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Weekly Reports No. 3

2000.3.27
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                独立行政法人化問題 週報
                 Weekly Reports No3 2000.3.27  Ver 1.01

         http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr
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      3-0 発行者からの通知

北大内の全学配信は今回を以て終わりにします。今後はメールマガジンとして
独立行政法人化問題の情報を広く学外にも提供していきたいと思っております。
続けて配信を希望される方は、次のページで手続きをしてください。
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/
なお発行者の運営している「国立大学独立行政法人化の諸問題」のサイトを学
外に移しました。http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/

---------------------------------目次----------------------------------
3-0 発行者からの通知

[読者からのコメント]
3-1 読者からの手紙の紹介

[情報]
3-2 高等教育研究グループの提案
3-3 44国立大学学長の自民党への要望書
3-4 文部省高等教育局大学課教育大学室石井稔室長挨拶より

[論説・意見など]
3-5 自民党文教部会提言(案)に対する意見
3-6 評議員の役割:佐賀大学で起こったこと
3-7 入試に関する中教審答申について
3-8 小堀眞裕氏:日本型エージェンシーに幻想を持ってはならない。
3-9 退官のあいさつの真意

[その他]
3-L New Links
--------------------------------目次終----------------------------------
[3-1 読者からの手紙の紹介]
-----引用開始--------------------------------------------------------
(大学教員は)「客観」「公平」という事を研究の上で行い続けている内に、
対抗する2つの考え(本当はその拮抗が出る前に自分で判断しておかなければ
いけないのに、出てから両者を比較したりするのが悪い傾向)の、いずれにも
立たずに双方を批判したり、自分は関係ないとする場所から単なる論評を加え
るのが、一般的な傾向として大変強いと思います。
 日本だけかどうか不明ですが、大学教員に欠けるのは、現物に(政財界の刊
行物などに迅速に)直接相対し、それを批判する能力の欠如でしょう。大阪大
学が独法への見解を最近やっと出しましたが、余りに遅すぎるのではないでしょ
うか。通則法が出る前に、中央省庁改革推進会議本部が一応の線を打ち出した
あの時点98年の秋にもっと鋭い批判を浴びせるくらいのことが出来なかった
のかと思います。」
-----引用終了--------------------------------------------------------

[3-2 高等教育研究グループの提案]

自民党・文教部会・文教制度調査会・教育改革実施本部・高等教育研究グルー
プは5回のヒアリング
http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/seimei/Alink_dokugyo_jimin000313.htm
を終え、提言を23日までにまとめた。その内容は、奥山議員のページ
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/okiya/kokkai171.htm
に要約してある。かなり大学の意向を大胆に取り入れた考えであったようだが、
24日の会合で行革本部から強い反対があったと報じられている
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00323-jimin-saishuuan.html
その結果が、3月24日の高等教育研究グループの最終提言(案)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00324-bunkyoubukai-an.html
と思われる。なお提言は、奥山議員がホームページで論点整理している:
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/okiya/kokkai178.htm
「自民党文教部会 高等教育改革プロジェク国立大学のあり方について」

なお提言(案)の目次は

  はじめに
  1.今後の高等教育政策の在り方
  2 国立大学の運営の見直し
  3 国立大学の組織編成の見直し
  4 国立大学の独立行政法人化
  5 高等教育・学術研究への公的投資の拡充
  6 今後引き続き検討が必要な重要課題

となっており、第一節「今後の高等教育政策の在り方」の中で、3つの方向

(1)国際競争力を高め、世界最高水準の教育研究を実現する
(2)大学の個性化・多様化を進める
(3)教育機能の重視

と、今後とるべき高等教育政策の3つの方針

(A)競争的な環境を整備する
(B)諸規制の緩和を推進する
(C)国公私立大学を通じて高等教育、学術研究に対する公的投資を拡充する

とを掲げている。

経常的研究費の重要性、大学への寄付に対する税制的優遇措置などの新しい項
目も入っているが、独立行政法人通則法+特例法を明記しており、任期制導入
の必要性も強調されている。詳しい批判は[3-5]にある。

[3-3. 44国立大学学長の自民党への要望書]
「地方都市に位置する国立大学のあり方について(要望)」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00323-44-univ.html

