説得する義務を放棄している政府のことは棚に上 げて,国立大学にはその義務があるから新提案はあきらめろ,という恐ろしく対称 性を欠いた論理は一体どのような思考形態から出てくるのだろうか. ====================================================================== [29-11]田中宇の国際ニュース解説2000.11.6「グローバリゼーションと日本」 http://tanakanews.com/a1106globalization.htm 「... 最近のグローバリゼーションに対しては、日本が今後どう対応すべきかまだ見 えておらず「日本は乗り遅れている」という懸念の声も大きい。だが、これま で巧みにやってきた歴史をふまえるならば、乗り遅れを心配をする必要はなく、 日本らしさを失わずに対応すれば、それだけでうまくいくように思える。」 ====================================================================== ◆国立大学独立行政法人化問題サイトの入り口 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 homepage: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/ e-mail: tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp 登録 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/mg2.html 発行部数 1055 (2000.11.5現在) 内訳:Mag2:597 / CocodeMail:330 / Pubzine:58 /Macky!:35 / emaga:21 / melma:14 その他直送 約 200 /ダイジェスト版直送 約 2000 ===================================================================== End of Weekly Reports No.29 2000-11-7 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています** ===================================================================