----転載開始------44国立大学学長要望書-----------------------

「地方都市に位置する国立大学のあり方について(要望)」 

                                                平成12年3月18日 

        田中弘允(鹿児島大学学長) 外 国立大学学長 43名



 自由民主党におかれましては、国立大学の独立行政法人化問題に関し、
高等教育が21世紀のわが国の命運を大きく左右するものであることを重
要視され、文教部会文教制度調査会に高等教育研究グループを置いて検
討を開始し、その方針が近々に発表されると伺っております。
 私ども地方都市に位置する国立大学としましては、以下に示します理
由により、現段階では、国立大学として果たしてきた役割がさらに推進
できるような措置を強く要望いたす次第であります。

(1)国土の均衡ある発展を計るためには地方国立大学の役割の維持強
   化が必要である。
(2)本社機能をもつ大企業が少ない地方都市では研究補助金等が得に
   くい。
(3)県民所得が低い地方では大学運営費は地域社会よりも国費に頼ら
   ざるを得ない。
(4)戦後50年培ってきた地域社会との提携やそれへの貢献を今後も良
   好に維持していくべきである。
(5)地方都市の国立大学が衰退することになれば地域の経済・文化は
   縮小し過疎化を招く。
(6)各地方の独特な歴史・文化・経済と結びついたユニークな教育・
   研究の発展が必要である。

 以上の理由により、わが国を支える基盤としての地方に対して歴史的
に深く関わってきた地方国立大学につきましては、国策としての育成が
なされますことを強く要望いたします。
----転載終了------44国立大学学長要望書-----------------------

[3-4 文部省高等教育局大学課教育大学室石井稔室長のあいさつ]

-----引用開始---------------------------------------------------------
... 附属学校からは30人学級にしてくれという強い要望がありますけれど
も、国立が公立に先んじて30人学級を取り入れていくのは文部省としてはそれ
はできないという基本方針であります。すなわち、そういうようなことが独法
化されたら自由にできるのかと言えば、これはやはり自由には出来ないと考え
ております。多くの部分が国民の税金で賄われていくというのは変わらない訳
ですので、独法化されたら何も文部省から干渉を受けないということではない
と考えているところです。
-----引用終了---------------------------------------------------------

[[3-5 自民党文教部会提言(案)に対する意見]
これに関する首都圏ネットワークの声明
http://www.asahi-net.or.jp/‾bh5t-ssk/net/000327seimei.html
では「この提言は、「国家戦略としての『高等教育政策』」の策定を求めたも
のであり、その観点から国立大学の独立行政法人化問題を方向付けようとした
ものである。なぜ自民党の提言が今出されなければならないのだろうか。文部
省は、9月20日の「検討の方向」発表以来、「行政改革」を目的とした独立行
政法人化に対する大学関係者等からの厳しい批判に直面して、自らの検討の経
緯を公表できないでいる。この提言は、その状況の下で、政権政党であるとは
いえ、単に政党のひとつに過ぎない自民党の麻生委員会の提言という形を借り
て、この4、5月にも予定されている同省の方針発表を先取りしようとしたもの
と言える。」とのべ、声明の詳細な批判を展開している。

また、声明に対して私もコメントを書いたのでご覧ください:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00324-to-aso.html
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00325-comments-toc.html

3-6 評議員の役割:佐賀大学理工学部の豊島耕一氏の「生き残り病」再論]
http://www.asahi-net.or.jp:80/‾bh5t-ssk/net/nethefo721.html
の中に次のような一節がある。
----引用開始--------------------------------------------------------
【文化教育学部評議員のとった態度】
 上に述べたように理工学部の教授会はこれらの改正案をスピード審議で一
回で通してしまった.しかし文化教育学部教授会は評議会規則案に反対を決
議した.これには敬服するが,しかしその後の処理に問題がある.何と同学
部の評議員は教授会決定に反して,評議会で改正案に全員が賛成してしまっ
たというのだ.
 評議員は個人として評議会に参加するのであって必ずしも教授会の意思を
伝えるだけではない,という理論はある.しかしそうだとしてもそれにはア
カウンタビリティーが付随する.つまり少なくとも所属する教授会で,評議
会でどのような態度をとるかをあらかじめ表明しておく義務はあるはずだ.
そのような,いわば裏切りの表明にもかかわらず,文化教育学部教授会は評
議員の「個人の意志」にまかせてしまったのか,是非知りたいものだ.
----引用終了--------------------------------------------------------
評議員は所属部局の意思を代表するものでない、ということが北大でも確認さ
れているが、上のようなことが現実に起きる可能性もあることは認識しておく
べきであろう。

3-7 入試に関する中教審答申についてのいくつかの意見の紹介]

昨年12月16日に中央教育審議会の答申「初等中等教育と高等教育との接続
の改善について」が出た。「教育評論」2月号ではこの特集を組んでいる。コ
ラム「教育改革推進本部だより」で(教育改革推進本部事務局の)三浦孝啓氏
は「中教審はだれの立場に立ったのか」という題を掲げ、高校入試について何
も進展がなかったことを指摘し、1991年の第14期中教審が「われわれは、
もの言わぬ子どもの立場に立つ」といったこととの落差を批判し、大学入試に
関してても国立大学の独立行政法人化に関連して次のように述べている。

----引用開始-----教育評論2000年2月号p37 ----------------------------
◆市場原理の危うさ

怒りはこれだけではない。今回の中教審に期待されたものは、端的にいえぱ受
験競争からいかにして脱却し、偏差値偏重教育の歪みをただすのか、というこ
とであった。中間報告は、「大学と学生とのより良い相互選択をめざして」な
どという美しい言葉で飾りたてている。では、具体的な提起となるとどうか。
構図はこうだ。

前提として、少子化のなかで「大学全入時代がくる」との認識がある。すると
それは、大学側が選抜するだけではなく、学生か選ぶ時代ともなる。そのよう
ななかでは、大学はアドミッションーポリシーを明確にし、学生もまた自ら選
んで進学するような相互選択にもっていくのが望ましい。これが中間報告の大
学入学者選抜制度改善の構図である。

ことぱのうえでほ、よさそうに見える。ただし、ここでも十分に検討しておく
べきことがある。それは、国立大学を工−ジェンシー化すること、すなわち市
場原理を働かせていくことと密接不可分な関係にある。エ−ジェンシー化の問
題は、大学側の自主性をいかに確保するか、という視点で検討中であるが、か
りに学部別授業料などという構想が実現に向かい、その水準が私学並みに高ま
るとしたら、「医者の子どもしか医者になれない」などという状況を簡単につ
くりだしてしまう。階層間格差の増大と、固定化である。

もうひとつある。日本の大学が首都圏に遍在していることと関係する。選択肢
が少ない地方の学生たちは、どうしでも首都圏へ流れこんでこよう。これを防
ぐようなセーフティーネットワークが形成されないかぎり、地域問格差もまた
増大していく可能性があるのである。

 このような二重の格差の拡大は、日本社会に歪みと矛盾を拡大していく。中
教審には、このような検討を行った形跡すらない。大学入学者選抜というのは、
個別大学の構限なのか。それとも、その社会的な影響からして、社会的な装置
として働かせるべきものなのかという根本的な命題も、どうやらエージェンシー
化のなかで吟味される余地がなかったようだ。

その検討の不十分さのなかで、個別大学の生き残り競争が加速されていく。そ
れは、決して大学の自主性の確保ではない。日標管理という市場経済の法則に
規定される仕組みへの転換でしかない。そのような方向に向かうことが止むを
得ないというなら、二重の格差を拡大しないためにセーフティーネットワーク
を最低限でも準備しなけれぱならないが、そのような認識は中間報告から見え
てこない。
----引用終了-----教育評論2000年2月号p37より --------------------------

また、静岡大学の橋本健二氏は、「大学入学資格試験」の重要性を主張し、
次のように述べている

----引用開始-----教育評論2000年2月号p20より--------------------------
「現行の大学入試制度では、個別の大学がそれぞれに入学者選抜を行っている。..
このため多くの大学、とくに私立大学では少数の教科・科目のみで受験できる
のが普通である。このため受験生は、少数の受験教科・科目しか勉強しようと
せず、高校教育の本来の目標が達成されにくくなっている。しかもこうした学
生たちは、大学教育が前提とする知識に欠ける場合が多いので、大学教育の側
にも多くの支障が出る。..
 そこで、全国共通に、高校の教育課程全般にわたる基礎的な内容の試験を行
い、これに合格した者を大学入学者選抜の対象としようというのが、資格試験
のアイデアである。...そうなれば一点差を争う学力試験はなくなるし、大
学入試が高校教育に悪影響を及ぼすこともなくなる。
  しかし文部省は、これまで資格試験導入をかたくなに拒んできた。自民党文
教部会が資格試験制度を提案したときも消極的な態度をとったし、1996年
に当時の有馬朗人中教審会長が資格試験を提案したときも、これを葬った。
「資格試験」というオプションを葬ることより、文部省は抜本的改革の道を閉
ざしてきたのである。」
----引用終了-----教育評論2000年2月号p20より--------------------------
藤本氏は、AO入試についても、次のような問題を指摘している:
「アドミッションポリシーの明確化が有効に働くためには、受験生が自由に大
学を選択できるという前提が必要である。ところが、現実には、自由に大学を
選択できる受験生は限られる。..地方のかなりの層の受験生は、事実上、地
元の国立大学を中心とするいくつかの大学の中から進学先を選ぶほかない。こ
の傾向はとくに、女性の場合で著しい。...
 このような現実の中で地元の国立大学が「こういうタイプの学生しか取らな
い」と宣言したとすると、地元の受験生は進学のチャンスを制限されてしまう。
むしろ地方国立大学の使命は、地元に済むあらゆるタイプの受験生に進学のチャ
ンスを与えることにあるのではないだろうか。」
  そして、「大学入試に対する大学側の主要な利害は、受験生の確保と偏差値
水準の維持にある。ここからは、教育改革としての入試改善の発想は出てこな
い。これに対して生徒を送りだす側である高校教職員こそが、大学入試改革に
第一義的な責任を負うべきである」と指摘し、中教審が大学審に検討を委ねた
ことは「大学入試制度改革は当面のところ見送られたも同然である」と批判し
ている。

3-8 小堀眞裕氏のホームページより]
「英国のエージェンシーと日本の独立行政法人の違い─
日本型エージェンシーに幻想を持ってはならない。」
http://www.asahi-net.or.jp/‾YE9M-KBR/
-----引用開始---------------------------------------------------------
独立行政法人にしたところで、担当省庁からのフリーハンドがどこまで可能な
のかの法的担保はありません。中期目標を立てるとありますが、そこで細かい
部分が書かれない保証などどこにも無いわけです。もし、細かい部分や核心と
なる部分まで書かれたり、書かれなくても計画書の作成・提出段階で指導が入
るなら、首相官邸自身がHP
http://www2.kantei.go.jp/jp/cyuo-syocho/houjin.html
で自白しているような「事前に『箸の上げ下げ』まで強く統制してしまうので、
自発的な効率化や質の向上が図れない」これまでの許認可・指導行政に何ら変
わりがないような状況すらありえます。ところで、この首相官邸のHPは爆笑
物です。優秀な官僚さんたちも筆を誤ることがあるんですね。自らこれまでの
官僚政治に関する批判を認めています。必見です。
-----引用終了---------------------------------------------------------

3-9 退官のあいさつの真意]
Weekly report No 1 で発言を紹介しました退官予定の方と話す機会がありま
した。「社会に向けてはっきりした態度を示そうとしない大学も批判した積り
だ」と言っておられました。もう少し真意を確かめてから書くべきでした。
 
3-L new links]
◆岩手大学教育学部・教育学研究科院生レポート
「国立大学の独立行政法人化について」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00327-iwate-st.html

◆東北大学長谷川浩司氏「近年の教育改変の考察」
http://www.math.tohoku.ac.jp/‾kojihas/TeX/k14s/k14s.html

◆大学審議会基本問題検討部会(第1回2000.2.2)議事要旨
http://www.monbu.go.jp/singi/daigaku/00000357

◆大学審議会基本構想部会(第10回)議事要旨1998.4.27
http://www.monbu.go.jp/singi/daigaku/00000243
私立大学と国立大学の関係の議論がある。

◆ 宮脇淳氏の講演要約「独立行政法人会計基準の概要」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00323-kaikei.html
「独立行政法人の会計とは、黒字は出すな、赤字がでたときは自分達で何とかしろという
制度だ」

◆ 藤原耕二氏ホームページ「国立大学の独立法人化には反対する」
http://www.math.tohoku.ac.jp/‾fujiwara/dokuhou.htm(1999.11)

◆これ以前のもの:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/whatsnew.html

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発行者: 辻下 徹   tujisita@geocities.co.jp     	
掲示板: http://geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/@etools/1.html
バックナンバー:
 http://geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html
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End of Weekly Reports No3 2000-3-27
**この週報は発行者の個人的な意思で行っています**